【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
なにっなんだあ(アビドス勢書き文字)
それはホシノがユメの死体を再確認するまでの4日間のこと。
「──…と、ここまでで分からないことはある?」
「大丈夫! "ちゃーんと覚えたから!"」
「それじゃあ今日は私と一緒の部屋ね。いつもは日替わりで夜回りしてるけど…弱っちい先生には護衛が必要そうだから」
「"ありがとう助かるよ〜。大人なのに甘えちゃってごめんねぇ"」
ケユメ先生がシロコと一緒の部屋で泊まる事で話は纏まり、校舎の案内と生活の注意事項を聞いている時から話は始まる。
「ん、このくらい大したことない。幻覚症状が出た先輩とアヤネを大人しくする方が大変」
「"へー。具体的にどうなるの?"」
「ホシノ先輩は徘徊して近くの人を無差別に攻撃、ノノミはその場で立ち尽くしてぶつぶつ言ってその内自傷する、セリカちゃんはその場で寝たりドカ食いしたり、アヤネは一見いつもと同じに見えるから1番厄介かな」
「シロコちゃんは?」
「ん、銀行を襲う。……此処には無いから外に出ようとするだけだけど」
「大変だー…」
「だから1番安全で分かりやすい。先輩は論外。ノノミは自傷の流れ弾が怖くて、セリカちゃんは2分の1でガチ噛みコース、アヤネは何するか分からなくて怖い。ん、私が適任」
ケユメ先生がなるほどーと頷く。
どうやら此処は生活するだけで幻覚を見るようになる時が来るらしい。
そうなった時に1番安全なのはシロコなので護衛もそうなのだとか。ありがたい話である。
「だから此処にいる間は私と一組で動いて。ちょっとの間でも離れないこと。特に排水…お手洗いやお風呂…水場全般は3階でも要注意。油断した頃に
「うーん"ホラーゲームみたい"でおっかなーい…」
ギャー! また出たあ!
そろそろ慣れましょうよ、セリカちゃん
近くからセリカとアヤネの会話、それから三発の銃撃音が聞こえる。アヤネによる物だ。
……確かに要注意らしい。ケユメ先生はブルリと身を震わせた。
「"肝に命じます"」
「ん、よろしい」
そんな感じで校舎…主に生活圏となる3階の案内が終わった。
そうなると自然と話は次はどうするかに移ることになる訳で…。
「……シロコちゃんはこの後用事ある?」
「特にないかな。先生の護衛もあるし、しばらくはのんびりになると思う」
要するに護衛があるから予定はキャンセルすると、シロコは言っていた。
「"それなら普段何をしてるか、私に見せてくれないかな"」
「……つまり?」
「体験学習! "……まだシロコちゃんのこと、アビドスの事を何も知らないから。だから1日でも早く知りたい。……ダメかな?"」
そうなると申し訳ないのが先生である。
少なくとも、先生として遊んでいるプレイヤーは先生ならそう思うと判断した。
危険があるのは百も承知、死んだらリスポンするので問題ないの精神による選択である。
まあ、仮にリスポンが無くてもシッテムの箱がある先生ならそうしただろうが……ケユメ先生はシッテムの箱もなしでの敢行である。
ゲームだとしてももう一度海を渡るリスクを思えば十分頭が抜けてる選択だった。
「ん、身の安全は?」
「大丈夫! ちゃーんと"海を渡れるくらいの物はあるから"!」
「んー…実績があるならいいかな。寧ろそういうのが無いとおかしいし…分かった。護衛がなければやろうと思ってたこと、今からやるから着いてきて」
「おっけー! "大丈夫だよ!"」
予め言っておくが、この一連の責任は全てケユメ先生にあることを留意して頂きたい。
動き易いよう丈の短いレインコートを着用し、いざ屋上である。
「雨が降ってるのに雨が降ってない!」
「ん、いつも通り」
「何だか雨音が途切れてるのは?」
「ん、いつも通り。今日は5〜6体かな」
「何か居るの?」
「ん、音を消して透明になれる白龍。空も海も飛べて泳げて嵐も呼べる。体感1日7体くらい校舎の周りをうろちょろ居る。一匹で校舎を丸呑みに出来るくらいは大きいかな。今日は少ない方」
カチャリ。
シロコは銃に特殊な弾丸を詰めた弾倉を装填した。
「"その放射能マークみたいなのが描かれた弾倉は?"」
「ん、アビドス高校お手製対龍精神弾「
ガキン!!
シロコはもう片方の手でゴツいワイヤーアンカーを持ち、更に大型ドローンを自身に自動追従するよう設定してから起動した。
ワイヤーの先で何度か床を叩き、妙に響く音が辺りに広がる。
「"ま、なるわな"……えっと、それをいったい何処に撃つのでしょうか?」
「ん……一匹挑発に乗った。思いっきり抱きついていいから、絶対離さないでね」
「シロコちゃん? え、シロコさーん?」
その銃口は空に向けられた。
慌ててシロコに抱きつく。雨の中でも消えない上品な蓮の匂いがした。
尚、白龍…シーサーペントは透明にはなれるが、その巨躯がなくなるわけでは無い。
その上で空を飛べて、大雨なのに頭上に降ってないということは……まあ、真上に居るということである。
落ちてきた場合、下敷きになるのは自分達だった。
「ん、大丈夫」
「ごくり……ぐ、具体的には?」
「迫力満点。毎日やっても飽きないよ、これは────」
シロコの言葉が……否、周囲全てが、カン高い鳥の鳴き声の直後に無音になる。
直後にシロコが銃弾を放つと共にアンカーを頭上に放ち──見えない何かに、それは食い込んだ。
宙に放り出される。
「──────ッ!!!?」
「─、──────」
「───! "─────"!!」
本来ならギュルルと巻きつく音がしているのだろう。
ワイヤーが縮むと共にシロコと先生は、銃弾を撃たれ上に逃げていく透明な龍と共に、空の旅をすることとなった。
「──…─」
「"────"!」
勿論途中でワイヤーが張った瞬間に引き抜いて、側面に刺し直して登るオマケ付きで。
「─、────」
「───…」
龍が上に逃げる勢いとブランコの要領で白龍の上部に着地したシロコは、しばらく無音の風を楽しんだ。
ケユメ先生を休ませる為でもあるが、白龍が落ちても問題ない場所に行くまで待つ為でもある。どっちにしろ雲の上まで飛んでいくのを待つのだ。それなら楽しんだ方が得だろう。
体表にいれば攻撃される心配もないし、うねるように動こうと…この巨躯だ。小さなシロコ達からすればアンカーを刺して捕まれば大した揺れでもない。
────ヒォォォォォォ!
「───…──ん…ひぃん…こわいよー…!」
「ん、そろそろ弱ってきたね。音が帰ってきた。先生、調子はどう?」
「"足場が透明なのがとても怖い!"」
「分かる。でも結構安定してるし、ちょっとなら手を離しても問題ないよ……やってみる?」
「む〜り〜! "ヤダヤダヤダ! 絶対離さない!"」
「──それならもう少し待って。そろそろ良い景色になるから」
先生を見ていると、懐かしいと思う。
思い出すのは、シロコがホシノ先輩の背中に張り付いて龍退治の体験をした時。
あの時は自分も顔を青くしてホシノ先輩に張り付いてたっけ。そうして頑張って着いて行った日はいつも食事が豪華だったから、帰った頃にはケロッとしていたのを思い出す。
「…ん、到着」
そうして遂に雲を突き抜け───青天の青空が広がった。
雲の海、空高くに見えるからっとした太陽、何処までも続いていく、青い空の世界。
「──わぁ」
「綺麗でしょ? アビドスはいつもじめじめしてるけど、この景色だけはカラッとしてて、とても好き」
この時ばかりは先生も恐怖を忘れて空を仰ぐ。
美しい世界が、そこには広がっていたから。
「……そういえば、私のことを知りたいって言ってたよね」
「うん! "そうだね"」
「なら私の夢を一つ教えるね──いつかこの空をアビドスの手へと取り戻して、思いっきりサイクリングしたい。雨が嫌いって訳じゃないけど……そうなったら、とっても素敵だから」
「それは"いい夢だね"」
ヒュォォォォォ────
「──風が気持ちいいね」
この風を龍の背中じゃなく、いつか自分の足で感じ取ってみたい。
龍と共に空を仰ぐ度に思うことだ。
ぐらりと、透明な足場が傾く。銃弾が効いてきた合図だ。
銃を脇に挟み、腰にぶら下げていたレーダーを確認する。
点は3つ。自分と、校舎の物と、真下で追従しているドローンのものだ。
「ん、空の旅も終わり。後はドローンと校舎のビーコンに従って落ちるだけ」
「…あ! そういえばドローンがいつの間にか居ない!」
「雲の上までは流石に着いて来れない。あくまで距離を正確に測る為の…通信の中継地点だから、これでいい」
「"へー"、色々便利な物を用意してるんだねー……それで、どうやってこの子を動かすの?」
そういえばアンカーの方は言ってなかったなと、シロコは今更思い出した。
余り悠長にしていると制御が効かなくなるが……まあ、説明するくらいは大丈夫だろう。
「…忘れてた。このアンカーは移動と誘導に使うもの。誘導は簡単だよ、さっきの挑発を刺したままいい感じにやる」
「"いい感じって?"」
「ん、職人技。コツがあるからこればっかりは感覚で覚えるしかない──行くよ」
シロコはそう言うと、片手でレーダーから銃に持ち替え──そのまま、銃床でアンカーを思いっきりぶっ叩いた。
────ィィン。
「ふぇ?──"う ぁ ぁ ぁ あ あ" !!?」
カン高い、鳥の鳴き声のような音が響く。
ぐわんと、それと同時に下の方にシロコ達は引っ張られて──ケユメ先生は最もスリル満点なジェットコースターを堪能することとなった。
「……大丈夫?」
「シロコちゃん、私生きてる?」
「ん、生きてるよ。身体は冷えたりしてない?」
「肝が冷えました」
「休む?」
「……"えっ"この一回で終わりじゃないの?」
ケユメ先生がアビドス高校の近くに落ちた龍──死んで露わになった真っ白な龍の上で仰向けに倒れていると、シロコが嫌な予感を思わせる事に言い始めた。
「ん、5〜6匹居るって言った。今日は私が屋上の番だから全部やる」
「……ひぃぃん!」
その後ケユメ先生の悲鳴が5回辺りに響くこととなったのは……自業自得だろう。
「ひぃん……酷い目に合ったよ〜…」
「慣れれば1番楽だよ。正面と裏手、泥に汚れる心配がないし、一発撃てば後は待つだけ。それに私はまだ未熟。ホシノ先輩なら平気な顔して一回で7匹同時に狩る」
「わぁ、とっても強い。"…あ、死体はどうするの? ちょっとした山になってるけど"」
「ん、必要な分を採取して放っておく。明日になれば泥に沈みきってるから心配しなくていい」
「シロコせんぱーい! 網何個入りますかー!」
そうこう話していると頃合いとみたのか、セリカとアヤネがヘリ(ミレニアムからのレンタル品)に乗ってやってきた。周囲に龍が居ないからかよく聞こえる。
ヘリも結構大きめで、一回で数百キロは運べそうなゴツさだ。
「2ー!」
「りょーかいでーす!」
「先生、後は鱗や爪、牙を剥いで、最後の往復で一緒に帰るよ。網が来たら入れていこう」
「ひぃん…重労働だあ…"がんばります…これなら借金も直ぐに無くなりそうだぁ"」
「うーん…網2個だと…6回撃ったから収支は精神弾+6発。最低限かな。もっと往復すれば増えるけど…先生がお疲れみたいだから早めに上がろう」
「"今回はご好意に甘えさせて頂きます…"」
「ん、初めてならいい方。アヤネ達と比べたらいい線行ってた」
そうして剥ぎ取りを手伝っている内に夕方となり、ケユメ先生はへとへとになりながらご飯とお風呂を済ませ、気絶するように布団の中に沈んでいった。
しかしこれは始まりにすぎなかった。
これから3日間、ケユメ先生はアビドスの洗礼を大いに受ける事となり……以下はそのダイジェストである。
「今日はノノミとホシノ先輩と一緒に正面側。初めてだから、先ずは沼地に違和感が有ったら撃ってね」
「"えっと…何が来るの?"」
「お魚さんとザリガニさんです♤ あ、私は防衛には行きませんので〜」
「うへぇ、こっちは透明じゃないけど、上手く撃たないと弾が滑ったり弾かれたりするんだよねー。しかも大きい癖に沼に潜って進むから見つけづらいしさー」
「流れを言うね。1時間正門や防壁を上げてノノミが修理する。その間そこから沼地の生き物が入るから、それを倒しておく」
「ザリガニと魚なら入ってもよくない?」
「酸を吐いて校舎を溶かす魚と鉄筋を切って穴を開けるザリガニじゃなければねー。じゃ、そろそろ始まるよー」
時には3m程の魚とザリガニから校舎を守る為にひたすら弾幕を貼り続け……。
その夜にみんなで蟹鍋を囲みつつアビドスの借金事情や明日の説明を聞き……。
「ん、明日は裏手側。セリカとアヤネと一緒にやるから」
「げっ……先に言っておくわ。昨日は頑張ったみたいだけど、私はそう簡単に認めないんだから! 連邦生徒会の手助けなんて……!」
「まあまあ…あ、連邦の方に戻ったら普通の弾丸の支援をお願い出来ますか? 少なくなったとはいえ借金もまだ6億はありますし……あ、先に借金の説明が先ですね!」
「ん、このレア蟹は私が倒した奴。これ以上あげない」
「シロコちゃん、蟹はいつだって争奪戦なんだよ」
「ふふ、修理を手早く終わらせた分はくださいね〜?」
「ノノミは通す。セリカとアヤネも通す、先生も情けで通す──5本も足を食べたバカホシノは通さない」
「よーし! おじさん6本目の足いっちゃおーっと!」
「"アビドスの蟹って18本も足があるんだ"……蟹味噌うまーい!」
そんな感じに一夜を迎えた翌日。
ケユメ先生は一年組と一緒に裏手側の罠漁の成果を確認しに行ったのだが……そこにある筈の沼亀は一匹も居なかった。
いや、それどころか……。
「なによ…これ」
「荒らされてますね……それも知恵を使ったやり方です」
「"いつもと違うの?"」
網が破れたりしている訳ではない。
ただ、人の手でなければ絶対に不可能であるはずの開口部のロックが外れている状態が、今の罠だった。
「ん……ここの亀に寄生した粘菌は、普通のと違って高揚感と幸福感を素早く全身に行き渡らせながら脳を修復する。要は本来なら精神を傷付ける効果が反転して、回復する」
「精神回復剤。現代医学に中指を立てた精神に対する万能薬にして、アビドスの秘宝です。認知症や脳が由来の植物状態の患者も完治出来る優れ物なんですよ」
「ウチの不良が優等生になった。これで休みが取れる。感謝するわ。受験前に飲んだら成績1位で通ったし、ゲームの腕前も上がってビックリしちゃった! 暫く世俗から離れてる内にすごいのが出来てるじゃないか。宜しければ材料を採取しに行ってもいいかな? 予知夢を完璧に制御出来るようになった、君達の努力を賞賛しよう。ところで支援に興味は〜〜って感じで、ネットじゃ結構有名なのよ。まあ、最後の2つは胡散臭くて断ったけど!」
「健康な人でも知能上昇や記憶の定着力や引き出す力の強化を始めに、様々な恩恵があります。私も実際に服用して検証したので間違いありません」
そうして語られるのは、アビドス最大の資金源の話だった。
アヤネ達は続けて言う。
「アビドスの借金は元々9億は有ったのですが、ホシノ先輩がミレニアムと協力して製法を確立したんです。その収入源だけで1年で6億まで減りましたし、土地もカイザーから9割は取り戻せました。まだまだ新しい物ではありますが、アビドスの秘宝は過言じゃありません」
「そのせいで、こんな僻地までちょっかいかけてくる連中が居る訳だけどね! 正直、私は先生がその為に侵入したスパイの線も疑ってるから!」
セリカがぐるると威嚇する。どうやら一夜鍋を囲んだだけでは到底足りないらしい。
「ひぃん…"それなら、私を裏手側に回して良かったの?"」
「ん、特許の申請やミレニアムの協力者の要望で研究基地の設置と、原材料や大まかな製法は公開してる。それにこの粘菌を背負った沼亀はここにしか居ないし、細かい数値もホシノ先輩と協力者以外は知らない」
「私達でも作ってる所は見せてくれないし、研究資料も特許が通った後は燃やしたそうよ。つまり、それだけ貴重ってこと!」
セリカがそう説明に区切りを付けると、では一体なぜこうなったかに話題は移っていった。
キノコが遂に逃げ方を覚えたとか、誰か外部の者がやったかもと話し合い──。
「ひぃん…」
「容疑者確保。ずっと居たし先ずないと思うけど、念のため」
「ふん、いい気味ね! ま、お手洗いとお風呂の時は解放してあげてもいいけど」
「あっはは…痛くない程度に縛っておきますね」
「ありがとーアヤネちゃん…"優しさが沁みるよ…"」
ケユメ先生は一旦縄で縛ることで話は纏まる事となった。
然もありなん。タイミング的に当然の結果だった。
「だけどどうする? キノコの頭が良くなったのなら手順を変えるだけでいいけど……沼亀がいた所でアレは作れないし、もし外部なら次に狙われるなら先輩よ?」
「ん、先輩なら返り討ちにするから大丈夫。それに──」
ピクリと、シロコとセリカの獣耳が反応する。
カチャリと銃と普通の銃弾を取り出して、それを察してアヤネも後方支援用の物資を手配した。
「外は危険だから、潜むならここかミレニアムの基地。だけどこの不純物が混ざった質の悪いエンジン音からして───」
「「「ブラックマーケット」」」
吹き
「みんな頼もしい事を言ってるけど…私の縄は?」
「「「……あ」」」
……少しだけ、締まらない終わりでは有ったが。
「ふぅーん。それでシロコちゃん達は外出用の船に乗ってる訳かー」
「ええ、盗られるだけなら大した事じゃないけど、これはエスカレートする奴よ。だから今のうちにとっちめてやってやろうって思って」
「そっかー。それでブラックマーケットにねー…てことはノノミちゃんと私はお留守番?」
「ん。このくらいなら私達でやれるし、先輩達が居るなら安心して出かけられる」
「へぇー…」
と、いう訳でホシノの協力者からのプレゼント、ミレニアム印のクルーザーに乗っての出発である。
素晴らしきは船をプレゼント出来る友人だとブラックマーケットに向かおうとした所、丁度9匹の白龍を倒し終え、その山の上で胡座をして休んでいるホシノに捕まったのが現状だった。
「日帰り?」
「はい、今日は穏やかな方ですし、その予定です。買いたいものはありますか?」
「……んー」
「ホシノちゃーん! 網何個入りますかー?」
ホシノが悩むように見上げた所には丁度ノノミがヘリに乗って現れる。
それを見て何か決めたように笑った後、ホシノはケユメ先生達に向き直った。
「みんなで行っちゃおっか。久々にみんなでお出かけしよー!」
「ヘリはどうしますか? ブルーシートならありますけど」
「だいじょぶだいじょぶ! 今日はいつもより多かったし、帰りまで沈みきったりしないって。ブルシはいちおー掛けとこっか」
「……初めからそのつもりだった癖によく言うわよ」
「なにか言ったかなセリカちゃん」
「別に? 先輩は正直じゃないってだけです!」
「ん、ブーメラン大会」
そういうこととなった。
戦力を思えば過剰と言う他ないが、お出かけと思えば妥当である。
「私が運転すれば3倍早くなる♢ 飛ばして行きますよ〜!」
「ノノミ待っ」「誰よノノミ先輩を席に付」「とにかく捕」「うへぇ、動いてないのに酔いそうだよ〜」「ひ」
しかし、快適な運転を思えば早計な判断だった。
おかげで先行していた盗賊に追いついたが、ホシノ以外ノックダウンである。
その酔いやすさたるや、後にブルタフスレで動画を見た者達も酔わせた程なのだから凄まじい。
何度も無重力体験と潜水の末、盗人達と隣接することとなった。
「リーダー! なんかクソやべー運転してる船にクソ煽られてます!」
「はぁっ!? そんなの突き放せ!」
「リーダー! ヤバいです! アビドスの連中です! 諦めましょう!」
「はえーよ諦めんの! エンジン全開!」
「5分前からそうしてますが無理です! 馬力が違う!」
「はぁ!? こちとら地道にバイトして買ったピカピカの新品だぞ!? それとお前は後で話がある!」
「生きて戻れたら幾らでも付き合いますよ!」
リーダーと呼ばれた、赤い髪にヘルメットをした少女が唾を飛ばして叫ぶ。
無断でエンジン全開という、エンジンの寿命を削る判断をした部下に注意するのは、後になりそうだった。
「やっほー、こんな悪天候の中会うとは奇遇だねー? ちょっとおじさん達とデートと洒落込まない?」
「クッソ──ジャブジャブヘルメット団はそんな脅しにゃ屈っさねー! せっかく大口の依頼なんだ! この亀は絶対渡さないからな! この海に慣れる為にどれだけ苦労したと思ってる!」
好都合にも聞きたいことを全部言ってくれた。
ならば遠慮する必要もないと、ホシノは爆発させる用の銃弾を装填する。
ユメ先輩の前だからと張り切った結果だ。
「あ! アイツ確か依頼主が言ってた相当ヤバい奴でしたよね!? 何とかのかんと!」
「バカかお前はなんだそのヘルメットと羽は! 「暁のホルス」だ! 「の」と文字数だけじゃねーか合ってるの! こうなったら全員例のやつ使え! 前払い分で買ったあの「悪魔の銃」!」
「あいさー!」「これ買う分の金で豪遊したかった!」「自分の頭撃つとかこえー!」「リーダー、信じてるぜ!」「やってやらあ!」
だからと言ってただのやられ役に終わるつもりも彼女達にはない。
これでも学生生活で1番の山場なのだ。例え素性の知れぬ相手だろうと、前払いで数百万を払われれば引ける筈もない。
その為にこのクソみたいな沼地に船を走らせたのだ。失敗するつもりなんて微塵もない。
「うへぇ──敵前で悠長に話してていいの?」
漫才が中々面白かったので待っていたが、奥の手を使わせてやるほどホシノは優しくはない。
至極当たり前の理由で被弾物を中心に爆発する銃弾は放たれて──それは、運転をしていた変なヘルメットの銃弾で弾かれた。
「……おっと」
「リーダー、そう言うと思って先にやっときました。5分前に」
「よくやったさっきのエンジンと功罪相殺だ! 全員行くぞォ!」
「コイツはいいですよリーダー! 今なら100発1000%当てられそうだ!」
「なんだ結構かっこいいじゃねーか!」「クールだなあこりゃ!」「空を自由に飛べるならやるしかねー!」「日和ってる奴居る? イネェよなァーー!!」「ヒャッハー!」
どんな姿になるか先に見れたのもあるのだろう。次々とヘルメット団が生々しい銃で思い思いの部位を撃つと、其処を起点に姿が変わっていく。
ヘルメットは銃のように、手足は銃の筒を束ねたように、その髪の毛は撃鉄のように、悪魔の翼が生え、次々と飛び立って船を暴走族のように取り囲む。
「うへぇ、アレが出来る奴がひーふーみので38人、船に穴を開けられたらおしまい。というか既に空いたし、割とキツめかなー?」
「わ〜やば〜♡ 初めて見る相手ですよね〜?」
「うっぷ……ん、どうする? あの変身に制限時間があるなら粘るけど」
「あーもー頭が痛いって時に幻覚みたいなことしちゃって……全員撃ち落とす!」
「撤退するにも交戦は避けられなさそうですね……分かりました、後ろと応急処置は任せてください!」
各々が撃たれ始めた銃撃から身を隠しつつ、大声で相談と共にやることを宣言する。
撃たれた端から水が侵入していく中、全員が士気を高揚させつつ撃ち始めた。
こうなってしまったら悲観する暇なんてない。
前だろうと後ろだろうと強行突破しかないのだ。全員が最悪な結果を想像しつつも銃撃戦が始まる──その時である。
「どうしても救援の協力が必要だと聞いて連れて来ました!」
「"ご協力頂きありがとうございます"──Rabbit小隊、状況開始!」
それは余りにも忽然と。
「Rabbit2了解! これより遭遇戦を開始する!」
「Rabbit3、りょーかーい。うわあ取り敢えずシールド展開しないと話にならないぞー? とりま船は囲っとくねー。あ、船内お邪魔しまーす」
「Rabbit4……ふえぇ、隠れる場所が少ないよぉ…あ、弱点は見つけたからモエちゃんに送るね…」
「Rabbit4、今は作戦中だ! 教本通りコードネームで呼べ!」
「ふぇぇ…ごめんなさい……やっぱり私はダメな子なんだ…」
「Rabbit2、Rabbit4、無駄口は最低限、反省会は作戦終了後に。これは教本にも書かれていることです。作戦に集中し、私の指揮に従うこと」
「…っRabbit2了解。済まない、つい出しゃばってしまった」
「Rabbit4…了解。あ、私も悪いんだ…」
余りにも異物であった物だから、一瞬相手の攻撃が止む程の出来事だった。
理解出来たのは掲示板を見ていたK先生くらいなもので……Rabbit3、モエが入った船内から顔を出して、ニコニコと手を降ってその助けを歓迎した。
「"あ、ミヤコちゃんだ〜。良かった、みんなー助けが来たよ!"」
「ん、先生がこの人達を呼んだの?」
「"うん! でも直接来てくれるなんて思ってなかったから…とっても嬉しいな〜!"……えっと、私と一緒な感じ?」
「"えへへ、結構頑張りました。はい、あなたのシッテムの箱、持って来ましたよ"……はい。概ね想像通りかと」
「…ん、変な会話。でも──」
余りにも気の抜けた返答にズルりと転げて転倒してしまいそうだったが……なんであれ助けがくるならありがたい。
実の所想定より相手が強くて困ってたのだ。
精神弾を打てば一発でも、その後に回復剤が必要だから出来れば使いたくなかったので、この助けは非常にありがたい。
「それなら味方だね──みんな、聞いてたよね。この人達と協力しよう!」
「聞こえてるわよ! あーもー本当に先生だったのね! アンタに合わせるから好きに動きなさい! 代わりに銃倉は幾らか貰うわよ!」
「構わないが、規格は大丈夫なのか!?」
「んなもん気合いで押し通せるからいいのよ!」
「規格はそういうものだったか!?」
「あーもー、リロード直後に火力を上げる要領! 「スムーズに強く撃つ」を応用した「撃てない要因の無視」! 強く撃つ部分をノーリロードに回してるのよ!」
「うーむ…やっぱり分からん! 取り敢えず倒すぞ!」
セリカとRabbit2…サキがお互いのリロードの隙を減らすようにカバーリングを行い、オマケにサキから弾倉を幾らか貰う。アビドスで戦闘慣れしたセリカがサキに合わせた連携だ。
そうして船に近づく者を優先して海に落としていく。倒れ難くても、銃の雨を受ければ止まる事に変わりはないのだ。
「支援助かります! 船が沈むのが1番の懸念点だったので!」
「いーよいーよ、そんな事よりその銃弾見せてくれない? すっごく破滅的で面白そう!」
「…ええっ!?」
「談笑の所すみませんが、怪我をしてる人が居たら私に教えてください。救護しに行きますので」
「あ、分かりました!……誰でしょうか! 私はアヤネです!」
「SRTのモエだよー。よろしくねー」
「トリニティ救護騎士団のセリナです。治療のことなら任せてください!」
モエとアヤネも先生達が雑談している間にお互いに挨拶を行い、その後ろでセリナ──Rabbit小隊を転移させた者──が救急箱を整備しながら、お互いに出来る支援を把握する。
直ぐに戦場の霧は晴れることとなった。
「みんなが先生のことを信じてくれて私も嬉しいなー」
「いろはのいで疑ってた人が言うと一味違いますね〜」
「うへぇ、でもユメ先輩に似過ぎなんだもーん!」
「あれ本物なんじゃないですか〜?」
「どうかなーそう思いたいけどねー? 先生なのは間違い無さそうだけど……うへぇ、頭が痛いよ〜!」
「ん、ホシノ先輩は考えるだけ無駄」
「よーしおじさんシロコちゃんを後でコテンパンにしちゃうぞー!」
「ん、最近のバカホシノなら勝てる」
「……ここならバレないかな。ちょっと忙しいけど」
そうして3人がお互いの背を預けて撃ち落とす……その下で、器用にホシノ達の足を避けながら壁にして支援射撃しているRabbit4…ミユが居た。
かくれんぼの才もここまで来るとびっくり人間である。
「くそぉ! 私達は雑談に興じながらでも2コマで倒せる雑魚キャラかぁ!? 舐めてんじゃねーぞゴラァ!!」
「こっちは自由に手足を銃にしてぶっ放せるんだよ! くらえ! 無尽蔵の弾丸を!」
「最高にハイだってのに負けてやるかよバーカ! たかが10人に負ける訳がねーだろが!」
ヘルメット団の手下が口々にそう言ってホシノ達に突撃し、撃ち落とされていく。
確かに彼女達はブラックマーケットでも上位層の力を手に入れたが……悲しいかな、初めて使った装備で、飛んで遠くから引き撃ちという正しい使い方が出来ていない。
そうなれば段々数が減って負けるのは道理であり──それが分からない者が、例えヘルメット団だろうとリーダーを務められる訳が無い。
「私らは誇り高きジャブジャブヘルメット団だ! こんな所で負けられるかあ! あ、お前は逃げる用意を済ませとけ! 多分負けるから!」
「安心してくださいリーダー! 船はとっくにビビって変身しなかった奴に任せてブラマに走らせました! 取り引き先も教えてます! ブラマに飛んで行けばいつでも逃げられますぜ!」
「……お前この嵐の中方向分かるか? 後そいつらが金持ってバックれない確証は?」
「分かりません! なので倒されて捕虜として乗せて貰いましょう! 金はアイツらを信用できる訳ないですよねすみませんした!突撃してきます!」
「このクソボケがーー!!!……チクショー!! 全員突撃ーー!!」
赤い悪魔の号令と共に全てのヘルメット団は突撃し──無事、全員その身柄を確保されて陸地へと運ばれる事となった。その際に洗いざらい情報をゲロったのは……ご愛嬌という事にしておこう。
後は彼女達を変身させていた
……と、思っていたのも束の間、アヤネ達の言葉でまだ終わっていないと判明した。
「……で、モエさんとセリナさんと一緒に調べた結果、この銃弾の売り手がカイザーの傘下にあると判明しました。既に具体的な場所も判明済みです」
「最近ヴァルキューレとウチのとこで噂になってる奴だから直ぐ分かったよ♪ 製造痕や銃弾の型番もカイザーの物だし、まず間違いないね!」
「正式名称「
「つまり、最近裏で流行りの倫理度外視の合法武器です。SRTとして、見過ごす訳にはいきません」
「ひぇぇ……」「脱毛とか嫌すぎだろ…!」「こんなもん要らねーわ」「一回だけでもう腹一杯だわ」「やべーのに手ぇ出しましたね、リーダー」「うっさい! 知ってたらこんなの使わなかった!」
真に恐ろしいのは無知と悪意。
ヘルメット団は一つの教訓を得る事になったのだった。
「コチラの銃弾の取り締まりはお任せください。今回はご協力ありがとうございました」
「"こちらこそ手伝ってくれてありがとー!" 後はドーンとまっかせて!」
「では私もそろそろ。トリニティで怪我をしたり困ってることがあったら気軽に来てくださいね!」
そうしてブラックマーケットで別れる先生達とセリナを見つめながら、セリカとノノミは少しだけ言葉を交わす。
「……はぁ。助かったのは事実だし……少しは…認めてあげなくは無いわ」
「正直じゃないですね〜、セリカちゃん?」
「ちょ、聞いてたの⁉︎……なによ、悪い⁉︎」
「ぜーんぜん? ふふ、セリカちゃんはツンデレさんですね〜?」
「……もう、からかうの禁止!」
頬を少しだけ赤らめて恥ずかしがるセリカを見て、ノノミはそんな所が可愛いんですけどね〜と、穏やかに微笑んだ。
「ノノミちゃーん! セリカちゃーん! "そろそろ行くよー!"」
「は〜い♧」
「はいはい、言われなくても一緒に行くわよ! 先生!」
ほんの少し親しみを込めて、そう言う。
「……あ、今自分から私のこと先生って!」
「最初から結構言ってたわよ!」
「"え〜?" でも今の先生は心が篭ってた気がするな〜?」
「なんでそんな所は聡いのよアンタはぁ〜!」
「セリカちゃんは分かりやすいからね〜?」
「ね〜!」
「もー! なんなのよ!」
そうやって誤魔化しながら、セリカは少しだけみんなより先を歩くのだった。
バグNo.13
何してもゲーム開発部が廃部になってくれないのは流石に可笑しいやろがえーーっ!?
アビドスの裏側で行われたユズとマネモブの一連の壮絶な出来事によってバグ認定された仕様。
AIがバグユズの功績からどんなに廃部の条件を揃えてもゲーム開発部を廃部の判断を下さなくなる。頑張った分だけ報われてるだけなのは言ってはいけない。
流石におかしいので>>1が調べた所、データ統合の末に100人全員のプレイヤーユズのやった事とステータスが反映されていると判明。プレイヤーの因果が帰って来てるだけだった。