【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】   作:何処にでもある

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 財布の小銭全部で500円…もうダメね(アルちゃん書き文字)




【ブルアカ】依頼:暴れる生徒のあやし方【ブルタフ】

 

 

「アルちゃーん! 事務所が風紀委員に囲まれちゃってる!」

「ごめん、こっちの私が情報を漏らした」

「"うん、私がやった"…けど、別に引き渡しても良さそうだったから」

「アル様、コイツ処しますか? 2人も要りませんよね、撃っときます」

「早くない? 判断がさ」

「"撃つのそっちなの?" ちゃんと区別付いてる? いや助かったけどさ」

「くふふ…面白くなってきたから生かしとこーねハルカちゃん♪」

「お前なんかがアル様の発言を偽るな…!」

「おっ今日のハルカちゃんの狂犬ぶりは一味違うぞー?」

 

 

「─‬‭─な、‬なんですってーー!?」

 

 

 拝啓、ゲヘナの風紀委員長様

 

 蝉が煩いこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

 私は貴女の部下に取り囲まれてます。助けてください。

 ここはブラックマーケットだし、貴女の姿がないので多分独断で来てると思うのですが、私には判断が付きません。

 もしそうだったら一刻も早い退去をお願いします。最近アビドスの海で見かけたので来れる筈です。近いですし。

 しかし貴女の指示で彼女達がここに居るのなら……一回殴るのを許してください。捕まりたくないので無理矢理突破します。保護のつもりが流れで捕虜になった先生は置いていきますから、それで痛み分けにしてください。

 

 敬具 陸八魔アルより

 

 

「このお手紙を仮に紙飛行機にしたとして、それが空崎(そらさき)さんの下に辿り着くと思う?」

「爆弾くっ付けて飛行距離を稼いでもワンチャンないと思うよ♪」

「流石アル様! 神の如き名案です!」

「1%くらいならあると思う。ゲームだし」

「"そうだね、紙の如き迷案だね"。ふざけてないで……ほら、サッサと撒き餌置いて逃げるよ」

 

「ひぃん…"私は撒き餌か〜"…」

 

 2日前に迷子になったケユメ先生をアビドスの生徒達が捜索し、その隙にホシノが黒服と一緒にユメ先輩の死体を確認している頃、ブラックマーケットでは珍道中という言葉が余りにも似合う集団と一緒に‭─‬‭─‬ケユメ先生は居た。

 

「"置いてかれたらとても寂しい…"とても辛いよぉ〜!」

 

「うっ…! そんな事言っても仕方ないじゃない! 風紀委員よ!? 捕まったら最後、勉学と青春を謳歌するただの優等生になるって噂の風紀委員よ!?」

「"なにか悪いことあるの…? それって"」

 

アウトローじゃ無くなるじゃない!? 私はアウトローになりたいの! こんな所で終わるなんて、絶対イヤよ!

 

「今逃げてるのは?」

 

「逃げ時を見誤らないのもアウトロー! みんな行くわよ!」

 

 珍道団が1人、リーダーのアルがそう言って屋上裏に続く梯子を掛ける。

 いざという時に準備していた逃げ道であり、苦労して借りたオフィスの一室を捨てる諸刃の剣だ。既に涙目な辺り、相当この部屋を捨てるのはイヤらしい。

 

「さすがアルちゃん♪ ちょっとダサいけどカッコいい〜!」

 

 それ見てクフフとメンバーの1人が笑う。

 その名をムツキ、7と8月に挟まれてた、半年感のない半年の区切りを名に頂いたいたずらっ子な少女だ。

 

「分かりました…逃げ道は沢山爆発するようにします!」

 

 そうして爆弾を起爆させるボタンを山のように持ったのがこの珍道団の狂犬にして鉄砲玉役のハルカ。

 既にこのオフィスにも逃げ道にも爆弾を設置し終えている、アルを心の底から信奉し中毒と化しているアル中である。

 

「ハルカ、このオフィスは除外しなさい! 入ったのを一網打尽とか勘弁よ!? 後で回収したいのが山ほどあるのよ! 壺とか! 晴れ着とか! ドレスとか!」

「はい! アル様の仰せのままに!」

「素直で大変よろしい! 便利屋68、逃走開始よ!」

「かつてないほど情けないスタートだね。…ま、付いてくけどさ、そういうものだし」

「……うーん、なーんかこっちのヘイローのあるカヨコの方がパチモンっぽいんだよなー? 逆だったら分かりやすかったのに…」

 

 そう言って各々がアルに付いていく中、1人だけケユメ先生の縄を解いている生徒が居た。

 

「…自分の身体であまり似てないモノマネされるってキツいよね。アンタもそう思うでしょ?」

「へ? あー…私は"縄ありがとー! これでいざって時に逃げれるよ〜"」

「"そ、じゃあ私は行くから。はい、私の電話番号。依頼があるなら電話して"…ま、お互い時間も無いし、じゃあね。精々死なないように。目覚めが悪くなるから」

「…うん。頑張るよ」

 

 その名をカヨコ。程なくして縄を解いた彼女は、登ってから梯子を上に上げて天井に蓋をする。少しでも脱出路が見つかるのを遅くするためだ。

 抜かりなく珍道団……もとい便利屋68の面々をカバーする、そんな頭脳担当だった。

 

 さて、そんな風にこの騒動の渦中にいるケユメ先生と言えば、今まで通りのほほんとシッテムの箱を弄っていた。どうせ逃げられないのでシールドを広げる算段……は特になく、プラナ(正確にはA.R.O.N.A)と雑談する為である。Kはゲームをしている時に暇になるのがイヤなタイプだった。

 

[……シッテムの起動を確認。どうされましたか、私を職員室に置き忘れたK先生]

「"ん〜別に〜? ゲヘナの子達に囲まれちゃったからどうしよっかな〜って"」

[……シールドの展開完了、確率から射撃ミスの乱数を最大算出…適用完了‭─‬‭─‬それでK先生、本題はなんでしょうか]

 

 プラナが何処となくヘソを曲げたような物言いで事前の用意を十分に終わらせる。

 先生と同数存在するシッテムの箱には、当然ながらプラナも同じだけ居る。

 そうして其々の先生に付き添うプラナ役のAIは、使われる事で学習と先生のサポートを最適化し、プラナとしての役の精度を上げていくのだ。

 …あくまでもブルタフの、プラナ役となった学習AIの説明である。

 

「"端から撃たれる前提はひどくない? 私だって平和に終わらせられるかも知れないじゃん"……無理じゃないかな〜?」

[あり得ませんね。他の先生方と比べて一度も死んでいないのは確かですが、その過程でどれ程の幸運に恵まれ一命を取り留めたか言いましょうか? 507回ですよ。……チートでは?]

「"知ってる? 世の中には階級の低い人から搾取した幸運と砂糖を混ぜて作った「ラッキーお菓子」があるんだー。つまり課金の成果…的な?"」

[ズルよりの課金ですね。ゲーム外要素なので控えてください。運営に報告しますよ]

「ひぃん…死ぬのはイヤだから見逃し"…まあまあ、上の階級からしたら塩と砂糖に並ぶ調味料みたいなものだから。味の素だから。3時のおやつだから……セーフ!"……倫理観!」

[……はぁ、取り敢えず相談なら掲示板としたらどうでしょうか。ここ最近、利用しているのを確認しておりませんが]

「……あ、忘れてた」

 

 多分カヨコちゃんが言ってた下手な演技ってこういう事なんだろーなー…と、ユメはしみじみと実感した。2人のカヨコを見比べて分かったが、まだ先生達の方が演技が上手いのだ。2人一緒になっているカヨコの心労が心配である。

 まあ、それよりも倫理観が終わってる食べ物の方に意識を持ってかれたのだが。緩い人だけど、やっぱり怖い所から来てるんだなーっと実感するのだった。

 

 ドンドン!!

 

「そこに居るのはわかっている!」「開けろー!」「‭─‬‭─‬ちょっと退いておけ」

 

 とまあ、そんなことを話していれば当然時間は食う訳で…ケユメ先生がまごまごしている間に風紀委員は便利屋68のオフィスに押しかけようとしていた。

 と、いうよりも……既に強行突破されていた。

 

 ダァン!ダァン!ダァン!

 

規則違反者共め!

[シャーレの先生を捕虜にしているのは分かっています。大人しく渡すなら牢屋に入れるだけで済ませてあげます]

 

 ユメが必死に物陰に行こうとするのも虚しく、ドアを壊す為の渾身の三発がフルヒットする。

 悲しいかな、細やかな動きは兎も角、大きく位置や姿勢を変える権利はKに明け渡していた。出来たことと言えば、その場で足踏みした程度のものだ。

 

「ひぃん…"全弾シールドに当たった…"」

[スキルは必中仕様です。避けられないので諦めてください]

「先生でーす! 撃たないでくださーい!」

 

[……既にもぬけの殻ですか]

「…と、先生だったか、済まない。……だが、どうしてドアの前から避難しなかったんだ?」

「できなかった! 痛かった!」

 

 ユメ、迫真の訴えである。

 その迫真の顔が少しは効いたのか、褐色の銀髪ツインテ少女……イオリは銃を納めて頭を下げた。

 

「拘束はされてないみたいだが……まあ良いだろう。幸い大それた怪我はなさそうだ…け、ど…うーん…念の為チナツに見せるだけ見せておくか」

[イオリさん? 今回の指揮官は私です。余計な判断は控えてください]

「うっさい、こっちは腕章してるだけのオフの日だ! こんな所まで来てるだけ感謝しろ!……それと、友達の指示に従うかは私が決めるからな!」

 

 そう言って通信に叫ぶイオリの姿は、実際ゲヘナの制服ではなく私服のパーカーにジーンズを合わせた物だった。

 どうやら休みの日を満喫していた所を連れて来られたらしい。

 何故休みの日なのに腕章を持っていたかについては…本人の趣味がパトロールか何かだったのだろう。私服警察ごっこでもしていたのだろうとK先生は推測した。

 

[ぐぬぬ……仕方ありません。偶然近くに居たからと連絡した私にも !? まあ! 非がなくもなくもないかも知れませんが!]

「アコちゃん、最近働き過ぎたか…? いつもよりカリカリしてるし…なんだか変だぞ」

「横から失礼します。どうあれこれはアコ先輩が全面的に悪いかと。…他に痛い所は有りますか?」

「バッチリだよ〜! "ありがとー!"」

 

 そんな風に銃弾の衝撃に当たるちょっとしたハプニングは有ったものの、自体は比較的穏便に進もうとしていた。

 恐らく先んじて便利屋が逃げ出したおかげだろう。

 

「落ち着いた所で……先生、突然押しかけてすまん。こっちの事情で巻き込んじゃって」

「"大丈夫だよ〜!"…けど、なんでこんな事をしたの?」

「アコが囚われた先生の身柄を助けて、風紀委員が外への権力を持つ第一歩にするって言い出してな」

 

 流れはこうだ。

 カヨコが情報をアコ宛に風紀委員に流した。それをここ最近で急に増えた業務で疲れてるアコが見つけてこんなことを言い始めたのだという。

 多分仕事のし過ぎで疲れちゃったせいだと思うが、別に断る必要も無さそうだから付き合ったのだという。

 

「万が一本当に捕虜なら見過ごせないですし…普段のアコ先輩は優秀な人ですから。一定の信憑性はあると判断しました」

「ま、結果はご覧の通りだけどな! 拘束も何も無いし、捕まえた奴も居ない。先生の1人暮らしだったって訳だ」

 

 イオリが辺りを見渡してそう言う。

 最初のドアの破壊で少し荒れてしまったが、そこには生活感溢れる女性の部屋があった。

 先生が女性なのもあり、確かにそういう見方も出来るだろう。

 

「"どうしてそう思ったの?"」

「…? だってそうだろ? シャーレの先生なら金持ちだろうし、オフィス暮らしも余裕で出来るだろ。ならそこで暮らすのも不自然な話じゃない。…なんだ、違うのか?」

「いえ! 全部合ってます! お仕事お疲れ様です!」

「お…おう。けど、ブラックマーケットに住むのはやめといた方がいいぞ。ここ最近は特にきな臭いことが多いんだからな」

「"はーい!"」

 

 そうして話が纏まりかけた時、イオリの持っていた通信が起動する。アコからだ。

 

[待ちなさい! なんですかその穴だらけの推理は! どう見ても下手人が、シナリオ通りではないですがこれは便利屋68が先生を置いて逃げ‭─‬ブツ]

「今はそれどころじゃ無いだろっての。「廃棄弾」や「ドッペル」の方が大事(おおごと)なのに……シナリオだかゲームだか…どうしちゃったんだか、アコちゃんは」

「アコ先輩は結構頑張ってると思いますよ。まだver.1.00ではない学習過程に過ぎませんが、この段階で見ればかなりの再現度です」

「チナツまで最近こうだもんなー……はーあ、おっかしいことばっかだ。ここ最近は」

 

 イオリはそう言いながらアコとの通信を切り、他の委員に撤収の指示をする。

 本当に不本意だったのだろう。全員が手際良く、出来るだけ荒らした痕跡を掃除して次々と出ていった。

 最後にイオリが先生の前に来て、その手を握って立ち上がらせる。

 

「じゃあな、急に押しかけて悪かった。……今度ゲヘナに来たら護衛と案内をするから、それで勘弁してくれ」

「"本当? なら、ゲヘナに行ったらよろしくね〜"」

「おう。本当気を付けろよ。連邦生徒会長が居ても、裏のゴミ共が減った訳じゃ無いんだからな」

 

 イオリは念入りにそう言うと、サッサと扉の方に向かう。

 ……出る直前に振り向いた辺り、本当に心配していたようだ。風紀委員になるだけあっていい子である。

 

 ……まあ。

 

 

ドゴォ!!!

 

 

 丁度振り向いた時に扉からふっ飛んできた真っ白なモップ?…にぶつかり、気絶することになったのだが。

 

「"わあ"…ダイナミックな登場だーぁ…」

 

「………」

 

 パラリと瓦礫の欠片が落ちて、それを気にもせずに大きな白いモップ…‭─‬‭─‬もといゲヘナの小さな風紀委員長、空崎ヒナは銃を飛ばされた方へ向けた。

 

「……はぁ、面倒ね」

「ぐはっ!? はっ!? 何が起きたん‭─‬‭─‬」

 

 丁度ケユメ先生を守るように……イオリが居ることに気付き、それを後ろに蹴り飛ばして視線を前に向ける。

 イオリがその衝撃で目覚めた直後……()()は来た。

 

 

「‭─‬‭─いつも通りみんなの給食を作ってたらさぁ…」

 

 

 ヒナが銃弾を放つ。紫色に輝く終幕を与える雨を。

 

 

「ハルナの面したパチモンが給食踏んだ上に食堂爆破しやがってさぁ…」

 

 

 続けてノーリロードで放ち続けられるスキルを起動する。絶えず降り注ぐ雨が煙をより湧き立たせる。未だ姿は見えないが、全て弾かれる音が響いた。

 

 

「その上気ダルい弾丸でこんな姿にさせられるしさぁ……もうさぁ……許せないよねぇ!!」

 

 

 相手が銃を放ちながら腕を薙ぎ払い、土煙が晴れた。

 髪の毛は銃口に、背中から様々な銃を生やし、額から生えた角がねじれて後ろに曲がり……しかし人の姿を多いに保った銃の悪魔が‭─‬‭─‬ゲヘナの給食食堂の(おさ)、フウカが怒りの余り目の座った顔をしながら姿を現した。

 

 

「ドッペルの身体は本物…とかさ、もう関係ないよねぇ─‬‭─‬ヒナちゃんはそこの所どう思う?」

 

 

 パラパラと、もしくはジュウジュウと焼き付く音がフウカの作った弾痕から鳴る。

 当たっちゃうとひどい火傷になってイヤねと、ヒナは怠そうに腹の虫を鳴らしながら紫色の光を銃口に集めた。

 

「‭─‬‭─‬これから給食を食べようとした時に面倒な事に巻き込まれた。それだけよ。こっちはお腹ペコペコなの。早く終わらせなさい。今はラーメンの口なのよ」

 

「‭─‬‭─‬‭─‬‭私の食堂ォォォァァァァアアア!!!!」

 

「はぁ……どれだけ耐えられるか見ものね

 

 どうあれ、これから徹夜3日目のお昼ご飯という時に吹き飛ばされたのだ。

 事情は現場を見ていたから理解してあげるが、それはそれとして苛立ちは隠せない…いや、隠す気も起きない。

 取り敢えず美食研究会は後で〆るとして、その前に暴れ散らかす彼女を窘めてやる必要があった。

 

「委員長! 加勢します!」

「"訳わかんないけど戦闘支援なら任せて〜!"」

 

 そうしていざ開戦という時、後ろに居た2人が其々の武器を手にヒナに加勢する。

 2人の前口上で大体状況を理解したからだ。

 

「…ああ、起きたのね」

「はい! 注意することは!」

「当たると火傷が痛い、回復する、ぽんぽん回復する。それはもう持続的に回復するわ。攻撃は弾かれてるようでちゃんとダメージは通ってるから集中砲火が良いわね。合わせなさい」

「了解!」

 

「"補佐は任せてねー!" プラナちゃん!」

[指揮サポート開始。先生の時率33.3%(主観スピード3倍)時間同期完了(コスト共有化)コスト回復力(ターンプール)を1400に統合、契約(アーク)はなされてない為オートモードで固定されます。見守ってあげてください]

「勿論だよ、私は先生だからね」

 

 ケユメ先生がシッテムの箱を起動させ、プラナによってイオリとヒナの時間が一つとなる。

 相手が何処に居るか、何をしようとしているか意識すれば理解出来る不思議な感覚に、ヒナは少しだけ驚嘆した。

 

「あの人先生だったのね」

「ヒナ先輩豚骨ラーメン食べたいんですか!?」

 

 一方、イオリはこんな状況で頭にラーメンのことしかないヒナの考えに結構驚いていた。

 時間を繋ぐ(1つのパーティになる)ことの利点は端的に意思疎通が出来ること、欠点はこうなることだった。

 

「……悪い? 徹夜してるとこってりしたのを食べたくなるのよ」

「あ、いえ! いつもコーヒーとさっぱりした朝食を食べてるイメージだったので!」

「あれはアコが入れてるから飲んでるのよ。仮にあれが青汁でも私は飲むわ」

「……青汁苦手なんですか?」

「戦闘開始よ、迅速に終わらせましょう」

「はい! 終わったら美味しいラーメン屋を案内します!」

 

「"仲良しだなぁ"…あ、そういえばチナツちゃん達は何処に行ったんだろう?」

 

 そうして始まった銃撃戦は、2対1で戦っているにも関わらず均衡したものだった。

 それも仕方ないだろう。当てた端からカンとフライパンを叩いたような音が鳴っては回復し、逆にこちら側は当たるだけで長く痛む火傷が出来るのだ。

 どうしてもジリ貧になるし、ヒナに至っては三徹目だ。動きもやる気もとっくにキレがない。

 このままではダメだと、自然と2人は先生の居る遮蔽物に避難した。相手は怒りで周りが見えてない以上、向こうから来ることはないのだ。

 

「どうしますか先輩。このままだと押し切られます」

「そうね。瞬間火力ならイオリの方が高いし、私の時間(コスト)の分まで使って連続射撃するのはどうかしら? 丁度有効な攻撃が出来てる(weekを突けるの)訳だし」

「…不甲斐ないですが、地力(レベル)が足りません。先輩が意にも介してない硬さで躓いてます」

「厄介ね、銃なんて滅多に使わないフウカがああまで強くなるなんて」

「恐らくかなり集まった「廃棄弾」ですね。美食がなんでフウカさんに撃ったかは不明ですが、そのせいで手が付けられません」

 

「あのー…"廃棄弾ってなに?"」

 

 作戦会議をしている2人の間に入るように、ケユメ先生がおずおずと手を挙げてそう言った。

 シッテムの箱を起動した後は置物にしかなってないとはいえ、作戦を練るなら頭数は多い方がいい。

 ヒナとしてはゲヘナの面倒事に巻き込んでしまったので頼るつもりは無かったが……こうも手詰まりな以上、大人の経験豊富さに期待して作戦会議に入れることにした。

 

DEVIL DUST(廃棄された悪魔)に聞き覚えは?」

「"ある。けど具体的には知らない"」

「それならちょっとは話は早くなるわね。……一言で言えば嘘から出た真、タチの悪い都市伝説を模倣した武器の密売よ」

「トリニティにはゲヘナが主犯だと思われてるけど、別にそうじゃないのは今の状況から分かるだろ? 仮に万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の仕業でももっと上手く使うだろうしな」

「撃たれた者が強くなる銃弾……なんて聞こえはいいけど、実態は"最終的に武器になる弾"ね。そうなったら死んでるも同然よ」

 

 2人曰く、都市伝説はこんな内容らしい。

 

 ある日寝ても覚めても終わらない大きな争いがあった。

 それが裏組織の抗争か、かつて起きたゲヘナとユスティナの争いか……今となっては定かではないが、どうあれそこには死者と誰もが片付ける気が失せる程の薬莢が転がることとなった。

 そして争いが終わり、死体が埋め立てられ、それでも薬莢の山は足場の邪魔にならないように退けられるだけだった。

 そうして何年もの時間が経った頃……今から数えて3年前のゲヘナの火山噴火で、深淵に居る怪物達が溢れかえった時に、未だ争いの中に取り残された薬莢の山は溶岩によって一つとなった。

 一つとなった薬莢は溢れた怪物の影響で……なんの因果か自我を持つようになった。

 

 自我を得て最初に見たのは‭─‬‭─‬火山口から溢れかえった怪物達。

 

 "まだ争いは終わって無かったのだ"

 

 "それなら、今度こそ終わらせなければならない"

 

 "この争いを"

 

 かつての争いでは、誰もが争いの終わりを願って銃を撃った。

 ならば、その願いを込められて解き放たれた銃弾には平和の願いが込められている筈だ。

 その化身となった薬莢‭─‬‭─‬銃の悪魔は、その身を何千万と解き放って怪物達を退治し、再び火山口へと封じ込めた。

 

 ゲヘナに、再び平和が訪れた。

 

「……これでおしまいよ」

「"えっこれで終わりなの?"」

「ああ終わりだ。商人共の口からは"そんな解き放たれた銃弾がこれ!"…って続くけどな」

「何処がタチが悪いのか。噴火も怪物の氾濫も事実なこと。それらが空から降り注いだ雨で消火され、火山口に逃げたのも本当なこと。けど、銃の悪魔なんてものは影も形も無かったわ」

「実際に体験した奴ならそんなのは居ないって分かるけど、他校は別だ。不謹慎な都市伝説にも信憑性が出て来るって訳だ」

 

 話自体は綺麗だけどねと、ヒナがそう締めくくる。

 3年前の噴火の日、2人はそれを直接見てきたのだろう。

 どこか遠くを見るように遠くを見つめた後、再び先生の方へ向く。

 

「その効果は色々あるわ。撃てば強くなるのは勿論、持ってるだけで銃の威力は上がるし、幾つか集めれば一つにまとまってより強力になって持ち運びし易くなる。銃弾なんて誰でも持ってるから、検閲も難しいわ」

「大体トイチ、10個で一つになる。砕いたり切ったりすれば10個に分割される。フウカさんに撃たれたのは100個を一纏めにした奴だろうな」

「あれくらいになると私くらいの実力まで底上げされるわ。フウカは硬さと回復に能力が偏ってるからまだマシだけど…それでも少なくとも3日間、風紀委員総出で交代で対処する必要があるわね」

「どうだ? 何かいい作戦はあるか?」

 

「うーん…"火山の件も気にはなるけど……集まる…水…怪物…都市伝説…噂?"」

 

 K先生はこんなことが出来そうな集団に思い至った。黒服を着た奴が所属している集団だ。

 ならば直接本人に聞けばいいやり方も教えられるだろう。しかしそれは今すぐに出来る訳じゃない。

 聞き出すまで時間稼ぎして貰うかも悩んだが、先生として学生達の青春は守るべきだ。こんなことに浪費させる訳にもいかないだろう。

 

 ピッ

["早速依頼?"]

「"ヒナちゃん並に強くて暴れてる子が居てさ、壊れたオフィスは連邦の経費で落とすから爆破出来ない? 報酬も弾むからヒナ委員長でも一発でやれるくらいで"」

「…確かに私と同じくらいって言いはしたけど」

[……待ってて。"今相談するから"]

 

 なのでとある珍道団に依頼することにした。

 丁度自分達のオフィスに大量の爆弾を仕込んでいた便利屋68にだ。

 

「ねえ」

 

 オフィスから少し離れたビルの屋上で、電話をしていたカヨコがオフィスの方を見ているアル達に話しかける。

 

「先生から"オフィスの爆破を頼まれたんだけど"、報酬は相当、被害分は向こうが経費で落とすみたい。相手は委員長並みが1人……やる?」

「ええ!? 一体なにがどうしたらそんな依頼することになるのよ!」

「どーするアルちゃん? こんな依頼をするだなんて、向こうも相当ピンチっぽいよ?」

「やりますか?」

「待ちなさい! 5秒くらい!」

 

(爆破したら色々大事なものがでもお金が来週のご飯代みんなの給料壺高かったのにみんなが生活に困らない分のお金は欲しい! これは譲れない! だったら‭─‬‭─‬)

 

「カヨコ!!」

「うん」

「6秒待てと伝えなさい!」

「…分かった」

「だけど!」

 

 ここ最近は依頼がなくて食うにも困っていたのが効いていたのだろう。

 アルはお金を取る選択をした。

 

「‭─‬‭─‬その依頼、ここから私が倒しても同額よね?」

 

「くふふ、アルちゃんカッコいい〜♪」

「素晴らしい判断です! アル様!」

 

「…返事。"もちろん"…だってさ」

 

 同時に、居場所(オフィス)を取る選択も。

 

「じゃ、数えるから。6」

 

 銃にこれまで失敗してきた依頼で回収してきた50の「廃棄弾」を一つに纏めてから装填し、自分の力(EXスキル)を込める。

 

「5」

 

 悪党(アウトロー)は与えられた選択なんて選ばないのだ。

 

「1つ教えてあげるわ」

 

 風、1mの微風。日差しは雲で塞がれ、視界不良もなし。

 

「4」

 

「誰もが廃棄弾を自分に撃ち込んでるけど……」

 

 距離300m、遮蔽物に一棟のビルの硝子窓有り‭─‬‭─‬纏めてぶち破る、問題なし。

 

「3」

 

「これの本質は()()()()()()()()()()()()、それが生身でも、ただの力(スキル)でも関係ない」

 

 必中効果は火力に転換。この程度、自力で当てられる。

 

「2」

 

「そして、この弾丸は使い回しより使い切った方が火力は何倍も強くなる。代わりに一度で普通の銃弾になるけど……まあ、銃弾なんてそんなものでしょ?」

 

 時間にまだ余裕あり。爆破範囲を限定、火力の密度を上げる。

 

「1」

 

「さぁ、華となって散りなさい‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬」

 

 意識を一点に集める。3人が集まった気配と暴れてる気配。対象を補足する。

 

「‭─‬‭」

 

 音が消える。

 

 息を止める。

 

 心臓を静かにする。

 

 ブレを修正する。

 

 

        それら全てを一瞬の内に終わらせる

─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‬‭─‬‭─‬‭─‬‭ ー・

 赤紫色の弾丸が世界を貫いた

 

 

「……返事。"振り込む口座、後で教えといて…だってさ"」

 

 「0」の掛け声から0.068秒後、便利屋はその依頼を一発で達成した。

 

「‭─‬‭─‬任務完了。この報酬は高く付くわよ? 先生」

 

 

 カラン。

 一発の薬莢が寂れたビルの屋上に転がった。

 

 

 ‭─‬‭─‬陸八魔アルが散々に散らかったオフィスを見て悲鳴を上げるまで、後8分。

 

 






 バグNo.15
 沖縄のじっちゃんに習ったのさ
 車の物理演算が荒ぶってすごく遠くに吹っ飛ぶバグ。別名ぶっ飛びタクシー。
 爆発の勢いで車に当たる→中にある燃料が引火したことになってそのエネルギーが吹き飛びの勢いに加算される→すっごく飛ぶ。
 AIが作った車の動作簡易化プログラムの影響であり、この後運営の手により修正された。

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