【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
ある日天秤で二つの世界を量って、自分達の世界が軽いものだと知った(リオ書き文字)
「遂に要塞都市エリドゥが完成した…いよいよ計画が最終段階に入るのね」
感慨深いと思いながら、あらゆる人類の観測手段から隔離された荒野にひとりごちる。
「全てから隠蔽する為にミレニアムの予算を横領し、無人機と計画の果てに建設した──名も無き神々の女王を破壊する為の都市……ここに辿り着く為の努力がついさっきのように思い出せる…」
長い黒髪のストレートに赤い目をした、真っ黒なスーツをした女子高生──
いったい何処にそんな都市があるのかと、第三者が見れば感じたことだろうが……その下に眠る都市が目覚めたその時に理解するだろう。
かの都市はここに有り──と。
「だけど懸念は尽きないわ。2年前、アビドスの砂漠其の物を由来とした「幸福の砂」…1年前から特異存在の発生が確認出来る百鬼夜行…つい最近ゲヘナを中心に出回り始めた「廃棄弾」……私が一つの問題の対策を練る間にも、この世界には滅亡の種が増えつつある……」
思考をまとめる為でもあるのだろう。或いは己の決心を固める為の儀式か。
ツラツラと対処すべき案件を並び立て、その全てに手を伸ばさない実力の無さに拳を握る。
誰にも理解されなくても、すべきと思ったことをやる。
この世界では彼女の信念は余りにもちっぽけなのだと、うだつが下がる思いだ。
「……ガワだけとは言え、「女王」に対抗するエリドゥが完成した以上、ここから私が取れる行動は2つ。事前に計画した通り「エリドゥ」と「アビ・エシュフ」を完成させるか、他の特異現象の調査と対策に尽力するか」
あらゆる科学技術の贄を粋を集めた、対特異存在決戦兵器──「アビ・エシュフ」
彼女の部下である
高度な演算能力による解析能力と回避能力、その他あらゆる攻撃手段を使って的確かつ短期間で対処することにより被害を最小限を留めることを目的とした、「女王」の対抗策として設計した兵器。
「……悩み所だけど、幸い「エリドゥ」も「アビ・エシュフ」も偶然発掘した「廃墟」の遺産を流用して大幅に性能が向上した。本来の搭載する予定だった都市と接続させる事による演算機構は依然不完全だけど……アレらは
そうして彼女が選んだのは他の特異存在の調査と対処だ。
結局一つを完璧に防いだ所で、他によってキヴォトスが滅びては本末転倒。
そこで彼女は
「時間停止装置…現実を認識で上書きするフィルター…その他数々の実験記録…「Q・UZ」には感謝しなければならないわね。お陰で、こうして他の特異存在の対策に乗り出せるのだから」
それら全ての遺産に刻まれたイニシャルの存在に感謝する。
どれほど昔の…人なのか集団なのかも分からない相手ではあるが、その遺産によってリオの手札は倍以上になった。ともすれば、その設計理念を組み込み再現したこの都市が「Q・UZ」の生きた時代の物になっているかも知れない程に。
転移、空間拡張、完全循環システム、何を想定しているかは不明であるものの、それらの侵入を遮断する常時展開式バリアシステム、核融合、水を超えた発電用物質、ナノマシン、思考解読システム……最初の計画から変容してはいるものの、この遺産の発見が無ければ3月時点で完成させるのは不可能だっただろう。
「──“遥か未来の、守護者を志す者に捧ぐ”……ええ、その理念、確かに私が継いだわ」
しかし、ただ有用だからと活用する程彼女の無警戒な訳ではない。
それでも活用するに至ったのは、その資料に添えられたたった一文。
まるで自分自身に向けて書かれたようなその一文に共感したからこそ、彼女はそうするに踏み込んだのだ。
そうして彼女は最も直接的な被害が確認されている百鬼夜行に赴き───2つの世界と、1つの怪奇と、0に至る末路を観測する事になる。
連邦生徒会長が歩いた、巻き戻されて無かった事になった世界の出来事だった。
そんな最後に見たのは確率変数を弄ぶ怪物と、苦虫を噛んだような顔でそれを追撃する神々の女王と、それら全てに敗北した連邦生徒会長が
それから──電子的なベールの向こう側、宇宙に広がる極限に至った人類と、小くも美しい、宝石のような世界。
連邦生徒会長が被害を無かった事に出来るキヴォトスよりも守るべきだと思わせられる、そんな世界。
思わずその世界に手を伸ばして──宇宙に触れる事は叶わず、世界が全て巻き戻った。
「──これが私の体験し、引き継いだ記憶…これで話せる範囲で話したわ。
喋って乾いた喉を潤す為にコーヒーを飲む。
トキが入れた物よりも苦く冷めてしまっているが、今はヒマリとの秘密会議なので仕方ない。
自分で入れた物だし、何より今はコチラの方が心情に合うだろう。
飲まないのは合理的ではないと、まったりと飲み込む。
「
「ええ、貴女が信じられるだけの資料は既に提供しているわ」
端的にそう言うと、まるで心底ダメな奴を見たような顔でヒマリがため息を吐く。
「はぁ……なんとも…やるせませんね。
「可能性としてあり得る範囲よ。私も貴女も、どちらの作戦も失敗している……いえ、
「だからあなたはドブカスの排水口女なのですよ、リオ」
そうヒマリは言うが……しかしながら仕方ないことではないだろうか。
2月前まで巻き戻った世界で、有限である時間の中で改めて出現していた特異存在を調べ、出した結論なのだから。
「資料を見ての通り、今は非常に奇跡的なバランスよ。この均衡を崩し殲滅する為には
「
案の定こうなった。話すと決めていたときから分かっていたことだから驚きもない。
それでも話したのは、彼女の天才性をそれだけ買っているからに過ぎない。私は、私以外による解答を否定するつもりも、意識的に邪魔するつもりもないのだ。
「そう、それなら後はそっちで頑張りなさい。私は連邦生徒会長の「巻き戻し」から逃れる方法……主に記憶の引き継ぎの研究を行うわ」
「この……! それだからあなたはゲロカス汚物なのですよ!」
「何とでも言いなさい。私はこの奇跡を再現し、確実に勝利するまで積み上げる。貴女はこの周回で全てを解決する。どちらが悪いという話ではない以上、これ以上の話し合いは不要よ」
ヒマリの選択は、確かに成功すれば何もかも解決する選択だ。
しかしそれが意味することは、「女王」も「確率者」も「廃棄された悪魔」も「麻薬の砂」も「別世界の痕跡」も……全て一回きりで倒さなければならない茨の道だ。
否定するつもりはない。彼女なら或いは出来るかも知れないだろう。
しかしそれが極々低確率である事も、打倒する特異存在にはその確率をイタズラに弄る相手がいる事も事実だ。
それを念頭に置いて合理的に考えれば、巻き戻しで知識と技術を高める方が結果的に最小限の犠牲になる。単純な話だろう。
「これだけは言っておくわ。連邦生徒会長に記憶があると伝えるのも、周回を認知していると伝えてはダメよ」
「……それはまた、どうして?」
「彼女は既にそういう生徒と何度も遭遇し、その全てが一度きりの関係で終わっている。前回の周回で、彼女に付き添って居た生徒から注意されたわ。“これ以上あの子に責任を持たせないであげて”…と」
「……ああ、なるほど。一度は覚えていたのに忘れられるのは、確かに相当キツいでしょうね」
「なによりあのシステムで記憶を引き継げるのは1人だけ。システムの解析も……キヴォトス中の行政も担っている関係上、行うのは難しいでしょうね」
理想的なのはシッテムの箱を解析し、時間に関するシステムを再現出来ることだろう。
問題としては様々な点……政治、システムのブラックボックス化、女王が覚醒するまでの残り1ヶ月間で解析が間に合うか……とてもではないが、現実的ではない。
それよりも、既に実用化も出来ている「Q・UZ」の遺産から手段を模索する方が現実的だ。
「最後に、質問はあるかしら?」
「…そう言えば、最近「シャーレの先生」が来たみたいですよ?」
「……連邦生徒会長が招いた人なのは知ってるけど、それがどうかしたの?」
「ちょっとした確認です──前回に先生は居ましたか?」
一瞬思い返すが、すぐに居ないという結論に達した。
時間を繰り返している連邦生徒会長が起こした変化である以上、何かしらの対策なのは間違いないだろうが……それがどうかしたのだろうか。
「
「ええ♪ 今ので活路は見えました」
そうしてヒマリとの……今周で最後になるだろう会議は終了し、その場はお開きとなった。
既にエリドゥには時間と記憶に関与する専門的な研究施設を増築したし、失踪する準備も終えている。
後はもう自分の理解力と分析能力、開発力との勝負だ。
どれだけ迅速に手段を確立し、複数枚用意出来るかに掛かっている。
生存に関する時間を最小限に抑え、あらゆるリソースを研究と「Q・UZ」の遺産の探索に割り当てるのだ。
なにせ今からやろうとしている事は、古代に存在した超技術を糧に昇華する──先人の歴史を乗り越える行為だ。
並大抵のことではないと理解している。それでもやらなければならない以上、私は全力を尽くして時間を乗り越えよう。
そう、意気込んでいた訳だが……。
「……座標、不明。周辺の構造物、不明。データが一部破損しています……データの復旧が出来ません。当機の情報を入力してください」
「…一先ず、私が一年だった時の服をあげるからそれを着なさい」
青く光る眼球型のカメラに、人と見間違うほどの生物的な膜、床に垂れて引き摺る程長い黒髪、何も知らなそうな、無垢な顔……。
この状況をなんと表現すべきだろうか。
かつて破壊するつもりで建造した都市に、今となっては壊れると困る相手となった存在が居るだなんて。
「よし、少しぶかぶかだけど着れてるわね。裾合わせは後でやりましょう」
「……なぜ当機はここに居るのでしょうか?」
「…貴女が保管されている場所に私の探査機が侵入して回収して来た。そして私が戦利品を確認しに来た時に、丁度貴女が起動したわ」
「入力完了。つまり、あなたが当機の所有者なのでしょうか?」
「……そう、なるのかしら? いえ、違うわね。貴女は誰かの物となるような存在ではない。ごめんなさい、私は貴女のマスターに成れないわ」
「では、あなたは誰ですか? 当機の製造目的は何なのでしょうか?」
「そうね…」
そう、無垢な機械は──神々の女王は問いかける。
長い年月を眠っていたからか完全には目覚めず、不完全なままに己と世界を知ろうとする。
ならば……私がやるべき事は来たるその日に向けて彼女に教えを与え、保護する事だろう。
今のままではあの確率を弄る怪物に勝てず、しかし早期に覚醒させてしまえば女王として世界を滅ぼすだろう。
慎重に答えなければならず──合理的に正しい答えなんて、何処にも見えやしない問いだった。
「──私は「ビッグシスター」、そして貴女の目的は…私達の世界を守る…事になるのかしら?」
だからこの答えが正しかったのか、私には分からない。
人との関係性をわざわざ定義するような非合理的なことは今までした事が無かったからだ。
「──つまり、あなたは当機にとっての「
「…え、姉?」
「入力完了しました。これからよろしくお願いしますね、お姉ちゃん」
「──取り消し…不可…なの?」
「…? 何か間違っていることがありましたか?」
「……………間違って…は……居ない…わ」
きっと今の私は、最後の会議のヒマリのように苦虫を噛んだ顔をしていることだろう。
否定した所で事実を教える訳にも行かず、それならばこの誤入力は寧ろ都合が良い筈だ。
合理的な筈なのにそれでも抵抗感があるのは……今後彼女の姉として振る舞えるかの自信が全くないからか。
正直もう既に限界だった。ミレニアムに置いていったトキに立場を変わって欲しいとさえ思った。
「そうなると…当機の製造目的はコミュニケーション用の人型アンドロイドですね」
「ええと…そうなる…わね?」
「つまり当機には愛称となる名前が必要となりますね」
「……そうね?」
「はい」
「………まさか、私が付ける流れなのかしら?」
「……? 付けないのですか?」
なぜそこで悲しそうな顔をしているのだろうか。
やめて欲しい。私はヒマリに「2度と美術センスがあるなんて思い上がらないでください。破滅型妄言製造カス子が」と言われる程度には独創的で理解のされにくいタイプの芸術性の持ち主だ。
到底人の名前を名付けるには不適切だから勘弁して欲しかった。
誰か助けて(無断セミナー失踪者書き文字)
「……A…バンリァ…S…パー……」
「アリスですね。認証完了しました」
「あ…いや…ええ、それが良いわ」
アバンリトル・スーパーギャルド・ZYOOOUよりは人の名前なので承諾する。
……やはりアリスよりアバンギャルド・スーパーリトルボーイ・GODブラザーズの方が良かったかも知れない。セカンドミッションを付けるのもアリだった気がして来た。
しかし決まった以上これ以上考えることでも無いだろう。合理的に考えて、彼女の…アリスをこれからどうするか決めなければ。
研究する以上ずっと構っている訳にも行かない。どうにか自然に1人にする方法は……そういえば、「Q・UZ」の遺産にはアレがあったか。
「そうね……一先ずゲームをしてみましょう」
「げーむ…?」
「ええ、ひとりでもみんなでも遊べる上に、擬似的な体験をするなら打ってつけよ。データが破損しているのでしょう? それなら合理的に考えて、ゲームが一番楽しく再学習出来ると結論付けたわ」
「げーむ……」
「分からない時は手を動かした方が早い事もあるわよ。着いて来なさい、絶対に楽しいでしょうから」
「G.Bible」
「Q・UZ」の遺産の中でもゲームや娯楽に関係したデータや機器の総称だ。偶然だろうがケイが入っている媒体と同名の遺産である。
遺産の中では重要度も低い為倉庫に放り込んでいたが、まさかこんな風に役に立つとは露にも思っていなかった。
実際にプレイした事は無いが、今までの遺産の傾向から確実に楽しい物だろう。
……後はお菓子とジュースがあればより良いだろうか。ここはトキ用に買い溜めしていた物から拝借するとしよう。どうせ来ないようにしたのだから有効活用だ。
思えば最近休んで居なかったし……これも良い機会だろう。今日はとことん休む事にした。
「わあ…それはなんですか?」
「お菓子とジュースよ。重油ナパーム味の冷凍チキンもあるわ。ゲームをするなら最高に不健康で楽しい環境にするのが合理的なのよ。何が好みか分からないからジュースもオレンジからザクロ味までより取りみどり持って来たわ」
「わあ………」
さて、アリスがお菓子とジュースを突っついている間に始めにやるゲームを決めるべきだろう。
なんとご丁寧に「G.Bible」は多数のラベル分けがされており、各ジャンルのタグを始めに初心者向けのタグもあるのだ。
後は説明文を読み飛ばして良い感じのものをサクッと決める。
自分もゲームには詳しくないのだからここは勘だ。
「ひぃ…口に未知のシグナル信号が…!」
「グレープフルーツ味のジュースね。酸っぱさと甘み、独特の苦味があるジュースよ。イヤだったかしら?」
「いえ…もっと飲みたいです!」
「それの感覚を人は美味しいと呼ぶわ。気に入ったのなら幸いだけど、もっと色々試してから飲んでも遅くは無いわ。それと、始めにやるゲームはコレよ」
それは良かったと、口角を少しだけ上げて笑う。
そして私は「テイルズ・サガ・クロニクル(最終調整クリア版)」を渡した。
最終と付いているなら一番良いという判断である。協力プレイも可能なのも決め手だった。
「………!?」
「………いやちょっと待って頂戴????」
その後、2人で協力してクリアするのに丸1日かけたのは完全な余談だろう。
理不尽なのに無駄にボリュームが有り、後半に至っては前半とは全く別のゲームと化していたのはどういう事だろうか。
何故ノベル風選択RPGが最後だけリアルタイムアクションバトルに? 疑問は尽きないが、どうあれ2人なら笑ってやれる範疇のゲームでは有った。
ストーリーは複雑怪奇で訳が分からない物だし、褒められる点よりツッコミを入れたい所が多過ぎたが……楽しかったから良いだろう。
「理解しました……アリスは勇者だったんですね!」
「どうしてそうなったの…?」
「最初にお姉ちゃんは言いました…アリスは世界を守る為に作られたと」
「…言ったわね」
「つまりアリスは勇者です!」
「ん〜〜〜!」
アリスも性格が変わるくらいには楽しんで……いやこれは楽しんだのだろうか。
冷静に考えてゲームで性格が変わるなんてあるのだろうか。
口が梅干しを食べたようにすぼんでるのが分かる。人は迷うと梅干し顔になると初めて知った。
取り敢えず女王として目覚めさせないようにするのは上手くいきそうで安心である。まあ、あんまり上手く行き過ぎても後々困る事になるのだが。
「アリスは…この後どうしたいのかしら?」
「勇者として冒険に……行く前に、先ずは他のゲームをやってみたいです。アリスはまだ勇者のレベルが低いままなので、レベルを上げなければいけません」
「そう、なら手伝いは?」
「む…! 大丈夫です! アリスはザコザコお姉ちゃんが居なくても1人でもクリアできます!」
「……分かった。だったら私はあっちで研究に戻るから、何か有ったら言いなさい」
そうして、私とアリスによる7日間の奇妙な共同生活が始まることとなった。
その間にゲーム開発部、Cleaning & Clearing部、ヴェリタス、ヒマリと私の古巣、セミナー、先生等々との騒動を始めに本当に色々な事が起きたのだが……いえ、この場合結論から言うべきでしょうね。
「うわーん! 助けてくださいお姉ちゃん! 戦闘に勝ったのにこのキャラが死んじゃうんです!」
「アリス、それは負けイベ…絶対にそうなるという因果の収束よ」
「アリスはそんなのイヤです! 何とかなりませんか?」
「少し待ちなさい。このくらいならイベントを制作して差し込めば……はい、これでずっと一緒に冒険出来るわよ」
「わーい! お姉ちゃん大好きです!」
これは「名も無き神々の女王」が居なくなるまでの、私達の7日間戦争の報告書である。
バグNo.17
不思議な女王の為のセプテット
アリスが確定で魔王になるバグ。原因は不明。
当時の>>1も調べる余裕がなく、いつの間にか解決していた。
怖いね(プログラマー書き文字)。
偶然にも魔王と超人のコンボが怪奇に対する特効だったが、それがなければ一番害悪なバグとして名を残していただろう。