【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】   作:何処にでもある

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凸〖百鬼夜行〗・・・◇→・◇→・・▷▷▷・▷・・・・凸〖エリドゥ〗


 ゲームみたいな状況ってよく言うけど、大体のものって誰かがゲームにしてるから、あんまり良い例え方じゃないと思うんだよね(モモイ書き文字)




【ブルアカ】ノットタワー ノットディフェンス【モモイ視点】

 

 

「はぁ! ほっ! よっ! あわわ……うわあ待って待って!」

「待ったはなしです!」

 

<‭─‬‭─‬秘剣 燕返し!>

<うわああ うわぁぁ うわぁ…‭─‬‭>

 

 

GAME OVER

 

 

「あー! また負けたー! うー、アリスが強すぎるよ〜…」

「はい! アリスは勇者なので、ザコモモイに負けるなんてあり得ません!」

「くっ…! こましゃくれりなぁぁ…!」

「…お姉ちゃん、アリスは生意気だけど子供っぽいから使い方間違ってるよ」

「くそぉ! 昨日やったゲームで覚えた言葉だからか間違ってるってバレてるしぃ〜!」

「何を言ってもアリスの勝ちはゆるぎません! モモイはザコです! 追加のお菓子を持ってこーい!」

「メスガキめぇ〜…ううっあっしは負け犬でございまするぅ…」

 

 仮に今、何でも願いが叶うとしよう。

 私はきっとアリスを負かして、お菓子を代わりに取って来させて、完全抽選販売のハードの当選を願うだろう。

 アリスの部屋から出て、近くにある倉庫に向かう為に足を伸ばした。

 そうしてしばらく歩いて、誰も聞こえなくなった辺りでひとりごちる。

 

「はぁ…アリスは強いなぁもう…私ばっか罰ゲームを受けるし…というか、ミドリのあれ私を生贄にしてたじゃん! 絶対そう! くっそー自分が負けたくないからってぇ!」

 

 ずんがずんがと少しだけ乱暴に歩く。

 無機質で誰もいない通路を、ちょっとだけ不気味に思いながら。

 

 こんな時、ゲームであればこれまでの経緯が回想として流れるだろう。

 それに則って振り返るならば、こうなった全ての原因は廃部を言い渡したセミナー所属のユウカに起因する。

 ‭─‬‭─‬もちろん言いがかりである。

 

 実際ユウカは自分の仕事をしただけだ。

 実績と人数不足だから廃部と言い渡‭─‬‭─‬そうとして、部長会議を欠席し続けた我らがゲーム開発部部長のユズのロッキー(ロッカーのヒッキーしてるの略)状態により直接出向いて宣言し、本来ユズが受けるべき我々の顰蹙を一身に浴びただけである。

 ユズ、見損なったよ!

 

 しかし幾ら妖怪オオフトモモに文句を言っても状況が好転しないのは事実。

 そこで私は一計を講じた。‭─‬‭─‬シャーレの先生に頼ればいいじゃん…と。

 元来、世の中偉い人の言葉が絶対という真理がある。であれば連邦生徒会と同等の権力という理不尽でぶん殴れば撤廃は無くなるという算段だ。

 もちろん上手く行かなかった。ユズ、どうしてこんな提案をしたのだー!(責任転換)

 

 だが、タダでは起きないのが我々ゲーム開発部の美点にして欠点。

 なんか大量にやって来た先生を引き連れて「廃墟」の「G・bible」を追い求める事にしたのだ。

 こうなったら近々開催されるゲームの賞で優勝する為のソフトを、最強の参考書と共に作る他ないという計画である。

 

 ‭─‬‭─‬コーラアイスよりも甘かった!

 

 コーラアイスは舐めると美味しいが、ミドリやユズと分けて食べるとより美味しい。

 しかし「廃墟」は甘くなかったし、分け与える必要もない大量の苦労が押し寄せた。

 そこは逆であれよ。そう思っても現実は無常である。数えるのも億劫な妖怪大根足とゲッソー、パンドラピンクと愉快なミレニアム生徒達のニセモノが大挙してきたのだ。

 

 ああ負けイベかぁと寝言を言っても夢になってくれない。ミドリのツッコミも入ったので、仕方なく現実と受け止めて逃げる事にした。途中ユズが「G・bible」を拾いつつである。

 ユズ、その手癖の悪さどこで覚えて来たの! さすが私達の部長だよくやった! 100万年無税!

 

 ところが無税になった所で、焼畑されたら収穫も出来ないのである。

 逃げれば官軍、捕まれば国賊とくれば逃げるが勝ちの負け戦だ。

 矛盾しているように見えるが、世の中の偉い人はそういう屁理屈を練るのが上手いから偉いのである。なので私は偉いと言うわけ、おかわり?

 さて、お代わりなく元気にご飯三杯おかわりする為にも、追手には追いかけても意味がないとお分かりになって貰うしかない。

 

 という訳で説得する案を出した所、なんと先生達が役目を買ってくれることとなった。

 さすが先生だ生徒を守る為に何でもする。でも銃弾一発で死ぬ儚い先生が1人で交渉に行くなんて、そんなの墓なしのご遺体になるだけの自殺行為である。

 しかし悲しいかな。それを言ってしまえば我々も同様である。

 相手は容赦ない怪物だったのでそういう所は平等だった。すげえや何も嬉しくない。

 となると大人の役目なんてこまっしゃくれたことで論破されて我々は置いていくしかならないのである。

 ああ、先生。貴方達の犠牲を忘れない…!割と本気でそう思いつつ、駆け出してから名残惜しさに振り向くと…あら不思議。

 

 囮の先生達引きつけた後転移して逃げてやんの。

 

 いやそれで逃げようよ。こうして走る意味ないじゃん。

 そう聞けばアレは先生しか出来ないのだとか。そんな1人用のポッドじゃないんだから…。

 先に言ってよと言えばいいのか、怪我をするかも知れないのに勇気があるねと言えばいいのか。

 悩むのもバカらしいので折衷案として言葉足らずの野蛮人と罵倒しつつ、オヤジ達を投げ道具にして切り抜けた訳である。

 

 まあ、その結果ラスボスのお城みたいなココに侵入する事になるとは思いもしなかったけど。

 

 はて、私達はいつからRPGをしていたのだろうか。

 先生に聞いても始めからと言われればその通り。思えばユウカに言われた時からそれっぽかったと今更気付いたものだ。

 そうして地下都市を探索し、ショトカを貫通させつつもラスボスが居そうな所に行ってみた訳だ。

 

 ─‬‭─‬囚われのお姫様まで居るとは思ってもみなかった。

 

 本気で驚くと人って冷静になるんだなーって頭の片隅に置きつつ、放っておくのはゲーマーの恥。

 突撃隣んちのお姫様。アリスとゲームをして、仲良くなって、気が付けば快適過ぎて一泊して。

 

「‭─‬‭─‬いや廃部の危機!!

 

 セルフ回想で本来の目的を思い出し、倉庫から取って来たポテチの袋を地面に叩きつけたのがたった今である。

 

「部員と実績が! 必要なのに! 遊んでたらダメでしょーがー!」

 

 海老反り超えてブリッジをして叫ぶ。

 完全に迂闊であった。普段からボケ側の存在であると自負しているが、コレばっかりはツッコミに回らざる負えない。

 

「あわわ、ゲームを作らなきゃ! 部員はアリスを入れれば良いとして、コレばっかりは今すぐやらないと!」

 

 叩きつけたお菓子を回収しつつの発言である。

 情けないが手段は選んでいられない。瀕死のネズミは猫も噛めるのだ。この際立場とかそういうのは置いておく。リオ会長の妹ならミレニアム所属でしょ。

 なんだかネコミミヘッドフォンをしてる私の方が噛まれそうだが、そこは気にしない方向で進めよう。

 

「……に……すれ……」

 

「ん?」

 

 そんな訳であわあわと駆け足で走っていた所、通り過ぎようとした部屋からリオ会長の喋り声が聞こえて来た。

 理由は分からないが、ここ謎の地下都市は迷子になった私達とアリスリオしかいない。

 なんだかふくざつーな事情があるのは察しているから聞いたりはしないけど、昨日みたいなスライムみたいなのと戦っていた所を見るに何かあるのは間違いない。

 

「リオかいちょー! なにしてるの?」

「モモイ?…どうしてここに」

「いやー、見ての通りお菓子を取りに来たら聞こえちゃってさ? どうしたの? 困ってるなら一泊一飯のご恩で一働きしやすが」

「どうして三下口調?……いや、ここにいるなら関係者か。いいわ、説明しましょう」

「やりぃ!」

 

 好奇心は猫に痛い目に合わせると言うが、この場合の猫は私である。

 なんてことだ、ネズミと好奇心でボロボロになってしまった。

 なので一旦忘れることで解決した。ポジティブに行こう!

 

「コレを見てちょうだい」

「おぉ、映画でしか見たことない大画面!……なにこれ?」

「確かに大きいけど…流石に大げさね。エリドゥ、この都市に現れた特異存在よ。5分前に突如として一斉に現れたわ」

 

 其処に映っていたのは多種多様なモンスター。

 黒い霧みたいなの、宙を浮かぶ古い傘やお面、地下なのに降っている雨、こっち見てるやつ、人魂みたいなの……和風のホラーアクションゲームという題材でパッとお出しされたエネミーといった風貌の者共が、エリドゥの兵士達と争っている光景が映っていた。

 

「見ての通り敵対勢力よ。既に言葉が通じないのは確認済み。今は各地の戦力と拮抗しているけれど、相手の継戦能力が不明な以上このままではコチラがやられるわね」

「ええ!? 機械兵ってあのヤケに強い奴じゃん! それでも勝てないの!?」

「……諸事情でこの都市は機械相手には強くても、生き物にはそんなに強く出れる訳ではない。あの手合いなら尚更ね」

「うーん…メタ装備だからそれ以外には微妙ってことかぁ……」

 

 そういうことらしい。

 

「むむむ……」

 

 さて、どうしようか。ゲームは作りたい。

 しかし危険が迫ってる中集中出来るほど私は豪胆ではない。

 何よりここまで聞いておいて見過ごすとかゲーマーの矜持に反する。

 見え見えのバッドエンドフラグなんて折ってなんぼ。ゲームのシナリオ担当としては是非ともバッドエンドも見てもらいたい所だが、現実ではハッピーで埋め尽したい派だ。

 

「‭─‬‭─‬分かった! つまり手伝えばリオも私も良い感じになるってことか!」

「……別に頼みたいから説明した訳じゃ」

「シャラーップ! 自分に有利な好意は素直に受け取るべしっだよ!」

「そ…そういうものなのかしら? それに、とても強くは見えないけれど…」

「ふふふ…ふははは! 心配ご無用! ゲーマーにゲームみたいな相手をぶつけたらどうなるか、とことん教えてみせようではないか〜!」

「…さっきから時代劇風なのはなに?」

「ついさっきまで侍道で対戦してたから! 終わったらリオも一緒にやろ!」

「そこまで言うなら……貢献次第。やらなきゃいけないことがあるから、どれだけ早く終わったかで決めさせて貰うわ。…それから、その間ユズはコチラにちょうだい」

「おっけー!」

 

 そんな訳でクエスト発生である。

 

「パンパカパーン! モモイは「エリドゥを防衛せよ!」を受注しました! パーティに入れる仲間を選びますか? オススメはアリスです!」

「もっちろん! 私・ミドリ・アリスとユズの2パーティで!」

「わ…私ソロなの!?」

「なんかリオがユズに聞きたいことがあるんだって! つまり…特別任務って奴!」

「ほ…それならいいかな…」

「……いや、私は行かないからね」

 

 事後承諾の難点は10割でミドリが反対すること。

 バック何ちゃら交渉で流せるユズとは違い、我が妹は予想通り「いのちだいじに」な意見を出した。

 

「ミドリぃ…! そこをなんとか〜!」

「いやいやいや…モンスターってあれでしょ? 昨日追いかけて来たやつの同類ってことだよね?」

「うん。でも手伝わないとここが陥落しちゃうかもだしさぁ! ほっとけなくてぇ!」

「私達ゲーム開発部! ゴーストバスターでも対魔(しのび)でもないんだよ!? お姉ちゃんが死ん……ヘイローが割れちゃうかもじゃん!」

 

 その一言で場の空気が一気に悪くなる。具体的にはユズがミドリ側になった。

 アリスは依然として冒険をワクワクしているので問題なさそうだが……このまま押し切るのは難しくなった。…どうしよう? 取り敢えず言うだけ言ってみることにした。

 

「私もミドリが死んじゃうのはいやだよ」

「だったら‭─‬‭─‬!」

「だけどミドリ。このままここでゲームを作っててさ、いざリオがダメだったらどうするの?」

「それは…逃げ」

「逃れるかな? ここ、私達が先生達と迷子になった末に来た場所だよ? 土地勘無いし、地下にあるから逃げ道も限られるよね」

「うっ…!」

「dbdや第五人格はミドリもやったことあるよね。非対称対戦ゲーム。アレで唯一の逃げ道を陣取られたらさ、上手くやらないと誰か1人……最悪仲間を助けようとして全員やられてたじゃん。仮に現実で同じ状況になったら、ミドリは助けに行かないの…できる?」

「うっ…その質問はズルだよ、お姉ちゃん…絶対無理」

「うん、私もムリ。‭─‬‭─‬だから、有利な内に攻撃するんだよ」

 

 いわゆるリスクヘッジという奴だ。

 最悪を回避する為に戦って相手を理解して、いざ逃げる時に備える。

 リオを助けたい。それは本当だけど、サポートがある内に実体験するのはゲームでも必ずあることだ。私はそれをゲームから学んだ。

 いわゆる‭─‬‭─‬チュートリアルという奴である。

 

「ムリには言わないよ。ミドリが怖いならそうすればいい。でも‭─‬‭─‬その恐怖は予防注射を怖がる子供と同じものだってのは忘れないで欲しいかな」

「……うがぁ! 分かった分かりました! 私も手伝えばいいんでしょ! 予防注射くらいへっちゃらですよーだ!」

「やったー! お姉ちゃん、ミドリなら分かってくれるって信じてたよー!」

「…! アリス知ってます! 昼行灯なキャラのムーブです!」

「いや、お姉ちゃんは天然と合理的な所が交互に来るだけのバカだからそれは無いよ。アリスちゃん」

 

 なんとか言ったらなんとかなった。ともあれ良い感じに思い通りに進んだのはラッキーである。

 これはやらなきゃいけない気もしてたし、こうなってくれて本当に良かった。

 

 

 もうミドリ達が死ぬのは見たくないからね。

 

 

 …………¿………?………¿………?

 

「‭─‬‭─‬ゃん! 何ぼーっとしてるの! そろそろ合流するよ!」

「…はっ! ごめん、ちょっときんちょーしてたかも!」

「もう…自分で言った事なんだからちゃんとして」

「ごめーん…」

「大丈夫です! 何があっても勇者であるアリスが守ります!」

 

 気が付いたらミドリとアリスと一緒にエリドゥの裏路地を歩いていた。

 いけないいけない…思考に引っ掛かったものを思い出そうとしてたら、いつの間にかこんな所まで進んでいたようだ。

 なんであれ次の一瞬から戦闘開始、躓き転がった思考を追いやって目の前に集中する。

 

「最後に確認。最初の相手は黒い霧みたいなの。中に入ると黒い手に掴まれてどこかに引きずられる。行き先は不明だから絶対中に入らない。いい?」

「だいじょーぶ! ちゃんと覚えてるって!」

「問題ありません。バトルを開始します」

 

 そうしてミドリの再確認を最後に‭─‬‭─‬私達は相手が居る大通りに飛び出した。

 戦場を見る。エリドゥの兵士6体が霧を囲んで銃を撃ち込んでいるものの…効いた様子はない。

 つまり普通に攻撃してもダメということだ。

 

「お姉ちゃん!」

「‭廃部もミドリに怒られたのも、それもこれも─‬‭─‬アナタ達のせいだよ!

 

 だったら、気合いを入れて一斉射撃だ。

 ミドリがいるからより一層力を入れて、熱を込めて放つ。

 物理無効には魔法、魔法無効なら物理。どちらもムリなら状態異常。RPGの基本だ。

 しかし…当てた感じに違和感を覚える。効果が無い訳では無い。実際霧は大いにその規模を縮小させた

 

「んん?…当たった感触はあるけど…70体が一度に当たった感じが…」

 

 当たり判定が部位で別れてるエネミーみたいだ。

 所感としてはそんな感じだが、それにしたって余りにも()()()()()()

 まるで罠みたいな‭─‬‭─‬。

 

『‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬』

 

「! 来るよ、お姉ちゃん!」

「アリスが行きます!」

 

 思考で足を止めたのはミスだった。

 黒い霧が突如として小さな球体に圧縮されたかと思えば……私が撃った銃弾をあちこちから生やし始めて‭─‬‭─‬モコモコと無数の真っ黒な銃弾と機械兵が競り上がり巨大化した。

 

「あ、カウンター型…」

 

 

 銃声。一斉射撃。及び囚われた兵士の射出。当たり判定と同数の、70倍となった火薬と鉛と鉄の壁が、押し寄せる。

 

 

バランス崩壊!

 

 それを打ち消すように放たれたのは、アリスの持つエリドゥの有線蓄電式エネルギー砲。

 この都市を守るために作られたそれは、圧倒的な熱量を以ってして私から質量の暴力を薙ぎ払って取り除いてくれた。

 

「ありがとう! 死ぬかと思ったぁ…!」

「溜めて溜めて一気に解き放つタイプ!? いやでも機械兵を取り込むなんてアリなの!?」

「うわーん! 攻撃と見做される範囲がデカすぎます! 一体どうすれば…!」

 

 ただ分かったからといって攻略が進むものでもない。

 分かったなら対策と確認をするフェーズに突入する。

 最初に映像で見た時よりもずっと小さくなってるとはいえ、またカウンターされたら今度こそ一溜りもない。

 カウンターが任意ではなく一定以上取り込んだ場合であるならこのまま攻めれば終わるが、逆なら辛い戦いになるのは間違いない。ダメージに反応とかもキツいだろうし。

 というか70倍ってなに!? 攻撃当てた感触があったから倍率が分かったけど、そうじゃないと100倍に感じるんだけど!

 

「それなら、ノックして検証すべし! ミドリ、一発だけぶちかまし!」

 

 銃に装填しバックステップで距離を取る。私の銃でまともに当てようとすると近づく必要がある。

 それではカウンターに巻き込まれること請け合いだ。ここは2人に任せて距離を稼ごう。

 

「それ逆に難しいんだけど!」

「残り四発は周りの機械兵! さっき吐き出した奴でも可!」

「だったら‭─‬‭─‬よぉく狙ってぇ…今!

 

 緑色の光を纏った銃弾が放たれる。初撃は黒い霧に、他は吐き出され70倍に増えた機械兵に。

 毒性を纏ったそれは一発分黒い霧を削ると、徐々にその体積を減らし始める。攻撃反応なし。

 では吐き出された機械兵というと……なんと驚き。逆に当たった所から黒い霧が立ち昇ってるではないか。気合いを入れてない弾には反応してない辺り、霧とは逆の仕組みらしい。

 

「生成物に強い攻撃をすると戻るなんて……このエネミー、ビルドの完成度が高い気がする!」

「アリス分かりました! -1×-1=1です! この場合は1×-1=-1かも知れません!」

「どっちも戦闘中に分かりづらい例え話しないで! つまり全部霧にだけ当てれば! よぉく狙ってぇ…今!

 

 霧が元に戻る中、有効とみたのかミドリがもう一度強攻撃を行った。

 小さくなっても中身が詰まってるのがこの霧の欠点にも長所にもなる特徴だ。

 大ダメージを与えるなら私の範囲射撃の方が有効なんだけど、私に返ってくるリスクは取りたく無い。これがゲームならゲージとかがあって確認出来るんだけどなぁ…!

 

『‭─‬‭─‬‭─‬』

 

「うわっとぉ!? あっぶな!」

 

 すると今度は霧から無数の真っ黒な手が比較的手前にいた私に伸びる。

 幸い挙句に後ろに避けたのもあってか、私の手前の道路に手の群れが落ちた。

 カウンター…にしては違和感のある攻撃。通常攻撃の類いだと片付けるのは簡単だけど…!?

 

「…もしかして格闘ゲームのゲージわざぁ!?」

 

 手が引かれる。それと同時に、掴まれてない筈の私まで霧の中に引き摺り込まれ始めた。

 なんで!? どうして!? 避けたじゃん!

 

「お姉ちゃん!」

「……! モモイ、()です! ()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 そう言われても確認する暇なんてない。引き摺られて視界はしっちゃかめっちゃかだし、道路を擦る肌が痛くて堪らない。

 

「…ッめるなあ!!」

 

 それでも銃は手放して無かったから、ひたすら乱射していく。

 

「‭─‬‭─‬っしゃらぁ! メッチャ怖かったぁ!」

 

 幸い当たったのだろう。手が影を離したのか、引き摺り込む力が消えたので急いで2人の元に戻った。心臓バクバクだよ! もう!

 

「大丈夫!? なんともない!?」

「取り敢えずは! でもあの初見殺しはキツかった!」

「良かったぁ…でも、まさか影を掴むなんて…アリスちゃん、よく分かったね?」

「はい! 手前で手を落とした辺りで()()したのですぐに分かりました!」

 

[‭─‬‭─‬進捗はどうかしら?]

 

 そんな時である。

 通信用ドローンがこちらに向かい、リオとユズのホログラムを展開したのは。

 一旦相手をするのは機械兵に任せて、全員で後ろに下がった。

 

「リオ! ユズ! ごめん、思ってたより厄介で中々倒せない!」

「会長! この霧聞いてないことばかりして来るんですけど!」

「リオ達はどうですか?」

 

[1人ずつ言ってちょうだい。アリス、コチラはユズの協力の元他の特異存在を撃退、または継続可能な収容方法を確立したわ。モモイ、ごめんなさい。どうやらゲーマーであるあなた達とは相性の悪い相手をあてがってしまったようね。ミドリ、今から説明するから待ちなさい]

 

「マジで!? ユズすごいじゃん!」

[えへへ…機械兵とアバンギャルド君の操作をゲーム風にしてくれたから…]

 

 へにゃへにゃ照れてる部長が私達より沢山の成果を挙げていた件について。

 すごいけどチョッピリ悔しい気持ちもある。流石部長やってるだけはあるってことか…。

 

「流石部長…ん? でも遠隔操作がアリなら全員それで良かったんじゃ…」

[そこは反省点ね。機械兵も全てAIに任せればいいという訳でも無かったし、次からはそうすることにするわ]

「えぇ…ここまで苦労したのは一体…」

[私も初めての事態だった。おかげで有用な情報は集まった。言い訳は以上よ……ごめんなさい、やっぱり私1人でやれば…]

「いいよいいよ、私から言った事だし、許してしんぜよう…!」

「…一番大変だったお姉ちゃんがそう言うなら、私からはなにも」

「ミドリは優しいなあ」

「……別に」

 

 言い方はアレだが、謝ったのなら別にいいだろう。

 ミドリが私の方を見て、それからプイッと顔を逸らしたりしてるけど……リオに苦手意識を持ってしまったらしい。まあ、初めからこうすれば良かった、なんて幾らでもあるからね! 徒労感は仕方ない。後でみんなでゲームをやって仲直りとしよう。私から手伝うって言ったのが発端な訳だしね。

 

「それでリオさん。アレが事前に聞いた話以外のことを結構してるのはナニ?」

[……認識…思い込み…ブラフ…いざ説明するとなると形容し難いわね。ユズ、彼女達に通じる良い例えはないかしら?]

[ええっ!?]

「あ、確かにユズならゲームのキャラで例えられるか! 会長賢い!」

[ええと…それなら……選択肢次第でステータスや挙動が変わるタイプのボスキャラ?]

「「あ〜…あー?」」

「微妙な例えですね!」

[うっ…でも観察した限りだとこう言うしかなくて…どっちかと言うと「出会って5秒で超バトル!」って漫画の主人公の能力をデフォで持ってる感じって言うか…ハリポタの物真似妖怪ボガートって言うか…]

[言ってしまえば「相手が持ってると思った能力を得る能力」が種族特性として存在するわ]

 

 ええと…つまり…この場合の相手は私達だから…。

 

「私がカウンター能力を持ってると思ったからその能力を得られたってこと?」

「アリスが影を掴めると思ったら本当に掴めるようになったって事ですか…?」

「…もしかして攻撃に使った物の霧を吸収して回復するって勘違いしたからその特性を得られた…?」

Exactly(その通りよ)

[それはそれとして元々は「黒い霧」だけだったみたい…? それ以外は私達やモモイ達が出来るって思ったから出来るようになったんだと思う…]

「え、ユズ達も?」

[その存在を知ってるなら距離は関係ないのよ。そして、種が分かった所で一度出来るようになったことはそのままよ。既に同じ特性を持った存在で確認を済ませてるわ]

[大変だった…これ、知ってる人が増えるほど加速的に強くなるから…]

 

 なんてこと…なんということだろうか。

 強い相手だと思っていたのに、まさか強いと思っていたから強くなってたなんて!

 いや流石にズル過ぎない? 警戒するほどバカを見ることになるじゃん!

 

[そう言う訳で私は突如出現した特異存在の内、この人々が噂をする行為を最大限利用したような特性を持った者を「都市の噂(ボックス・ロア)」と分類することにしたわ]

「…無駄にかっこよく無い? 大丈夫? 下手にかっこいいとそれだけで強いって先入観を持たれるよ? この能力を持ってる相手だとマズいことにならない?」

[……確かにそうね。なら「怪談」…「怪物」…「特異存在」…「怪異」…「噂」ダメね、どれも厄介な先入観を持たれそうだわ]

「うーん…なんだか名前を付けるのがそもそも間違ってる気がしてきた…」

「はい! アリスに名案があります!」

「おっ? なになに?」

「ザコキャラです!」

「シンプルに罵倒! 流石に酷すぎるって!」

「しょぼーん…ミドリはザコキャラがイヤですか?」

「いや…そう言う訳じゃないんだけど…なんかそれはなにか有ったら怖く無い?って心配が…」

 

 …却って良いのではないか?

 強いと思ったら強くなるんだから、初めから弱そうな名前で言った方がよくない?

 ミドリが言ってるのは元々それ以外で持ってる能力とかで油断して〜って流れが怖いってことだろうけど、その怖さと心配が逆効果なんだから……いいんじゃないか?

 

「…いいんじゃない? 特異存在って奴に分類されるだけはある意味不明さだけど、それを抑えられるならそうした方がいいと思う」

「うーん…ならいいのかなぁ?」

[合理的な選択ね。では今後「都市の噂(ボックス・ロア)」改め「ザコキャラ」は基本1人が相手に取り、例え仲間でも最低限の情報のみ伝達することにしましょう]

「「異議なーし!」」

「アリスも賛成です!」

[あ、いいと思います…でもリオさんだけは全部知ってた方が…]

 

 そんな訳で無事? 黒い霧も含めて「ザコキャラ」になった所で、ユズがか細い声でそう言う。

 ……そういうつもりなんだろうけど、マイクはバッチリと拾って音量も調整していたから丸聞こえだ。

 つまりリオにも聞こえる訳で…。

 

[…ユズの意見も一理あるわね。なら、私だけは全て把握しておきましょう]

[ひうっ!? こ、こここっここ…光栄です…!]

「‭─‬‭─‬鶏?」

「沢山攻撃したら囲まれちゃいますね!」

「……今時ゼルナの伝説の鶏ネタ知ってるのどれだけ居るんだろ?」

 

 事後報告の義務が作られるサマを眺めつつ、この間にも戦闘が繰り広げられていた黒い霧の方を見る。

 ……一体この霧はこの短時間でどれだけ出来る事、厄介な特性を増やしたのだろう。

 特に私達は3人…リオ達も含めて5人居る訳だから、たた黒いだけの霧から相当強くなってる筈だ。

 特に思考するだけ…なのかは確認してないので不明だが、最低でも口にしただけでアウトなのは間違いない。

 …やっぱりキツくない? 少しでも大げさに考えただけでアウトだよ? 枯れ尾花もビックリの幽霊っぷりだ。虚仮威しするだけで強くなるとか本当にズルい。私にも分けて欲しいくらいだ。

 ……ここで()()()()()()()()()()()って思ったらアウトなのかなぁ…。

 

『‭─‬‭─‬‭─』

「え待って黒い霧が私の方に流れてえっ嘘でしょこれだけでアウトなのまって待ってザコキャラにはなりたくないー!」

 

「お姉ちゃんが黒い霧を吸収して……!? 違うこれはなんともない…なんともないこと…効果のない虚仮威し…」

「…………」

[じょー。流石アリス、思考したらダメだと結論付けて自ら思考を放り投げたのね。流石は私の妹といった所ね。だよーん]

[えっと…バカになる戦法で上手くやれてるリオさんも大概だと思います…]

 

 なんか後ろで愉快な会話が繰り広げられていたが、こっちはそれどころじゃない。

 

「ねー影に飲み込まれるんじゃって考えたのミドリでしょ!? べとべとしてるんだけど!?」

「ごめんお姉ちゃん! やっぱりこれソロ攻略じゃなきゃダメっぽい! 一旦お姉ちゃんを置いていくのはどう!?」

「モモイは置いてけません! 引くなら全員で逃げるべきです!」

「うわーん! あなた達のせいだよー!」

 

 ちくしょー! こんな事なら都市の噂(ボックス・ロア)のままにした方が絶対お得だった!

 種が割れてる上にザコキャラの烙印を押されるとかイヤすぎる!

 

 あ、でも黒い霧が今まで取り込んだのって機械兵か銃弾だったよね。

 もしかして人間を取り込んだらその人の姿や性格まで模倣して逆に友好的になるんじゃない?

 ほら、ゲームでもそういうキャラクターとか結構見かけるし。

 

 そんな余計かどうか微妙な思考が過ったからだろうか。分け与えられた霧は私を影に沈ませたかと思えば、そこから型を取って、本体も吸収して黒髪の私みたいな姿へと変化した。

 これは…どうなんだ? 有利になったの? それとも不利になったの?

 

『……それは能天気な考えすぎない?』

「うわあ! 喋った!?」

『ミドリが喋るかもって考えたんだからそりゃ喋るよ?』

 

 ……!

 思考が読めるのか…? マズい!

 

『何がマズい? 言ってみろ』

 

 期待通りの返し…! なんだか感動しちゃうなあ!

 …まぁそれはそれとして。

 

「初めから読めてたのかなーって。それと私のことどこまで分かるの?」

『そりゃあもう思考と感情を糧にしてる種族だし? あなたが分かるかもって所まで分かるようになるよ』

 

 眼も真っ黒な私はそう言うと、徐に銃を私達の方に構える。たっぷり5秒経ってから、相手はこう言った。

 

『ぱぁん』

「いた…くない?…あ、引き金引いてないじゃん」

 

 怖くはない。銃は痛いけど無害だ。だからこの攻撃もそれだけだ。

 そう思ってたけど…そもそもぱんって言っただけだった。

 そんな理解できる脅威に対して、死んじゃうかもと思いはしない。

 そしてこれはチャンスだ。相手を知る機会が来たのだから話し合おう。和解できるかもだし。

 

『…うーん、やっぱりダメかぁ。まだ腹3分目なんだけど…』

「話せるようになったなら聞きたいんだけどさ、どうして今みたいに殺そうとしてくるの?」

『理由なんてないよ?……って言うのがあなた達向けの答え。実際は向けられた感情がご飯になるってだけ。食べ方はそう望まれたからだし…ある意味本当に理由はないかな』

「うーん…怖がらせたり殺そうとする理由がよく分からないなぁ…」

『私からしたらフォークとスプーンで食べるか、箸で食べるくらいの違いかな。ほら、郷に入っては馴染まないと村八分って言うでしょ? 異国の地で相手に合わせるのはマナーだよ』

「あー…そのマナーが私達の思考なんだ…」

 

 なんだろう…とても品が良いんだけど、その品の良さが私達に迷惑がかかる方向に行ってる気が……いや、そういう方向で思考した私達の自業自得なのか? なんだか分からなくなってきた。

 

「それならさ、食べたい感情とかで振る舞いを変えたりしないの? 食生活偏らない?」

『別に? 私は好き嫌いはしないし、そんなワガママを言える程裕福じゃないからね』

「あ、裕福とかの概念あるんだ…」

『あるよ? 知名度があるほど色んな感情を常に向けられて、こうやってあくせく食べ物を集める必要なんて無くなるもん。この点ここは不作の地かな? もっと沢山人の居る都会に行きたいなぁ、私は』

「へーぇ、それならさ、あなた達の言う裕福な人ってどんな人? 普通に気になるんだけど」

『あなたも知ってると思うけど…私が知ってるのだと『噴火』『流れ星』『水』『地震』『プラズマ』『発展』……』

 

 なんだろう、思ったより知ってる顔ブレが実はこのザコキャラと同じなのやめて貰っていい?

 ポテンシャルの塊じゃんこの子達。

 

「うわあ、錚々たるメンツじゃーん。なに? あなた達って自然現象な感じ?」

『いや、元々あったそれらと同一視されたってだけ。別名不労所得。でもさ、みんな苦労して成り上がった人達でね? 『噴火』さんは300年飲まず食わずで桜島を噴火させたからだし、『流れ星』さんも80年かけて宇宙まで飛んでは何度も大気圏に突入して人類に自分を流れ星だって誤解させてみせたし、『水』さんも飲料水のフリをし続ける為に何人もの身体の体液として過ごしたし……みんなすごい人!』

「そっかあ。好きなの? そういう苦労話」

『うん! 誰だって金持ちに憧れたことはある! つまりこれは摂理! 私も将来的には『夜に出てくる霧』くらいにはなりたい! ビバ不労所得!』

 

 ここまでの話を聞いて、根本的に価値観は違うけど、一つの種族としてはストイックで頑張り屋さんなのが分かる。

 多分見た目が黒いから私だけじゃなくてミドリの要素もあると思われたのだろう。いや、私が妹のように接しているからか? どことなく私とミドリを合わせたような喋り方だ。

 

「じゃあさ、なんで黒い霧はこんな誰も居ない都市に? ここで暴れてもあんまりお腹は膨れないと思うよ? 5人しか居ないし」

『6人だよ?…まあそれはそう。でも都会からは飛ばされたし、此処から出られないし…ネットの中に入れるって思ってくれるならそこから出るけどさ、しないならこうするしかなくない? ご飯は欲しいじゃん』

 

 ん? 私ミドリユズアリスリオ…後でいいや。

 

「6…? うーん…出たら暴れない? 誰か殺しに行かない?」

『知らないよ。私は、私達は思われた通りのやり方で感情を食べるだけだもん。それが恐怖でも苛立ちでも同情でも、食べられればそれで良い。ひもじく過ごすよりずっとマシだからさ、今みたいに憐憫に思ったって構わないよ? 食べられない味じゃないしね』

「味とかあるんだ…」

『まぁね、だから美食家は好みの感情を求めて振る舞いを決めたりもする訳だし。ちなみに憐みは塩水の味だよ。今の話でコップ1杯は飲めたかな。出来れば次は友愛辺りが食べたいなーって思ってる。アレ甘いし』

 

 そう言うと、黒い霧は銃を仕舞って片手を差し出した。

 仲直り…とかではないだろう。いや、実際仲直りして仲良くしたいとは思っているのだろうが…その目的は何処までも食事と感情の引き出しに帰結する。

 そういう生態なのだから仕方ないけれど…だから仕方ないで手を取るのも、イヤだと突っぱねるのも違う気がするのだ。

 

「…仮に手を取ったらどうするの?」

『どうもしないよ? これで仲間と思ってくれるならその通りに振る舞うし、裏切ると思ったらそうするだけ。どっちにしろこの外部の知名度が遮断された上に逃げられない都市の中じゃあ、他の捕まった子達よりは沢山食べられそうなポジだから私は嬉しい』

 

 そういう彼女の目はとても冷めていた。ぼーっと自分が差し出した手と私を見てて、何処となくそれがお腹を空かせて何も考えられていない時の私に似ていると感じる。

 彼女からすれば明日を生きる為の戦略でしかないのだろう。他の収容された同族よりも生きる為の量を確保する為の戦略。

 偶然私達が現場に赴いて、ユズにその他大勢として処理されなかったから仲間となって今後の食事を手に入れる機会を得た者。

 

「うーん…なんだかなぁ…」

『私が情報を持ってるのは話してて分かったでしょ? 望むように振る舞うからさ、奴隷でも家畜でも道具でもさ、敵でも味方でも好きに思ってよ。そういうのは慣れてるし?』

「うーん……作戦タイム!」

『認めるっ!』

 

 信じる限り裏切らない。そして、向こうは色んな情報を持っている。

 確かなのだろう。というか、話していて既に私は絆された。

 見捨てるのは偲びないけど、かといってこのまま受け入れるのも違うと理解した。

 

「どうする? 聞いてたと思うけど、結構しっかり考えとかある相手だった!」

「…私は受け入れた方がいいと思う。根本的に怖がるのが間違いなのは分かったし、奉仕する存在って思ったらそうなる感じがひしひしと伝わってくるし」

「アリスは仲間は増やしてなんぼだと思います! 今までの能力が消えてないなら、頼れる仲間になりそうです!」

[反対。裏切る可能性を公言している以上、リスクヘッジは取るべきよ。自我があるなら、誰かに思われなくてもそうする危険は秘めているわ]

[…わ、私も反対。この都市では外部の知名度と遮断されているって言ってたのが引っ掛かるから…]

 

 何故か多数決の流れになった。もしやまだ受け入れる道があると思ってるのだろうか。

 しかし多数決なら同点だ。私は返事を保留にしているから、此処は私の一存となる。

 

[‭─‬‭─‬反対。常に思考のリソースに注意を払わないといけない存在は、他への負担が多い為です]

 

 ……そして、通信に入った新たな声により、私が決めるまでもなく天秤は反対の方へと傾いた。

 

「だれ!? あの子が言ってた6人目!?」

[……紹介が遅れたわね。彼女はケイ、貴女達が手に入れた「G・bible」に入っていたデータよ]

 

 そうして通信の映像に新たに映ったのは、アリスそっくりだが目や立ち振る舞いが違うもう1人のアリス……ケイと名乗る者だった。

 

[どーも。女王アリスの護衛騎士にして番人のケイです。この度は先にアリスが持ってかれたのでクビが危ぶまれてる冷飯食いでもあります]

「…私の護衛騎士…ですか?」

[はい。今回はアリスの代わりに現場に出れず不甲斐ない限りです。目覚めてすぐに向かおうとしたのですが、これ以上ややこしくするなと言われまして…]

[他に対処すべき特異存在は沢山いた。合理的に人員を配置しただけよ]

[…とまぁ、そう言う訳です。映像越しではありますが、これからよろしくお願いします]

 

 新たに現れた彼女がそう言ってぺこりとお辞儀をする。

 驚きはしたが…現状それどころじゃないことが沢山あったので一旦流すことにした。

 

「うん、よろしくね!……だけどアレか! このままだと多数決で反対になっちゃう! なら私は賛成に回る! はい同点!」

[…それはまた何故? 態々同数に拘る必要が?]

「それはねぇ…この場で一度でも反対になったら襲ってくると思った人、手をあげて」

 

 アリスが堂々と、ユズが恐る恐ると、それからミドリ、ユズ、リオ、ケイ、それから私が手を挙げる。

 最初の理由としてはこれがそうだ。

 私は手を下ろさないまま続けて質問した。

 

「次に…同じく一度でも賛成になって仲間になると思った人!」

 

 ミドリとアリスとユズとリオが手を挙げる。

 

[…これはなんの意味が]

「次、一度でも仲間になった所で裏切るかもと思った人」

 

 ユズとケイとミドリ、それから一歩遅れてリオが。

 うん、一人でもそう思ったらアウトなのに、これだけ人がいる時点でそうなるのは道理だよね。

 

「じゃあさ、どっちみちあの子は私達を襲わないとじゃん。一度思ったら取り消しも出来ないし、そういう生態な訳だし。それで襲ったらそれみたことかって言うの? それって違うと思うし、多数決は無意味になるじゃん」

 

 挙げ続けていた手を下ろしてから言う。

 

「今まさに、不意打ちを警戒している人」

 

 今度は私以外の全員が手を挙げた。

 この質問をした時点で、思考したからアウトだ。バッターもチェンジの所業だ。こう言った時点で全員に思考が共有されてオールレッドカードなこと請け合いだ。

 

「というか、可能性を語る時って常に最悪は想定するじゃん。その為の会議な訳だし、今しなくてもいつかふとした時に似たような話題が出て、最悪が頭に過ぎるじゃん?」

 

 つまりはそういうこと。

 私達はファーストコンタクトから既に失敗した。

 武力に物を言わせて排除しようとして、無害になり得る存在すらも纏めて敵として見做してしまった。

 

「‭─‬‭─‬とっくに私達は、集団として彼女達を受け入れられない道を通ってる。今まで通った道に隠れてた和解の道は、とうの昔に通り過ぎてるんだよ」

 

 世の中、分かれ道が分かりやすくY字路のように目の前に提示されることの方が少ないのは、よくある話だ。

 ゲームでも隠し通路、隠れ選択肢、分かるわけがない途中で戻ると見つかる隠し要素とか、沢山ある。

 今回もその一例に過ぎない。それが和解と仲間になる道だっただけ。

 ゲームでもよくあることだ。知らないと分からないような所にそういう選択肢がある。

 

「だから多数決に意味はない。その場凌ぎに過ぎないし、通り過ぎた道を戻るには…私達は知り過ぎたんだよ。あの子達との和解は無知な人にしか出来ない道なんだからさ?」

 

 或いは、事前に知っている人達に外部から導いて貰えれば違ったかも知れない。

 例えば…そう。先生達は知ってそうだったから、外からの知名度が届かないらしいこの都市の性質を利用して上手くやれただろう。

 心の底から信じるのが鍵ならば、知らないままやるのが唯一の道だ。

 

 だがそれは2周目があればの想像だ。思い至るにはもう遅い。

 既に話は、どれだけ出血を抑えて問題を解決するかの段階に入っている。

 

[知り過ぎから手遅れになった……そういうつもりで?]

 

「‭─‬‭─‬ううん。()()()()()、知ったからこそ私はいい選択が出来ると思うんだよね」

 

 しかしこう考えてはどうだろう。

 血を出すのが確定したのなら、どうせなら血を流さないと辿り着けないもっといい道を探すいい機会に出来ると。

 

「考えてもみてよ。一度思ったことが取り消せないならさ‭─‬‭─‬なんで今、あの子は攻撃しないのかな。今までの能力は使えるのに、不意打ちして私達から反感の感情を手に入れようとはしてないじゃん」

 

 さて、私はゲームのシナリオライターな訳なのだが、やってて常に疑問だったことがあるのだ。

 

「それってさ、ある程度立ち振る舞いは選べるってことなんじゃないの? 思われた通りに動く。けれどそれって、絶対何処かで矛盾が出てくるよね。絶対裏切らない、何処かで裏切る。ほら、もう矛盾したよ?」

 

 ここでどうして攻撃しないの?って、そのキャラの心境も考えもしないで、目先の勝ちしか見てないプレイヤーがいることに。

 私もまぁまぁ考えるからあんまり強くは言えないけど、一回住所特定して凸ってやろうかと何度か思ったことがある。

 優れた勝利と書いて優勝なのに、手っ取り早さだけでSランクの勝利を目指さないやつ多すぎじゃない? そんなんじゃSランクの勝利条件満たせないよ。RTAなら仕方ないけど…。

 

「話してて分かった。あの子にはそれを選べる心がある。矛盾した時に、自分が望んだ通りに選べる心が。これってさ‭─‬‭─‬快く信じてくれる相手の期待に応えたいって、そう思わないと取れない選択だよね?」

 

 今だってそうだ。

 不意打ちはしてこないと私を含めて何人かが今も思ってて、彼女はそれを選び続けている。

 先の質問で不意打ちを全員が想定したのにも関わらずだ。

 

「勿論あの子達全員がいい人じゃないかも知れない。でも…期待すれば応えてくれる。お腹が空いてなければ、仲間は無理でも交流するのは十分出来ると思うんだよね」

 

 結局、特異存在なんて強そうな字面に囚われ過ぎてるだけで、やるべきことは普段と何も変わらないのだ。

 初めましてならまずは話して、仲良くなって、気が合うなら友達になって一緒に遊んで。

 そんなの特異存在とかなんとか関係なく、普通にやるべきことの一つだ。

 初めから銃を向けたなら、そりゃあ誰でも銃を撃ち返すよね。

 お腹が空いてる時にやられたらそりゃ暴れもするよ。

 

[……その通りだとして、一体どうするつもり? 食べ物がないままだと暴れるのは見ての通り。大量の感情を用意する手立てはあるのかしら?]

「ふっふっふっ……よくぞ聞いたね、リオ!」

 

 そこでだ…ゲーム部の私なりにすごい名案を用意してみた。

 

「あの子達をモチーフにしたゲームを作ろう」

 

 同一視させればイケると思うんだよね。後は有名なゲームにすれば優勝だ。

 やっちゃるでミレニアムプライス優勝。

 

[…ええっ!?]

「何言ってるこのお姉ちゃんは」

「アリスはゲーム作りが気になります!」

「知ってる? 強烈な作品は時を経ても不朽の名作として親しまれ続けると…そう! ウルトラマリンシスターズのように!」

 

 またの名もこの都市にあるマリオシリーズだ。リオが発掘してきた「G・bible」にも似たような作品があった辺り、名作の因子は時代が変わっても受け継がれる物なのだろう。こんなのゲーム界の考古学やでホンマに…初めてやった時感無量だったなぁ、マリオシリーズ。

 

「はぁ…言葉に気をつけてよお姉ちゃん。今際の際だよ?」

「はっ!? いつの間にか処刑台に乗ってる!?」

「アリスが持ってきました!」

「うーんなら乗っとくかぁ」

[…貴女はそれでいいの?]

[あはは…いつものじゃれ合いなので…あんまり気にしないでクダサイ…]

[…はぁ、変わりませんね。あなた達は]

 

 さて、小芝居も済んだ所で真面目な話、私的にはかなりアリな作戦だと睨んでいる。

 別に媒体は小説でも動画でも何でもいいのだが…やっぱり長く楽しんで感情を向けられるものと言えばゲームだろう。

 何よりゲームなら性能としてあの子達の能力拡張……考察を挟ませる余地は少ない筈だ。

 だって実際に数字と能力が出ているのだから。

 ストーリー面だって、特殊な環境下でのみ発揮する力とかで制限させれば現実への悪影響もないだろう。そもそも満腹なら何もしなさそうな生態だし。

 

「……と、言う訳であの子達にゲームの中に入って貰う! ゲーム部らしくミレニアムプライスに優勝する! ついでにアリスを入部させて廃部を優勝の実績も使って回避する! なんならこの子達にゲーム制作を手伝わせれば一石二鳥! どうよこのみんな幸せでかんぺき〜な作戦は!」

 

「お姉ちゃんこういうズル賢いこと考える時だけ思考が回るよね」

「名案です! アリスもやらせてください!」

[女王、ゲームを作ってみたいからと言って軽率に肯定なさらないように]

[……まあ、一回やってみましょう。性善説的で多分に賭けが含まれてるけれど…この都市から居なくなるなら良しと判断するわ]

[……廃部のこと忘れてた]

 

 そういうことになった。

 後は本人に協力して貰うだけである。

 

『……いちおー今の私はモモイでもミドリでもあるみたいだし、別にいいよ。人が協力してくれるのってすごくレアだし、『ウワサネット』さんみたいに他の人も助けられるならすごく良いと思うし』

「やりぃ! けど『ウワサネット』って?」

『……昔の人かな。人間を騙して大量の知名度を手に入れて、ほぼ全ての同胞を無理矢理従わせて、噂を人類に与えようとした野心家さん』

「それの何処に「助けた」が入ってるの?」

『当時はそうしないと殆ど死んじゃうくらいには情報封鎖されて、みんな飢えてたから。だから人類に噂の概念を取り戻させるってみんなを纏めて立ち上がったんだよ。……まぁ、最後は騙した人に全部消されたんだけどさ。だから人を騙すのはダメって掟があるし、『ウワサネット』さんも悪いように言われてる』

「……いつの話なの、それ?」

『別世界の昔話かな。こう見えて一回人類…というか1人に絶滅させられた種族だし』

「種族名もついでに教えて?」

『怪奇第肆種『風説』別名怪異。私は怪異の中でも『影取り』ってやつだったよ。同族の中だと賢い方かな。まぁ、今じゃ変質して『霧の影』…偉人の左手を持ってるだけの黒い霧なんだけどね』

「ふーん…大変なんだねぇ」

 

 黒い手を取り出して話す様子になんだか大変そうだと思うが、質問はこの辺りで切り上げるとしよう。

 本当に長い歴史と複雑な事情があるのか、話しててキリが無さそうだ。

 特にこの子は歴史が好きなのか、ヤケに詳細をポンポン話すから終わりが見えてこない。

 ともあれこれで一件落着。ゲーム開発をする為の大義名分も揃って堂々とこの都市で部活動を行える訳だ。

 

 

「…と、いう訳で黒い霧が協力を取り付けたみんなの意見も纏めて、今回は恋愛ターン制バトル、マルチエンディングのHD-2Dドットアクションゲー、鬱要素もガチマシマシ、グロは禁止、フロムライク、育成要素アリ多彩なスキルで無限の戦略性、ファンタジー人型ロボ戦争譚に決定出来るかぁ! 後4日でプライス申し込み終わるんだよ!!

 

 恋愛ターンバトルってなんだよ!

 マルチもHD-2Dもコストエグいんだよ!

 ドットだからって手間が減ると思ったら大間違いなんだよ! 

 鬱要素ガッツリの話は私書いたことないよ! 昼ドラならTSCでやったことあるけど!

 グロ禁止とフロムライクは矛盾してるじゃん!

 育成は兎も角スキルシステムはデバッグする時間が足りないよ!

 ファンタジーとロボバトルは合わせられるけど世界観を練るのが辛いんだよ! せめて片方であれよ!

 それとロボと育成要素って矛盾してないかなぁ!?

 ロボと恋愛もだなぁ! ロボの大きさにもよるけど顔を見せるのどうしようかなぁ!?

 

 はい、弱音終わり! やるだけやろう!

 

「はぁ…はぁ…兎に角! 全部はムリ! シナリオは良い感じに混ぜてこねくり回すよー! 取り敢えずキャライメージと確定した設定だけミドリにパス! 一先ず三部構成で考える!」

 

「はい受け取った! でも背景どうしようかな…ううん…ドットは得意な方だけど、HD-2Dは初めてなんだよなぁ…コマは各動作始めと終わりだけ作って、エフェクトとスピード感で誤魔化す方向で…余裕があれば中割りを…その前に戦争系ならマップも大事だよね…高低差…天気……ん? ロボのドット!? もしかして各パーツ全部作らないとダメェ!?」

 

『あ、音楽に関しては得意な子がいるから任せてよ。1日もあれば全部作れてると思うし、それを聞いて調整しよう』

 

「ターン制とフロムライク…? リアルタイムアクション…あ、でも恋愛をコミュ方面でターン制にして…戦闘はアクション重視……参考になるゲームはある。幾つか参考にして…」

 

「デバッグなら任せてください! システムも手伝えると思います!」

 

「制作で手伝えることは少ないですが、アリスの騎士としてパフォーマンスの面倒を見る眼は持っているつもりです。ドットも参考になる資料があれば各動作のコマを増やしましょう」

 

「私は手伝わないわ。今後も特異存在は増えるでしょうし…けれど、貴女達が集中出来る環境は整えられる。それだけの情報が今回で集まった。…ああ、それから特別に外部と繋がるネット回線を一時間後に引いておくわ。以上よ」

 

 そんな訳でゴチャゴチャわちゃわちゃとしながらもみんなと一緒にゲームを作ること‭─‬‭─‬4日間。

 

「お姉ちゃんのぼけなすーっ! シナリオは3部って言ってたでしょ!?」

「筆が‭─‬‭─‬乗った!」

 

「ユズ…どうして……どうして隠しボスのデータがラスボスより先に完成してるの!? まだドットも打ってないよ!?」

「戦闘が‭─‬‭─‬楽しかった!」

 

「んあああ! 枕がデカすぎます!」

「やめなよアリス! 枕がデカくなるバグで遊んだら! 修正するから再現教えて!」

「イヤです! これは有った方が楽しいのでそのままにしたいです!」

「アリス!」

 

「ねえなんでこの音楽再生したらゲームアイテムがリアルで出てくるの?」

『‭─‬‭‭─‬‭─‬』

『ミドリがこのアイテムが欲しいと思った拍子に…みたいだよ』

「ミドリぃ! 何やってるのミドリぃ!」

 

「さすが赤いシャアまるで3倍だぁ」

「モモイ…流石にこのパロはダメだと思う…」

「そんなー…」

 

「ケイ、ここのプログラムお願い」

「ケイ、ここからここまでの動作の中割りをお願いできる?」

「ケイ〜! そこのチョコチップス取って〜!」

「……なぜ私はアリスではなくこの人達の面倒を見てるのでしょうか?」

「ケイ、そこで冷静になるものではありません…激流に身を任せて同化するのです…」

「……女王…流石にそれで騙されはしませんよ」

 

「出来たわ、時間加速装置と睡眠効率化装置爆ネム君よ」

「「「でかした!」」」

 

 長かったような短かったような…この4日間をゲームにするだけでそこそこ売れそうな日々の中、なんとか私達はゲームの完成にまで持ってくるのに成功した。

 

「よし…! 後はアップロードするだけ…! 念入りにデバッグもしたし、優勝できる…はず!」

 

 ユズがそう言って、震える手でマウスをクリックする。

 既にあの子達はゲームの中に入って同化する準備を終えた。

 あれからゲームの中に入りたいと希望する者が増えたりしたが、最後は私達6人だけ。

 特異存在や個人の研究で忙しそうだったリオもひと段落終えて、様子を見に来ている最中である。

 全員が苦労して作った突貫工事ゲームだが、優勝しても申し分ないものだと自負できるゲームだ。

 

「ユズ、冷静に…!」

「大丈夫だって! 最終確認は何回もやったんだし、心配することは何もないよ!」

「うん…そうだよね! ふぅ……よし」

 

 アリス達は声は掛けなかったものの、固唾を飲んで見守ってた。

 そんな謎のプレッシャーまである中、ユズは無事にアップロードをして、ちゃんとできたかの確認まで終えさせた。

 

‭─‬‭─‬完了だ。

 

「…ぷはぁ! なんだか緊張したねぇ!」

「後は…待つだけ……ううっダメ、心臓が破裂しそう…」

「この時間が一番キツいまである…今ゲームやっても上手く出来無さそう…」

 

 そんな訳で後は3日後の結果を待つだけとなった。

 ふと周りを見る。なんとなく、みんなの顔を見たいと思ったのだ。

 

「はぁ…つっかれたぁ…」

 

 ミドリはそう言って女の子座りから倒れて横になる。

 あの中で一番辛い仕事をしていたのだから、それを咎める者は居なかった。

 

「うーん…難易度を3つ用意したけど…流石にイージーのアレは簡単過ぎたかなぁ…でも真エンドにはイージーだと辿り着けられないようにしたし…」

 

 そういうユズは、壁に寄りかかって難易度を上げようとする思考をする。

 最終的にあの子達が止めていたが、それがなければユズが満足出来る難易度に調整されていただろう。

 

「大変でしたが…楽しくて眩しい7日間でした…」

 

 アリスは深く思い返すように目を瞑っていた。

 あの混沌とした中で不眠不休でデバッグしていたのがアリスだ。それを楽しい日々と言えるとは……ゲーム開発部の適正は十分だろう。

 

「…………」

 

 ケイは途中から入ってきたものの、最後には誰よりも頼られる立場になっていた。

 AIがどうとか最近はうるさいが、ケイは私達の仲間なので問題ない。パソコンに直接繋いで制作とかやってないしね!

 

「……良い思い出になった。そう思いましょう」

 

 リオは開発に関わりはしなかったものの、サイキョー装備と道具を持ってきたし、此処を守ってくれたりと裏で大活躍してくれた。おかげで豪華な環境でゲームを作れたのだから、リオ様々である。

 

「はぁ〜…やり遂げたぁ〜」

 

 パタリと倒れ、すっかり見慣れた天井を見上げる。

 思えば最近外に出ていないし、ミレニアムにも帰れてない。

 そろそろ外に出て……そうだ、アリスとケイは都市から出たことがないみたいだし、一度自然の青い空を見せてもいいだろう。

 

「それから…それから……」

 

 だってまだまだゲーム開発部はこれからなのだ。

 これ以外にもゲームは作るし、アリスとケイが入った部活は絶対もっと楽しい。

 この4日間で聞いた限りだとミレニアム生徒ではないらしいので、転入届けとか色々必要だとは思うが…そこはサイキョーなリオ会長のことだ。なんとかなるだろう。

 

「ん……眠たくなって……」

 

 気が付けばユズもミドリも疲労からか寝ていて、アリスとケイ、リオだけが立っていた。

 ぼーっと寝ぼける視界の中、次第にアリス達は私達を置いて部屋から出て行って……イヤな予感をしつつも、眠気には抗えずに………。

 

「そうだ…先生にも…」

 

 プッツリと途切れる直前、何とか先生にもこのことを知らせようと電話を繋げて‭─‬‭─‬私の意識はそこで途切れた。

 

 

 だから、目覚めた時には全て終わった後。

 此処から先はミレニアムの保健室で聞いた話となる。

 

 






 仕様No.7
 ステータス引き継ぎ
 ブルアカ生徒が0周目の経験値を一部引き継いでいる仕様。記憶のことではない。
 各生徒によりマチマチではあるが、大凡はその長所を伸ばすような形で引き継がれている。
 超人の巻き戻しにより引き継ぎ度合いが変わるランダム要素。別名個体差ガチャ。

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