【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
鏡が覗かれる度、犠牲になる私は増えていく(鏡の中書き文字)
遠い昔の記憶を掘り返していくと、大抵の場合幼い頃の朧げな物に辿り着くのが大半だと思いますが、誓って言いますが私はそれよりも過去に、ひたすらに土を掘った記憶があるのを覚えているのです。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
それが如何様なものであったのかはとんと検討が尽きませんが、その時の周囲には赤、青、緑、黄……玉杯に入れられるような宝石が溢れていた物ですから、きっと大それた事の為に掘っていたのは間違いありません。
「……あった、あったあったあった! やっと見つけた──!」
きっと大事な物だったのでしょう。
私はそれをややこのように慎重に掬い上げますと、
「私が助かる為の────の道! 地獄を巡る旅路の…片道切符…! もう、この都市に悩む必要はないんですね…!」
不思議とハッキリと聞こえる言葉の意味は今でも分かりません。
しかし、この記憶を何度も振り返ってきた私には、確信持って言えることが一つだけあるのです。
「カルメンさん! 3番目の契約をします!████████████████████!!!」
きっとこの私は、何かを間違って、何よりも重い物を背負ったのでしょう。
だって私は残忍で、冷酷で、意地っ張りで、貪欲で、猥褻で、嫉妬深い、自惚れた、バカで蟲の良い
取り返しは付かないのでしょう。
「いやー、暑いですねー…」
初夏というものは極端に涼しかったり暑かったり、雨でびしょびしょになってしまうものですが、こと今日というその日に限って言えば、カンカンに照らされたカラッとした夏日でした。
7月28日。その時の私は小学2年生で、紫色のランドセルを背負ったウブで内気な少女です。
あ、今私を見て疑ったでしょう。こう見えてこの宇沢レイサ、高校デビューするまでは日陰で本を読んだり、遊んでる子達の輪っかに静かに入っては声を小さくして楽しむ方だったんですよ?
えっそうは見えない?………コホン。バレたのなら仕方ありません。
正直に言うと当時の私に友達は居ませんし、輪っかになんて近付くのも怖がるような子でした。
「こんな日にはスイカ…でも重いぃ…」
季節外れ、または季節先取りの夏。
友達も居ないなら気分も落ち込むような気温。友人である青い空と木漏れ日は今日ばかりは敵として立ち塞がる日。
しかしこの時期、気分を上げる大事なイベントがあるのもそうですよね?
「でも…明日から夏休みだー!……だー…!」
大きな声出ちゃった…。
そうして顔をカアっとさせて恥ずかしがる幼い私ですが、そうなるのも当然の結果です。
顔を赤くする方じゃないですよ? 夏休みの方です。子供にとってクリスマスと誕生日と一番を争うイベントですからね。そりゃあもう友達が居なくてもテンションは上がります。
普段は内気な子が道端で大声を出すくらいには大事な日。そんな日は足取りも軽く立とうというもの。
「ん? これは…」
それこそ──道端に落ちてる珍しい石に、普段ならスルーするものに気をかけるくらいには、浮き足が立っていました。
「緑…青? キラキラしてて綺麗ですね」
道端に…と言っても歩道の真ん中くらいに落ちてあったその石は、青にも緑にも見える色彩で、小指の爪程度の大きさくらいでしょうか。
子供の小指ですから、きっと大人なら気にも留めないほど小さくて気にならないものだったに違いありません。私がそれを見つけたのも幼く背も小さくて、乳白色のレンガ道に近い視界だったからでしょう。
そうでなければわからないくらい、小さく輝く色石だったのです。
「キレイだなぁ」
そんなものに子供が気を向けた結果なんて語るまでもないでしょうが、私はもっと近付けて見ようして、その小さな一粒を拾い上げ、光に透かす為に青空の方に向けて、少しだけ私のことを石が映し出して……その時初めて、私はそれが青紫のラピスラズリとフォスフォフィライトの混合石だと……幼い私には二つの石が混ざったことだけが……分かったんです。
「…? 今、誰か私に声を───」
知ったのをキッカケに。
そんな風に眺めて聴こえた声は、太陽みたいに朗らかで美しい声でした。
どこから話しかけられたかは分かりません。その時の私は唐突に訪れためまいによろけていた物ですから、周囲を気にする余裕なんてこれっぽっちも有りはしなかったのです。
……強いて言えば、曲がり角一つ先くらいで取っ組み合う声のようなものは聞こえましたが、この声がそこから成されたものとは到底思えない、穏やかなものだったので違うのでしょう。
「う…頭が…!」
ぐわんぐわんと、世界が回転木馬のように回って、ぐらりぐらりと、地に着く足が時計の振り子のようによろめいて。
自分の全部が這い出てしまう気がして、必死に口を抑えて蹲って───血が飲みたい。
だなんて突拍子もなく考えてしまうくらい、気が動転して。
「蟲が…! 石が…! 痛い…!」
きっと血迷ったに違いありません。それか、気が狂ったんだと思います。
でなければ、先ほどまで摘んでいた石が
ヘイローから蟲が這い出て私を食べる痒みを感じる訳がないですし、
身体から石が飛び出る錯覚を覚える筈がないですし、
旧い地獄の夢が私を上書きする感覚も、
内側に覚える異物感も、
全て本当のことになってしまうのですから、本当にそうなら私は
「あ────」
コレはダメだ。きっと禁忌だ。
終わってしまう。私という存在が、あらゆる化物の巣窟になってしまう。
血の支配に染められ、蟲に喰われ、石に変わって、卵の栄養になって──そんな結末に至った私に、私が書き換えられる。
「…………だれか」
なぜそう思ったか、私には分かりません。
けれど確かにわたしはその時、狂っていく中で途方もないことを……狂ってる世界と一致した思考の中で、理解出来ないままに、暗転する意識の中で、そんなことに思い至ったのです。
「たすけ……──」
その時何が起きたのか。
……暗転した視界が突如として真っ白になり、私の意識が終わりを告げました。
目が覚めたのは……終わりが一時のものになったのだと理解したのは、それから何日か経ってから。
「8月…5日ぁ!?」
夏休みが知らず知らずの内に始まったとも理解した、一夏の始まりの記憶。
私がトリニティ自警団に入ると決めるに至る、その
「へ、へぇー…そうですか…」
泣く子も笑って帰り始める黄昏時。夕焼けの光に照らされる帰り道。
何年過ぎても変わりのない、私にとっての望郷そのものであるトリニティの乳白色のレンガ道。
背中に背負ったバックを持ち直して、二つ結んだおさげを揺らして、ピョンと跳ねるように歩いて、手に持った銃がカチャンと鳴る。
「その通りです! 私が自警団になった原点とは! 子供が何気なくキラキラした宝石を拾っても苦しくなったりしない、みんなの登下校を安心できる物にしたい! その一点!…いやニ点!…三点なんです!」
「…一応聞きますが、そのもう2つは?」
「あの日私を助けてくれた誰かとスズミさんに憧れた分です!」
「…………そうですか」
私の名前は宇沢レイサ!
トリニティ自警団に所属し、伝説の不良「キャスパリーグ」と決闘する日々を送る中学2年生!
先ほどまで語っていたのは他でもありません、私が今! こうしてトリニティのパトロールをする日々を送ることになった憧れの人、一年上の
〜♪
「…あ、随分と気合いの入った語り口なので聞き入っていた…いつの間にかこんな時間ですね」
「はっ!! 午後5時のアレ!? ああぅすみませんスズミさん、話し…過ぎてしまいましたね」
しかしどうしたことでしょうか。話して気が付けば午後の音楽。
幾ら憧れの人に聞かれたとして、これはもしかしなくとも迷惑な行為だろう。
夢中で話していたが今はパトロールの時間だ。仮にこれのせいで助けられなかった人がいると思うと……私は大層ダメなことをしてしまったに違いありません。
少なくとも、なぜかある幼少期よりも過去の記憶の下りは要らなかったと反省するばかりです。
「いえ──気にする必要はありません。パトロールの足は止めてませんでしたし…こう見えて結構楽しんでましたよ」
「そうですか…? なら良かったです! スズミさん、本日はご同伴ありがとうございました!」
「私はそこまで敬われることは…いえ、はい。こちらこそ楽しませる話をありがとうございました」
そうして十字路でスズミさんと別れると、私は1人帰りの道を歩くことになります。
そうなると途端に足が竦むのは過去のトラウマか、それとも共に歩いていたスズミさんへの名残惜しさか。
現実はその両方なのでしょうが、私にはどちらがより大きな感情なのか、とんと見分けが付かないのです。なにせどちらも捨て難い程、私の中で主張しておりましたから。
「うぅ…怖い…いえ、もう私はトリニティ自警団の宇沢レイサ! 怪物の悪夢なんぞ何するものぞ!……行きますよー…行くったら行きますよー……とりゃあーー!」
「……宇沢、こんなところで何してるの」
むむ、その声は
ここで会ったが100年目!…と言いたい所ですが、今日は特別に何もせずに…そう! 私と一緒に帰るだけで見逃してあげます!
「いや普通にイヤなんだけど。てかお前と私ってそんな関係じゃないじゃん。ウザいんだけど」
えっ宇沢だけにですか!?
「うぜー」
あ、逃げようとしても無駄ですよ! この宇沢レイサからは逃れられません!
はい左手捕まえた! もう絶対離しませんからね杏山カズサァ!
「うっぜーーー……はぁ、勝手にすれば?」
センキューベリー Kyoyama Kazusa!
この道を通るには1人じゃ心細いですからね! 自警団として、杏山カズサの安全は絶対に保証しますよ!
「いやサムズアップされても…その怯えっぷりで頼りになるわけなくない? アンタに守られるほど弱いつもりもないんだけど」
杏山カズサァァ………。
「…あーもー分かった分かった! 泣くと面倒なんだから泣くな! 私が悪いみたいになるじゃん!」
杏山カズサァァ!!
「だからって耳元で叫ぶな抱きつくな!! このっくっ…宇沢ァ!」
「は・な・れ・ま・せ・んーー!!」
紹介しましょう!
黒い猫耳をピンと張って抱きつく私を必死に引き剥がしている、この黒パーカーの少女の名前はみなさんご存知の通り杏山カズサ!
不良達の中で恐れられており、伝説の不良「キャスパリーグ」の二つ名を欲しいままにするビッグな人です!
本人は別に不良のつもりはないそうですが、私が騙されると思ったら大間違いですよ!
バンドでクールを気取りながらナチュラルに女とお菓子を食べてるタイプです!
「風評被害だっての! くそっコイツ無駄に力強いし…! あーもう、こんなことなら声掛けるんじゃなかった!」
ふっはっはー! 今更後悔してももう遅いですよ杏山アズサ!
こう見えて日々自警団として鍛錬は欠かしてませんからね! 最近はとある遊園地のパレードや施設の鬼役のお手伝いだってしてるんですよ! そう簡単にはやられません!
「遊園地と鍛錬が同列に並ぶかぁ! ッチ、こうなったらサッサと引き摺って帰ってや──」
「チョコミントアイスはやっぱり美味しいなぁ」
……おや? これはどうしたことだろうか。
普段ならこのまま私を引き摺りながら家に帰り始めるのだが……気になって杏山カズサの視線の先を追ってみると…なるほど、1人の平凡な少女が居る。
キッチンカーで買ったのだろう。コーンに一玉載せたチョコミントアイスを食べながら、十字路で私達の前を通り過ぎる彼女を杏山カズサは立ち尽くしてジッと見つめていた。
「…? 杏山カズサー?」
「……さい」
そんな彼女が動いたのは少女が立ち去って、しばらくして私が声を掛けた後。
「離れて。それから──今日から2度と私に声を掛けないで」
「…え?」
それから聞こえたのは、余りにも唐突で…思いもしなかった言葉だった。
「……え?」
気が付けば1人で、真っ暗な夜道で立ち尽くしていました。
その言葉にどれだけ気が抜けて、衝撃を受けていたのでしょうか。
私はいつの間にか1人になっていて、ポツポツと規則正しく並ぶ街灯の一つに照らされて立ち尽くしていたんです。
「……かえ、帰らなきゃ…」
震える足を……立ち尽くして棒となっていたのだろう。
よろけて、転びかけながら、私は街灯だけを頼りに家へと戻る。
今日は色々あった一日だった。スズミ先輩に自分の原点を話して、杏山カズサに突然嫌われて……何が起きたのか分からない。分からないけど……どれもこれも、明日から追いかけるべき出来事に違いありません。
「はっ…はっ…」
今日はいいことと、散々なことがあった。大変だったな、そろそろ帰らなきゃ。
じゃないと明日が大変だ。夜更かしなんてしてる場合じゃない。
さあさあ、早く帰ろう。明日から忙しくなりそうで大変だ。
そう、明日から、明日から、だから怖くなんて────。
「──緑の月を見たことはある?」
「ヒッ!?」
素っ頓狂な声を上げて、周囲を見渡して…それから、先ほどまで確かに居なかった筈の正面に1人の少女が居るのに気が付いた。
「あっはは、驚かせちゃった? もしそうならごめんね、コレから酷い目に合わせるのに、余計に気苦労をさせるつもりはなかったからさ☆」
「だ…誰ですか!?」
銃を向ける。引き金に指を掛ける。
私と同じように街灯の中に居て、なのに顔は…顔だけは真っ暗な夜で塗りつぶしたように見えない。
「あっはは! じゃあさ、誰だと思う?」
途端に脳に幾つもの恐怖と逃げようとする意思が浮かんで──その全てを捩じ伏せました。
逃げられないと悟ったなら、私に残された選択は2つしかありません。
立ち向かうか。
話し合うか。
なにせ隠れるとか、逃げるとか、そんなものが通じるとは思えない相手です。
例え喉が冷や汗で渇こうと、手が震えようと、私が出来る最善はこの二つしかないんです。
それに──スズミさんならここで最善を尽くすだけだと、前を向くだろうから。
私は、閉じようとする目を開いて、恐怖に耐えて必死に銃口を下げて、いつも自己紹介する時みたいに胸を張って、出来るだけ堂々と、遊園地で手伝うパレードの主役を飾る言葉を諳んじるように、緑の月を背負った相手へと言葉を投げかけました。
「お……お姫様です!」
「そう、私は魔……へっ? お姫様?」
──あ、ここだと。言葉で包ます機会だと、この時私は確信しました。
その後はなんと言ったか、私には定かではありません。私はもう今の状況から抜け出したいと思う気持ちでいっぱいだったので、本当になにも覚えていないのです。
「はい! 私はトリニティの自警団なのでわかります! あなたはお姫様です! なぜなら! そのふんわりとしたフリルたっぷりのドレス! 丁寧に整えられた髪! 隠しても分かる綺麗な顔! 間違いありません! あなたはお茶会が良く似合う可愛いお姫様です!」
「へ、へー…ここまで堂々と言われると照れちゃうなー…見る目あるじゃんね」
「こんな夜更けにどうしてこんなに可憐なお姫様がいるかは分かりませんが、夜道には気を付けてください! それでは! 私はパトロールがあるのでお邪魔させて頂きます! 失礼しました!」
「うん、じゃーねー☆……アレ? うーん…ま、いっか! 後で私達の騎士にしちゃえばいっか!」
そんな会話が有ったかは不明ですが、兎に角私は家に帰ることが出来て、リビングのソファで気絶して、その翌日……つまり今日。
「……私は一体何をしたんでしょうか…」
自分の言葉の責任が思ってもみない形で帰って来て、途方に暮れている真っ最中です。
「あー! 私が騎士なんて責任重大すぎませんか!?」
不肖宇沢レイサ、本日より最高権力者の護衛騎士になりました。
出来る気がしませんが、やれるだけやりたいと思います。
バグNo.18
カルメンの絶対感染しちゃいけへんで24時
別のレンタルサーバーで再現されたあるゲームキャラがブルタフに根付いたバグ。
ゲームの存在なので望まれない限り干渉は出来ないが、そんなの元からそうだったので大した苦労もなくその影響を拡大し続けた。
どんな存在かと言えば「感情の昂りや信念を捻じ曲げて
幾ら除菌しても復活するので、バグ除去には根本の発生源を特定しなければならない。
今はプレイヤーの生徒モードによる干渉によりレイサ周辺にちょっかいを出すだけに留めている。