【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
人は本来善に産まれるものですが、環境や継いだもの次第で悪に堕ちるんだそうです(スズミ書き文字)
「たすけ……──」
例えば目の前に苦しんでる一年下の女の子が居たとして、皆さんはどうするでしょうか?
呼びかける、救助する、人を呼ぶ……なるほど、どれも正しい行いでしょう。
「閃光弾! 投擲!」
私の場合だと……苦しませている原因を排除する為に、苦しんでる少女が巻き込まれるのも考えずに閃光弾を投げました。
……はい。今より6年は昔の、私は小学2年だった時の実話です。
今にして思えばなんとも思慮が足りなかった行動だと思いますが、当時は兎に角助けなければという一心で…恥ずかしながらパニックになっていたと思うんです。
「あ……あわわ…! だ、誰か呼ばないと…!」
その後どうなったのか、どうしてそこにいたのか、昔のことなので覚え居ませんが……騒がしい方に行った記憶だけはあります。
さて、そろそろ本題に入らせてください。
……え、今のが懺悔したい話なのでは…ですか?
いえ、この話の肝はここではなく、その後。
今のは必要な前置きで、肝心要なところはその後少女と再び会った後の関係性。
私の一番古い失敗の被害者である彼女が、ここ最近私に憧れたと言って後ろを着いてくる方と同一人物だと、先日ふとした会話で判明したことなのです。
「こんなことなら……こんなことなら、いっそ気付かなければ良かったと、そう考えてしまいます。自分だけではどうすれば分からなくて……シスター、私がするべき事を教えてください」
懺悔室の中、私が布越しに居るシスターへと問いかけます。
普段は1人でいる事を好み、誰かと話すことが苦痛に思えてしまうのが私ですが……今回のことばっかりは私1人では解決出来ないと思い立ち、こうして懺悔をしに行くことにしました。
「……始めに、とても思い悩んで語ってくれたその懺悔、今後生涯私、シスターサクラコの胸の内に留めておくと神に誓います。その上で、あなたに送る言葉を選ぶならば……」
清涼な、少しだけ若さからくる舌っ足らずさを持つ…鈴を転がすような声が私に話しかける。
きっと敬虔なシスターなのだろう。その一言一句が神聖さを帯びたものだと……普段教会には足を踏み入れない私でも分かるものでした。
「裁くな。そうすれば、あなたがたも裁かれない。赦しなさい。そうすれば、あなたがたも赦される。──ルカの福音書、その6章37節の言葉です」
「それは……すみません、神学には疎くて。どのような意味でしょうか?」
「さるお方のお弟子さんの1人が綴った、今のあなたのような人へ向けた言葉ですよ。その恥に裁きを求めることなかれ。それは恥を罪と断ずること。罪だと思うなら赦しなさい。恥と思う罪を乗り越え、仲良くしましょう。そんな普通の……神に恥じる所のない教えです」
「…! なるほど!」
正直なるほどとは言いましたが、その言葉に込められた真意は半分も理解出来ていなかったと思います。
ですが──"裁かずに、罪だと思うなら許すべき"
その言葉にはなんだか心打たれた気がして、心がスッと軽くなる感覚を覚えました。
「昔の偉い人もそう言っているのです。別に従えという訳ではありません。ただ、正しいか不安なら──神にも認められたこの教えは、二千年以上揺るぎなく人々に伝えられてきた
「──はい。今日はありがとうございました。お陰で顔を合わす決心が付きそうです」
「いえいえ。それではあなたに神のご加護が在らんことを──Amen」
さすがは専門家、数時間悩んでたのが嘘のように迷いが消えました。
今まで神学に興味はありませんでしたが……今後はしっかり学んでみましょう。
「そこの片翼のミズ、尋ねたいことがある」
「………?」
そんなことを考えながらパトロールを再開している最中、自分を呼びかけられたと思って振り返れば、不思議な生徒が1人、ぽつねんと私の前に立っていました。
ただ不思議と言っても雰囲気が、という話ではありません。
服は一般的な不良生徒のように着崩しているだけでし、髪は羊のようなクルクルとした癖っ毛ですが、一般的な金髪。
瞳孔が横に長く羊っぽい特徴が印象に残りますが、その程度ならキヴォトスでは大したものではありません。
角はなく、翼はなく、尻尾もなく、耳が尖ってもいない。ヘイローがある、一般的なトリニティ総合学園の、気だるげな女子小学生。
ならば何が不思議なのか。
「緑の月に行くとして、風船は何個いるのだ?」
「あ…えっ?…」
「どした? 鳩に豆鉄砲当てた時みたいな反応して」
首を傾げられたが、寧ろ私の方が首を傾げたかった。
変人豊か……もとい犯罪経験者豊かなキヴォトスではあるが、仮に彼女達の前にこの少女を連れて行ったとすれば、全員が口を揃えて変人であるという見解を得られるだろう。
手に持つならともかく首? 痛くないんですか? そう聞きたいが、先に質問されたのは私の方だ。それならば先に私の方が答えるべきだろう。
「ああ…すみません。えっと、もう一度言って貰えませんか?」
「なんだ、聞こえなかったか。ミズ、私は緑の月に行くための風船の数を尋ねた。だから答えろ」
「……それは、なにか……どんなお話に書いてありましたか?」
要領は得ないが、緑の月と風船の下りで何か童話に影響されたのだろうと結論付ける。
日々をパトロールや勉強に費やしている都合で読書には無縁ではあるのだが、これがメルヘンなお話に影響されたのはなんとか理解出来たのだ。
「ミズは知らないのか。始めに言うなら、あの月は書かれたものではない。
「はっ…はぁ…?」
「
本当にどうすればいいのだろうか。先ほどまで思い悩んでいた羞恥心の何倍も答えの見えない質問だ。この分だと元々どんな話かも教えてくれることはなさそうですし。
ここで適当に誤魔化して逃げるのも手ではあるだろうが、仮にも通行人の中から質問相手に選ばれた身。子供の不思議な質問の一つや二つ、答えられなければ手折れだろう。
「……答えるには情報が足りませんね。幾つか質問しても宜しいでしょうか?」
「聞いてなんだがミズは真面目な奴だな。いいぞ、何でも聞け」
「ありがとうございます。では、緑の月とは?」
と言う訳で、最初に目的地を尋ねてみた。
「魔女と月の約束だ。魔女は死者を冥府から連れ戻せるが、その為に月明かりを使うんだ。だから魔女は月明かりを借りる間、代わりに月は魔女の光を受け取る。だから、緑は魔女にない色でもある」
「……つまり、緑の月は緑に光る以外はただの月ということですか?」
「全然違うぞ。ミズ、月がなんの光を反射するのか知らないのか?」
話が急に科学的な方向に来た。
本当にどんな話に影響されたのかを先に知りたい。せめてヒントが欲しい。
「…太陽ですね」
「そうだ。だから月は白くて赤くて青いんだ。火の光だからな。じゃあ、緑の月はなにを反射してるんだ?」
「今の話なら魔女です…よね?」
「なんだ、ミズはもう分かってるじゃないか。月は賢い。反射は月が太陽から要らないと捨てたもの。魔性だの狂気だのな。だから、ただの月なら魔女からの贈り物なんて受け取らない。賢いからな」
「そう…なるんですね?」
「そうだったぞ。だから緑の月は
言葉遊び。
そんな4文字が脳裏を過ぎるが、ともあれ目的地が得体の知れないものなのは理解した。
ならば次、移動手段の質問だ。
「……では、その風船について伺っても宜しいですか?」
「私が緑の月に行く為の船。船頭多くして山を越えて、月に行きたい」
「その前に大気圧で……いえ、近いなら行けそうな気も……」
「考え方が違うぞミズ。船が運ぶのは自分だけだ。コイツらは決して自分から私を運ぶつもりはない」
「……ええと」
「何個あっても風船は人を浮かべようとはしないってことだ」
なんだかメチャクチャだ。
要領を得ないし、彼女は初めから自分の中で答えが出ているように見受けられる。
禅問答のようで、夢を掴むような話だ。
なら、私の方もメチャクチャに答えれば良いのだろうか。
ふと思い浮かんだ考えは、さっきの適当に答える考えと同じなのに、それが良いと思えるものだった。
きっと、私がこの問答を早く終わらせたいと思い始めたからだろう。
「……なら、一つでもあれば辿り着けると思います」
「ほう、その心は?」
「間違えて自分ではなく人を浮かばせるなら、どうするか迷わせるべきです。それなら……風船に自分だと間違わせるのが大事なら、一つであっても出来る…かと」
「ふぅむ……そうか」
そう答えると、少女は顎に指を添えてブツブツと考えに没頭し始めました。
なんだ、初めからこうすれば良かった。
また薮を突いて絡まれるのも嫌だったので、そろりと後退り彼女から離れます。
気付かれない内に良いところで振り返り、立ち去ろうとして…。
「ミズを認めよう。
上から見下ろすように、逆さまに浮かんだ少女の頭だけが見えて、その頭はそれだけを言い残して。
「!?……えっ?」
慌てて飛び退いて、後ろも上も、周囲を見渡して……もう少女は居ないと気づくには、さほど時間は必要ありませんでした。
ぐちゃりと。
肉が破裂するような小さな音が、空から聞こえてきましたから。
「……雨?」
呆然と……まさか本当に飛んで、翼もないのに、首に結んでたのに逆さま、水風船…? などと取り留めもないことが頭によぎって、頬を滴った冷たい……晴れ渡った初夏にしては不相応なくらい冷たい、冬の雨水のような青色の水滴が。
「…………気味が悪い」
頬に滴ったものが、その空に浮かぶ青い絵の具だと分かると、なんだか不気味でしょうがなくなった。
足早にその場を後にする。妙な不快感が、後味の悪い話を読んだような気分と共に私の心が乱れる。
変な白昼夢を見たのだろう。
不思議な少女だったから、この答えに満足して帰ったのだろう。
名前も知らない相手だ。首に風船を括るような変な子供だった。
初めに浮いてなかったのだから空に飛ぶ訳がない/風船は1つで充分と言った。
仮に飛んだとして、空に追突するようなものはない/緑の月に行きたいと言っていた。
私が消えるキッカケになった訳ではない/適当に答えただけだ。
形容し難い体験で……自然と足取りは図書館へと向かった。
「……結局、緑の月ってなんなんでしょうか」
幸い放課後で時間はある。私はパトロールを中断し、彼女の真意を知る為にそこに向かった。
「すみません、緑の月に関する本ってありますか? 例えば童話に登場するような…」
「緑の?……少し待っててくださいね」
素人が探しても仕方がないだろうと。
白い制服に明るい茶色を二つに結んだ図書委員に尋ねてみれば、5分と掛からずに一冊の本を私に渡してきた。流石は司書さんだ。
「最初に言っておきますと、緑の月を主題にした古い童話はありません。しかしそれを連想させる…数ヶ月前にあるお方から提供された本なら、私は1ページ分だけ知っています」
見せてられたのは、古びた……1ページ。
左下に小さく680と書かれた、とても短い文が中心に書かれただけのものだった。
「ここで見せたのは内緒ですよ? これ、ウイ先輩でもここしか復元出来なかったくらい、古くて貴重なものなので。あ、触らずに…大声もダメですよ? 砂粒の集合みたいなものなので」
本が砂粒…? そう思いもしたが、貴重なものを特別に見せて貰う身だ。
言われた通り、覗き込んでその短い文を読んでみた。
「……すみません、どのような意味ですか?」
「先輩曰く「昔の中二病になった詩人が書いたんじゃないんですか?」だそうです。抽象的すぎてなにも伝わらないだとかなんとか……メルヘンチックなので、童話といえば童話かと思って持ってきましたが……すみません、期待に応えられなかったようで……」
「いえ、そんなことは…! むしろ手伝ってくれてありがとうございます」
大声を出しそうになるのを押し留め、その後は念の為に詩と翻訳の移しを頂いてから自分なりに探し……大した結果も得られず、退館時間となったのでその場を後にすることになった。
「一体何だったのでしょうか……いえ、この際忘れましょう」
童話の話かと思えばそんな訳でもなく、結局彼女の言った言葉の意味は分からず仕舞いだった。
小さなメモに書かれた文を見る。司書さんが丁寧にも発音や訳まで記してくれたものだが、生憎今後使われることはないだろう。
「ふむ…」
夕焼け空を眺め、どうしてこんなことしたのかと疑問が湧いて……折角の詩なら試しに誦じてみようかと、公園のベンチに座って目を閉じる。
「……"Nāvis ventōrum raptātur, turbātur agmen in āethrā,"」
(──"風の船は奪われ、空の群れは乱れる ")
とあるお方…最近1年ながらティーパーティのホストとなった人の1人から貰ったものだそうだ。
小瓶に入った僅かな砂を古書の残骸と言って、図書館に寄贈したのだという。
「" lūmen lapis trānsit per viam Lūnae."」
("光の石は月の道を通り抜ける")
なんでも自分はもう無くても困らないからと、どこかで拾ったものと、その人は言っていたそうだ。
「"Flūctibus errantis praeda datur, gignitur alter in orbem,"」
("漂う波に略奪され、異界が新たな円環に生まれる")
緑の月を題名とする四節の詩。
意味は…よくわからない。ヘビメタは半分雰囲気を楽しむものではあるが、それに感覚的には近い印象は受けた。
その印象を表すならば……呪文。
「"spīritus ignē sacró mentis in ārdet.──Lūna smaragdī"」
("精神は心の聖なる炎に燃え立つ──そうだろう? エメラルドの月よ")
……何となく、神秘的なものに触れた感覚がした。
なるほど、確かに詩ではありそうだ。私でも感じ入る要素があったのだから。
そうして眼を開けたとき──。
*スズミは 「緑月の魔女Lv.1」の スキルを継承した!*
→「風の船 l」「集合体の混乱 l」「魂を導く l」「月明かりの道 l」「空間を奪い取る l」「異界の生成 l」「時間への適応 l」「月の膜 l」「月の火 l」「月の洗礼 l」「月の加護 l」「肉と魂の調和 l」「月光の祝福 l」が 使えるようになった!
仕様No.16
忘れさられし
誰もが忘れていただろうツクールにデフォルトで入っていた魔法。
と言っても魔物が自身を物理的に成立させる為の補正でしかなく、効果も魔物が使っている能力の再現であり、魔物を作る時に利用した要素の使い回しであり、リアルに存在する特許の切れた魔法のパクり。
魔物はゲヘナの火山奥地に封印されたが、魔法の知識までは取り締まり出来なかったようだ。
取り締まりする必要すらないほど煩雑な技術とも言う。
しかし「緑月の魔女」のスキルはゲーム的に魔法を使う為に必要な要素の大半を補っており、継承した呪文の一文を唱えるのをキーとして容易に使えるようになっているようだ。
Lv.が上がるほど1日で使える回数が増え、魔法の種類も増える仕様。
なお、誰がこのスキルを作ったのかは>>1もゲーム運営補佐AIも知らないらしい。