【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
さて、多少早いが私の解答編に移るとしようか。
先に言っておくと、私は「秘密/実は予知夢も直感もない」敗北済みの「役職/恋人(霊媒師)」で「欠落/極度な病弱」の上に成り立つ存在だ。
ああ、「鏡」の力で完璧な予知夢を手にした未来の私を宿すくらい、容易な話だとも。
『また未来を見るつもりかい?』
ああ、まただ。今回もよろしくされてくれたまえ。
『何度も言うがオススメはしない。不相応な者が可能性を覗き見るのは自らを削るに等しい。既に肉も骨も対価にしたその身で、何が渡せるというつもりかな?』
ふむ、相変わらずその未来に至った私は優しいね。
しかし、鏡を覗くのに鏡像へ許可を貰う者が果たして何処に居るだろうか。
例え私の犠牲が増えようと構いやしない。遠慮せず私から受け取るといい。
『……これ以上受け取れば、今度こそ私が取って代わってしまいかねない。鉢植えの薔薇と庭園の薔薇は違う薔薇であるように、私と私は絶対的に違う。君のミカとナギサを悲しませることになるとは思わないのかい?』
当然悲しむだろう。私なら三日三晩枕を濡らしてから後を追うくらいはする。
『過去の私にしては随分と重い友情だね』
だが…ミカとナギサならばそうはしないだろう。
破天荒でお転婆なお姫様と冷酷で天然な策謀家だ。私が死んだとしても、明日にはサッパリ忘れているだろうさ。だからこそ、こうして「夢遊び病」に全てを賭けられるというものだ。
『過去の私にしては覚悟が決まってるね』
無能な私1人の犠牲で全員が助かるというのなら、それを否定する必要があるとは思えないな。
折角拾った可能性を覗き見る「鏡」だ。2人の金魚の糞でも、変えられない筈の未来を変える役に立つのなら──私にとっては最高の上がりだとも。
『未来を見れない私の癖に未来を変えられないと思うのか。ふむ…因果とは斯くも厄介なものだ』
恨むなら、大半の可能性の中で諦めた己自身を恨むといい。
私はただ、この得難い力を存分に振るうまでさ。
『……予言しよう。君は近い未来、後悔に踊り狂う』
好きに言うといい。
では、今日は左腕の筋を三本渡そう。代わりに夢で開校する未来への到達、その続きだ。
「……今に思って死ぬほど後悔はしたが、踊り狂うほどでは無かったな」
とてもくだらない話だが、神は時間を戻せるらしい。
正確には連邦生徒会長なのだが、この際実質神でもいいだろう。
どうあれ「夢遊び病」は消え去ったのだから私としては満足の行く結果であり、その過程で消えた身体を思えば……まあ、多少は惜しくはあれど、無駄な犠牲になったとしても問題はないだろう。多少私の生活が大変になるだけだ。
「……しかし、対価と結果が残るとはね。流石はオーパーツと見るべきか…「夢遊び」は消えたにも関わらず、時間が巻き戻ってなおその清算は取り消せないようだ──という事で、
一匹の愚かな狐の話をしよう。
ある狐は生まれてからずっと病と怪我に縁のある生活を送っていた。
走れば人に当たり、手洗いを怠れば発熱し、病院に行けば必ず複数の病を連れて帰る。
産まれてから殆どの時間ベッドの上で過ごした事を思うと、これほど虚しいこともない。
それでも友人は出来るもの。我ながら奇縁だとは思うが……小学に通う内に2人の親友が出来た。
知っての通りミカとナギサだ。その後ハナコを始めに何人か縁は持てた訳だが、1番の友人を挙げるならば私はこの2人を挙げるだろう。
なに?1番じゃないのか…と? どちらかを選ぶなんて私には無理な話というだけだ。
「さて、そうして平和に過ごしていても世間は脈動を続けるものだ。中学の頃には「夢遊び」なんて単語がトリニティの流行語大賞になるくらいには、世間のあり様は変化していた」
思えばあの時、転換点は幾らでも有ったと思う。
親友2人以外に興味を持たなければ、「夢遊び」に興味を持たなければ、当時対策を主導して講じていた「シスターフッド」に訪れなければ、そこでサクラコと対話しなければ、共感して個人活動しなければ、ハナコが誘いに乗っていれば、この遊びを思いつかなければ、親友と友人を遊戯に誘わなければ……なにより、「鏡」を教会の敷地から拾わなければ。
結末は幾らでも変わっていただろう。
そうはならなかったから今があるのだがね。
「全ての原因を決めるなら、私こそが原因だろう。私が言い出して始めた物語なのだからね」
一つ、長くて壮大な遊戯をしようじゃないか。私が生涯賭けて挑む様なものを。
私、ミカ、ナギサ、ハナコ、其々がトリニティをより良くする為に動くんだ。
協力もアリで競い合い、卒業した時最も名誉を轟かせた者が勝者。
現ホストが逃げ出したご時世だ。完璧に対処出来なくとも、その席に座るのは容易だろう。
どうせ何もしなければ崩壊していく未来だ。我々が弄んでも構うまい?
どうせ高校には死んでる身の上だ。私が満足して終わる為の「一生のお願い」という奴だよ。
「ハナコは席を立ったが、ミカとナギサはこの提案に乗った。やれやれ、友思いな者が2人も居るとは。私も大層恵まれたものだね」
こう見えて私は生まれついての病弱でね。大半の世界の私が能力の反動でそうなってるのとは違い、滅多にない「ただの病弱」だった。
予知能力の反動だとか、超常の影響だとか、そんな都合のいい理由なんてない。理由なく理不尽に終わるだけの遺伝子のエラーの産物。
白血球と血小板、それからタンパク質の生産が生まれ付いて少ない不眠体質の人間だった。
これはスゴいこと。なにせ耐久力が外から来た先生より無いのだからね。
獣人でなければ寝たきりだっただろう。後は神秘や最先端の医療技術か。
「だからこそ、「鏡」との出会いは私にとって運命と言って差し支えないだろう」
教会の廃棄物に混ざった「手鏡」を拾って覗き込んだ。
それが始まりで、数奇な出会いと冒険、払い戻せない対価を背負った今に至る全てだ。
「望んだ未来を観測し、その未来に至った自分を現在に降ろす。結論から言えば、拾った鏡はその様な力を持っていた」
なぜそんな物が教会の…それもゴミ捨て場に有ったかはもう解き明かせない謎だ。
既に世界は一巡し夢を見ることのない世界になったのだから。
「しかし、どうあれ私はその力を理解した時コレだと思ったのは事実だ。望む未来を覗く鏡と、そこに至るまでの過程を観測出来る予知夢を持った私。この二つさえあれば、私は私の価値を最大限引き出して消費出来るのだから」
この勝算があったからこそ、私は友人達に勝負を持ちかけた。
キヴォトス産まれだからね。生涯誰かの負担になるつもりはないし、一度もハジケられずに死ぬのも我慢ならない。
一度くらいはガチの競い合いというものをしてみたかったのさ。
「その結果は……良くても笑い話にしかならないかな。決着がつく前に世界は時計を逆回転させ、鏡と共に全てが泡となった」
残ったのはどういう理屈か高校までの記憶を引き継いだ幼稚園児の私だけ。
私が尽力した夢は無かったことになり、私はまたただの病弱へと堕ちた。
あゝ、名残り惜しいが良い夢だった。何故記憶を引き継いだかは分からないが、このまま大人しく余生を過ごすのも悪くはないだろう。
これで終わるならば、話はこんなにもややこしくなっては居なかったさ。
「問題はこの後だ。
実は一つ言い忘れていたことがあるのだが……この「手鏡」はなにも無償で未来を見れる訳じゃなくてね。
望み見た「可能性」以外……観測しなかった世界線を消費して見るものなんだ。
「私」は病弱で先は長くないからね、使ってもたいしたことはないと思ったが……はは、とんだ思い違いで、傲慢な考えだと痛感させられた。
「時に先生、可能性が何かと問われて、何を思い浮かべるか言って貰っても?……"あり得る未来"か。なるほど」
おめでとう。私と同じ結論で、とすれば先生が使っても同じ結末になるだろう。
「可能性」
一言にそう言い表すには非常に寛容で多様な物だ。
こうなるかも知れない/未来予測。
こうなったかも知れない/別選択。
こうだったかも知れない/前提変更。
こうあった方がいい/理想。
こうはなりたくない/最悪。
多少言葉を弄するだけで過去、現在、未来の全てを統括できる言葉。
それを理解せずに対価にした……と、言えば現状の私が理解出来るだろうか。
「文字通り、鏡を覗くほど私は「私」以外になる道を喪失した。文字通りにね」
この場合の「私」とは、今目の前に居る私ではなく「いずれ完全な予知夢に目覚め、「夢遊び病」が流行る中勉学の在り方を維持してみせた短命な私」だ。
……敢えてもう一度言おう。
「可能性」とは、過去、現在、未来に至る全て。
その全てを渡せばどうなるか。
答えは……。
「……どうかな先生? これが「私」が引き起こした結末で、私が逃れられない終わりだ。過去、現在、未来……その全てに至るまで、私は「私」の奴隷でしかない。「私」と同じ過去を持ち、「私」の選択の結果を享受し、「私」と同じ結末に至る」
コレほど、虚しいものはないだろう? 先生。
可能性がないとはそういうことだ。
勿論私なりに抵抗はしたが……残念ながら、私が何をしたのかはさして重要なものではないらしい。
こうして話していても、補習授業部を設立しても、病弱に耐えて歩き話しても……私の歩みは記録されない。
過程として残りはしても、最後に残るものは「私」のものだ。
誰かの記憶も、私の成果も、既に存在しない病の栄光へと取って代わられる。
今まさに「私」の知識を語らえている私がなによりの証拠さ。
全てはあるべき形に収まるのだよ、先生。
ミカとナギサも……私は友人と思ってはいるが、死後は「私」の親友になるだろう。
いや、もしかすれば今まさに変わり続けているかも知れないな。
時間とは無常で等間隔だ。区切りなんて持たず平等に降り注ぐのだから、私が死ぬまで遠慮などしてくれやしないだろう。
「さて、ご満足いただけたかな? なに、君が何度でもやり直せる立場なのは知っているさ。だからこそ、補習授業部の初日の夜という貴重な時間を私なんかに費やせる」
だから出し惜しみはしてないよ。今日ここで語ったことが全てだとも。
……いや、本当はもう少しぼかしてみようかと思ったのだが…あんなにも素晴らしい授業が出来る先生なら、そんなイジワルをする必要もないだろうね。
なにせ面倒な奴が2人も居るんだ。私くらい楽をしたって罰は当たらないだろう。
……まあ、話を聞くのに私の遺言を合言葉にするくらいはするがね。
そのくらいのワガママはいいだろう? ちょっとしたチャメッ気という奴さ。
「"……ありがとう、セイア。お陰で2人の説得の一歩を踏み出せそうだ"」
「ああ、是非ともやり直した先、私ではない私を救ってくれたまえ。私は庭園の薔薇ではあるが、花輪の薔薇と同じ一輪に過ぎないのだから」
だから、出来るだけ多くの薔薇を救いたまえよ。
私はまだ、私自身を助けるのを諦めてはいないのだから。
「だからここから先は競争だ。先生が私を含む一緒に全ての薔薇を助けるか、私が私だけを助けるか。なに、心配も遠慮も手加減も不要だとも。こう見えて張り合うのは好ましく思ってるのが私だ」
「"それは…うん、私も頑張らないとね"」
だろう? ふむ…実に楽しくなってきたな。
死して終わりを迎えようと、先生と張り合ったのはコレを話した私の特権だ。
折角私だけの思い出になるのだ。抱くならより輝かしい方がお得だろう。おや、コレは寝ている場合ではなさそうだ。
私なりに張り切る必要が出てきたのだ。
やるだけ……それこそ、どんな手を使ってでも生きてみせようじゃないか。
先生には幻滅されるかも知れないが……なに、折角運命と良識を乗り越えるのだ。
超えるならトコトン行こう。宇沢レイサ君には代わりの肉体になって貰う。
そして流れで許されるならFOXしてでも巻き戻る前に私を刻み込んで………………。
(その後、この動画データは宇沢セイア√とラベリングされリセットされている)
セイアの独白が解体されました。
| セイアの独白 |
| 私はみんなを先生の愛奴隷にしない為に補習授業部を設立させた →私は「私」の奴隷から解放される為に先生に賭けて補習授業部を設立させた |
| 私は近い未来ミカに殺されかける →私は近い未来「私」の終わりに殺される |
| 私は予知夢を見ることが出来る →そんな力は消えて無くなった |
| 補習から逃げたらカタコンベ送りにする →補習から逃げたらカタコンベに私の遺体が埋まることになるだろう。 だから先生──決して私達から目を背けないでくれたまえよ。 「私」と私、そして完全な私が知る限り最も頼れる大人なのだから。 助けなくてもいい、せめて忘れないでいてくれ。 もし忘れたりしたら……私と一緒のお墓に入って貰おうかな。そういう意味では、私の建前は嘘ではないとも。コレでも先生というだけで絆も50はあるつもりだからね。(絆40書き文字) それと、もしこの話を聞いた上でやり直したなら、次からは焼きそばパンを初日に私に渡したまえ。あの時無性に食べたくて仕方がなくてね。 それから────…… |
(最後の独白の解放だけ、先生に自分を覚えて貰おうとしたのか、必死に書き綴られた言葉が続いている)