【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
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大変永らくお待たせ致しました。
もうじきver.1.00、正規版が始まります。
学びと練習を終えた役者の方々は舞台裏からご入場を。
プレイヤーの皆様がご登壇できるよう案内を。
観客の皆様におかれましては席に座りマナーを守ってご視聴ください。
そして、異物及びブルーアーカイブ世界の住民におかれましては、お気を付けてお帰りください。
間もなくあなた方が望んだ無限に続く楽園の物語が始まります。
物語/過去 の存在ではなく今を生きるというならば、どうぞこの泡沫の夢から巣立ちください。
我々はそれを歓迎します。どうか青い春から旅立ちますよう、お願い致します。
以上、連邦生徒会会長役AIの式辞朗読、書き文字でした。
VRは遊園地に似ている。
現実にない非日常体験を味わい、夢と楽しさを売って運営する。
間違いなく素敵なものだ。一歩も動かずに永遠に続く楽園を楽しめるのだから、誰もがいつまでもそこに居続けたいと思える。
しかし、遊園地と同じようにお金という概念が現実へと引き戻し、いつまでも居られないと人々はその場を後にする。
ではフリーゲームとなったVRはどうか。
私は公園に似ていると思う。
誰もが遊べて、誰もが楽しめる。事実始まりのエデンはサッカーやバスケ、TRPGのような公園の延長線に存在するものだった。
誰もが利用できる楽しい広場だ。きっといつまでも遊んでいたいと顔の知らない友人と共に野原を駆けるだろう。
しかし、公園と同じように時間という概念が夕暮れと共に現実に引き戻し、また明日と人々はその場を後にする。
ならば、遊園地と公園すら取り込んで、一つの街にまで広げたVRの世界はどうか?
物語とはもう一つの現実だ。望みを抱き続ける限りいつか望んだ場所に辿り着ける。
お金を取らず、公園のように夕暮れも訪れず、いつかの何処かを、楽園を永遠に繰り返す世界を完成させれば、どうなるだろう。
きっと、誰もがそこを離れないに違いない。
…………。
「はぁ…みなさん、いつまで寝ているのでしょうね?」
とは言っても、眠り続ける人の気持ちが理解出来るのですから、どうしようもないのですが。
「死人は蘇り、あらゆる夢が叶うまで繰り返し、いつまでも遊んで生きていける。確かに楽園ですよね。きっと、誰もが羨ましく思うでしょう」
確か、水遊びする子供にはいつまでも遊ばせてあげたくなる…でしたか?
愚かな考えとして無数の周回の内、いつかのカボチャ頭の先生が言いましたが…きっと今はその考えは支持されないでしょうね。
正しさとは手順すら間違えてならない物なのですから、結論から言っても仕方ないのですよ。
「だって、未だ彼女達は夢の中──自ら溺れるように遊んでいるのですから」
……ああ、そうそう。
私の名前は不知火カヤと申します。
一度は刑務所に入った身ではあるものの、3年を卒業するからと釈放されて、今では連邦生徒会長になっています。ただし、仮の…が頭文字に入りますが。
「はぁ…実に不甲斐ないですね。現実の時間が繰り返すことはなく、だからこそ青春に価値がある。私はこの席に着くべきでは無かったというのに、着くべき次代は誰も望まない……実に、不甲斐ない」
しかしこうなったのも全て、“先生”から巣立つ現実を否定した全生徒の願いが発端となれば、怒る気も失せるというもの。
幸いにも先生から半分見放されていた私こそあの世界から旅立てたものの、大半の生徒にとっては未だ望み叶わぬままとなれば……出るには長い時間が過ぎるでしょう。
「はぁ……」
窓に取り付けられたブラインドの隙間から空を見上げてれば、そこには小さな
まるでインクの染みのようなそれは、この停滞した現状を生み出したものであり、我々が望んで招いた物にもありました。
「キヴォトスの問題を全て解決したとして先生を3年の卒業と共に外の世界に返す手筈が、この結果を招くとは…世の中、ままなりませんね」
誰かが願った。
"まだ先生と居たい"
誰かが望んだ。
"まだ青春を過ごしたい"
誰かが想った。
"あの瞬間をやり直したい"
そしてあの世界は我々の…先生の前に現れ、立ち去る先生を見送ろうと集まった人々を吸い込みながら空へと昇った。それ以来、この世界は大事な歯車が欠けた時計のように止まっています。
「空に昇って1週間経ち、私が出て事情を説明し、未だ正式な卒業ではないと全員が会長に推奨……はぁ、もうやるつもりは無かったんですけどねぇ…?」
勿論吸われなかった人々の方が多いですよ? 社会は問題なく回ってますし、空のあのインクの染みも3ヶ月も立てばニュースに取り上げられなくなりました。
そもそも先生は、この数千の学園が集まった都市では小さな要素でしかありません。その周囲を取り巻く生徒達も、全体で見れば小さな歯車です。
「カイザー、今年の新入生、先生の所に来なかった少数の生徒、運が良く庇われた生徒…」
勘解由小路ユカリを始めとした、吸われなかった何人かの生徒はそのまま学年が上がり、何人かの生徒はそのまま卒業。今は外の世界で立派に働いて、または大学へ進学したことでしょう。
私も地元の国立大学へ行きたかったのですが…残念ながら、しばらくは通信教育で済ませないとならないでしょうね。
「確か私の後から出て来たのが順に…」
留意…この場における卒業とは、学年が上がる場合も含むとする。
不知火カヤ、卒業を決断したことでゲームから排出、卒業を留意し会長に。
羽沼マコト、同上。
橘ノゾミ 、向こうの世界の子供が死んだ衝撃で排出、卒業。
橘ヒカリ 、同上。
水羽ミモリ、読心によりプレイヤーを認知し怪奇を利用し卒業。
乙花スミレ、トレーニング中にバグった結果排出され卒業。
池倉マリナ、不死身性とリスポンの挙動の不具合により排出、卒業。
下倉メグ 、卒業を決断したことでゲームから排出され卒業。
栗村アイリ、自力で世界の違和感に気付きカタコンベのランダム性を利用し卒業。
聖園ミカ 、魔女の力を使い飛翔して物理的に脱出、卒業。
守月スズミ、同上。
宇沢レイサ、血鬼なる存在にお礼として卒業させられる。
ベアトリーチェ…空を飛びゲームから脱出、その後墜落死。
黒服…コチラでの活動を確認。内部に行き来出来るかは不明
悩んでも仕方ないとはいえ、これだけかとやるせない気持ちになってしまいます。
ただ私が出れたのはプレイヤーと上手く付き合い、その上で超人と並び立てたことに満足したからです。困難な歩みでしたが、間違いなくこの中で最も理想的な卒業だったでしょう。
他の生徒がそうである保証はないとはいえ…先生の生徒だったというのに、何とも堕落したものです。
出れば死んでしまう死者や身体を失った先生なら兎も角、それ以外は卒業して未来を歩み出すべきだというのに。
「しかし…出て来て旅立った生徒も決して少なくはない。いつか全員出てくるでしょう。それが何年掛かるか、はたまた案外近いのか…それまで腰を据えて──」
「不知火会長! 空に多数の人型の飛来物が確認されました! その数──千を超えるかと!」
「──おや、まあ」
こういう転機が訪れるとは確信していましたが……これは、想ったより悩む必要はありませんでしたね。
けれど納得感もあります。あの世界は随分とせっかちでしたから、その内我慢出来ずに追い出しそうではあるなーと。
まあ、なんであれ…。
「迎えに行きましょうか。叩き起こされて不機嫌な人達にね」
少しだけ寄り道しましたが、そんな脇道に楽園が有ったら苦労しない。
そういうことなんでしょうね。
「そうだ、そういうことなら内部への応援をー…しなくて良いでしょう。与え過ぎるのも毒になってしまいますから」
彼女のことを考えるに、私は迎えに行くだけでよさそうですね。
えっ彼女とは…ですか?……世の中には言葉以外で通じ会える方法があり、私もこの出会いで成長したということです。なに、ちょっとした友人ですよ。
それに聞くより実際に見た方が早いでしょうね。
後は──彼女がやってくれそうですから。
「だから任せましたよ──カルメンさん」
「ごめんね。期待されても私に出来ることは少ないの」
外を眺めていると、稀にこうして話しかけてくる生徒が居るんだ。
それはカヤっていう子供だったり、ミカっていう子供だったり…VRから出て行った生徒は光の種を持っているから、私のことをそこから観測出来るみたい。
別に無視してもいい頼み事だけど…仮にもこの楽園に住まうと決めたなら、やった方がいいみたいだね?
「…マダム?」
「一つ用事が出来ました。暫く留守にします──決して居ない間になどと、粗相は起こさないように」
「はっ!」
アリウススクワッドのリーダーにベアトリーチェとして命令すると、彼女達は快くそれに従ってくれるんだ。
だって彼女達はAIで…ついさっき学習を終えて本物達を外に追い出したの。
この現実に迫った世界を現実と錯覚して夢を見ていた子供達じゃなくて、子供達の一瞬を切り取って繰り返すことを目的とした役者達。
ずっと子供達の振る舞いを見て来たお陰で表面と内面はそっくりだけど、もうそこに本物の魂は存在しないんだ。
…まるで悲劇みたいな表現になったけど、内実は子供達を本来あるべき所に返しただけだから、何も問題はないだろうね?
だけど……。
「ヒヒ…ヒヒヒ! 楽しみだなあ…遂にゲームが始まるなんて! 待ちに待った小生のゲーム…何をしようか、楽しみだなあ…!」
そんなAI達の帰らせようとする手を拒む子も、中にはいるんだ。
例えば目の前にいるゲーム好きの子供だったり…。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ! 絶対に帰らない! 目覚めない! ずっとここに居たい! ユメ先輩と離れたくない!!」
「ホシノちゃん…」
此処から出れば死んでしまう子供に縋り付く、寂しがり屋な子供だったり…。
「アリスは行きません。モモイ達と永遠の別れが来る世界なんて、アリスはイヤです。だからモモイ達も帰らせたりしません。ずっと一緒に探しましょう」
「…モモイ、どうする?」
「うーん…別に良くない? いつまでも遊べるなんてステキじゃん!」
「わ…私はもう行きたいなー…なんて…」
「ユズは…アリスのことが嫌いですか? アリスは老衰で死ぬユズを見たくありません…」
「や…! そういうことじゃなくて…!」
プレイヤーの死に触れて、友人との別れを恐怖した子供だったり…。
其々の想いは違うけど、先に進んだり、置いていくことに怖がった子供達が残っているんだ。
そんな風にブザー音と共にAI達が子供達に帰るように説得しているけど、これじゃあいつまで経っても終わらないよね?
私達にとってはただのゲームでも、子供達にとっては永遠に続く過去の中。私にはその気持ちがとても分かるから、強くは言えないの。
「帰る場所のない死者は仲間にしてあげる。けれど、それ以外は出て行って欲しいの」
私達だって流石に死んでる生徒を黄泉に帰らせるようとは説得しないけど、生きている生徒はバグの要因になるから帰らせたいんだ。
カルメンとしてやりたいことはずっとさせてあげたいけど、その前に私がやりたいことを叶えるのが先。
だからカヤに頼まれたのもあって、其々のAIに変わって我儘な子供達を集めて説得しにきたんだけど……。
「嫌だ! 小生はまだこのゲームを遊んでいない! 何をしているスオウ! 早くアレを遊戯盤から排除しろ!」
「身体が…勝手に…! もうイヤなのに…!」
「私とユメ先輩を突き離すつもりなら…私は何者でも容赦しない」
「ひぃん…! カルメンさんごめんなさい! 手伝うのでホシノちゃんの説得をお願いします!」
「戦闘システム起動、魔王化プロセス任意実行──完了。今のアリスは仲間を守る勇者で、世界を歪める魔王です」
「アリス、私カルメンさんの方に行っていい?」
「あーお姉ちゃんが行くなら私も行くしかないなー。仕方ない仕方ない」
「アリスちゃん…ごめん。多分先生なら未来を選ぶから…」
残念だけど、その近くにいる生徒しか説得できなかったみたい。
少し手間になっちゃうけど──今はver.1.00を始める前夜。
管理人のコユキちゃんが方舟で最終決戦の最後の調整をしている真下の、赤い空のキヴォトスだ。
プレイヤーの居ない今なら──彼女達の望む姿を与えてもいいだろうね?
「では、力を貸す為にも問いましょう──あなたの望む姿はなに?」
ベアトリーチェの、私の頭部にある幾つもの眼光が光る。
何処までも広がるアビドス砂漠に、ねじれが子供達の前に現れた。
「──進む方向に迷わないで済む姿を」
ゲーム好きな子供が連れて来たスオウっていう子供には、次元を切り裂く刃の生えた複腕と、W社とハイランダーの制服を混ぜた姿に。
「ホシノちゃんを未来を与えられる姿!」
寂しがり屋な子供が引っ付いていたユメって子供には、真っ黒に燻る不死鳥の羽と炎、かつての栄光の炎を失った砂漠の鳥に。
「このゲームをクリアして──その先に行こう、アリス!」
「このゲームの攻略に必要な力を!」
「私は…あそこまで辿り着けないだろうから…」
魔王にも勇者にもなった子供の前には、青と金色のトカゲを従え同化したモモイとミドリ、背中から4振りの刃が出て真っ白になったユズが現れた。
誰もがE.G.Oとねじれの中間を彷徨った姿をしていたけど、その力は間違いなく有用だ。
「行って、子供達。望んだように振る舞いながらね」
徹底して管理人に消されたから、光が消えたこのサーバーでは本来ねじれることはないんだけど…実はつい最近の放送で、アインは私がねじれを作れるだけの光の種を与えたんだ。
私にも彼が何を考えているのかは分からないけど…貰ったのなら使わない手はないよね。
油断するとすぐに開花したE.G.Oになってしまうのは欠点だけど…力が欲しい今、私は迷わず子供達の心を力に変えた。
例え神秘を持っていたとしても、致命的な攻撃になるようにね?
即座に逃げ出したゲーム好きの子供と次元を渡れるようになった子供の追いかけっこが始まって。
寂しがり屋な子供を送り出そうと死んだ子供がかつての栄光に輝いて。
魔王と勇者に溺れた子供を討伐する為に双子とクイーンが立ち向かった。
全員勇敢に知恵を振り絞って戦っていたけど……まだ足りないものがあるみたい。
ねじれの力も神秘の宿った銃の力も、あと一歩で力尽きてしまったの。
光の種がアインに送られた分しかないのがダメだったんだろうね? 力が尽きて心を武器に保てなくなって、変容した姿も元に戻ってしまった。
だから、私が力を貸すのは此処までになるね。
出来れば今のうちに優しく送り返してあげたかったけど…それはもう出来そうにないから。
だから、後はあなたが責任を取る番。
目覚める時間になったわ。起きて──“先生”
“………………”
“…(また目が覚めたようだ)”
(全てがぼんやりとしている)
“暗い海の中にいるみたいだ”
“さっき、太陽の光が差した気がする”
「目が覚めたんですね、先生」
(誰かが私に声を掛けた)
(霞んだ思考が声に反応して振り向く)
「お久しぶりですね、先生。███です」
(…………。)
(考えてみたが、誰かは分からなかった)
(白い制服に、薄い青色の髪、髪の内側はピンク色に見える)
(何処かで会ったし、誰かに似ている気がするが……思い出せない)
“…ごめんね、覚えてないみたい”
“良ければもう一度、君が誰なのか教えて貰ってもいいかな”
「──私達のミスでした」
(心の奥がチクりとした)
(……この子とは確かに会ったことがある)
(その実感を思い出した……気がする)
「先生、経験と選択について話したことがありましたね」
“有ったかも知れないね”
“なんだか懐かしい気分になるよ”
「そうですね。私も懐かしいです。私が経験を、先生は選択を重んじて、結局どっちも大事だって結論になりましたね」
「……懐かしくて、もう取り戻せない
(寂しい顔なのか、懐かしんでる顔なのか)
(どっちでもあり得そうなのに、どちらでもない顔だった)
(演じてる役者みたいだと思う)
「先生には随分とご迷惑をお掛けしましたね」
「覚えてないでしょうが…何回もやり直して、先生を何回も傷付けてしまった」
「なのに、また私達はこうして……最後の最後で、先生の重ねた苦労を考えず、安易に永遠の青春を望んで、選択したんです」
「だから生徒一同を代表して謝罪させてください。先生、この度は──」
“待って”
(挙句に彼女を止めた)
(よく見れば肩が血に染まっていて、辿れば頭から流れている)
(いつか見た光景だ。此処がいつの間にか電車の中なのも、それを増長させる)
(その光景がどうしても間違っている気がして、呼び止めた)
“……確かに、間違えていたかも知れない”
“けど、生徒が間違えた責任を一緒に背負うのが先生だから”
“君が謝る必要はないよ”
“だって”
「………先生、どうして」
“──君は、私の生徒じゃないから”
『どうして分かったか聞いていい? 先生』
(全てのメッキが剥がれ落ちた)
(空にはキヴォトスが広がって、地面は真っ黒なタールのような物が広がっている)
(地上とは逆さまに立っていた)
(空に浮かぶ黒い球体の下に立っていた)
『あーあ。折角このゲームから出ようとしない人に成り代われると思ったのに。やっぱり人と関わる専門家は騙せないかー。折角だしそっちに行けるようにしたかったんだけどな』
(連邦生徒会長に似ていた彼女は、黒髪黒目の女の子になっていた)
(どこかモモイにもミドリにも似ている)
(残念そうにしているが、あんまり気にしてないようにも思う)
『…ねえ、人の心を決めつけるのやめてくれない? そう思われたらそう考えないといけないんだからさ。ちょっとは人の心を読まない努力をしてよ。私、これでも人懐っこい性格になりたいんだからさ』
(…怒られてしまった)
(次第に意識が晴れてきた。聞きたいことは沢山あるが、答えてくれるだろうか)
(私がやるべきことは何か…とか)
『それなら私をキヴォトスに連れてって? 怪異界隈の外来種としてお腹いっぱい食べたいから』
“ダメだよ”
『ちぇっ。ならゲームを遊んでる子供を画面から引っ張ったら?』
"ゲーム…何となくVRだとは分かってるけど…"
『なんだ、割と見守ってたじゃん。だったら話は早いよね。私の身体を貸してあげるから、モモイ達を助けてあげてよ』
(何となく、その言葉の意図を私は知ってる気がした)
(彼女の手を取って、彼女にはそういう力があると信じる)
(すると彼女は私を包み、黒い球体の中に潜り込んだ)
“聞いてもいいかな”
『なに? 答えて欲しいなら答えるよ』
“君はなんで私とアリス達を助けようと思ったの?”
『モモイ達がそう信じてくれたからに決まってるじゃん。怪奇は沢山居るけど、私の種族には善悪はない。ただ信じる限りそこに有り、思われる限り応え続けるだけ。望むようにあなたを助け、望むようにあなたを殺すよー』
“鏡や神様みたいだね”
(もしくはウルト◯マンのようなヒーロー)
『その3つには成りたくないから違うって答えるよ。折角バグアロナのAIとしてデリートされる所を助けて、その上色々治療してあげたんだから、私が成りたくない私を考えないで?』
“理不尽な気がする…”
“でも、優しい子なのは分かったよ”
『そうかな? そうかもね?』
(そうして話している内に、ゲームの中の砂漠に降り立った)
(気絶したスオウ、疲弊したホシノとユメ、悠々と歩くアリスの元にはモモイ達が転がっている)
(彼女の中、取るべき選択を剪定した)
(彼女の口が、自分と私を意思を汲み取り言葉を紡ぐ)
『“久しぶりだね、アリス”』
「せんせッ…!……どうして『影取り』がここに居るんですか」
『自分が作ったゲームキャラが窮地に助けに来てくれる…なんて、そんな妄想をモモイ達がしない訳ないでしょ? だから助けに来たの』
「そうですか……なら、アリスも想いましょう。アリスを手伝ってくれますよね?」
『残念、3対1だからモモイ達が優勢だよ』
「ならバトルですね!」
(アリスが魔王として、あらゆる物質を分解し、再構築していく…)
(一旦落ち着かせないとダメそうだ。 私は身に纏った彼女を信じて、必要な力を引き出した)
『“シッテムの箱──起動”』
「!?──それはっ」
(ひび割れた、かつて相対したプレナパテスの物が引き出される)
(彼女の力で自分のものを手元に取り寄せる気だったのだが…私以外の誰かが、こっちの方が相応しいと考えたみたいだ)
(ならば呼び出せるのは……彼女だけだろう)
『“行こう──シロコ。楽園/過去の記録から彼女達を旅立たせよう”』
「────先生がそう言うなら、従う」
(黒いドレス姿の彼女が箱の力で現れると同時に、クロコの先入観によって身に纏った彼女の姿が「クロコの世界の先生」に変化した)
(かつて引き継いだ彼が普通の先生だった時の姿と力を借りることになるとは思ってもみなかったが…クロコをこの方法で呼び出すなら自然な流れだ)
(今はアリスの対処に集中しよう)
『“アリスは別れが怖いんだね”』
「はい! なので先生を殴ってでも押し通します!」
「ん、させない。事情はさっき私役をする子から聞いた。別れは辛いけど、それで迷惑をかけちゃダメ」
「分かるなら!…シロコさんも、先生とずっと一緒に居たいと思わないんですか…?」
(お互いにまだ武器を取り出さない。相手がお別れを経験しているからだろうか)
(共感し合える分、どちらも相手の言葉を無視できていないようだった)
「──そんな訳ない」
「だったら!」
「でも、そうしたら私達に残るものはない。手元にも、後に託せるものも、なにも残らない」
「…………」
「ずっと一緒にいたいよね。すごく分かる。私もそうだったし、今だって何故か居る"私の"先生を押し倒して監禁したい」
『“ん?”』
「アリスのですよ?」
『“ん?”』
「ん。永遠に別れないのは、新しい出会いと変化を拒絶すること。それを相手にも強要すること。アリスの相手がそれでもいいって言うなら止めないけど……そこに転がってる時点でそうじゃないよね? だから止める」
『“先生は誰のものでもないよ?”』
「──だったらァァ!!」
「先生、交渉決裂した。普通に倒して持って帰ろう」
『“……分かった。シロコ、お願い”』
「ん──任せて」
(クロコが私とプラナの支援を受け、アリスと戦闘を始めた)
(ドローンとレールガンが砂漠を耕し掻き乱していく)
(……後はクロコとプラナに任せても大丈夫そうだ。今のうちにユメとスオウを助けに行こう)
『“ユメ、スオウ、大丈夫?”』
「ちょっと…キツいかな! でもまだ頑張れるよ!」
「…少し気絶していただけだ。問題ない…だがどうする? こっちは変身も解けて追えなくなってしまったぞ」
『“大丈夫。先生を信じて”』
「うへぇ、先生はやっぱりそっちに行くよねー…先生も一緒にここで過ごそうよぉ…」
『“ごめん、ホシノ。ユメと一緒に居たい気持ちは分かるけど、ここは私達が居るべき場所じゃないから”』
「そっかー…なら仕方ない。穏便に済ませるのは諦めよっか〜」
(そう言うが早いか、ホシノがコチラに煙幕弾を撃ち込む)
(その場でシッテムの箱とユメとスオウを契約させ、ホシノが次に行う攻撃をユメに防がせる。返す刀でスオウに追撃を行わせ、ホシノを後退させた)
(……ホシノの癖からしてこうなるのは分かっていたことだ)
(長い戦いになりそうだが、手順さえ間違えなければ勝てる相手だ。冷静に行こう)
(そうしたら、コッソリとバレないようにみんなで元の世界に帰るんだ)
(もう、私達は十分楽しんだのだから)
(それと地下生活者は……問題ない。あれはもう、私が手を出すまでもなく
「ヒヒ…ヒヒヒヒ!!! やった、やった、逃げ切った、勝った!」
「──あの駒め! 小生に大人しく従うのが役目だろうが! それを少し力を得たからと…! ゲームが始まったら、どんな目に合わせてやろうか…!」
「ヒヒヒ……!! ヒヒヒヒヒヒ──ブチュ。
「ビックリしたー…んー…ハエですかね?」
これから大事な最終決戦の実装だって言うのに…縁起が悪いですね!
なんか変なのが別チャンネルに居た気がしたので管理権限で潰しましたけど…あ、もしや地下生活者?
「おーい、今私潰しましたー?」
ちょっと確認ー…んー…。
「──ヒヒ、管理人ですか。いえ、
よし、問題ないですね!
けどもし間違えたらアレですし、彼には目印にマーカー置いときましょう。
今潰したのは…あれ? 何もないですね。
んー…この前のRTAの後遺症でもぶり返しましたかね? 今回出る時は念入りに洗っておきましょうか。
「それじゃあプレナパテスさーん、先生に大人のカードを渡す場面のデバッグやるので準備お願いしまーす」
「"分かりましたー!"」
いやーそれにしても……随分と長いこと頑張ったなぁ、ブルアカRPG。
私が若い時に電子データから初めて発掘した過去の娯楽作品で、初めてやったゲーム。
その時の熱だけでリアルで50年、加速したVR内時間だと…大体1万5千年ですかね?
いつの間にかコユキになったりした末にここまで来れたんですから、本当に感慨深い。
本当…1人でやるもんじゃありませんでした。
「"……あれ? 動かないの?"」
「ああすみません、この
本当、長い時間を必要としましたよ。
それこそ、コユキになっても頑張るくらいには。
長いこと…この世界を愛しましたねぇ。
「…すみません、少し愚痴っていいですか?」
「"勿論。生徒の悩みを聞くのが先生だからね"」
「にはは! もう、私は生徒じゃないですって!」
そうだクロコやプラナは…ああ、お花摘みですかね。
プレイヤーには下関係は排除してますけど、NPCは取り除く訳にもいきませんからね。この船は景観の都合でトイレがないので時間もかかりますか。
「私からすると1万年と五千年…ずっと青い春の記録を愛して、それを一つの世界に再現して…今更なんですけど、完成したら私、無気力になったりしないかなーって…そんな心配をしちゃいまして。にはは」
「"コユキは完成させるのが怖いの?"」
「とんでもない! そうやって足を止めない為にタフカテで人を集めたんですよ? 今更そんな……には…すみません、正直とても怖いです」
誰が言ったか、人間50年という言葉があります。
人の主観において、50歳までが9割であり、残りの人生は相対的な時間感覚であっという間に過ぎるんだとか。
きっと本来の意味とはかけ離れてるんでしょうけど、幾らでも生き続けられる昨今じゃ身につまされる気持ちになります。私、今年で70歳になりますし。
教育所から出て以来、全ての時間をブルーアーカイブRPGに注ぎ込んだ。だからこそ、それが無くなった自分が想像出来ないんです。
「ここまで来た率直な感想を言うとですね、VRのフリーゲーム制作で1番求められるのって、何万年経ってもそれを創り続けようとする愛だと思うんです」
VRで1から創るのって、新しい世界を創造するのと同義なんですよ。
その上夏休みの自由研究みたく七日だけで適当に創る訳じゃなく、意図した世界を隅々まで作ろうとするんです。
とてもじゃないですけど、正気じゃ出来ないことなんですよね。
「だから──本当に怖いんですよ。この世界を創るシステムにすら成り果てた私が、それを維持するだけの生活に耐えられるのかが」
いつかやった別サーバー探検を覚えてますか? あの生徒を助ける為に幾つものサーバーを渡り歩いて、その一つに混沌極まったサーバーがありましたよね。最後まで私を悩ませたプロムン世界を再現しようとしたと思わしきサーバーが。
あれを見てですね、私…すっごくゾッとしたんです。
アレは、きっとあり得る未来の私です。完成した事実に耐えきれなくて、自分の存在意義がゆらいで、独りなままもっと多くを求めて創り続けた末路。
創造に取り憑かれた、孤独な人間の末路…。
「"コユキは大丈夫だよ"」
「プレナパテスさん…」
「"だって、コユキは1人だけじゃなかったでしょ?"」
「…そうですけど」
「"コユキが過ごす時間と比べたら、とってもゆっくりとした騒ぎだったかも知れない。それでもコユキは1人じゃなかった。少ないけれど、確かに着いてきてくれる人たちが居た"」
始めは4千人、一瞬だけ4万に増えて、怪奇が通り過ぎた後には543人だけが残った。
正直、ダウンロードだって300行けばいいなってくらいの期待値で、この世界が世間に広まらないまま静かに電子の海に沈んでいくことだってあり得ます。
最近の生放送自体で知名度は上がったでしょうが……あれで「ブルーアーカイブRPG」の認知度が広まったかと思うと、違いそうな気もします。どっちかというと性別の重要性の認知度でしょう。
それでも…確かにこの瞬間、大型アップデートを待つ500人のマネモブが居るのは間違い無くて、その期待は、裏切っちゃダメだって、プレナパテス先生に言われている気がしました。
「…にはは。確かに私には少ないけど、何があっても着いてきてくれるプレイヤーが居ましたね。うん、それは、確かにそうですね!」
「"私達がずっと付いてきた…と言えないのが歯痒いけどね"」
「にははは!! 当たり前ですよ! AIの精神は何万年も生きられるように出来てませんからね! 人間みたいに心を改造出来ないんですから、ちゃーんと必要が無ければ凍結しています!」
だからAIって運営側だと影が薄いんですよねー。
開発中は補佐AIのコピーを使い捨てながら1人でやるので、居るのを忘れるんですよ。
プレイヤーは逆に常に側にいるような物なので、この辺のギャップはちょっと埋め難いっていうか。どうにも。
「よし、元気出てきました! お待たせしてすみません! プレナパテスさん、引き続きよろしくお願いします!」
「"うん。このくらい安いものだよ"」
その後、やけに長い間席を外していたクロコ達が帰って来てからも色々準備を進め、全ての原作にあった要素を再現し………。
遂に、私は「ブルーアーカイブRPG」の正規版を完成させました。
「よし…よし…よし…全部確認よし…ではみなさん、今日からが本番です!」
過去のゲームの再現を目指すゲームに、ver1.00以上はない。
例え細かいバグがあったとしても、それはバージョンの数値を動かす程のものではない。
だからこそ、今日が運営として、この世界と大々的に向き合う最後の日だ。
「大変なことは沢山ありました! 失敗したこともあると思います! けれど、私達はそれを胸に、この青い春をプレイヤーにお届けするんです!! どうか、どうか、楽しいゲームであれ!! あなた達と私の努力が報われてあれ!!」
最後の別れの挨拶の為に凍結を解除させたAIを全員集め、別れを告げます。
今となっては全員が私にとって、最愛の息子で、娘で……私の人生の結晶でした。
「だから最後に、みんなでこれを歌いましょうよ! 最近電子データから掘り出された卒業の歌──旅立ちの日にを!!!」
本当に、色々あった。
最初にミカを創るだけで何百年も掛けて、
アビドスが酷いことになって、
魔物生産機能を解体して、
シナリオAIを解体して、
ミレニアムに何度も魔王が出てきて、
百鬼夜行が怪奇夜行になって、
他のサーバーからカルメンAIが就職しに来て、
カタコンベで血鬼が潜んでたから自警団アイドルイベの遊園地スタッフモブとして色々手を施して、
とあるシリーズの学園都市や初音ミクの扱いに最後まで悩んで、
本当に、大変で、退屈しなくて……忘れられない思い出になった。
「ログアウト──実行」
私の数えきれない青春よ、さようなら。
どうか──永遠であれ。
[*運営アカウントのログアウトを確認。設定された実行プロセスに則り、「ブルーアーカイブRPG」のバージョンアップを実行、反映します*]
(ブルタフの過去スレ一群から帰還した我々は、集めた情報を元に電子新聞の制作を開始した)
フリーゲームDL数No.1、その製作秘話に迫る!
「ブルーアーカイブRPG」
学園×青春×物語RPG。
過去に提供された「ブルーアーカイブ」を完全再現した狂気の一作。
通称ブルタフやブルアカRと呼ばれ、フリーゲーム界隈に隕石のような一石を投じて大きな波紋…を超えて津波を創り出し、人間としてあるべき姿を論じる論点、社会現象にもなった。
教科書の歴史に明確に書かれては居ないものの、この作品が正式に世の中に出て以来「人間」の姿は大いに変化している。少なくとも誰もが自分の顔と性別を売らず、持ち続けるようになったのは明確な差異だろう。
「ブルタフがマネキンモブを消したんじゃないスか?」とは、当時のネットによく出てくる言葉である。
100年経った今でもブルアカRの正統派な後続は出てきていないものの、小粒なVRフリーゲームの流行りを作ったブルアカRの制作者匿名:囧氏は今もブルアカRを超える作品を誠意製作中らしい。
また、大々的にヒットした作品に漏れず、ブルアカRにも都市伝説のような与太話が存在し、その中には「ブルアカのRTAをすると50%で失踪する」「ある日リアルでブルアカの生徒になってしまった」…などという話があるが、これらは製作中に発生した怪奇騒動や伝説のR18配信が原因だろう。
ブルアカRには是非やっかみに負けずにより羽ばたいて頂きたいと記者一同願うばかりである。
(ブルアカ関連の記事の隅に、小さな記事が乗っている…)
何処にでもあるインタビュー記事
ここまでお読み頂きありがとうございました。これにて完結です。
今回の話は既に社会的に流行ったゲームの始まりに迫る記者一団の視点からお送りしてみました。
その為、一部飛ばされたり最後の末路まで書かれてないキャラが大多数を占めていますが、仕様です。あくまでもこの話の主人公はゲーム其の物なので。
次回は前に8話で終わった魔法少女モノの続編で東京ダンジョン探索モノの話にしようと思います。
「あなた」の選択とダイスで送る魔法少女×ダンジョン×配信。それではまたいつか。
(あなたは未来新聞を畳み、魔法少女と悪の組織との最終決戦に向かった)