【VRフリゲ】ブルーアーカイタフを再現してみた【1】 作:何処にでもある
うへぇ〜どれが幻覚か分かんないよぉ〜(ホシノ書き文字)
ザァー──………
「うへぇ…今日も雨かぁ…こうも多いとやんなっちゃうなぁ」
窓を打ちつける雨音を聞いて、げんなりといった風に机にうつ伏せになる。
誰に言ってる訳でもない、そんな独り言。
返事なんて貰うつもりの無かった言葉は…場所が悪かったと言うべきか、丁度帰ってきた相手が良かったと言うべきか……とにかく、返事が返ってきた。
「ん、こうも多いと道もびしゃびしゃでサイクリングも難しい。ホシノ先輩も…日向ぼっこできなくて憂鬱?」
「そうだね〜…」
獣耳をピクりとさせてから言ったシロコの言葉に、うつ伏せのまま少しだけ考える。
日向ぼっこが出来ないのもそうだが…それよりもイヤなのは、この雨の中に──稀に鳥が哭いているような
「
もうすっかり慣れたし、記憶を無くした時にはもう
「カラッカラの青空が恋しいよぉ〜…」
「分かる。ずっと雨だと身体にキノコが生えてきそう」
「真っ白なやつ?」
「ん、真っ白なの」
「……それはやだな〜、おじさんだと腰やっちゃいそうだし」
海かと思うような大河、何処までも続くココナッツの木と砂の花、カンカンに照らす太陽に、気まぐれに影を落とす雲、人々が盛んに行き交う商店街に、摩訶不思議で幻想的な光景を見せる砂と蛍石の混ざった砂浜……何より、それを見て喜ぶ人々の顔。
全部がもう昔の話で、この終わらない雨に流され消えたものだ。
「あーあ、最初は恵みの雨だと思ってたのになぁ。こんな風になるならもうちょっとしっかり探すべきだったよぉ。元凶」
「……またその話。このアビドス沼地が砂漠だった時のだよね」
「そうだよ〜シロコちゃんがまだ小さくて可愛かった時の話さー」
「ん! 小さくない!」
「おーよしよし、久々に撫でてあげよーではないかー」
「…ん!……ん!!」
わしゃしゃしゃと丁寧にセットされた髪を乱し撫でて、それから怒られつつ罰として元通りにする役目を務める。帰ってきたばかりだからか、櫛を通すと蓮の匂いが鼻をくすぐった。上品でイヤなことを思い出す臭いだ。
「……ホシノ先輩」
「ん、なーにぃ? 痛い所でもあった〜?」
「ううん、そっちは気持ちいいくらい」
裏門の方を任されてるノノミ達が帰るのは……もう少し後だろう。シロコがやってきた屋上よりも面倒なのが相手だから。
「その一度会ったっていう
「えぇ? うーん……おじさんは一度語り出すと長いよー? それでもいいなら」
「大丈夫、先輩の話なら絶対飽きないから」
「…もー、シロコちゃんったらー。煽てるのが上手いんだから」
「ん、先輩が乗り気なのは珍しいから。このチャンスを流す手はない」
ザァー──……
窓をパチパチと鳴らし続ける雨をBGMにして、気が向いたから語り出そうとして──。
ガラガラと。
「いやー疲れた疲れたー! もうクタクタよ!」
「今日は沢山居ましたからね。ですがその分、素材は沢山採れました」
「その採取でもっと時間がかかりましたけどね〜♤」
「もう、誰よ全部採ろうなんて言ったのは!」
「"当然、宝の山を見過ごす探検家は居ないわよ!"…と言っていた人ですね」
「……まぁ? どうでもいいじゃないそんなことは」
「ただいま戻りました〜♡」
「ただいま!」
「ただいまです」
扉が開く音と共に、この話はうやむやになることになった。
「おかえり〜。その様子だと順調だったみたいだね」
「ええ! そりゃあザックザクよ! 借金もこれで解決ね!」
「それは少し…いやだいぶ盛り過ぎのような…?」
「あ、ついでにお菓子も買ってきたので一緒に食べましょ〜♢ たけのこの里〜」
「お〜気が効くね〜それじゃあおじさんはコップでも持ってこようかなっと…」
「…あれ、シロコさん。そんなにムスッとしてどうしたんですか?」
「…なんでも。それよりお菓子を食べよう。トッポは出して…コーンは仕舞って明日にしよう」
賑わいを取り戻した教室を背にして調理室に向かう。何度も学校にお泊まりするにつれてすっかり生活感に溢れた場所で、人数分のコップと…それからゴミ袋やティッシュも取り出して戻った。
ザァー──……。
コツ、コツ。
僅かだけど1人の時間。
雨の音と足音だけの空間。
さっきまで話そうと思っていたのもあるのだろう。
"ホシノちゃん! 今日はアビドスの奥にあるって噂の沼地へ──…"
「……"ユメ先輩。今度はどこの詐欺師に──……"」
走馬灯のように──もしくは精神弾を撃たれた時のように、少しだけ白ずんだ過去が脳裏に過ぎ去った。
「のんのん! 今日の探検は信憑性バツグンなんだよ〜!」
「そりゃあ良かったですね。次のバイトは明後日ですよ」
「ふえぇ、ホシノちゃんの対応がしょっぱーい…」
2年前の私にとってはいつも通りの始まり。
子犬みたいにへらへら笑いながら人を直ぐに信用するユメ先輩が、また突拍子もないことを言い出した。
その時は詐欺師に騙されたのを助けたばっかりだったから、いつもよりも塩対応だったのを覚えている。
「むっふふ…でもでも、今度は本当の本当にあるんだよ。だって実際に見て来たから! ほら写真。ね? 何を言われても実在しまーす!」
「…はっ? ユメ先輩なに私に黙ってそんな危険なことしてるんですか!?」
「ふえぇ…最近ホシノちゃんの信用がないよ〜。私だって1人で砂漠くらい歩けるんだからね?」
「…ああ、気付けに一発撃たれときますか?」
「ひぃん、
そうやってイジケたユメ先輩は自分のスマホを私に渡して、それから地図に赤い線でルートを書いたものを机に広げた。
いつものことだった。どれだけ酷いことを言われても自分のやりたいことだけは曲げなくて、強引に私を巻き込んで無茶をする。
よく言えばカリスマと言えなくもないだろう。
私としては緩いのに変に頑固でちょっとウザめでワガママでだらしないまるでダメな先輩略してユメ先輩だが。
「噂……というか見つけた時に偶然会った人達によるとね? 段々沼地になってる場所が広がってるらしくて、そこには蓮や白い綿毛が沢山あるらしいの! そこで先輩は思いつきました。この沼地の事が判ればこの砂漠もどうにかなるかも!…ってね!」
「へぇ、私には迷子になって彷徨った末にその人達に保護してもらったって聞こえてますけど、まさかその通りって訳じゃないですよね?」
「失礼しちゃうな〜。コンパスや地図を入れてるバックを忘れてたけど迷子にはなってないよ?」
「この前の砂嵐で遭難した時じゃないですか誤魔化せると思ったら大間違いですよ」
「ひぃん…」
この先輩ってバカなんじゃないか?
舌まで出かかった言葉をグッと堪えた。
「ユメ先輩ってバカですよね」
「言葉に出てるよホシノちゃん」
「すみません、建前も本音も同じでした」
「逆にしても同じだったか〜」
「で、確かミレニアムの方々でしたっけ。昨日ユメ先輩を引き取った相手なので覚えてますよ」
「そうそう!ゲームを作る為に調査に来てた人達だよ。なんでも沼地辺りだと砂嵐が起きないみたいでね? いや〜助かったよ〜」
確かゲーム開発の為にステージの参考にしたかったから…だったか。
砂漠に来る理由としては相当ふざけた物だったからよく覚えている。
ユメ先輩を助けてくれたのでその場でツッコんだりしなかったが……相当な変人達だと感じたものだ。
「……で、ユメ先輩は昨日の今日で其処に行きたい…と」
「うん!」
「ダメです」
「ひぃん…」
「……はぁ、全く……私も同行するので絶対に1人で行かないこと。バイトもあるので明日の日帰りで。良いですね?」
「やったあ! ホシノちゃん大好き!」
「うわっ!?」
萎びたアホ毛と肩を落とした姿を見てられなくて、自分が一緒に居るなら良いと許可を出した。
今にして思えば軽率な判断だと思うが、当時の私はユメ先輩に抱きつかれて思い直す時間なんて無かった。
……ユメ先輩が砂嵐に遭難して、一度本気で取りこぼしたと思った相手がいる事を確かめるのに夢中になっていたのだ。
"ミレニアムの人達は何とも無かったし、危険は無いかな"
"取り敢えず軽く様子を見て、それから考えよう"
"……もし本当に砂漠からアビドスを取り戻せるなら儲け物だし"
考えてなかった訳じゃない。
ただその判断が…選択がどれだけ重たい物か、知らなかったのだ。
だから私は、ユメ先輩は──。
「──あ、雨だ」
「蓮が沢山ありますね。匂いも…良い匂いです」
「ホシノちゃん! 雨なのに星空が見えるよ! 綺麗だね〜!」
「気持ち悪いな…こんなに白い泥なんて初めて見ましたよ、ユメ先輩」
「……何アレ」
「先輩、気を付けてください。蓮の生えてない場所は底が深いようですから」
「ホシノちゃん! 逃げ──ホシノちゃん?」
「──ユメ先輩、今すぐ逃げてください。底に何か居ます」
「…ホシノちゃんが居ない?」
「ユメ先輩! ユメ先輩⁉︎ 何処に行ったんですか!?」
「………後は兎に角耐えるしかない…かな」
「クソッ──この雨のせいか⁉︎ それとも泥か、蓮か⁉︎ ユメ先輩の荷物が落ちてるなら、この辺りにいる筈だ! 私を幻覚に囚らえるな!」
「ごめんね、ホシノちゃん……間違えた対価は、私が払うよ」
「……誰? 貴女は……これは、記録?」
「晴れ──ユメ先輩? ユメ先輩…ユメ先輩、ユメ先輩!」
「あ、全部分かった。そういうことならこうすれば──……」
「ユメ…せんぱ…ああああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!」
「──こんにちは、小鳥遊ホシノさん。お忙しい所申し訳有りませんが……取り引きをする気は有りますか?」
「ま、後悔なんて今更だよねぇ。借金をチャラに出来て、ユメ先輩が戻ってくるかもしれない……それまでに積み上がる見えない犠牲は見て見ぬフリ……うへぇ、しんどいな〜」
ザァー──……
コツ、コツ、コツ……。
教室を通り過ぎたのに気付いて、立ち止まった。
"目的の為に誰かを犠牲にしたらいけないよ"
……さて、誰の言葉だったか。
契約で精神弾や精神回復剤を作る時に少しずつ粉末を吸っていたからだろうか、記憶の繋がりが所々切れてしまっている自覚があった。
それでも大事な人の言葉なのは覚えているから、多分ユメ先輩の言葉なんだろうなって感覚はある。……確信できないのが、悲しいけど。
「うへ…ちょっと通り過ぎちゃったな。戻ろっと」
まぁ、それも大した問題ではないだろう。
契約相手が言うには酷いことに使うつもりはないみたいだし、お題目も世界を守るなんて、胡散臭くてスバラシイものだ。
信じてる限りこの行為の犠牲者は出ない。実際に見てないのだから、そうなのだ。
「いつの間にかシロコちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃんが入って来てるし、ノノミちゃんも頑張ってくれてる……私も先輩として、頑張らないとなぁ〜」
私を置いて、時間と共にドンドン周りは変化していく。
砂漠は泥と雨に置き換わった。
住民はずっと少なくなり、代わりに魚や動物が増えていった。
何故かカイザーコーポレーションが借金の利子率を下げたから、返済の目処は立った。
アビドス高校は年々泥と雨に沈んで、少しずつその姿を消している。
最近はゲヘナの犬が嗅ぎ回ってて、何か不穏な気配がする。
ユメ先輩は、卒業出来ずに死んでしまった。
「良いことも悪いこともこの3年でいっぱい有って…忙しいなぁ〜…」
特殊な精神弾と精神回復剤の製法を確立し、安定した収入を確立した。
一部に白い大地が露出して、其処だけ雨が降らないからか研究施設としてミレニアムが土地を借りた。
後輩達が入って来たからか、この学校も少しだけ賑やかになった。
特に最近は新たに構築されたアビドスの生態系が広まりつつあり、珍味を求めるグルメ家や研究者、写真家の観光客が増えている。
大丈夫、悪いことばかりじゃ無い。
悪いことばかりじゃ無いけど……このままで良いのかと問われたら、きっと私は言葉を詰まらせるだろう。
良いことばかりでは…決してないのだから。
「…そういえば、最近シャーレなんて組織が出来たんだっけ?」
そんな折にふと、ラジオで聴いた名前を思い出した。
確か生徒の願いならなんでも聞く胡散臭い組織だったか。
先生が居る…と聞きもしたが、果たしてどんなものなのやら。
大人にいい思い出はないのだが……それを言ったら大抵のことがそうなので、それは大した問題ではない。
「……一回ダメ元で送ってみよーかなー。郵便はもう泥底に沈んでるから…連邦宛ての精神回復剤に挟んで…先生って人に届くか微妙だけど…ま、先ずは行動ってことで」
ガラリと。
「遅い! なんで一回通り過ぎてるのよ!」
「もしかして寝不足ですか? それなら膝枕をしてあげますね〜♡」
「あ、ティッシュとゴミ袋も…助かります。丁度無くて困ってたんです」
「うへぇごめんね〜? ちょっとぼけっとしちゃってたかも」
騒がしくも愛おしくあるべき場に混ざる。
自分が異物のように感じるけど、そのくらい耐えてこその先輩だろう。
「…ん、ホシノ先輩」
「ん〜?どうしたのシロコちゃん」
「……その、大丈夫?」
何が、までは分からなかった。
教室を通り過ぎたことなのか、それとももっと深いことなのか。
どっちにしろ答えは変わらないだろう。
先輩とは、後輩の前ではカッコ付けるものなのだから。
「大丈夫、何も心配することはないよ。先輩は結構強いんだからさ〜」
バグNo.9
アビドス砂漠水没事件
メインストーリーに忠実であるべきのストーリー編で、アビドス砂漠が影も形もない状態になっていたバグ。
データ統合によって各プレイヤーデータに存在した沼地が全て合体し、1つの沼地となってアビドスのメインストーリーを破壊し、勢い余ってブルアカ世界の砂漠まで沼地にした。
後にifストーリーとして再収録されることになるが、シナリオ強制生成AIの制作品であるの都合上修正には一度マネモブ達がクリアする必要がある。