【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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私は個人的な好みから、俯瞰的に説明する地の文を極力書かないようにしているのですが。
(例:
「俺は部屋を出ることにした」→「とりあえず部屋出るかあ」
「男は目線を逸らした」   →「おいなんでお前目逸らしたんだよ」
「彼女が突然立ち上がる」  →「ん? どうした急に立ち上がって」
などなど……)

なんですけども、これって情報不足で読みにくかったりしますかね。
もしよろしければ意見を頂きたいです。参考にさせて頂きます(´・ω・`)


平民と店主と大家と従者

「カルくん、おはよ~。朝からお掃除? 偉いわね~」

 

「おはようございます、カル様。精が出ますね」

 

「……ロエマさん、レミさん。おはよう、ございます。まあ、開店前なんで……」

 

 

 

「お二人も、こんな朝早くに……お疲れ様です」

 

「いいのよ~、大家として店子さんのお世話をするのは当然だもの──ところで、アシェルちゃんは?」

 

「ご主人様のお姿が見えませんが、まだお休み中ですか?」

 

「……いや、起きてる。今は、あっちで……」

 

「あっち? あ~……」

 

 

 

『シェラさん! これ……あげるっ!』

 

『ん? おお、花か? ありがとな、坊主。わざわざ摘んできてくれたのか?』

 

『う、うん……! シェラさんに、似合うと思って……!』

 

『ははは、嬉しいこと言ってくれるじゃねえかお前。ほら、飴やるよ。お礼だ』

 

『わ、わぁっ! ありがとう! ……そ、その! また、来るね!』

 

『おう。ついでに宣伝の一つでもしといてくれー』

 

 

 

「……今週で、三人目だ」

 

「まあ、罪作りね~。あの子、顔が真っ赤だったじゃない~?」

 

「あれほどの子供まで、流石はご主人様。人たらしは健在のようですね」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「ただいまー……ん?」

 

 誰かいるな、客か……? 

 

「──あら、おかえりなさいアシェルちゃん。お疲れ様~」

 

「──お帰りなさいませ、ご主人様。お掃除、ご苦労様でした」

 

「げっ……!?」

 

 ロエマと……レミ!? 

 ……ああ、別にビビることねえか。もうレミのことは信用してるし……。

 

 見慣れた工房の風景の中になんか見慣れねえ影がいると思ったら……カルがいるのは当然だが──その向かいにロエマとレミが座ってやがった。

 ……今日は集まる予定あったっけか? 無かったよな。家賃の催促にしても早すぎるし。

 二人の様子は特に今までと変わらねえ、いつも通りだ。ロエマは相変わらずのんびりしてるし、レミも涼しい顔で茶を啜ってる。

 ただ、カル含めて三人共ちょっとだけ顔が妙なのが気になるというか。いつもの無愛想な仏頂面じゃなくて、なんていうか……困り果てたような、あるいは何か言い出しにくそうな、そんな微妙な表情なのが……。

 

 俺が外で掃除してる間に、店の中でトラブルでも起きたとか? 

 インク壺ひっくり返したとか、大事な羊皮紙破いたとか……いや、カルに限ってそんなドジは踏まねえか。

 

「えっと……二人とも、今日はどうした? なんかあったのか?」

 

「……いや、別に。ただ、少し……話があって」

 

 話? 俺にか? 

 

 

 

「……アシェル。お前、本当に……疲れてないか?」

 

 

 

 ……え? 

 

「……? 疲れてる? 俺が?」

 

 え、なんだそれ。普通に意味が分からなかったんだが。

 

 疲れてるって、何がだ? 掃除のことか? いや、たかが店の前を掃くくらいで疲れるようなヤワな体はしてねえぞ。これでも兵士の訓練受けてた過去があるからな。

 それとも、最近の生活のことか? 確かに色々あったが、今は落ち着いてるし、むしろ暇を持て余してるくらいなんだが。

 

「いや、元気だぞ? 飯も美味いし、よく眠れてるし。なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「……いや、そうじゃなくて。体のことじゃなくて……精神的な、その……気疲れというか」

 

 ……気疲れ? 俺が? 

 

「あのねアシェルちゃん。カルくんが言ってるのは、周りの皆が──『ちょっと過剰なんじゃないか』って話で~……」

 

「要は、ご主人様が『愛の重すぎるお仲間』に日々囲まれて鬱陶しくないのかということです」

 

「ちょ、ちょっとレミちゃん……!」

 

 あー……。

 

 なるほど? 愛の重すぎるお仲間って──あの九人のことか。

 周囲の「壊れた」経験のある仲間たちを客観的に見て、今の俺の状況が所謂「修羅場」なんじゃねえかって心配してると。囲ってる面子とか、俺に対する過保護さとかを鑑みて、負担に思ってるんじゃねえかって? 

 

 過剰って言われてもな。

 確かに賑やかだし、騒がしいし、たまに面倒な時もあるが……それが俺を疲れさせてるかって言われると、そうでもねえ気がする。むしろ、アイツらが構ってくれるおかげで退屈しなくて済んでるし、隠居生活のいい刺激になってると思うんだが。

 

「過剰ってほどでもねえだろ。みんな親切にしてくれてるし、俺は助かってるぜ?」

 

「……親切、か。お前がそう思うならいいんだが……」

 

 ……カルが頭抱えちまった。

 なんだよ、その反応。俺が何か間違ったこと言ったか? 親切を親切と受け取っただけだぞ。アイツらが俺のために色々やってくれてるのは事実だし、それを否定するつもりはねえし。

 

 まあでも、周りから見ればそうなのかもしれねえな。ここにいる三人はどちらかと言えば「俺への執着が攻撃的じゃない」あるいは「攻撃的だが執着が薄い」組み合わせだから、余計そう思うのかも。

 別にこの三人が俺のこと大切にしてないとか、死んでも悲しまないって訳じゃねえが……もし俺が死んでも、レミはすぐ次の思考に切り替えるだろうし、カルとロエマはすぐさま俺を殺した相手に復讐するってタイプでもねえだろう。

 そういう三人からすれば、ルシアとかタリエみたいに攻撃性に溢れてる面子や、ソラナやリアンみたいに俺の死を否定し続けるみたいな連中の感情はちょっと重すぎるように見えるってことか。

 

「例えば……王城の連中のことだが。最近、この辺りの警備が……やけに厳重になってるだろ? 聞いた話じゃ……この区画を『特別指定保護区域』にして……衛兵を常駐させようとしてるらしい……し」

 

 ああ、それか。

 王城の連中ってことは、ルシア、タリエ、ベラ、エリザベトのことだよな。

 

 確かに最近、店の前を通る衛兵の数が増えたなとは思ってた。夜中にトイレに起きた時も、外から足音が聞こえることがあったし。

 でもそれって、俺の安全を考えてくれてのことだろ? 俺は死んだことになってる王子だし、万が一にも正体がバレたり、刺客に狙われたりしたら大変だからな。

 

「俺の安全を国レベルで考えてくれてるんだろ? むしろ国民の平和を気に掛ける仕事してるんじゃねえか。ありがたいことだよ」

 

「……はあ」

 

 なんだそのため息は。

 俺が守られてるのがそんなに不満か? お前の店だって安全になるんだから、良いことずくめじゃねえか。泥棒が入る心配もねえし、変な客が来ても衛兵が追い払ってくれるかもしれねえし。

 

「……まあ、お前がいいなら、いいとして……酒家と薬家の連中は? あの三人は、お前の『健康管理』と称して……頻繁に、よく分からない『身体検査』をしてくるって聞いたぞ。マドリーはともかく、リアンとネルまで一緒になって……」

 

 次はリアン、マドリー、ネルのことか。

 アイツらも最近、色々と俺のために動いてくれてるな。

 

 マドリーは薬の専門家だし、俺の体のことを一番よく分かってくれてる。しょっちゅう採血されたり、変な味の薬を飲まされたりするのはちょっと閉口するが、それも俺の健康のためだと思えば我慢できるぞ。

 リアンは俺に美味い酒を飲ませて精をつけさせようとしてくれてるだけだろうし、ネルがくっついてくるのも……まあ、ただのスキンシップだろ? 俺の服の匂いを嗅いだり、寝てる時に布団に潜り込んできたりするのはどうかと思うが、甘えん坊な妹だと思えば可愛げがあるってもんだ。

 

「健康になるならいいんじゃねえか? リアンやネルがいると賑やかでいいし」

 

「賑やか、か……」

 

 あー……そういや、カルは賑やかなの苦手だよな。

 そう考えれば俺が迷惑してるんじゃねえかって思うのも普通の話か。それについてはちょっと配慮が足りなかったかも。

 

「それと……店の外に出る時、変な感覚がしないか……? 多分、魔法組が、何かしてるんだと思うんだが……」

 

 ああ、それのことか。

 今度はソラナとノエリスの話だな。

 

 確かに最近、店の外に出るとき変な膜を通過するような感覚がある。場所によって微妙に違うし……多分ソラナとノエリスがそれぞれ俺たちを守るためのものを張ってくれてるんだろう。魔法とか、呪いとかを通過させない結界的な。

 

「でもそれって、ソラナとノエリスが俺を見守ってくれてる証拠だろ?」

 

「……うーん」

 

 ……カルが絶句しちまった。

 

「これは……ちょっと重症ね~……」

 

「ええ。まさに火薬庫のような状況かと。ご主人様の感覚はとうに麻痺されてしまったようです」

 

 ロエマはなんか察したみたいに苦笑いしてるし、レミは……相変わらずだな。特に変なリアクションはせず冷静に分析してる。

 

 なんだよ皆して。そんなにおかしいこと言ったか? 俺はただ、仲間たちの親切をありがたく受け取ってるだけだぞ。それが過剰だって言われても、いまいちピンとこねえ。

 だって、アイツらは俺のことを大事に思ってくれてるんだろ? その気持ちを無下にするなんてできねえし、多少の不便や違和感くらい、笑って流せる範囲内だ。そもそも、俺が「嫌だから止めろ」って言えば皆止めてくれるだろ。

 ……多分。

 ……自信なくなってきた。

 

 いや、待て待て。落ち着け俺。

 カルたちは心配性なだけだ。

 

「心配すんなって。俺は大丈夫だ。みんな俺のためを思ってやってくれてるんだから、ありがたく受け取っとくよ」

 

 ……おい、なんだその反応。

 まるで「もう手遅れだ」「説得は不可能だ」とでも言いたげな、諦めと決意が混じったような目配せしやがって。

 

「分かったわ、アシェルちゃん。あなたが元気だってことはよ~く分かったわ」

 

「お、おう。分かってくれ──」

 

「でもね、私たちから見ると、あなたはやっぱり頑張りすぎよ。無意識のうちに無理をして、心をすり減らしてるの」

 

 おおっと。遮られた。

 心配してくれる気持ちは分かるが、俺は別に大丈夫だって。

 

 それとも──何かしてくれるのか? 

 

「だからね? 今日は私たちが……」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「じゃ~ん! どうかしら?」

 

「なんで……俺まで……」

 

「……ええ?」

 

 思わず変な声が出ちまったぞ。

 いや出るだろ、こんな──二人のメイド服姿見せられたら。

 

 まあ、言いたいことは分かる。要は俺が普段神経すり減らしてるだろうから、それを癒すためにメイドの恰好で奉仕しようって言いたいんだろう。正直ロエマの趣味も混ざってそうな感じがするが。

 

「どう? アシェルちゃん。癒やされる?」

 

「ああうん、似合ってるぞ。それだけは確かだ」

 

「何その言い方~?」

 

 で、さらに言うとロエマは分かる。フリルのついたエプロンに、ふんわりしたスカート。頭には白いヘッドドレス。完璧なメイド姿だ。似合ってるし、本人がノリノリでスカートの裾を摘んでお辞儀してるから、まあ、百歩譲って理解できる。

 問題は隣だ。

 

「……ロエマさんが、線も細いし、きっと似合うだろうからって……」

 

「その……災難だったな、カル」

 

「……ああ。一生の、不覚だ」

 

 見ろよこのカルの死にそうな顔。着てるのは……なんだこれ、執事服か? いや、なんかフリルが付いてるし、エプロンもしてるし……男用のメイド服? そんなもんあるのか? 

 確かにカルはそこまでゴツくないし、似合ってるっちゃ似合ってるかもしれねえ。ただ、本人のテンションが地の底まで落ちてるせいで、見てるこっちが居た堪れなくなってくるな。

 俺の女装も傍から見ればこんな感じなんだろうか。

 

「今日はこれで、ご主人様を癒そうという話だったのです」

 

「いや、癒やされるっていうか……驚きの方が勝ってるんだが」

 

 隣にレミまで添えればもう立派にメイド三人衆だ。

 

 死にそうなカルと笑うロエマといつも通りのレミ。特にロエマさんは相当楽しそう。

 この人、本当にこういうの好きだよな。俺に女装させた時もそうだったが、着せ替え人形遊びを楽しんでる節がある。普段はそういう気にならなかったんだろうが、せっかくの機会だってことで──今回はカルが犠牲になったと。

 

「……もういい。俺は俺で、アシェルを労わるから……」

 

「あ、ありがとう、カル」

 

「あら、カルくんも似合ってるわよ? ねえ、レミちゃん?」

 

「ええ。意外と、様になっていますね」

 

 お前まで一緒になって弄るなよ。カルが完全に諦めた目で俺の肩揉み始めたぞ。

 可哀想に。職人気質のコイツにこんな慣れない格好させるなんて、ロエマも罪な人だぜ。普段は無口で仏頂面なカルが、こんな辱めを受けてる姿を見るのは……正直、ちょっと面白いと思ってしまった自分もいるが、今は同情しといてやるか。

 

「それにしてもロエマ様。そのお姿……私とお揃いですね」

 

「ふふ、そうでしょ~? レミちゃんとお揃いになりたくて、頑張って作ったのよ~」

 

 へえ、自作なのか、あの服。

 ロエマが嬉しそうにレミの隣に並んでる。レミのあの完璧なメイド姿に並んでも見劣りしねえのは、ロエマ自身の気品というか、お姉さん気質というか、そういうもんがあるからかもしれねえな。

 

「レミちゃんがメイドさんで、しかもものすごく強いんだって聞いた時は驚いたわね~」

 

「恐縮です。本来の姿を知っても、変わらず接してくださるのはロエマ様くらいです」

 

「あら~、そんなことないわよ。だってお友達だもの。それに、アシェルちゃんを癒してあげたい気持ちは一緒でしょ~?」

 

「はい。その通りです」

 

 仲良いなあ……。

 

 レミの正体を知っても変わらず接するロエマの器のデカさと、それを嬉しく思ってるレミっていう……。

 奇妙な友情だが──レミは普段、俺以外の人間には事務的に接してる節があったからな。ロエマに対しては少しだけ柔らかい表情を見せてるし、案外コイツもロエマとの仲を心地よく思ってるのかもしれねえ。

 

 レミが俺を殺したことと、ロエマを殺そうとしてたことは言ってないから、その点だけはちょっと思うところあるが。

 

「いつかご主人様にも──私と対になる執事服を着ていただきたいですね」

 

「えっ」

 

 真顔で言うなよ。本気っぽくて怖いんだよ。

 お前の中で俺はどういうポジションなんだ。

 

「えっ、アシェルちゃんに? てっきり私、レミちゃんはアシェルちゃんに仕えたいのかと……」

 

「いえ、仕えたいのは今も変わりませんし──あくまで私の個人的な願望ですので」

 

 ああ、俺が昔、執事長やってたから……その名残か? 

 正直なとこ、俺は主人として見られるよりも、隣に並び立つ存在として見てくれる方が気が楽でいいんだけども。

 

 

 

「さあさあ、アシェルちゃん! はい、あ~ん♡」

 

「……え、これは?」

 

 カルに肩を揉まれながら椅子に座る俺の目の前に……スプーンに乗ったケーキを差し出すロエマ。そして満面の笑み。遠くから見守るレミ。何この状況。

 

「ほら、口を開けて? 美味しいわよ~?」

 

「いや、自分で食えるって……」

 

「ダメよ! 今日は私たちが全力で癒やす日なんだから! ほら、あ~ん?」

 

 押しが強え。

 

「あ、あーん……」

 

「はい、あ~ん♡」

 

 あー、甘え、甘えな。ネルが喜びそうな味だ。

 美味いんだけど……すげえ恥ずかしいぞ。もう酒飲める年齢のいい歳した男が、年上の女性に甘い物食べさせてもらってる図って──照れくさく思うのも仕方ねえよな。

 

「……肩、凝ってるな」

 

「ま、まあ。色々やってるからな……」

 

 カルの手つきはさっきからなんだかずっとぎこちない。

 これまでの職人芸で鍛えられた力加減は絶妙だが、背中から伝わってくる羞恥心が凄まじいぞ。俺に奉仕してる間はそれを忘れられるのか、だんだん距離が近くなってるのが気になるとこだが。

 別に嫌だったら嫌って言えばロエマは許してくれると思うぞ? そんなに俺の肩揉みたかったのか? 

 

「ありがとな、カル」

 

「……気にするな。お前が困った時、俺に頼ればいいって、思ってくれれば、それで……」

 

「お茶のおかわりはいかがですか、ご主人様」

 

 お前はカルがせっかく良いこと言ってるのに遮ってくるなよ。

 差し出された茶が温度も香りも完璧なのが余計に気になるというか。流石本職。

 

「っていうかこれって……」

 

 元々、過保護な皆との日々で、疲れ切った俺を癒すためにやってるって体だったよな? 

 にしてはやってることコイツらも同じじゃねえか? 

 

 ロエマに餌付けされ、カルにマッサージされ、レミに給仕される。至れり尽くせりだが……今のお前らは正直他の皆と特に変わらねえと思うぞ。

 こんな待遇、ただの隠居人にするような内容じゃない。もう王族じゃねえんだから、癒すっつったってそこまでしてもらわなくてもいいんだが……。

 

「気にしないで? アシェルちゃんはもっと甘やかされていいのよ~?」

 

「……ああ。お前は、頑張りすぎだ」

 

「ご主人様の安らぎを守るのが、私たちの務めですから」

 

「……そうかよ。ありがとな」

 

 まあでも、悪い気はしねえか。

 他の皆と特に変わらないなら、この奉仕を断る理由も同様に無いし。

 せっかくやってくれるって言うんだし、たまにはこうやって、何も考えずに甘えるのもいいかも。

 

 いつもの皆の「親切」もありがたいが、こいつらのこういう不器用で過剰な「癒やし」も、悪いもんじゃねえよな。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「さあさあアシェルちゃん! 次は膝枕よ~!」

 

「ひ、膝枕……!?」

 

 おいおい、正気か? 俺はガキじゃねえんだぞ、ここまで甘んじて受け入れたが、膝枕なんて恥ずかしくてできるわけねえだろ。

 それに、その格好で膝枕ってのは……こう、視覚的にも精神的にも破壊力が高すぎる。フリルのついたエプロンに、ふんわりとしたスカート。その上に俺の頭を乗せるなんて、どんな罰ゲームだよ。

 

「遠慮しないで! ほら、ここなら柔らかいから!」

 

「いや、柔らかいとかそういう問題じゃなくてだな……」

 

「……アシェル。足湯の準備ができたぞ」

 

「えっ」

 

 えっ、足湯? 

 カル、お前の持ってるその湯気の立つ桶は何だ。

 しかも、良い香りのするハーブみたいなのが湯の中で浮かんでるな。本格的すぎるだろ。

 ていうか、その格好で桶を持って立ってる姿がシュールすぎて、突っ込む気力も失せちまうぞ。

 

「……温度は完璧だ。きっと疲れが取れるはず……」

 

「いや、カル……お前まで一緒になって……」

 

「ロエマさんが、フルコースで癒やすって言ったから……」

 

 おい視線逸らすな。

 諦めたような目をするな。

 普通に俺の足を掴もうとするな。

 お前、完全にロエマに主導権握られてるじゃねえか。職人としてのプライドとかはどこ行ったんだ。元々ロエマに強く出たとこ見たことねえけども。

 

「な、なあレミ。お前からも二人に何か言ってやって──」

 

「ではご主人様。私は次の『準備』がございますので、失礼致します」

 

「まだなんかあんの……?」

 

 ああ、ちょっ。マジで出ていきやがった。

 先輩として二人にメイドの何たるかを教えてやったりしてくれねえのかよ。

 

 俺お前のことすげえ有能なメイドだと思ってたんだよ。主の意図をすぐ汲み取って常に俺を守ろうとしてくれるみたいな。

 多分ちょっと違うよな。お前って案外自分のやりたいようにやってるよな。

 

「さあアシェルちゃん。足湯の後はマッサージも追加よ~」

 

「ま、まだやるのか……!?」

 

「……アシェル。肩だけじゃなく、腰も凝ってるんじゃないか?」

 

「なあカル。これっていつまで続くんだ……?」

 

 これって、俺を巡る人間関係の疲れを取るって話だったよな? 

 お前らが仲良しのは良いことだが……これじゃあ癒やされるどころか、逆に疲れちまいそうだぞ……? 

 

 

 

 

 

「──ご主人様を巡る争奪戦は、日々激化の一途を辿っていきますね」

 

「安泰だと思っていましたが──誰かが暴発し、この平穏は崩れるのもそう遠くは……」

 

「しかし、ご主人様が理想的な存在なのも事実。手放す訳にはいきません」

 

「これ以上争いが複雑化しそうな場合は──いっそ全員事故に見せかけて始末し……」

 

「ご主人様にも──一度『リセット』していただくのが、確実ですね……ふふふ」




前書きではあんなこと書きましたが、初期は慣れてなかったので結構書き方違ったりします。
「言ってた書き方と違わない?」って意見は、私の執筆スタイルの変化として理解して頂けるとありがたいです(´・ω・`)

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)
お気に入り・評価・ここすき等も、可能であればぜひお願いします。大喜びします。

文章練習でまたいくつか後日談を書こうと思うのですが、需要ありますか?

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