……起きた……のか? はっきりしねえ。
頭が散ってまとまらない。喉が引っかかって、舌が重い。
目は……たぶん開いてる。暗いのが部屋のせいか瞼のせいか、判断がつかない。
ここどこだ。今は……何時で、どういう状況だ?
「──っ、アシェルさんっ!」
押し殺したつもりの高さがはみ出して、耳に刺さる。ソラナ、か……?
呼吸が早い。椅子が鳴って、気配が寄る。袖口の布が、包帯に触れないみたいに慎重に俺の腕の横を探して止まる。目が、赤い。微かに涙目だ。
「先輩……! よかった……!」
いつもの据わった目の奥が湿って見えて、手つきが空回りして俺の頬の近くを二度ほど彷徨ってから、額の汗に触れた。指が震えてる。本人は気づいてねえ。
「……んじゃあ、ここ……医務室か。二人は……」
そこまで言って、ようやく目が二人に追いついた。タリエが強く頷く。
「は、はい。三人いっしょに運ばれて、さっきまで、眠ってたんです。私も、タリエ君も、無事です」
今は何刻だ。どれぐらい落ちてた。疲労でぶっ倒れたんだから、そこまで長い時間じゃねえだろうが……。
「今の状況は、どうなった?」
タリエは姿勢を正した。目は外さない。
「医務の方から聞きました。荒くれ達は兵士の方が一人で倒したそうです。僕たちは三人とも気を失っていて、その兵士の方が人を呼び、こちらへ運ばせたと。今の時刻は昼の二つ前の鐘と鐘のあいだです。先輩が落ちてから、大体半日ぐらい経ちました」
……そうか。てことはあの兵士勝てたのか。まあ負けてりゃ今頃俺たち三人も死んでるからな。おかげで助かった。
ふと痛んだ右手を見ると、キレイな包帯が新しく巻いてあった。
「骨は折れてるみたいですが……強く握らなければ大丈夫だと。今日は握らないでください。先輩は打撲と切り傷、僕たちは軽い打撲です。処置は済んでいます」
「そうか、でかい怪我が無くて良かったよ」
ソラナが水の入った杯を寄せてくる。錫の縁が冷たくて、ひと口で喉が落ち着いていく気がした。金属の匂いが薄れたところで、ふたりの顔が見えやすくなった。ソラナが息をひとつ飲み込んで、袖を握った手をほどかずに前へ来る。
「アシェルさん……助けてくれて、ありがとうございます。すごく、こわかったです。そしたら、先輩が来てくれて……おかげで、いま、生きてます。アシェルさんが先輩で、良かったです。本当に、ありがとうございます」
言い切った瞬間に肩が降りる。続いてタリエも、丁寧な声のまま続けた。
「先輩。ありがとうございます。僕だけじゃどうしようもなくて、ろくに抵抗もできなくて。そこに先輩が来て、助かったんです。色々、気になることもあったんですけど……本当にありがとうございました。僕、絶対忘れません」
包帯の下で脈がうるさく言う。うるさいな。照れくさくなって顔を見てられなくなった。
ああもう、照れくさい! 感謝なんて慣れてねえんだ。そういう目で見ないでくれ。
「……お前たちがいなきゃ俺は仕事ができねえからな。それだけだ」
俺の照れ隠しを見抜いたみたいに、二人がくすくす笑う。「そういうことにしておこう」って感じで。
「──ああ、それと。伝言を預かっています。僕たちを助けてくれた兵の方が先輩に『二日後の夕の鐘の後に北の橋の詰所の前で待ち合わせを、アシェルのことを知っているならそう伝えてほしい』と」
「あ、あと! 私たちは療養って名目で、何日か休みを貰えることになったんです、はい。なので、ゆっくりできますよ」
……あの言伝か。ハッタリだったんだが。
いや、実際に俺はアシェル本人だし、実際にルシアと会うことになっても何も問題は無かったんだが。本当に言伝をルシアに伝えてくれたのか。律儀な奴だな。
二日後ってなったら、今日が次の日だから、明日の夕鐘ってことだよな? よしよしオーケー。休みってのは助かるぞ。俺はルシアとの約束を守れる。
「んじゃ、次仕事に行くのはまだ先ってことだな」
「はい。そしたら、またよろしくお願いします、先輩」
「わ、私も! これからもお願いします、ね。えへへ……」
「……おう」
二人の視線からは明かに敬意というかそれ以上のもんがにじみ出てる気がした。
いや、悪い気分じゃないが。周りに無能だって思われる俺の作戦はどうなるんだろうか。
*
夕方になったら医務室の人間からもう大丈夫だと言われて解散することになった。タリエとソラナはそれぞれ一回自分の家に帰るらしい。俺も一応同じだと言っておいたが、相変わらず自宅の位置は分からねえからこうして辺りをぶらついてるワケだ。
せっかくの自由時間なんだからがっつり酒を飲みに行こうと思って、店のほうへ肩を向けたところで、嫌な予感がした。前から歩いてくる背筋の微妙に曲がった影に気づく。
「げ……」
「ん?」
視線がぶつかった。相手の眉がわずかに揺れる。俺は慌てて姿勢を直し、口の形を整える。
待てよ。こんな普通の場所でこの人に会いたくなかったんだが。色々嘘ついてたこともあってめちゃくちゃ気まずい。嫌な予感的中だぞ。
「失礼しま、した、吏長。俺今、療養中で」
「──敬語は要らん。やりにくいなら無理するな」
「……ん?」
刃みたいにすっと来る。腹に落ちるまで時間が要った。
「な、なんで──」
「──私が吏長ではないからだ。もうお前の上司ではないのだから、敬語を使わなくていい」
……は?
な、なに言ってやがる。なんでお前が吏長じゃなくなってるんだ。
「……どうしてだ?」
「──上から急に押収庫の監記を命じられて、向かわせた二人が襲われて医務室に帰ってきた。お前が持ってきた書類は、本文は未解読だが、書式と符丁から敵国式の暗号だと判別できた。この件を諸々上に問い質してな。そうしたら何を言われたと思う?」
「分からねえ、何だ」
「『後任を探せ』だと。虎の尾を踏んでしまった訳だな。上がこの件に関わっていて、それを不審に思い嗅ぎまわった私は邪魔になったんだ。そして、今回の一件の責任を無理やり取らされる形でクビにさせられた。だから、もう吏長ではない」
……マジかよ。喉に砂が引っかかったみたいになった。敬語を剥がされた意味がやっと繋がる。上の機嫌で首が飛ばされたと。
ていうかあの一件、上が関わってたのかよ。ずぶずぶじゃねえか、きな臭え。ちょっと衝撃すぎて何言えばいいか分かんねえぞ。
「……そうか、ご愁傷様──」
「そうだ丁度いい。私の家に来い。ちょっと付き合え」
「っておい勝手に決めるな。俺病み上がりだぞ」
「知っている。療養期間中ということは時間があるのだろう?」
押しが強い。押しが、強い。
ついでに俺が暇してることもばれてる。
「医務室の受付札に印が無かったからな。お前の手の怪我、あれは職場を抜け出すための嘘だったな?」
「うっ……」
「だから、お前の怪我は二人を助けるための『名誉の負傷』ということにして誤魔化しておいた。つまり、お前は私に貸しがある訳だ」
「……そ、そうか。助かる」
……バレてら。
いや、そうか。医務室にいなくて、数時間後にあんな状態で運び込まれたら嫌でも分かるか。迂闊だった。別に名誉の負傷じゃなくて、自分の都合で勝手に抜け出したってことにしてくれてよかったんだが。その言い方だと周りからの見る目が良い方向に行っちまうだろ。
それに、別に仕事でもないのにこの女に付き合うのは嫌だぞ。俺はこれから好きなだけ酒を飲みに行く予定だったんだ。それを邪魔されたくない。
「あと、お前今は酒が好きだろう。昔は飲まなかったくせに。そして、私はこれからやけ酒だ。それでも嫌か?」
「なんだ酒かよ初めから言えって家はどこだ?」
「おい」
なるほどなるほど。吏長じゃなくなったから、連れまわせる部下がいなくなって一緒に飲める奴がいなくなったんだな? で、貸しのある俺を飲み相手に選ぼうとした訳か。目の前のこの女が一気に良い女に見えてきた。
いいぞいいぞ。酒が飲めるなら俺はついていくぞ。むしろ大歓迎だ。
「ああそうだ、吏長──」
「──だから吏長ではなく、名前で呼べばいいだろう」
……待て。何て呼べばいい。
さも当然って顔で言ってるとこ恐縮だが、俺成り代わってから今日この瞬間までこの女の名前知らねえし、知る気もなかったんだぞ。名前で呼べばって言われても、口から何も出てこねえんだが。
「あー…………その…………」
「私の名前はベラだが……まさか知らなかったのか? 冗談だろ?」
*
「お前のことは前から結構気になってたんだ」
「急に何言い出してんだあんた」
盃の底を見て置いたところで言われたから、返事の角が立った。別に喧嘩腰にするつもりはないが。酒が入ってるからまあこんなもんだろ。
目の前で酒をガバガバ飲んでるベラは指で盃の縁を一度なぞってから、言葉を続けた。声は静かだが、迷いはない。
「私が来るより前から、お前はあそこにいただろう? それも私より年下のくせに……」
「あー……そうだ、ったな。おう、そうだぞ」
「帳面は真面目に締めて、誰にも文句を言わない。面倒事は起こさずに仕事だけ片づける人間だったって、皆が言っていた。まあ自分の主張が無さすぎて不気味だったがな。アッハッハ!」
「そっすね、ははは。あーうまい……」
俺は肩をすくめる。褒められてる気はしない。生憎だがその俺は今の俺じゃないからな。俺じゃない俺の事を俺として褒められてもむず痒いだけだ。自分で言ってて何だがよく分かんねえなこれ。
「それに比べれば今のお前はなんだ? 口調が粗暴になって、仕事も雑になって、これまで教えていた後輩から教わるようになり、嘘の口実で職場を抜け出そうとする。しかも重大な問題を解決して帰ってくるなんて行動力を備えてきた。訳が分からん」
「こっちが素ってだけだ。昔は黙ってたんだが、耐え切れなくなってこうなった」
「そうか、『急に辞めたい』と言い出したのもお前の中で限界が近くなってきてたということか。無理していたのだな」
「いやべつにそういうのでは……」
口の中に残った苦味を流すように盃をあおった。腹に落ちる前にもう一口欲しくなって、つい続けて飲む。返事が遅れたせいで、向こうの目がじっとこちらを見ているのに気づいた。
盃を机に置いた。酒のせいか胸の奥が妙にざらつく。ベラは唇を湿らせてから、指で机を軽く叩いた。一定のリズムで、まるで書き物を数えるときの癖みたいに。
「だから急に変わったお前に少し興味が出たんだ。それぐらい自由にやれたらきっと楽でいいだろう。書記官には向いていないが」
「それは自覚してる」
「アッハッハ! ならどうしてなったんだ!」
楽しそうにしやがって。文官になったのは本意じゃねえんだよ。とはいってもこんなこと喋ったところで酔っ払いの妄言としかとらえられないだろうが。
ベラは少し笑って、空いた瓶を横へどけ、新しい瓶を開ける。
「ならお前はこれから大変だな! 周囲からは大きな問題を解決した英雄的な存在として見られ、お前を慕う後輩にはこれからも仕事を助けられる。上から目を付けられるのも時間の問題だろうな!」
「他人事みてえに言いやがって、これから辞める奴は楽でいいよな」
「ならここで毒でも盛って殺してやろうか?」
「物騒だな! 流石に勘弁だ」
「冗談だよ、冗談! アッハッハ!」
やっぱこの女、酒が入ると人変わるよな。こうしてみると、やっぱり普段は周りに合わせてお堅い風に振舞ってんだろうな。てことは普段から部下誘ってこうして家で酒盛りしてんだろうか。
まあ俺からしても愉快でいいが。あの嫌な予感は何だったんだ。断った方が後悔してたぞ。
「ん? なんだあの酒」
「ああ、今日知り合いから譲り受けてな。私のお気に入りだ。かなり高いぞ」
「開けていいか?」
「特別だ、全部飲むなよ?」
盃が動く。軽い冗談を挟んで、くだらない悪態で返して、また飲む。一対一で飲むのは初めてだが案外楽しいな。というかコイツの家にある酒はほぼほぼ全部めちゃくちゃうめえ。舌の上が温くなって、頬に熱が乗る。いい具合だ。いい具合のまま、もう一往復。ただただ楽しいだけの酒だった。
*
楽しいだけのはずだった。
最初に来たのは、息の浅さだ。空腹の上に重いの乗せりゃ、そりゃ回りが早いか。にしても早くねえか。この体は結構酒に強かったはずだよな?
次の呼吸で違和感がひとつ増えた。舌の裏が微かに痺れて、唾が重い。喉の奥を通るとき、火じゃなくて薄い刃みたいな冷えが一本通る。妙だな。悪酔いしてんのか、俺。
「どうしたアシェル。顔が青いぞ?」
「な、何が」
「お前の顔がだ。飲み過ぎたか?」
「いや、そんなはずは……普段はもっと……」
「付き合ってくれるのはいいが、無理はするなよ」
隣に座ったベラが言い切って、俺の肩をさすりながらまた盃を置く。
俺も置いたが、その手がほんの少し震えた。包帯の下がうるさい。指先の皮が内側から乾く感じ。胸の熱はあるのに、指の根元が冷たい。
次に来たのは、金属の味だ。口の奥で、一瞬だけ鉄を舐めたみたいな、あの嫌な味がした。歯茎から血が出たのかと舌で確かめるが、なんか違う。喉のほうから上がってくる。気のせいだと言い聞かせる間に、胃がきゅっと縮んだ。空気が薄いみたいに、吸った息が浅いまま止まる。
「いや、まずいかもしれない。酔いすぎたのかも」
「おい、大丈夫か? 吐くか?」
ベラが言った。俺も言い返そうとした。言い返す前に、視界の端が白く滲む。椅子の脚が遠い。床が近い。内臓が雑巾みたいにねじれて、吐き気がひと波で来る。胸の奥が勝手にせり上がって、喉の筋が逆らえなくなる。
なんだ、なんだ、なんだこれ?
「──っ」
こぼす前に横を向いたつもりが、机の脚に当たって手が滑った。床板に吐いた。ああ、少し楽になっ──
「おいなんだ、それ。血か……?」
「あ……? は……?」
声を出すつもりが、空気が足りない。間延びして、情けねえ音になる。
ベラが水差しに手を伸ばして、器に半分も入れられず零す。手が震えてる。顔色が悪い。唇の色が急に薄い。額の汗の粒が冷たく見える。
「どく……か……?」
これ、毒じゃねえか?
「──何言ってるんだ。さっきの話、か? 冗談だって、言っただろう。そんな」
ベラの顔がどんどん青ざめていく。コイツが盛ったのか? ──いや違う。青ざめ方の度が違う。咳込んだ音がして、ベラの口からも血が垂れた。俺より軽いが、ベラも中毒状態になってる。自分で盛ってこんなバカなことなるか。動機だってない。だから違う。
何だ? じゃあ酒に混ぜられてたのか? いつ? 今日飲んだ酒で、二人が共通して飲んでて、かつ元々あったやつじゃなくて、外から仕入れてきたのはどれだ?
視界の端に一つの瓶が光る。今日知り合いから譲り受けたっていう、めちゃくちゃ高い奴。実際に死ぬほど美味かった。
俺は調子に乗って7割ぐらい飲んだ。ベラも3割ぐらい飲んでた。
「ち、違うぞ、そんな、毒なんか盛る訳が、本気で言ったんじゃ……」
「……分かっ、てる。落ち着け」
ベラに渡したってことは、狙いは初めからベラだけ。俺はただ乗りした結果巻き込まれた、ってこと、か。
そうか。上の連中にとっちゃベラは邪魔なだけじゃなくて、知られたくない事情を知ってるかもしれないからな。殺す動機のある奴がいてもおかしくねえ。
よく買う酒があるのなら、それに混ぜて渡せばいい。そうすりゃ酒好きのベラは確定で飲んでくれる。それで死んでも、周りには飲みすぎで逝っちまったように見えるだろうし……。ああ、結構効率のいいやり方……だな……。
「すまない、その、まさかこんな、こんなことになるとは」
ベラの声が聞こえる。何言ってるんだ? なんか、聞こえねえぞ。
申し訳なさそうな顔が視界に映る。待て、そんな顔するな。責任感じようとするな。こんなの、俺だって予想つかなかったし、別にお前のせいじゃねえ。
喉が狭くなる。吸う前に塞がる。胸の真ん中がつかまれて、押し広げようとすると内側から刃でこすられるみたいに痛む。吸えねえ。吸えねえのに体は吸おうとして勝手に肩が跳ねる。空気が入らない音だけが喉の奥で擦れて、腹筋が勝手に攣る。唾が重い。飲み込めない。歯茎に当たるたび鉄臭い。鼻が利かねえ。もう血の匂いしかしねえ。
「っ、ああ……」
声にならねえ。喉の奥でひゅうひゅう鳴って、胸が勝手に早く上下する。脈が耳に来る。ドク、ドクと頭の内側を叩かれて、視界の端が白い点でざらつく。目を開けてるのに暗い。暗いのに、吐いた赤だけがやけに目立つ。気持ち悪い。それに苦しい。なんだこれ、なんだこれ!
「……おい……アシェ……」
名前だけ引っかかって、ベラの口から血が糸みたいに垂れる。胸が薄く上下して、肩が跳ねるたび喉が鳴る。床に膝から崩れて、俺の脛に頭をぶつけた。そのぶつかった感触がやけに遠い。
手を伸ばそうとして、伸びない。指が自分のものじゃない。握ろうとしても、力が途中で途切れて、震えだけ残る。
肘で床を探す。床が冷たい。冷たいのに、掌は焼けるみたいに熱い。温度が合わない。合わないまま、また吐き気。干からびたみたいな咳が続いて、最後に血が小さく跳ねる。
ベラが俺の服を掴んで、爪が布越しに皮膚をひっかく。力が入らないくせに、離れない。こっちも掴み返したいのに、握力が死んでいる。
手の先から感覚が引いていく。足の指もだ。末端が冷たくなって、胴体だけが火の塊みたいに熱い。皮膚の内側で汗が冷えて、鳥肌が立つ。悪寒と熱が同居して、震えが止まらない。
痛い、より、苦しい。苦しいが全部だ。そこから先に考えが進まない。進めない。頭で何か組み立てる余裕が削り取られていく。
「──ぁ──し──」
ベラが俺の名の形に口を作る。声が出ない。俺はとっくにそうだった。
視界の縁が灰に塗られていく。塗られた灰が中心へ寄ってくる。寄ってくる速度がやけに一定だ。一定なのが怖い。止められないのが分かるからだ。クソ、嫌な予感はこっちだった。ベラじゃなくて、毒入りの酒に俺は反応してた。
ふざけんなよ。なんであんなに美味い酒飲んで、その結果がこれになるんだ。俺は明日ルシアに会うんだ。タリエとソラナがこれからもよろしくって言ってたんだ。ベラが良い奴だってわかったんだ。なのに、なんだ、これ。
視界がぐるぐるする。情けねえ。情けねえって思った瞬間、喉が完全に塞がった。胸が一度だけ大きく跳ねて──
──そっから先が真っ白になった。
「はあ……来ないわね。快復したって聞いたのに。やっぱり嘘だったのかも」
「でも、どうしてアシェルと私の名前を……」
「ああ、私まだ引きずってる。彼が生きてる訳ないのに……」
「私はとにかく、偉い兵士になって、約束を果たさないといけないのに……」
「……でも。もう少しだけぐらいなら、待ってみても……」
これで第2章終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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それでは、次話以降も宜しくお願いします。
みんなも飲みすぎには気を付けよう!(´・ω・`)