ありがたやありがたや……。多くの方に沢山見て頂けて嬉しい限りです、万歳。
三年前。レミがこの屋敷に来たのは、三年前。
でも使用人たちは言った。「執事長は十年前からいる」と。
じゃあレミが「俺より前から仕えている」ってのはおかしくなるよな。
いや待て、落ち着け。もしかしたら使用人たちの勘違いかもしれない。記憶が曖昧で年数を間違えてるだけかもしれない。十年じゃなくて実際には三年とかそういう可能性だって……ああいや違う、この屋敷が建った時からって言い切られたんだった。勘違いじゃねえ、実際に元の体のアシェルは十年前からここにいたんだ。
ならレミが嘘をついてたってことになる。「俺より前から仕えている」「外様が気に入らない」ってのは全部嘘。わざわざ誰にも言うなって釘まで刺してきたのに。
何のために? 何でそんな嘘を? 何かが引っかかってる気がしてならねえ。レミが新参者だとして、レミが嘘をついてたとして、レミがこの話を隠してるとして、それで何が起こる?
確かに、俺が記憶喪失なら自分が新参者ってことはバレない。自然な流れでレミの方が古株だって印象を俺に植え付けられる。そうすれば、俺を脅して従えるのもやりやすいだろう。でもそれだけじゃない気がする。俺は何を見落としてる?
足が重てえ。自分の部屋に向かうだけなのに、変な疑念からか思考だけじゃなくて動きまですっとろくなっちまってるみたいだ。
新参者で三年前。ガルトンが王都で名を上げてから。 ガルトンとヴェミーニの対立は五年以上続いてて、レミが来たのは三年前。つまりレミは、対立が始まった後に来た人間ってことになる。
優秀なメイドだって評判だったらしいが、評判ってのはどこで立つ。誰が評価する。ガルトンが直接スカウトしたのか、それとも誰かの紹介か。誰かの紹介だとしたら誰が──
──ヴェミーニ侯爵。
……いやいや、ちげえだろ。考えすぎだ。ヴェミーニのスパイが屋敷にいるってことは知ってるが、まさかそれがレミだなんて、そんな。
でも、筋は通る。新参者で、嘘をついて、ガルトンへの忠誠が怪しくて、俺を従えようとして。全部、スパイなら説明がつく。ガルトンの秘密を探るために送り込まれた。執事長を脅して従えて、情報を引き出す……いやいや、まさか。
──嫌な予感がする。
足がさらに重くなった気がした。廊下の石畳が妙に冷たい。汗が背中を流れてく。
もし本当にスパイだとして、レミは今後どうするつもりだ。俺が矛盾に気づいたってことは近いうちに察するだろう。そのまま放っておけば、俺はガルトンに「レミは怪しいぞ」と報告するかもしれない。そうなればレミの立場が危うくなるし、最悪スパイだってバレる。
もし、この仮定が正しいのなら、レミは──
部屋の扉が見えた。あと少しだ。中に入って、鍵をかけて──いや、鍵なんて意味ねえな。レミは俺の部屋を何度も漁ってる。合鍵だって持ってるだろう。
扉に手をかけるが、取っ手が妙に重てえ。振り返って、廊下を確認する。誰もいない。レミの姿もない。よし、開けて、中に入って──
「お帰りなさいませ、執事長」
「!? レ、レミ……!?」
な、何で……ここに……!?
窓際に立って、こっちを向いて、両手を前で組んで。最初からそこにいたみたいに。
喉が引きつる。後ずさろうとして、背中が扉にぶつかった。クソ、逃げ場がねえ。
目の前のレミが立ち上がる。ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。靴音が規則正しく響いて、その一歩ごとに胸の奥が冷えていく。
「少々、お話がございます」
「は、話……?」
「ええ。なので少し、場所を移動してもよろしいですか」
レミの手が、俺の腕に触れる。
唇が僅かに動いた。笑ってる──いや、笑みを浮かべてる。でも、それは喜びの笑顔じゃない。何か別の感情が混じった、不気味な笑み。
「ど、どこへ」
「そうですね。人に聞かれたくない話でもありますし……」
レミの声が低くなって、細くなった目がこっちを睨んだ。
「『処分室』など、いかがでしょう」
……処分室、だと。
あの地下の、鎖と、刃物と、血の跡と、水槽がある……。
「ま、待て! 何を──」
「お静かに」
レミが俺の腕を引く。抵抗しようとして──腕が思うように動かねえ。
何だ、何だこれ。足も膝が頼りなくて、立ってるのがやっとだ。先の方が動かせねえ。さっきまでは、こんなじゃなかったのに。
「歩けますか? 歩けないなら、引きずって参りますが」
「あ、歩ける……歩けるから」
何とか足を動かしつつ、レミに引っ張られて廊下に出る。
周りに使用人の姿はない。助けを呼ぼうとしても声が出ない。喉が上手く動かねえ。
「先ほどお飲みになられたお茶、いかがでしたか」
茶……?
俺が、部屋で、自分で入れた茶。高級で、俺には違いの分からない味がして、飲んでからいい具合に時間が経っていて──あの部屋にはレミが入ることができる。
「まさか……」
「感づかれたようですね、流石です」
この女……! 部屋にある茶葉に、薬を盛りやがったのか。
だから体が動きにくくて、足も重くて……クソ、用意周到にやりやがって!
「ま、待て! やめろ! ここでいい! ここで話そう!」
レミに腕を引かれるたびに、「嫌な予感」が背骨の奥から首筋まで這い上がってくる。
この屋敷での暮らしで、何度も体験した。乗り越えなければ死に直結する、今までの人生を何度も終わらせてきたあの予感が。俺の中でどんどんデカくなっていく。
まずい、まずい。まずいまずいまずい!!
*
処分室の扉が閉まって、外の音が聞こえなくなった。
てことは、もう声を上げても外には聞こえないってこと。俺が助けを叫んでも誰も気づかねえってこと。
やべえ……。
「さて、執事長。お話を伺いたいのですが」
「何の、話だ」
喉が渇いて、声が掠れる。レミが俺を見下ろしたまま目線が合った。
無表情で、冷たい目。この目で見られると、何も言えなくなる。
「執事長は、私のことを何だと思っておられますか」
「……何だと、って」
「ええ。例えば──ヴェミーニ侯爵のスパイである、とか」
……お、おい。
「やっぱり、そうなのか」
「ええ」
クソ、やっぱりかよ。しかも自分から言いやがった。隠す気もねえのか。薄々そうじゃねえかとは思ってたが、こうも堂々と言われると逆にこう……反応しづらい。
いや戸惑ってる場合じゃねえぞ。ヴェミーニの息がかかった人間が、三年前からずっとこの屋敷に潜り込んでて、俺のすぐ隣で仕事してて、毎日毎日俺を観察してて。全部、筒抜けだったってことじゃねえか。
「その通り、本来の私はヴェミーニ侯爵に仕えております。三年前、ガルトン様の屋敷に潜り込むよう命じられました。命じられた任務はガルトン様の失脚、そして可能であれば──ガルトン様の隠し財産を押収し、侯爵に献上することです」
レミが頷いて、何の躊躇もなく喋っていく。まるで今日の天気がどうだったか報告してるみたいに、何の逡巡もなくあっさりと認めやがった。
狂ってる。ガルトンに仕えつつ俺とルシアの密会を報告しないあたりから不可解な奴だとは思ってたが、こんな場所に連れ込んでおいて、スパイだって自白しておいて、それでも平然としてやがるなんて。
……いや、待て。それが目的か? 元々その方が都合が良かったのか?
自分が何か情報を横流しにした時に、自他ともに認める裏切り者の存在をストックしておけばソイツがやったってことにして擦り付けられる。裏切ってる自覚がある以上、俺としても反論ができねえ。レミは自分が堂々とスパイ行為を行いつつ、邪魔な奴をいつでも追い出せる状況にある。だから俺とルシアの密会を報告せず、いざという時のために温存してやがったんだ、コイツ……!
ただ、状況が変わったのか。今は──
「──俺を脅して、情報を引き出そうとしてる、と」
「その通りです。執事長は理解が早くて助かります」
助かるかよ。こっちは助かんねえんだが。
レミの声に抑揚はない。仕事の報告をしてるだけ。人を拷問する部屋に連れ込んでおいて、この落ち着きようは何なんだ。
「それで、俺から何を聞き出すつもりだ」
「ガルトン様の秘密です」
レミが立ち上がって、壁の方へ歩いていく。道具が並んでる壁、何をするつもりなのか想像がついて気分が悪くなる。
「裏帳簿にも載らない極秘の取引、自身の弱み、そして財産の隠し場所。執事長なら、全てご存知のはずです」
「俺が、知ってるって……」
「ええ。ガルトン様が真に信用しているのは、執事長だけでしたから」
レミが道具の一つに手を伸ばす。鉗子だ。刃先を指で確かめてやがる。
「メイド長の立場まで登りつめはすれど、新参者の私には知らされていないことが多々あります。重要な取引の詳細も、本当の資産額も、隠し口座の場所も。しかし、執事長は全て把握しておられました──記憶喪失という横槍が入ってしまいましたが……」
そうか。だから、俺なのか。十年前からガルトンに仕えてる執事長なら、全部知ってるはずだ。ガルトンの本当の秘密を。信頼されてる古株の執事長なら、当然知ってるはずだ。
でも、俺は何も知らねえ。成り代わったばかりで、記憶なんてねえんだ。裏帳簿に載ってることしか分からねえ。隠し口座がどこにあるかなんて、知るわけがねえ。知らねえもんを、どうやって答えろってんだ。
「他人を信用されていない、孤独な方ですから。ガルトン様を直接拷問しても、口を割らない可能性が高いでしょう。長年この世界で生きてこられたため、痛みや脅しにも慣れておられます」
レミが鉗子を置いて、別の道具を手に取る。鞭だ。先端が擦り切れてて、使い込まれてる。まさか、こんなもんで叩かれるのか? 嫌だ。絶対に嫌だ。
「ですから、まず執事長から伺おうかと。時間も経ちましたので、記憶が回復された可能性もありますし、執事長が話して下さらなければ、次はガルトン様。どちらかも口を割らなかった場合は、仕方がなかったということで」
「……っ、でもなんで急に、そんな素振り、今まで一度も──」
レミがこちらを向く。相変わらず無表情で、冷たい目。
「あの女兵士がいつ攻めてくるか分からない、ヴェミーニ侯爵から催促を受けている……と、まあ色々ありますが。ガルトン様とヴェミーニ侯爵の対立が、表面化しそうなことが一番の原因ですね」
「……それが、どうして? 確かに、情勢はどっちも我慢の限界に近そうだ。些細なきっかけで、全面的な争いになるかもしれねえ、しれねえが──」
「──それが、面倒なのです」
レミが僅かに眉を動かす。初めて見る表情だ。苛立ち、というか。不快感、というか。感情が漏れ出てる。
「このまま対立が続けば、いずれ私も巻き込まれます。ヴェミーニ侯爵もガルトン様も、スパイの存在には気づいておられる。誰がスパイかは分かっていなくとも、疑心暗鬼は深まっています」
レミが俺の前で立ち止まる。見下ろす形になる。
「そうなれば、私がいつ疑われてもおかしくない。いつ、処分されてもおかしくない。ですから、早めに片を付けたいのです。時間に焦らされるのは嫌いなので」
嫌いって……お前にそんな考えがあるのかよ。
だから、今なのか。今日、俺を拷問するのか。
嫌な予感は収まらない。なんとしても今すぐここを抜け出さないと間違いなく死んじまう。
ああクソ、この女の人間的な一面がやっと見れたとは思ったが、こんな形ならゴメンだったよ!
*
レミが俺の腕を掴んだまま、部屋の奥へ。
抵抗してもとんでもない力のせいで、まるで逃げ切れる気がしない。
冗談だろ、元のアシェルが何人も他の人間を殺してきた場所で、どうして同じ体の俺が殺されそうな目に遭わなきゃいけねえんだ……!
「ヴェミーニ侯爵に忠誠を誓っている、という訳でもないのですが」
んな世間話でもしてるみてえに喋るんじゃねえよ、こちとら引きずられてんだぞ……!?
「私は、考えるのが面倒なのです」
「何の、話……だ!」
「誰に仕えるか。何をするか。どう生きるか。そういうことを、いちいち考えるのが、面倒で」
レミの声に感情がない。何度も感じてる、当たり前のことを復唱するみてえに。
「ですから、安泰な誰かに、死ぬまで仕えていたい。それだけが私の望みです」
……死ぬまで、誰かに? 何も考えたくないから? できる奴に一生ついていきたいって?
狂ってる。やっぱりこの女、完全に狂ってやがる。自分の意思がねえのか。それとも、意思を持つことを放棄してるのか。どっちにしろ、まともじゃねえぞ……!
「ヴェミーニ侯爵は昔こそ安定しておられました。ですから私は侯爵に仕えることを選んだのです」
レミがあの水槽の前で立ち止まる。深い、人一人が沈められる深さ。
鉄の枷が縁に取り付けられてて、底には排水口。水が入ってたはずなのに、赤い染みがしつこく残ってる訳は考えたくない。
「しかし近頃、侯爵は欲を出されるようになりました。ガルトンというライバルに対し躍起になり、無理な指示を出されるようになった。あれでは長続きしないでしょう」
やめろ、手錠に手をかけるな。やめろ、やめてくれ!
「ですから、これは最後の仕事です。ガルトン様の資産を押さえたら、それを持ち帰って──ヴェミーニ侯爵も、殺します」
「……は?」
何言ってやがる。主人を殺す? ヴェミーニを?
「二人の資産を持って、しばらくは適当に過ごしましょう。そしてその内、また仕え甲斐のある方を見つけます。今度は欲のない方であるといいのですが」
おかしいだろおかしいだろ。主人を二人殺して逃げるって計画を、何の躊躇もなく口にしやがった。ガルトンの裏切り者だってんならまだしも、コイツの中じゃ本当の主人だって大した認識じゃない。
狂ってる。本当に、狂ってる。こんな奴と一緒に働いてたのかよ、俺は。
「その点、執事長は素質がありますね」
「そ、素質……?」
「ええ」
素質ってなんだ。俺が何をしたってんだ。それなら俺を逃がしてくれよ。
「過度に競争心を出さず、生き延びることに執心しておられる。私の殺気を受けても、意識を飛ばさなかった。普通の人間なら私の圧で気絶します。でも執事長は、耐えた。それだけの強い意志をお持ちです。ですから──できるだけ、殺したくはないのですが……ごほん」
レミの声が、僅かに柔らかくなった。いや、柔らかくなったように聞こえるだけだ。
「……なので、話してください。ガルトン様の秘密を。そうすれば執事長は無事です。話してくださるのなら、私と一緒に逃げましょう。そうすれば、執事長は生き延びられますし、私も貴方を殺さなくて済む」
レミが、手を差し伸べてくる。一緒に? 最初から最後まで何を言ってやがるんだ。
あの冷たい目が、初めての期待を込めて、じっと俺を見て──
「でも」
その手が、俺の肩を掴んだ。
「話してくださらないなら、仕方がありません」
声が、冷たくなって──マズい!
「──ッ、や、やめろ!」
俺の体を荷物みたいに持ち上げて、水の張られたあの水槽に、俺を──
「待て! 待ってくれ! 頼む! ──ッ!!」
「正直に話してくださいね」
レミの手が、俺を押した。もう片方の手が、ガラスの蓋に手をかけて。
俺の体は傾いて、バランスが崩れて、水の中に──
*
──冷てえ!
全身が水に沈んで、視界が水で歪んで。上が、下が、分からねえ!
いや違う、上はあっちだ。光が見える、水面だ。早く、浮かばねえと!
足を動かそうとして──ああクソ、動かねえ! しびれ薬のせいだ、力が入らねえ。腕も、指も、全部しびれてて、思うように動かせねえ! 畜生、茶なんて飲むんじゃなかった!
必死に水を掻いて、何とか顔を水面に──
「──っ、はあっ! はあっ、はあっ!」
空気が、口を抜けて、入って──痛っ!?
何だこれ、何か頭にぶつかって──蓋だ! クソ、叩け、叩け、叩け! ああ、力が入らねえ! 傷の一つも入らねえ!
「ごぼっ、開け、ろ! 開け、てくれ!!」
声が水中で掻き消えて、外に届かない。
レミの影が、ぼんやりと見える。俺を見下ろして、ただ立ってやがる。
息が、もう限界だ。胸が苦しい。喉が焼けるみたいに痛え。
吸いたい。空気を吸いたい。でも今吸っても水しか入ってこないって、分かってる。分かってるのに、体が勝手に──
「ごぼっ、たす……がぶっ、け……!」
口が開いた。水が、口に、喉に、流れ込んでくる。咳き込もうとして、余計に水を飲む。体の中が水で満たされていく感覚。溺れる。溺れてる。俺、溺れてる──違う! これじゃねえ! 空気が欲しいのに、水が、邪魔だ!
死にたくねえ。まだ死にたくねえ。やることが、まだ残ってんだ。
なのに、なのに、なのに!
「生き延びたいのであれば、さっさと話せばよろしいのに」
話せ? 何を話せってんだ!
ガルトンの隠し財産? 秘密の取引? 知らねえんだよ、そんなもん! 俺は成り代わったばっかりなんだ。十年間の記憶なんてねえ。数週間しか、ここにいねえんだよ!
言いたい。言いたいが、言えねえ。言ったら「成り代わり」の話をしなきゃいけねえ。でもレミは信じねえ。前に試したときだって、冗談だと思われた。今言ったって「嘘をついてる」と判断されて、空気を無駄にするだけでしかねえ。
でも、このままじゃ死ぬ。
──どうする、どうする、どうすればいい!
息を止めようとして、もう無理だ。体が勝手に息を吸おうとする。口が開く。水が入ってくる。胸が、苦しい。頭が、ぼうっとしてくる。
「殺したくはないと申し上げたはずですが……話して下さらないのであれば、仕方ありませんね」
レミの声が、遠い。
殺したくない? 冗談だろ。なら大人しく逃がしてくれればいいんだよ。
見てみろよ、完全に殺す気じゃねえか。初めから逃がす気なんて微塵もねえんだろ……!
ああ畜生、誰か助けてくれ。頼むから。誰か、誰でもいい。
怒りに震えるルシアでもいい、『説得』にやって来たガルトンでもいい。森で見たあの怪物でだって構わない。それぐらい、誰でもいいから、入って来て、助けてくれ、頼むから。
視界が、暗くなってくる。水面の光が、遠くなる。レミの影が、ぼやける。
体が、沈んでく。力が、抜けてく。意識が、どんどん遠くなる。
──ああ、ダメだ。これ、ダメだ。
本当に、死ぬ。
次のアシェルだってまだ見つかってねえのに。探しても、探しても、どこにもいなかった。
もし、次がなかったら? もし、これで本当に終わりだったら? ここで、終わるのか?
レミに殺されて、次もなくて、それで終わりか?
ふざけんな、ふざけんな。ふざけんなよ!
水が、なんだ! 溺れるのが、なんだ! 息ができねえのが、なんだ!
これまで何回も切り抜けてこれたんだ! こんな女一人どうにだってできるだろ、俺!
俺は、今度も、生き延びて、レミから、逃げ切って、俺は、俺は──
逃げ切って──
逃げ切っ──
──て。
「……ああ、死にましたか。残念です」
「生き延びるため、貴方なら、きっと話してくれると思ったのですが」
「はあ……どうせガルトンも吐かないでしょうし、ヴェミーニ一人分で我慢ですね」
「……そういえば、もし死んでも生まれ変われたら、なんて話をしましたっけ」
「それなら次は貴方に仕えてみるのも良いですね。もしそんなことがあり得るのならですが……」
これで第5章終わりです。
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可能であれば、感想や意見や評価やここすきを頂けると嬉しいです。大喜びします。
それでは、次話以降も宜しくお願いします。
みんなもに溺水は気を付けよう!(´・ω・`)