【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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踏み躙る気持ちと不仲な兄妹

 にしても、どうすりゃいいんだ……? 

 

「いつまで森ん中いるの? さっさと盗みに行こうってば」

 

「待てって。食えるキノコと木の実は教えてやってるだろうが」

 

 こちとらリアンとマドリーを和解させる方法を必死になって考えてんだ。邪魔するなら毒キノコ教えてやるぞ。誰のおかげとは言わねえが、俺にはどれがどれか分かるんだからな。

 

 一応今でこそピリピリしてるが、根は二人ともすごく良い奴だし、上手く行く道は確実にあるはずなんだ。それはお互いの家の人間にも言える。実際俺が死ぬ前は協力関係にあったし、お互いを認め合ってた。リアンはマドリーの知識を認めてたし、マドリーはリアンの情熱を認めてた。俺含めて三人で協力して、下戸でも飲める酒を完成させた。もう一度お互い冷静に話し合える場所ができればきっと和解できるはず。

 ただ、そのために俺が直接接触するのは多分無理だ。マドリーには許せねえ存在として顔を覚えられちまった。命の恩人の墓を掘り返した墓荒らしとして。リアンは勿論だが、マドリーも若干壊れかけてるような雰囲気があった。

 リアンに会うのも危険だ。話で聞く限りリアンの執着は尋常じゃねえ。そんな奴に、「俺がアシェルだ」なんて言っても危ねえし、かと言って「アシェルは生きてる」あるいは「アシェルは死んだ」のどっちも悪い未来に直結してるような気がする。今のアイツは下手に刺激すると取り返しのつかないことになっちまう爆弾みたいなヤツだからな。

 

 じゃあ、どうすればいい? 

 お互いの認識に大きな変化を与えさせず、それでいて俺の行動が問題にならないよう、二人を和解させるにはどういう手段を取るのが正解なんだ? 

 何かきっかけがあればいいんだ。アイツらにとっての利害の一致とか、有無を言わせない状況とか、お互いの共通点とか──

 

「……共通?」

 

「ん? なに? キョーツー?」

 

 そうだ──共通の敵だ。

 それも生半可な態度じゃ危ないような、あるいは強く感情を刺激されるような敵。そんなヤツが出てきたら、憎しみを一時的に忘れて二つの家は協力するしかなくなる。そうすれば、話し合いの機会が生まれる。

 

 問題はその共通の敵ってのをどうやって作るかだ。

 敵役は一応俺でいい。今もマドリーには恨まれてるだろうし、過度に敏感になってるリアンを挑発すれば注意なんてすぐ集められる──ただ、それだけじゃ二つの家が協力するまでの関係にならねえってのが問題なんだ。

 ──じゃあ、俺の正体はすぐ明かさず、正体不明の敵として、二つの家に立ちはだかる壁になればいいんじゃねえか? ただのチンピラ二人なら二つの家も協力する必要はないが、相手の正体が不明なら色々な可能性を考慮して協力せざるを得なくなるだろ。

 俺と……あとネルだけじゃどうやっても人数が足りねえから……。そうだな、実際にはそこまで脅威でもないが、二人にとっちゃ冷静でいられない程度に感情を強く刺激する、そういう立ち回りをやればいいってことだ。そうすればリアンもマドリーも怒るだろうし。

 

 だとしたら──

 ──そうだな、よし。これならいける……! 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「ネル、ちょっと来い」

 

「んー? なに?」

 

 ……おお、キノコかじってやがる。食うなとは言ってねえが、せめて火通してから食えよ。

 あの盗賊団にいた以上、生のキノコでも多少はマシなのかもしれねえが……あとで腹痛くなっても知らねえぞ。

 

「これからの動きを説明する──要は作戦会議だ」

 

「! やっと盗みに出るってこと!?」

 

「そうだ、狙いはあの『バレク家』と『グロス家』だ」

 

「やっぱりあの家に! へー、やっとやる気になったってこと。いいね、稼ぎに出たくてウズウズしてたんだ」

 

 いいぞいいぞ。是非ともやる気になってくれ。

 これからの活動には人手が要るからな。最悪俺だけでもいいが、動けるならやっぱり早い方がいい。

 

「で、狙うのは『バレク家長男アシェルの遺品』だ」

 

「……は?」

 

 あ、おい。

 キノコ落とすなよお前。しかも食べかけのヤツ。

 

「遺品……? 遺品って、死んだ奴の持ち物?」

 

「ああ、それで合ってる」

 

「……? 意味わかんない。なんでそんなもん盗むの? 金にならなくない?」

 

「いや、金になる」

 

「……どういうこと? しかも、アシェル兄とか、アンタと同じ名前のヤツだし」

 

 不思議そうだな。まあ当然か。

 遺産とかならまだしも、死ぬ前まで使ってた日用品なんてもの盗んでも金にならねえ。普通はそう思う。

 ただ、この作戦の本質は『遺品が金になる』って思い込ませることだからな。実際に金になるかどうかは関係ないんだ。

 名前が一緒なのは俺も分からん。成り代わった体の名前が全部同じになる現象については製造元に文句を言ってくれねえか。

 

「……実はな──ソイツの遺品にはとてつもないお宝への道しるべが隠されてるって噂がある」

 

「お宝! 本当に?」

 

 分かりやすい奴だな。

 

「そうだ。かのバレク家のアシェルは生前『下戸でも飲める酒』ってもんを造り出して成功し、その利益を自分一人で独占したらしい」

 

「へえ!」

 

「その後不慮の事故で亡くなったって話だが、当然その隠し遺産まで無くなった訳じゃない。それは勿論分かるな?」

 

「分かる、分かるよ!」

 

「……で、その隠し財産の在処を示す記録を、ヤツは自分の遺品に記していた……そういう噂があるんだ」

 

「ああ、なるほど! やっとまともな仕事じゃん! 墓荒らしとか意味わかんなかったけど、そのお宝狙いってことだったんだ!」

 

 嘘だぞ。とんでもない嘘だぞ。

 ネルはこれまでの行動の筋が通ったってのもあって完全に信じてる。これでいい、ネルには端から本当のことを言う必要はねえ。お宝があるって言っておけば協力してくれる。それで十分。

 

 それもこれも、この後の『死後の尊厳踏み躙り作戦』のための布石なんだからな。

 

「で、盗み終わった後は俺たちもその噂を広めるんだ」

 

「ん? なんでそんなこと? ライバルが増えちゃうんじゃないの?」

 

「まあ待て、よく考えろ。噂を広める時点で重要な遺品は俺たちが既に回収済みな訳だ。後から警備が厳重になろうと俺たちには関係ないし、逆に遺品を狙うヤツが増えれば俺たちへの疑いの目を逸らせる。情報を得た後なら遺品を探してる同業に高値で売りつけることも可能。だろ?」

 

「! わお、天才じゃん!」

 

 そんな噂が本当に存在してるなら警備は初めから厳重なはずだが……そういうことに気づかないのはコイツが閉じた世界で生きてきたからだろうな。

 ──ただこれで、遺品を盗んだ後に「噂を流す」って行為を違和感なく行うことができる。

 

 実際に盗むものはなんでもいい。お互いの家から酒家のアシェルの痕跡があるものなら何でも。言っちまえばアシェルが使ってたコップとかでも構わねえ。

 そしてこれまたどういう訳か、俺にはバレク家もグロス家も──その両方の屋敷の間取りを知識として把握している。材料の搬入とか、商人の出入りとか、道具の発注とか、そういうのだってどのタイミングで行われるか知ってるし、警備の位置とか交代の時間まで把握済みだ。

 舐めんなよ、こちとら数週間あの家に入り浸ってたんだ、それぐらい全部覚えてるぜ。そこまで分かり切った標的に盗みに入るのなんて盗賊一本でやって来た人間には造作もない。

 

 で、遺品を盗んだ後は、この地域一帯に噂を流す。さっきの「酒家アシェルが隠し財産を持っていた」「遺品に宝のありかが隠されている」って噂をな。

 信じるか信じないかはどうでもいい。重要なのはそういう噂が存在してるってことだ。

 噂の内容を知った二つの家は怒るはずだ。だって、その酒を商品として売り出す前にもう俺は死んでる。利益の独占なんてどうやったってできっこねえ。その噂はどこぞのバカが流布した、与太話だとすぐに判断するだろう。

 ただ、気づいたときには実際に遺品が盗まれてる訳だ。自分たちが噂を信じようが信じまいが、実害は既に発生してる。そうなりゃお互い「嘘の噂を信じ込んで、アシェルの遺品を盗もうとしてる奴らが存在する」って思わざるを得ない。

 

 ──存在しないアシェルの悪行を信じ込み。

 ──両家の誇りである製品の利益を奪うために。

 ──アシェルの遺品を強奪しようと企む連中の存在。

 

 こんなヤツ、間違いなくリアンとマドリーの逆鱗に触れまくりな存在だ。執着してるリアンも、後悔を感じてるマドリーも、侮辱を許さない程度には俺を想ってくれてるはず。なんなら家全体で憤ってくれるかもしれない。自惚れじゃないが酒家の連中だけじゃなく、薬家の連中からも俺はまだマシ的に扱ってもらってた。

 

 結果として、二つの家には「アシェルを侮辱する盗人」という共通の敵が出来上がる。

 そうなりゃお互い情報を共有するために協力せざるを得ない。俺への尊厳を守るために動いてる訳だから、お互いに「やっぱりアイツはそんなに悪いヤツじゃない」と再認識してくれるだろう。

 で、最後には俺が件の犯人として二人に倒されればいい。ちょっと悲しいが。

 俺という悪は倒され、両家は手を取り合ったことで和解し、過去の俺の尊厳は守られ、元凶の噂は払拭される。完璧だ。

 

 ……なんか、過去の自分が惜しまれてる前提で作る計画って。

 自意識過剰な感じがして嫌だな……。

 

「へへへ。死んだヤツから盗むのは抵抗とか無いから楽でいいんだよね」

 

 ……まあ、ネルはこうだ。昔の俺もこうだったから環境が直れば矯正される、はず。

 ネルには計画完了までに外の世界ってもんをきちんと教えた後、俺がある程度金を稼いで、その金で遠くまで逃がしてやるとかすればいいだろう。

 

 死んだヤツの物を盗むってのは俺も気が引けるが……酒家のアシェルってのは文官のアシェルが死んで成り代わりが発生したことで新しく作られた人間だろうし、元々そういう人間が存在してたってことじゃない。

 遺品の盗難だって、盗むのは俺だし盗まれるのも俺の遺品だ。周りから死者への尊厳の踏み躙りに見えるが、その死者は俺自身だから問題ねえ。ただ自分の持ち物をこっそり取り戻してるだけだからな。一応悪いことじゃねえ。

 

 ……たぶん。

 

「で、いつ盗むの?」

 

「今夜だ。バレク家から先に盗む」

 

「急だね。理由は?」

 

「バレク家に酒の材料が搬入される。その時に紛れ込めば、誰にも気づかれずに入れるからな。間取りも分かってるし、どこに何があるかも、全部把握済みだ」

 

「おお、流石! ……え、いつの間に?」

 

「……お前がスヤスヤ寝てる頃だ」

 

 嘘だけどな。

 別に結果さえよければお前は過程がどうだったかとか気にするタイプじゃねえだろ。

 

「へー、すごいじゃん! ちゃんと計画立ててるんだ、感心した。伊達にアシェル兄と同じ名前って訳じゃないんだね」

 

「その褒め方はなんかこう……いや、いい。ありがとよ」

 

 まあ……よし、納得してるな。ならいいや。

 重要なのは実際に遺品を盗み出したって事実と的外れな噂の存在だからな。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 森の中、俺とネルは盗んだ遺品を前に座ってた。

 ま、こんなとこか? これだけ無くなってたら流石に二人とも気づくだろ。いずれリアンやマドリーたちにも返さなきゃいけねえから汚せねえし、布にでも包んでおくか。

 

 服、手記、道具、手紙、お守り──全部酒家のアシェルの痕跡が残ってるもんばっかりだ。

 

「ねえ、本当にこれ全部調べるの? めんどくさくない?」

 

「いいから黙って見張ってろ」

 

「……はーい」

 

 盗み自体は成功した。バレク家にもグロス家にも忍び込んで、誰にも気づかれずに盗み出すことができた。

 ロエマに教わった化粧の技術も役に立ったな。実際に化粧してもらったのは一回だけだし、教えてもらったのも短い時間だけだったが、適当な道具でいい感じに変装して違和感なく潜り込めた気がする。

 盗賊としての技術と、酒家としての知識、あと写本師……看板娘としての経験を組み合わせれば、誰にも気づかれずに盗むことは難しくねえってことだな。ネルの協力もあって、予想以上にスムーズに事が運んだ。俺たちの才能が恐ろしいぜ。

 噂も既にばらまき済みだ。数日かけてこの地域の村々を回って、酒場や市場で商人や行商人にチクっていった。順当にいけば噂はいずれ広がって、数日もすればバレク家とグロス家にも届くだろう。

 

 えっと、これは……リアンの部屋の奥にあった服だな。職人の制服じゃねえ、普段着みたいなやつ。袖口が少し擦り切れてて裾に小さなシミがある。洗濯してあるが完全には落ちてねえ。

 確か、リアンとマドリーと一緒に酒造りの実験をしてた時に着てた服……だったっけ? あの時マドリーが薬品をこぼして、それが袖にかかったんだ。マドリーは慌てて謝ってたが、俺は別に気にしてなかった。

 だよな。俺の服なんだよな。なんでリアンの部屋にあったんだ。

 

 こっちは……そうそう、手記だ。酒造りの実験記録。完成版が書かれてる新しい奴じゃなくて、比較的古い時のヤツ。マドリーと一緒につけてたんだ。ページをめくると、俺の字とマドリーの字が交互に並んでる。

 マドリーの字は丁寧で読みやすいんだよ。俺の字は、まあ、その、酔ってたのもあるのか、雑だった。たまに判読不能になってる。よくぞ自分でも読み返せない字を書いてくれたもんだよ。ちなみにリアンも同じぐらいきたねえ。シラフのはずなのに。

 それでもマドリーは文句を言わずに、俺の書いた内容を整理してくれてた。実験の内容、試した配合、失敗した理由、成功した時の感想。

 

 他にも色々ある。使い古したペン、インクの染みがついた布、折れた匙、欠けた皿。どれも俺が使ってたやつで、どれもリアンかマドリーが保管してたヤツだ。

 全部、微かに俺の痕跡が残ってる。……なんだか懐かしくなってきたな。あのまま当主になって、骨埋めてもいいかなとか思ってたんだよな俺。もう無理だけど。

 

「ねえ、次はどうするの?」

 

「あー……しばらく様子見だな。噂が広がるまで待ちだ」

 

「えー、暇じゃん」

 

「我慢しろ」

 

「はいはい」

 

 これで上手くいくかどうかは分からねえ。

 でも、上手くいけばきっと問題は解決するはずだ。後は、二つの家がどう動くか、だな。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「ねえ、アンタってさ。なんか冷たいよね」

 

 あ? 

 何だ急に。

 

「冷たい? どこが?」

 

「だって、アシェル兄みたいに優しくないじゃん」

 

 ……またその話か。

 一緒にいてて分かったんだが、コイツはよく前の俺の話をしている気がする。優しいってのは見当違いだと思うが。そんな優しくした覚えは無いし。

 

「冷たいっていうか。冷酷っていうか。あんなゲスい作戦考えてたんだし」

 

「それは……そうだが……」

 

 いや、それは対象が俺自身だからだ。尊厳を踏み躙る相手は俺自身であって他の誰かじゃねえし、ちょっと可哀想な思いをしてもらうが最終的にはリアンとマドリーの和解にも繋がる。なら別にこの作戦は大きな犠牲も出さず、効率的に問題解決するための一手になるじゃねえか。

 そもそも前の盗賊の俺はボスに殴られるだけの下っ端なんだから作戦とか自分で考える訳ねえし。言わねえけど。

 

「それにアシェル兄ってね。ボスに殴られそうになったアタシを庇ってくれたり。自分が殴られるのにだよ!? アンタはそういうことしなさそう」

 

「……あー」

 

 いや、今はボスがいねえから庇いようがねえだろ。

 それに、あれって考えれば普通のことじゃねえか? ボスの癇癪で怪我人増やしてちゃ人員が足りねえんだから、殴られる人間は少ない方がいいだろうに。

 

「それにね、アシェル兄は食べ物が少ない時、自分の分をアタシに分けてくれた。自分が我慢してまで」

 

 ……そういうことした覚えもある気がする。

 

 いや、あの頃と違って今は普通に食べ物が見つけられるんだから飯を分けるってことをそもそもしなくていいんじゃねえか。やっぱり俺は今も昔も変わってねえって。

 それにあの時は、ネルがすげえ腹空かせた顔してたから分けた方がいいかって思っただけで、別にそんなつもりじゃ……。

 

「名前は一緒なのにね。アンタも少しずつアシェル兄に近づいてる気はするんだけどさ」

 

 ……コイツ、俺のこと嫌ってたはずだよな? 

 

 今は多分普通に嫌いなんだろう、それは分かる。

 ただ、前の盗賊の時はよくとげとげした態度で突っかかって来てて、嫌われてるってのが分かりやすかった。なのに、今こうして話を聞いてるとどうにもそんなふうには思えねえような。

 もしかして違うのか? もしかして、ネルはあの時の俺を結構気に入って──懐いてた可能性があるんじゃねえか? 

 

 もしそうなら。「俺はあのアシェルと同一人物だ」って正体を明かすことで、もっと協力的になってくれるかもしれねえな。

 そうすれば、これからの行動が楽になるぞ。俺自身、今のアシェルが何を知ってて前のアシェルが何を知ってたか考えながら喋らなくてもよくなる。もしコイツが前の俺に懐いてたんならあの処刑で落ち込んだはずだし、それを慰めることだってできるよな。

 

「アシェル兄と同じ表情することが増えたっていうか。だから、なんか似てるなって」

 

「……そうか。なあ、ネル」

 

「ん? なに?」

 

 ……試してみるか。

 さりげなく、自然に。

 

「お前、あのアシェルのこと、どう思ってたんだ?」

 

「……? 何それ。急に」

 

「いや、お前よくアイツの話するから。もしかして、好きだったのかと思って──」

 

「──ッ!? は!? 何言ってんの! 全然! 超嫌いだったから!」

 

「え、ええ……」

 

 そ、そんなド直球に言わなくても。

 ……そうか、やっぱり嫌われてたのか。なら、正体を明かすのはやめだな。正体を明かしても、協力してくれるどころか、逆に嫌われるかもしれねえ。それどころか、裏切られるかもしれねえ。

 

「……別にいなくなって寂しいとか、そういうのないし。全然ないし」

 

「分かったよ。もうこの話はしねえから……」

 

 ……俺自身、コイツのことなんかどうでもよかったはずなんだけどな。

 なんか直接「嫌い」って言われるとやっぱりキツいっていうか……。

 

 まあでも、それでいいのかもな。

 俺のこと嫌いなら、壊れちまった皆と違って、いずれ別れる時も楽だろうし。




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