【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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置いて来たナイフと迫られる決断

 ヴェイン暗殺はあっけなく成功して、苦しむ様子もまあ見届けて、その後確実に死んだことも確認した。

 思ってたより苦しんでた。ベラと一緒に倒れた時の俺って傍から見たらあんな感じだったんだな……ってぐらいには。ちょっと凄かった。

 

 で、それが終わればもう「さあ任務完了、さっさとここから出ていこう」ってフェーズに移る訳だが──まあ馬鹿正直に部屋を出る訳にはいかない。護衛は夜通し部屋の前を陣取ってるんだし、寝室にはヴェイン以外いないはずなんだから、そこからさも当然みたいな顔して俺が出てくれば間違いなく問題になる。

 だから俺は、ヴェインの部屋の窓から外に出て、侵入した時に使ったスタート地点の窓へ戻ろう……と、したんだが……。

 

 ……あれ? 

 閉まってやがる。

 

「おかしいな……そんなはずは……」

 

 俺は窓を開けっぱなしにして出てきたはずだぞ……。帰る時の道が無くなったら困るからって、そのままにして外に出たはずなんだ。なのになんで閉まってる。

 よく見ると内鍵までかかってるぞ、完全に締め出されてる。まさか風で閉まったとかそういうことか? いや、でもそれじゃあ内鍵まで勝手にかからねえよな。じゃあ、屋敷にいる人間の誰かが閉めたってことか。俺が出て行った後に、わざわざ鍵の開いてる窓を見つけて、閉めて鍵までかけたと。余計な仕事してくれやがって。

 

 クソ、どうする。このまま別の窓を探すか? いやでもここが開いてねえんだから他のとこなんか開いてる訳ねえか。そもそも集会が終わった後の屋敷なんだから、開いてる窓があったらそれこそ不自然だよな。護衛だって巡回してるんだし、見つけ次第閉めて回ってるに決まってる。

 だがなあ……ナイフはヴェインにぶっ刺したまま置いてきちまったし。あのナイフがあれば強引にこじ開けられるのに、毒がべっとりついたまま持ち歩くのも危ねえと思って、わざと刺したまま放置してきちまった。素手で割るのも無理そうな厚さだし……かといって今他に使えそうな道具もない。

 

 それに。

 いくら足場があるとはいえ、こんな窓の外を長時間移動するのも危ねえよな。一歩でも間違えてほんのちょっと体勢崩せば、その先にあるのはゴツゴツした崖の壁。最終的な結果は──

 

「転落死だよなあ……」

 

 転落死はマズい。それだけはダメだ。だって写本師の時に橋から落ちて死んでるんだから。

 成り代わりの条件が「異なる死因で死ぬこと」なら、写本師の時と同じ死因で死ぬことで──次がなくなっちまうかもしれねえ。いや、確証はねえが、でもリスクを冒す訳にはいかない。

 ただの偶然かもしれねえが、今までの経験から考えても、少しでも可能性がある限りは同じ死因を避けるべきだ。処刑、出血死、毒死、おそらく焼死、餓死、溺死、転落死、撲殺、これらで死ぬようなことはなんとしても避けたい。

 かといって、他の死因なら別にいいって訳でもねえが。

 

「クソ……無理やり力込めれば……! どうにか……!」

 

 こう、ちょっと強い力で押したら開いたり……。

 ……しねえか。

 

 このまま窓の外をぐるっと回って別の侵入経路を探すってのも考えたが……そんなことしたって足場が不安定なのは変わらねえし、他の窓が偶然俺のためだけに開いてるなんて都合良すぎる。

 同じように閉まってるって考えるのが妥当だ。そうなったらこれ以上は無駄に体力を消耗するだけだし……こんな冷える場所で一人うろうろしてるってのもよろしくない気がする。息が見えるってことは寒いってことだからな。

 

 そういや初めの盗賊の頃、ボスの不機嫌に巻き込まれて、飯も食えねえまま外に放置されたヤツが次の朝には冷たくなってることがあった。当時は腹空かせて死んだのかと思ってたが……後で何となく、「あれは寒すぎて死んだ」ってことに気づいた覚えがある。寒いとどういう仕組みで死ぬのかは分からねえが……あのときとりあえず、体が冷えすぎると人間は死ぬって理解した。

 なんとか崖の壁にぶつからず湖に落ちたとしても、打ち所が悪けりゃそのまま溺死するし──もし泳ぎ切って岸まで辿り着いたとしても、ずぶ濡れの体で暖を取ることもできずに、所謂「凍死」することになるんだろう。考えれば考えるほどに逃げ場の少ねえ場所だなここは。

 

 ……ってなると、他に取れる選択肢はねえから……仕方ねえ。ヴェインの部屋に戻るしかねえか。

 少なくとも落ちる心配はなくなるし、このまま外にいるよりは選択肢が増える。内から鍵がかけられるから護衛が入ってくる心配もないし、もし問題が起こればそれはその時考えればいい。

 

「あーさむ。戻ろ戻ろ……」

 

 あと正直、あの部屋温かったからな……。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 部屋に戻ってから、もう結構な時間が経ってる気がする。

 正確に何分とかは分からねえが、少なくとも数十分は経ってるだろ。護衛の動きを確認して隙を見つけて脱出するつもりだったんだが、今のところそんな隙は見つかってねえし、このまま朝まで待つ羽目になるのかもしれねえと思い始めてきた。

 いや、朝まで待ったとして、その後どうするんだって話だが。朝になっても中からヴェインが出てこなくて、無理やり扉を破ったらヴェインの死体が見つかって……そうなるとマズいな。

 

 このまま部屋にいても仕方ねえが、かといって外に出る訳にもいかねえ。

 護衛が戻ってくる前に何とかして脱出しなきゃいけねえんだが、扉から出るのが一番簡単とはいえそれは護衛に見つかるし、窓から出るのはもう無理だって分かってる。

 となると……護衛の動きが変わるのを待つしかねえか。何かのタイミングで人数が減るとか持ち場を離れるとか一時的に交代するとか、現状だとそういう隙が生まれることを祈るしかねえな。

 

「あー……あったけえ……」

 

 にしても、マジで温いなこの部屋。

 外はあんなに冷えてたってのにここは全然違う。暖炉があるってのもあるんだろうが、それだけじゃねえ気がする。壁が分厚いのか窓の作りが特殊なのか、とにかく外の冷気が遮断されてるっていうか。幹部の部屋だから金かけて作ってあるんだろうな……。

 

 

 

「──ん?」

 

 あれ? なんだ、足音か? 

 部屋の外から、しかも一人や二人じゃねえ。複数人の足音が廊下を走ってる音が聞こえてくる。

 ……何が起きてるんだ? 護衛が増えてるのか、それとも何か別の問題が起きたのか? もしかしたら、ヴェインが死んだことが──バレたのか? それで部屋の前に集まって? 

 

 ……いや、ちげえな。

 足音は確かにどんどん近づいてるが、この部屋の前に集まってきてるって感じじゃない。近づいてくる音も多いが、その分遠ざかっていく音も少なくないし──こりゃ、部屋の前の廊下を走って素通りしてるってだけか。

 それもそれでおかしいな。外にいるヤツらはヴェインが死んでるってこと知らねえんだから、真夜中に部屋の中まで聞こえる足音立ててはしゃぎまわるってのはあり得なさそうだが。なのに足音は止まらねえ。ていうか、むしろ増えてる。どんどん増えてる。

 ……何だ、何が起こってる? 

 

 もしかして、結構ヤバい状況か? よそからの襲撃があったとか、王国の兵士が乗り込んできてるとか、そういう中の人間が慌てるような何かが起こってるのか? 分からねえが、このままじゃ部屋から出るどころか閉じ込められた状態で訳も分からず巻き込まれちまうぞ。

 部屋の外には出られねえから……窓だな。窓開けて外の様子を見れば、少しぐらいは何か分かるかも──

 

「──うおっ!?」

 

 な、なんだ!? 風か!? 開いた途端にとんでもねえ風が吹き込んできた。

 いや、吹き込んできたってのは違う。むしろ吸い込まれるような感じだった。部屋の中の空気が外に引っ張られていくような、そんな感覚で、ローブがバタバタはためいて……。

 

「何だこれ……! さっきまでこんな風……!」

 

 おかしいだろ、窓開けて風が「外から中に吹き込んでくる」なら理解できるが、どうして「内から引っ張り出されるように風が吹く」んだ。さっきまで部屋の中は静寂そのものだったじゃねえか。

 少なくともさっき外に出た時は吹いてなかったはずだ。気づかなかっただけで実はこんな風が吹いてたのか? それとも、この部屋で待機してる間に急に強くなったのか? 分からねえが、とにかく今は尋常じゃねえ強さで風が──

 

 ──あ? なんだ、この風──冷たくねえぞ、むしろ生温いような。

 何でだ、外はあんなに冷えてたってのに、なんでこんな生温い風が吹いてるんだ? 暖炉の熱が外に漏れてるとか、そういうことか? いや、それにしたって変だ。風の向きがおかしい。普通の風じゃねえ。何かが起きてる。

 

「お、おお!? すげえ荒れてんな!」

 

 チラッと湖が見えたが、風に煽られて水面がめちゃくちゃ波立ってやがる。

 今この風が吹いてる中で外に出ようもんなら、間違いなく吹き飛ばされて、そのまま崖の壁どころか湖の中にドボンだ。間違いなくあんなとこ落ちたら泳いで岸まで辿り着けねえし、この風で波立つ水をかき分けて泳ぐなんてできる訳がねえ。転落死は避けられるだろうが──代わりに待ってるのは溺死。レミに沈められた経験のある俺からすれば──どっちにしろできねえ選択だな。

 

「ダメだダメだ。閉めよう」

 

 別に窓なんざ開けなくたって、ガラスなら外の景色は見えるじゃねえか。

 無理に開ける必要無かったんだ、風の音で外に気づかれる前にさっさと──

 

「……え……は?」

 

 え、何だあれ。

 屋敷が──

 

 

 

「──燃え、てる……?」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「クソ、マジかよ……! じゃあさっさと出ねえと……!」

 

 なんで急にボヤなんざ起きてんだよ! 

 畜生、さっきの部屋の前の走る音は大急ぎで避難してる足音だったってことか。こうなっちまったらもう怪しまれるから待機だなんて言ってられねえぞ。もう護衛に見つかろうが何だろうが関係ねえ、護衛だって火事なら俺のことなんか構ってる場合じゃねえだろう。それどころか、どうせ護衛の連中もとっくの前に逃げてるんだから、俺が今すぐこの部屋を出ることに何の問題もねえはず……! 

 

 廊下に出たら──クソ、やっぱりか、もう誰もいねえ。

 さっきまであんなに足音が聞こえてたのに、嘘みてえだ。もう逃げた後なのか? 

 

「っ……さ、さむっ!?」

 

 何だこれ、急に寒くなったぞ!? いや寒くなったっていうか──さっきまで部屋の中が暖かすぎたのか? 廊下に出た途端に冷たい空気が肌を刺してくるみたいな、それと同時に火の熱気も感じる。寒気と熱気が同時に襲ってくるような妙な感じ。ああクソ、あの部屋が外の寒気も熱気も遮断する作りになってたから俺だけ気づくのが遅れたってことか! 

 外はこんなに寒くて火事も起きてて状況は最悪だったのに、俺は暖かい部屋の中でのんびり待機してた! もっと早く気づいてれば、もっと早く逃げられたかもしれねえのに! 

 

「っ……! ヤバ……! 結構広がってやがる! 早く……早く逃げねえと……!」

 

 ああクソ、出口はどっちだった!? 

 結構崩れそうになってる天井もちらほらある。というか、さっきから建物が倒壊してる音がそこかしこから聞こえてきてる。木材が焼け焦げて重みに耐えきれなくなってるんだ。これじゃ全壊するのも時間の問題か……! 

 

 にしても、なんでこんなタイミングなんだ! 幹部が死んですぐにボヤが起こるだなんて。ヴェインについての記録の書類も、教会でやってた悪事の証拠も、幹部そのものを殺した犯人も全員同時にまとめて焼き尽くせるとか、教会にとってなんて都合の良すぎるタイミング……。

 

 ……いや待てよ? 

 そうかこの火事……もしかすると、ただの事故じゃねえ、偶然起こった都合の良い火事なんかじゃねえってことか。

 どういう仕組みかは分からねえが……もし幹部が死んだり、あるいは生きている間にできることができなくなったら、教会は屋敷にある機密情報や証拠書類を処分するために──こういう対策をあらかじめ作ってた。そう考える方が筋が通る! 

 ああ畜生。多分、ソラナの部屋にもきっとそういう仕組みがあるんだろう。要はこの火事は──証拠隠滅の仕組みなんだ。教会としては裏の悪事を絶対暴かれたくねえんだから、幹部が死んだ後のことも想定して罠を仕掛けてたってこと。幹部が死んだら自動的に屋敷が燃えて証拠が全部消えるっていう。

 生きてるうちから死んだ後のこと考えてるとか、まるで俺の成り代わりみてえだな! んなことで親近感覚えたくなかったよ! 

 

 

 

「ああ、あった! 窓だ!」

 

 やった! よかった! これで助かる……。

 

 ……って、開かねえ!? 何で!? 

 クソ、熱で曲がったのか!? 引っ張っても押してもびくともしねえ! 

 

 ああダメだ、この窓は諦めろ! 他にも窓はあるはずだ! この廊下だけでもいくつも窓がある! どれか一つぐらい開くはずだ! 全部が全部熱で曲がってる訳じゃねえだろ! 

 次の窓は──開かねえ! じゃあ次! 次の窓──これも開かねえ! 全部ダメじゃねえか! どうなってんだ! 

 

「クソ! じゃあ扉だ……! 出入り口に繋がる扉から……!」

 

 窓がダメなら扉しかねえ! 正面の出入り口の扉から出られればどうにか……! 

 

 ……!? 何でだよ、こっちも開かねえ!! 何で!? 何でだよ!! 

 クソ、この感触、鍵がかかってる! いや鍵がかかってるっていうより──何か別の仕組みで完全に閉じられてる! 内側から押しても引いても、びくともしねえ! 

 

「ああ、そういうことかよ……! つくづく手の込んでやがる……!」

 

 畜生が、分かったぞ! 幹部が死んだら情報の漏洩を防ぐために外からのアクセスを締め出そうってんだ! そういう仕組みなんだろ! 

 それで、屋敷全体の扉や窓が開かなくなるんだ! 中に誰が残ってるとか関係なく、情報を盗み出されたくねえんだから完全に封鎖する! 外から誰も入れないように、全部の扉と窓を開けられないように締め出す仕組みになってるんだ!

 そうじゃなきゃおかしいってレベルで教会に都合が良すぎる! で、俺に都合が悪すぎる!

 

「このクソ組織が! 締め出す機能のせいで、逆に閉じ込められちまったじゃねえか!」

 

 クソ、何でこんなことになっちまったんだ! 急がねえと本当に間に合わねえ! 

 このままだと焼死する! 酒家の時に同じシチュエーションで死んでるんだ! 焼け死ぬのだけは本当にマズい! 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「クソ、クソ、クソ! どうすりゃいい!」

 

 もうヴェインの部屋にももう戻れねえ。火が回りすぎてて、あっちの方向に行ったら間違いなく焼け死ぬ。転落死や溺死や凍死のリスクがあるあの窓だって、今更戻りたいって思っても既に到達不可能だ。火が廊下を塞いでて、そこまで辿り着けねえ。

 建物が崩れる音があちこちから聞こえてくる。ゴオッって音と一緒に、ドスンって重たい音が響く。天井が落ちてる。壁が崩れてる。この建物全体が、もう持たねえんだ。

 

「早く……早く安全な場所に……!」

 

 でも、どこだ? どこが安全なんだ? 火はどんどん広がってるし、建物はどんどん崩れてる。逃げ場がねえ。窓も扉も開かねえのに、どこ行っても同じじゃねえか。

 火を避けて、煙を避けて、崩れそうな天井を避けて。でも、どこまで逃げればいい? この屋敷は広い。走り回ってれば、しばらくは崩落から逃げられるかもしれねえ。でも、その後は……? 

 

「いや、待てよ……」

 

 逃げ回ったら、結局俺は──焼死するんじゃねえか? 

 

 崩落から逃げ続ければ、確かに押し潰されることはねえかもしれねえ。でも、火はどんどん広がってる。逃げ場はどんどん狭くなってる。最終的には、逃げ場を失った後、火に囲まれて──焼け死ぬ。

 焼死はダメだ。酒家の時に経験してる。同じ死因で死んだら、次がなくなるかもしれねえ。

 

 逃げ続ければ、焼死する。

 逃げなければ、崩落に巻き込まれて、圧死する。

 

 

 

「圧死は──まだ、経験してねえ」

 

 

 

 もしかして、俺は──崩落に巻き込まれて死ぬべきなのか? 

 焼死を避けたいが、他に逃げる道はねえ。だから炎で死なないためだけに、先に別の方法で死ぬことを選ぶ。もしかしてそれが、正しい選択なのか? 

 

「ッ! 何考えてんだ俺、自分から死ぬ方法なんざ考えて!」

 

 次があるのか初めっから分からねえだろ! しっかりしろ、俺!

 成り代わりの条件が「異なる死因で死ぬこと」だってのはあくまで俺の仮説だ、それが確実だって保証はねえ。それにもしかしたら、「自分から死にに行く」が逆によくないかもしれねえ。今までは、全部「避けようとしたけど死んじまった」ってパターンだ。自分から死にに行ったことは一度もねえ。

 俺は、この能力のことを何も理解できてない。もし、自分から死にに行くことが条件違反だったら、俺は──本当に終わっちまう。

 

 じゃあ、助けを待つべきなのか? 

 火を避けて、崩落を避けて、できるだけ長く生き延びて──誰かが助けに来るのを待つ? 

 

「誰が来るんだよ! 護衛はもういねえし、教会の連中だって逃げてるだろうし!」

 

 助けなんて来ねえ。ここにいたら、焼け死ぬだけ、それが絶対だ。

 でも、崩落に巻き込まれに行くのも怖え。自分から死にに行くなんて、今までやったことがねえ。もし、それで次が無いってんなら……。

 

「クソ、どうすればいいんだよ!」

 

 火が迫ってくる。煙が濃くなってくる。息が苦しい。目が痛え。

 時間がねえ。今、決めなきゃいけねえ。

 逃げ続けて、焼死するか。

 崩落に巻き込まれて、圧死するか。

 

 俺は──

 

 

 

「──今までの法則を、信じるしか……ねえ」

 

 異なる死因で死ぬこと。それが、成り代わりの条件だ。きっと。

 だから、焼死は避けなきゃいけない。圧死を選ぶしかない。

 

「……頼む!」

 

 ちょっと早まったかもしれない、そんな気もする。

 もし、これが条件にならないなら、相当な大問題だ。次がなくなる。本当に終わりだ。

 でも俺は他にどうすればいいか分からねえ。分かってるのは──確実にここから生きて帰ることができねえってこと。次に繋げられるように──俺は自分の死に方を選ばなきゃいけねえってこと。

 

 となりゃ急いで引き返せ! 崩れそうな天井を探せ!

 火が回ってて、でも炎に包まれるって程じゃなくて、今にも落ちてきそうな場所を……! 

 っ! あった……! 丁度おあつらえ向きの天井が! まだ燃えてねえ、崩れるのを待ってるだけの天井が! 

 もうとやかく考えてる暇はねえ。とにかく今は、あの場所に行けばいい。

 

 願わくば、自死が条件違反にならないことを祈って……! 

 

 

 

 ん? でも俺って、盗賊の時も自分から敵に突っ込ん──

 

 

 

 

 

「(さて、仕事も終わったし。アシェルさん、今どこにいるのかなー……♡)」

 

「(追跡用の呪いを背中に刻んでてよかった。おかげでいつでも場所が分かるし……)」

 

「(えっと、これ、ヴェインさんの屋敷だっけ? ……ああ、今日は集会があったから)」

 

「(来るなら私の集会だけでいいのに……なんて♡ ……って、あれ?)」

 

「──は、反応が、消えた……? い、いやでも、これって……?」




これで第8章終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
可能であれば、感想や意見や評価やここすきを頂けると嬉しいです。大喜びします。
それでは、次話以降も宜しくお願いします。

みんなもに崩落事故は気を付けよう!(´・ω・`)
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