【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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契約の対価と安全地帯の脅威

 ノエリスのいう──眷属とやらになって一晩経った。

 

 昨日は色々ありすぎて頭が追いつかなかったが、今朝になって改めて考えると──やっぱり信じられねえ状況だ。

 俺は魔女の眷属で、体は魔女が作った人形で、真の迷いの森の中心にいる。しかもここから出る方法はねえ。ノエリス以外は誰も出られねえ結界に囲まれてて、俺一人じゃどうしようもねえ。本来ならもうこの場所から出ることも許されず、一生この魔女に飼いならされる人生が待ってるんだろうが……そんな俺でも、この場所から抜け出す方法が思いつく限り一つだけある。

 

 それは──自死による「成り代わり」で、外に生成された別のアシェルに成り代わることだ。

 

 ノエリスは「この場所に到達できないようにする結界」として「真の迷いの森」を作ったんだ。ただ、成り代わりはそれを突破して俺をこの場所に蘇らせた。

 なら逆もいけるだろ。もう一度死ねば俺はこの結界を突破してよっぽどの偶然でもない限り外の誰かにまた成り代われるはずだ。自死でも成り代わりが発生することは前の人生で経験済みだし、外は真の迷いの森なんだから死のうと思えばやりようはいくらでもある。

 生きるために死にに行くなんて矛盾してる……なんて考えていたこともあったが、流石に今回だけは見逃してほしい。この場所から出ようとしないことこそ「逃げ」だと思うので、今回に限っては多分間違ってないはず……。

 

 で、問題は「成り代わりの発生条件について」だ。

 一応、自死が大丈夫なことは判明してるが、「何回までできるのか」「死因は原因に関係するのか」「そもそもこれは何なのか」「どうして性別が変わったのか」「誰にやられたのか」……疑問は叩けば叩くだけ出てきやがる。何から何まで分からねえ以上、今すぐ死んでさっさとこの場所から撤退って訳にはいかねえ。

 

 だからこそ俺は、昨日ノエリスが約束した「解析」の結果について知る必要がある。

 もし、成り代わりのシステムが分かれば、問題なく次も発動するという確約が持てれば──俺は即座に自死してここから逃げ出す。

 

 確証が持てれば、迷う理由はねえ。次があるって分かれば、さっさと死んで、次の場所に移ればいい。ここで眷属なんてやって一生を潰される謂れはねえんだ。

 外には俺が何としても状況を確認しておきたいヤツらがいる。ソラナは教会から抜け出せたのか。レミはロエマをちゃんと守ってるのか。カルは一人でやっていけてるのか。タリエはヴェインの死後どうしてるのか。ルシアとベラの諍いはどうなったのか。リアンとマドリーの和解は完全に成功したのか。ネルは王都で無事に暮らせているのか。

 いざ意気揚々と死にに行って、俺の知らない「条件」によって次の人生はありませんなんて言われたらたまったもんじゃない。それだけは避けなきゃいけねえ。今まで九回も死んで、九回も生き返って、ようやくここまで来たんだ。ここで終わる訳にはいかねえ。

 

 だから俺には、ノエリスの解析結果が重要なんだ。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「──で、成り代わりの解析の結果はどうだった?」

 

「早いってキミ」

 

 

 

「悪いけど、まだ全部は分からないよ。こんなの見たことないし、そんなすぐには無理」

 

「……そうなのか」

 

 まあ……そりゃ、そうか。一晩で全部解明できるなら苦労しねえよな。

 魔法ってのがどれだけ複雑なもんなのか俺には分からねえが、ノエリスが「時間がかかる」って言うなら、相当厄介なもんなんだろう。事実コイツの結界だって突破してるような代物な訳だし。コイツだって絶対突破されない自信があったからあんなに俺を不思議がってたんだ。

 ちょっと気持ちが逸りすぎてたか。何か分かったってんならいの一番に聞いておきたかったんだが……。

 

「でも──ちょっと面白いことが分かったよ」

 

「……面白いこと?」

 

「うん。キミの成り代わりって、魔法を使う人特有の『クセ』があるんだよねー」

 

「……クセ?」

 

 何だそれ。魔法にクセなんてあるのか。いや、そもそも魔法ってもんがどういう仕組みで動いてるのかすら俺には分からねえんだが。

 そのクセがあったらどう面白いんだろうか。よく知ってるお前には面白いかもしれねえが、俺にとっちゃ命がかかってんだ。これで「面白いだけ、特に意味はない」とかだと普通に悲しいんだが。

 

「えっとね。魔法を使う人って、それぞれ独特のクセがあるのさ。魔力の流し方とか、発動のタイミングとか、構築の仕方とか。文字の書き方みたいなものかな」

 

「書き方……」

 

「そう。同じ魔法を使っても、人によって微妙に違ったり。キミの成り代わりには、そういう『個性』が見られるんだよ」

 

 へえ、個性か。

 つまり、成り代わりをかけたヤツには、そいつ特有のやり方があるってことか。料理人が刃物の使い方で分かるみたいな、そういう感じなのか。

 

「……それが、俺の成り代わりにもあるってことか?」

 

「そう。だから、これは誰かが意図的にかけた魔法なんじゃないかな」

 

 ああ。じゃあやっぱり、そうなるよな。

 つまり、成り代わりは自然に起きた現象じゃなくて、誰かが俺にかけた魔法ってことで確定ってことか。偶然じゃなくて、誰かの意思が働いてるってこと。

 

 それって──俺は誰かに選ばれたってことなんだろうか。

 それなら何のために、何が目的で、俺に何をさせたいんだ。その辺もまとめて教えてくれねえと分からねえぞ。

 

「ま、このクセは割と、魔法を使う人ならよくやりがちなクセだと思うよ」

 

「その言い方だと、お前の他にも魔法使いがいるのか?」

 

「うん、探せば意外といるよ。ボクが魔女になった時は、もっと魔法使い多かった気がするな」

 

 ……そうか。

 じゃあ、成り代わりの元凶は──どこかにいる、謎の魔法使いってとこなのかもな。

 ソイツに言っとくが、わざわざ俺を選ぶ必要性無かったと思うぞ。もっと有能なヤツとか、判断力のあるヤツとか、行動力のあるヤツとかにしといた方が見てて面白くなったんじゃねえかな。知らねえけど。

 

「で、そのクセから、仕組みとかは分かるのか?」

 

「仕組み?」

 

「成り代わりが、どういう条件で発動するのか、とか」

 

 今はそれより──こっちの方が重要だ。誰がかけたかなんて、正直どうでもいい。

 俺が知りたいのは、どうすれば確実に次に繋げられるか、それだけ。異なる死因で死ねば次があるのか。それとも、他に条件があるのか。もし条件が分かれば、俺は安心して自死できる。ここから抜け出せる。

 

「ああ、それね。うーん……まだ分からないかな」

 

 ……やっぱりか。

 そう簡単にはいかねえよな。クセが分かったからって、すぐに仕組み全体が解明できる訳じゃねえ。書かれた文字の癖だけで、書類の中身全体を理解しろって言われても無理に決まってる。

 魔法ってのは、そんな単純なもんじゃねえってことだな。むしろ、そこから進めていけばいずれ分かるかもしれねえってとこに希望を持っておくべきか。

 

「クセが分かっても、中身が何を意味してるのかまでは、もうちょっと時間がかかるね。魔法の構造を全部解析しないと、発動条件とか、仕組みとかは分からない」

 

「……それは、どれくらいかかる?」

 

「んー、分からない。数日かもしれないし、数週間かもしれない。もしかしたら、もっとかかるかもねー」

 

 数週間……それだけあれば、外の状況は相当変わっちまいそうだが。

 焦ってもしょうがねえが、早く分かってくれねえと俺としても困る。ここにいる時間が長引けば長引くほど、外の状況がどうなってるか分からなくなる。

 まあごねたって時間の無駄だし、残念ながらまだ自死は早いってことで一応結論づけておこう。確証が持てない以上、リスクを冒す訳にはいかねえ。大人しくもう少し待とう。

 

「まあ、時間かかるけど、頑張るよ」

 

「……ああ、頼む」

 

 現状、俺にはノエリスに頼る以外の選択肢がねえ。

 コイツが解析してくれなきゃ、俺はここから安全に出られる保証を得られない。

 コイツが飽きるまで生きたまま飼いならされるか、それとも成り代わりの条件が分かって自死するか。

 今の俺には、どっちかしか道がねえんだ……。

 

 

 

 ……にしても、今の状況ってあれだな。

 俺は言うほど眷属らしいことしてねえし、コイツもそこまで上から目線で威張ってきたりしねえ。むしろ一方的に、俺の事情にノエリスが協力してくれてる形で、なんか立場が逆になってる気がする。

 

「なあ──ところで、眷属って何すればいいんだ?」

 

 

 

「え……分からない。眷属なんて作ったことなかったし」

 

「ええ……」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 ……腹減ったな。

 朝から何も食ってねえし、当たり前か。

 

 よし。ここはノエリスの眷属として俺が料理を担当するとしよう。色々してもらってる訳だし、これぐらいする分には眷属として何も問題無いはずだ。

 それに、ノエリスが普段どういう風に食事を取ってるかも分かる。周りは真の迷いの森に囲まれてるから、あの中から食事や水分を調達することは出来ねえ。だから、ノエリスの普段の食事が分かれば、今後俺一人でも空腹を満たすことができるようになる。

 

 そうと決まれば──

 

「なあ、ノエリス」

 

「ん?」

 

「朝飯作るから、何か食べるもんねえか?」

 

「……朝飯?」

 

 ……何だその反応は、不思議そうな顔しやがって。

 朝飯ぐらい普通だろ。まだ腹空いてねえのか? それなら我慢するが。

 

「お腹、空いたの?」

 

「ああ。ずっと何も食ってねえし。そろそろ良い時間かと」

 

 

 

「……人形なのに?」

 

 

 

「?」

 

 人形なのに? え、どういう意味だ。俺は人間なんだから腹は減るだろ。

 ……いや、待て。もしかして──

 

「──人形って、腹減らねえのか?」

 

「うん。普通は減らないよ」

 

 ……マジか。

 

「人形には一応消化器官を作ってるけどさ。魔力で動いてるだけだから、食べ物を取る必要はないんだよ」

 

「……そう、なのか」

 

 じゃあ、俺がこうして腹減ったって感じてるのは何なんだ。気のせいか? 

 いや、気のせいでこんなに空腹を感じる訳がねえだろ。実際に胃が空っぽな感覚があるんだぞ。このままほっとけば探検家の二の舞になるんだろうなってことはなんとなく感覚で分かる。

 

「でもキミは、お腹空いてるんだよね」

 

「ああ。実際減ってる」

 

「おかしいねー……」

 

 おかしいって言われても、俺には分かる訳ねえし。

 お前に首を傾げられたら俺は打つ手が無くなっちまうんだけど。

 いや確かに、作られた存在で主な動力が魔力だっていう人形が、食事を取らなくていいってのは、まあなんとなく分かる。でも、実際に空腹感があるんだから、説明できねえとおかしいはずだ。

 

「もしかして──魂が入ってるから?」

 

「魂……?」

 

「うん。今のキミにはアシェルっていう『魂』が入ってるでしょ? 普通の人形には魂がないから、お腹も空かない。でもキミは成り代わりで魂が入ってるから、もしかしたらそれで人間と同じように空腹を感じるのかも」

 

 魂が入ってるから、人間と同じように空腹を感じる。

 体は人形でも、中身は人間だから、人間としての欲求が出てくる。

 

 ……なるほど? そういうもんなのか? 

 

 なんかそれって、面倒だな。魔力で動いてるだけなら何も食わなくていいはずなのに。魂が入ってるせいで、余計な手間が増えちまったと。

 いや、腹が減らないってことは魂が無いってことだから逆にダメなのか。この場合、腹が減ることで俺は自分が人間であると喜ぶべきなのか……。

 

 

 

「でも、どうしようか。ここには食べ物なんてないよ」

 

 えっ。

 

 

 

「えっいや、そりゃおかしいだろ。お前、普段何食ってんだ?」

 

「ボク? ボクは別に食べなくても平気だよ。魔女だし」

 

 ちょっ。そりゃどういうことだ。ずるいだろ。

 魔女は食わなくても生きていけるのか。だから、ここには食糧が無くても大丈夫だし、水源も無いままだって? ふざけんなよおい。

 

「あっそうだ! じゃあ、結界を少しだけ弱めて、出られる範囲を広げてあげるから、『真の迷いの森』を通って外の森まで食糧を確保しに行けばいいよ!」

 

「は、はあっ!? 何を、てめえ──」

 

「だって食べるのはキミじゃないか。なら危険を冒すのはキミであるべきだよね?」

 

「それはっ……そうだが……!」

 

 ……クソ、言い返せねえ。

 確かに、食うのは俺だ。ノエリスは食わなくても平気なんだから、食糧確保のために動くのは俺の仕事ってことになる。眷属なんだから、自分の都合のために主人を働かせるなんておかしいんだ。

 その理屈は分かる。分かるが──

 

「真の迷いの森を通るって、お前……」

 

 あの森だぞ。探検家の時に散々苦しめられた、あの森だぞ。作った本人だし、俺と一緒に中に入ったお前なら当然分かってるんだろうが。

 出られなくて、食えるもんもなくて、水もなくて、結局餓死した。あんなとこをもう一回通れってのか。しかも、今回は食糧確保のために何度も往復しなきゃいけねえってことだろ。

 

「大丈夫大丈夫。結界を弱めるから、出入りはできるよ。ただ、道に迷わないようにね。また出られなくなっちゃうし」

 

「迷わないようにって……」

 

 そうだった。コイツは性格極悪のウィスプで、自分が楽しめればそれでよくて、俺だって楽しめればいいだけで作った人形で──その人形が命の危機に自分から突っ込まなきゃいけなくなったんだ。

 そりゃコイツにとっちゃ手出ししねえに決まってる。

 

「どうしようかなー? 『どうしても!』って地面に頭擦り付けてお願いするんだったら、五回に一回だけ、ウィスプになってついていってあげてもいいけどー?」

 

「コイツ……」

 

「こらこら。仮にも主人に対して『コイツ』は無いんじゃないー?」

 

 んぐぐ……。

 相変わらずの腹黒さを見せつけやがって。最後に一緒にいた頃から本当に、微塵も変わっちゃいねえ。純粋な悪意のままに俺のこと弄んできやがる。流石「死ぬ派」だよ。

 

 だが、俺としても黙ってる訳にはいかねえ。

 碌なプライドなんてもの俺は持ち合わせちゃいねえが、それでも命の危機を前にして、ただ舐められて何もしてもらわずそのままってのはあまりにも不用心すぎる。

 だから──

 

 

 

「五回お願いするから、毎回ついてきてくれねえか?」

 

「……そういうことじゃなくない?」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 結局、ノエリスに何度も頭を下げてようやく、ドン引きした顔で「毎回ついていってあげる」の約束を取り付けた。五回に一回じゃなくて、毎回だ。言質取ったからな。

 これなら、真の迷いの森を通る時も少しは安心できる。ノエリスがウィスプになってついてきてくれるなら、道に迷う心配もちょっとぐらいは減るだろう。

 あんな性格悪いヤツを連れて行く危険性については一旦無視してる。

 

 で、今は出発前の準備中。

 といっても、特に持っていくもんなんてねえ。袋とかを持ってって、食えるもんだけ見つけて持ち帰る、それだけだ。

 一番の問題は必要量も負担も大きい水分だが……ノエリスが「ここは普通に雨が降る」って言ってたから、必要最低限で十分だと分かった。確かに、森と違ってここは空が見えるから雨の日になったら水が手に入る、普通に考えれば当たり前だった。

 

 ノエリスは魔法で分身作って、見た目をウィスプに変えさせて、ふわふわ待機中だ。

 もうなんか何でもありすぎて驚かなくなってきた……。

 

『──あッ、ちょっと待ッテ』

 

「ん?」

 

 あ、なんて? 

 待たせてんのは俺なんだけど。なんか忘れ物でも──

 

『魔力の流レ……来るヨ、避けテ!』

 

「──え?」

 

 何だ? 魔力の流れ? 

 何が来るって──

 

「──っ!? うおおおお!!?」

 

 な、なんだ!? 

 

 熱い! 目の前に、雷が落ちてきた! 

 俺が立ってたすぐ横を電気が掠めて、地面に叩きつけられた! 

 何だ何だ!? どこから飛んできた!? 上か!? 

 いや、上には何もねえ! 空は晴れてるし、雲もねえ! 

 

 じゃあ、どこから……!? 

 

『アー、やっぱり来たカ』

 

「おい、何だ今の!? あやうく感電死するとこだった!」

 

『危なかったネー、あれはボクの魔法だヨ』

 

「……は? 魔法? いつの間に?」

 

 ノエリスの、魔法? 今の雷が、お前の魔法だって? 

 どういうことだ。そんな素振り全く見せてなかったじゃねえか。

 ていうかお前、俺を攻撃してたのか? 狙われる理由も分からねえし、それを避けろって忠告するのも意味不明なんだけど……? 

 

『違う違ウ、攻撃じゃないヨ。ボクの魔法、不慣れなものだと失敗しちゃって時間軸がズレることがあってサ』

 

「……?」

 

 時間軸? 

 

『うン。得意じゃない魔法は暴走しやすくテ、放った時間と実際に発動する時間がズレることがあるんだヨ』

 

「……??」

 

 魔法の時間がズレるって、何だそれ。どういうこった。

 

『アー、分かりやすく言うとネ。魔法の発動には成功したんだけド、その結果が過去に飛んだリ、未来に飛んだりするってこト』

 

「……???」

 

 過去に、飛ぶ? 未来に、飛ぶ? 

 ……ちょっと待て、どういうことだ。一旦整理させてくれよ? えーっと、つまり……。

 

「……今俺に降ってきた雷は──お前が過去に発動させた魔法が、今になって発動した……ってことか? それとも、未来のお前が発動させた魔法が、今に飛んできた?」

 

『そうそウ。あの雷はかなり昔に沢山練習した魔法だネ。ボク、ここで昔も今もこれからも色々実験してるからサ。その魔法が勝手に暴走して時間を超えて飛んでくることがあるノ』

 

「……は? はあ!?」

 

 お前、それ、マジで言ってんのか? 

 つまり、この場所には、過去のお前が発動させた魔法と、未来のお前が発動させた魔法が、ランダムに降ってくるってことか? いつ、どこに、何が飛んでくるか分からねえってことか? 

 

『だからさっきみたいに魔力の流れを読んでタイミングよく避けないト……あっそうカ、キミは魔力の流れとか分かんないのカ』

 

「じゃ、じゃあ! 俺はどうすればいい!? お前がいないときはどうやって危険を回避すれば……」

 

『まア、そんなに頻繁には降ってこないかラ……気を付けてネ』

 

 気をつけてね、じゃねえよ! そんなもん、気をつけようがねえだろうが! いつ飛んでくるか分からねえのに、どうやって避けろってんだ!? 

 クソ、てことは森の中に入ろうが入るまいが、ここにいるだけで常に命の危険と隣り合わせってことじゃねえか。俺には「魔力」ってヤツが理解できねえから、いつ来るか分かんねえし、何が飛んでくるかも予想できねえし、どこに落ちるかも察せない。んだこれ、迂闊に眠ることすらできねえぞ。

 しかも、過去と未来から飛んでくるって、一体どれだけの数があるんだ。お前、ここで何年も実験してるってことだろ? その全部が、今この瞬間に降ってくる可能性だって全くないって訳じゃねえんだよな? 

 

 皆の様子は見に行けねえし、食事のために毎回命かけなきゃならねえし、時折即死級の攻撃が飛んでくるし……。

 ああもう最悪だ。さっさと解析終わっ──

 

 

 

「──うおあああっ!!?」

 

『わオ、また来たネー! 惜シ……危なかっター!』

 

 てめえこの野郎!




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