【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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特別な用事とか無くいつも通りの月曜だったんですが。
シンプルに時間がかかって遅れました。すみません……。

毎日投稿なんとか続けたかったんですが。
難しいですね……(;・∀・)


不思議がる二人と新たにまた二人

 ……どうすんだろうこれ。

 なんか勢いで俺の部屋まで連れてきちまったけど、すっげえ気まずい。

 

「……? ……?」

 

 カルはどう見ても、「今何が起こってるのか分かりません」って顔だ。

 当たり前だろ。自分は罪を犯してその自覚をして裁かれる覚悟もあったってのに、急にカルにとっての敵のトップが「牢屋から出す」とか言い出して、挙句の果てに自分の部屋にまで連れてきたんだから。

 ……あ、ああ! そんな不安そうな顔するな! 

 今の状況はお前の理解力不足によるものじゃなくて、俺の説明不足によるものだ! 

 

「どうせ、先輩にしたように──僕たちも殺すんでしょう……」

 

 対してタリエはめちゃくちゃ不機嫌そう……というか、若干の憎しみすら感じつつある目つき。

 コイツ、「もう国は見限った」って言ってたもんなー……。コイツにとっちゃ、文官の俺を殺したのは政府の上層部だって認識だし、信者の俺と出会ったときもヴェインと刺し違える覚悟を決めてたし──王族の俺ってのはコイツにとって悪の親玉みたいに見えてるのかもしれねえ。

 相変わらずクソややこしいな。尊敬と感謝と敵意を一心に引き受けてんだけど。

 

「……えっと」

 

 ……で、どうする。俺は何から話せばいいんだ。

 

 何か言わなきゃ。このまま黙ってたら余計に怪しまれる。

 この場に連れてきた護衛すらも混乱してんだ。一緒にいた側近はめちゃくちゃ不満そうな顔しながら、用があるのかどっか行っちまったし。いい加減自分から話さねえと何も進まねえ。

 

 でも、正体を明かすか? それで信じてもらえるのか? 今まで散々嘘ついてきた身分で。

 タリエに対して写本師の時はシェラって名乗ってたし、信者の時は名前すら名乗ってねえ。カルには本当のことなんて何一つ話してねえ、コイツは俺が女じゃないってことすら知らねえはずだ。

 そんな俺が今更「実は全部俺でした」なんて言ったところで、信じてもらえるとは思えねえ。いや、信じてもらえたとしても、許してもらえるのか。

 

「……アシュレム殿下は、なぜ僕たちを?」

 

 うわー……。

 あの可愛い後輩だったタリエの声に感じたことないぐらい棘があるー……。

 頑張って言葉には出さないようにしてるのは分かるけどそれを上回るぐらいの敵意を感じるー……。

 

 ……ていうか、今の俺ってアシュレムって名前なのか? 

 アシュレムを省略してアシェルってことか。「ュ」どこ行って、「ェ」はどっから来たんだ。

 

「僕たちは……王国に仇なした──罪人です。それを、なぜ」

 

「なあ……タリエ。王子なんかに何言ったって、分かりやしない……」

 

 ……ああ、そうだよな。そう思うよな。

 タリエやカルからすれば、王族が急に罪人を助けるなんて裏があるに決まってるって思うだろうし。そもそも俺を完全に敵だと思ってる。王族の言葉なんて全部嘘だって思ってる。しかも王子だなんて、下のこと何も分かってない──お山の大将って認識だろう。

 

 えっと……。

 そもそも、この二人が機密書類を私的な目的で悪用したのは事実なんだ。カルの写本技術で書類を複製して、タリエがそこからヴェインの関与を突き止めた。そこまでは間違いねえ。

 ただ、いくら重要な書類だからって、ちゃんと返してるし、敵国に流した訳でもないし、その目的はヴェインっていう悪を倒すためだったんだ。

 なのにこんな急スピードで処刑が決定してるってのはおかしい。いくら重罪だって言っても、もっと時間をかけて精査すべき案件なはずだ。こんな早く処刑したって、どっちにとっても不利でしかない。まるで口封じをするために焦ってるみたいだ。

 で、ヴェインは政府の関係者とズブズブだったから……。

 

 てことはつまり──二人が捕まってるのは、多分、ヴェインとの関係性を隠すためなんだ。

 

 二人はヴェインと政府の癒着を知っちまったから、その関係者が──口封じのためにさっさと処刑しようって話にしてるってことなんだ……多分。

 もしそうなら、二人やその関係者が何やったって握り潰されるだろうし、正攻法で二人を助け出すことは事実上不可能ってことになっちまうけど……。

 

 

 

『──殿下。私です』

 

「え? ……ああ、入れ」

 

「失礼致します」

 

 お、おお。誰かと思ったら──側近だ。

 最悪な空気がちょっとだけ和らいだ気がする。助かった。

 

「……何だ?」

 

「はい──予定通り、嘆願書を提出された方が、待合室にお見えになっておりまして。追い返しますか?」

 

 ……嘆願書? 

 

 えっ、来てるのか? 嘆願書を出したヤツ。

 今日会う予定だったってことか? 俺は何も知らなかったが、元の王族アシェルはちゃんと謁見の約束をしてたってこと? 

 

「え、えと……今日だった……っけ」

 

「はい。追い返しますか?」

 

 あっ今日だったんだ。

 へえ……。

 

 ……誰なんだ。どんなヤツが二人のために嘆願書を出したんだ。

 タリエやカルの知り合い……か? でもタリエはともかく、カルに知り合いなんて……。

 

「いや──執務室に通してくれ……対応する」

 

「……承知致しました」

 

 いや、今はそんなことどうだっていい。

 助命の嘆願書を出してるってことは、二人の解放に積極的な人間ってことだ。ここで協力関係を結ばない手はねえはず……! 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

『──まだ緊張されているのですか?』

 

『だ、だって! アシュレム殿下よ!? カルくんを助けるためにも絶対失敗できないし~……!』

 

『そのために私がメイド役として付き添っているではありませんか』

 

『それは、そうだけど……うう、ごめんなさいね、付き合わせちゃって……』

 

 ……なんか。

 扉の向こう側からめちゃくちゃ知ってる声が聞こえてくるんだけど。

 

 

 

「……初めまして、アシュレム殿下。この度、助命の嘆願を致しました──ロエマと申します。こちらは私の付き人の──レミです」

 

「お初にお目にかかります」

 

「あ、ああ、どうも……はじめ、まして……」

 

 うわあ。

 

 ロエマとレミだあ……。

 なんとなく分かってたけどロエマとレミだあ……。

 いや、ロエマはいいんだが。若干元気そうで安心したが。

 レミかあ……。入って姿が見えた途端変な声出たんだけど大丈夫かな。バレてねえかな。

 

 いや、まあ、言われてみれば、二人がここにいるのは理解できる。

 ロエマはカルの大家だったんだから、捕まった、しかも処刑間近って聞いて助けに来たんだろう。普段のカルは無口ではあるが、仕事一筋で真面目なヤツなんだ。家賃だって遅れずに毎回出してるし、そんな犯罪に手を染めたなんて聞かされて、「何かの間違いだ」って考えるのも不思議じゃない。嘆願書を出したのがロエマだったってのも、今となっちゃ納得がいく。

 で、レミは俺の「ロエマを守れ」って指示を守って今もロエマについて来てるってことなんだろう。ただでさえタリエとカルの問題で今頭ん中いっぱいだってのに、どうしてこうも……。

 

「──殿下、本日はお時間を頂きありがとうございます」

 

「あ、ああ……聞こう」

 

 ……ていうか、レミがさっきからこっち見てる。

 めっちゃ見てる。さっきからずっと見てる。

 あれやっぱり今回も気づかれてるんじゃねえか? 

 

「カルは──私の貸家で写本工房を営んでおりまして……とても真面目な方なんです。人と話すのが苦手で、でも仕事には誠実で……」

 

 ああ知ってる。全部知ってる。

 俺自身そこで働いてたんだから。カルが人と話すのが苦手なのも、仕事に対して真面目なのも、全部知ってる。俺がカル本人の次に詳しいと言っても過言じゃない。

 

「罪を犯すような人ではないと、私は信じております。なので、どうか、ご再考を……」

 

「アシュレム殿下。ロエマ様は、カル様のことを本当に心配しておられます。どうかご慈悲を」

 

「……分かった。話は聞いた」

 

「ありがとうございます、殿下……!」

 

 ……いや、俺としてもカルとタリエをどうこうするつもりは微塵もねえが。

 俺一人の権限で決められるか分からねえけど──何なら二人は今俺の部屋いるし。

 

 ん? 

 今、俺の部屋に……? 

 

 

 

「ただ、その、お前たちに……頼みがある」

 

「……はい?」

 

「今から──俺の部屋に来てくれ。話したいことがある」

 

「……え。それ……って」

 

 今、ここにはタリエとカルとロエマがいて──レミがいる。

 前者たちに俺は事情を話さなくちゃならないって説明責任がある。そうじゃなきゃ、誤解だって解けねえし、そうじゃなくても俺には協力者が必要だ。ただでさえ、今は色んな意味で追い詰められてるんだから。

 ただ、成り代わりのことを話すのはやっぱり気が引ける。そんなこと言っても普通は信じられねえし、無理に話そうとすれば逆ギレされるのは経験則として分かってる。

 

 だけど、今ここには。

 成り代わりのことを知っている──レミがいる。

 

「……いえ、承知、致しました……アシュレム殿下」

 

「承知致しました。しがないメイド風情ではありますが、私も尽力致します」

 

 だから、もしかすれば。

 二人で話すことで、俺は──この秘密を皆に打ち明けられるかもしれない。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「え……カルくん!? どうしてここに……!?」

 

「……ッ!? ロ、ロエマ、さん……!? なんで……!?」

 

「だっ、誰ですかこの二人!? カルさんの知り合いですか!?」

 

「殿下! 罪人はともかく客人まで招き入れて、いったい何をお考えで……!」

 

 おーすげえ。もうめちゃくちゃだ。

 めちゃくちゃにした本人が何言ってんだって話だが。

 

 タリエとカルとロエマと側近が混乱して、護衛までどうすればいいか迷ってやがる。

 そりゃそうなるよな。ついさっき助命嘆願をしに来たばっかりなのに、その相手が普通に王子の部屋にいるんだから。牢屋にいるはずのカルが、なんでここにいるんだって話だ。

 タリエからすれば今の状況すら分からねえのに新顔が増えたことになってるし、側近からすれば……もう言わずもがなだな。すまねえな、面倒な状況にしちまって。

 

「あー……その。側近も護衛も、全員下がれ。部屋出ろ。命令だ」

 

「殿下!? 今ここには部外者が四人もおります! 万が一のことがあっては……!」

 

「悪いな。レミ──黙らせてくれ」

 

 側近たちには悪いが、コイツらがいたら話せることも話せねえ。

 レミならもう……どうせ今の状況も察しがついてんだろ。俺が命令すれば、きっと意図を理解してくれるはず。

 

「かしこまりました」

 

 ……おお。

 

 いや、本当に分かってたのか。相変わらずすげえなコイツ。

 一瞬目が合っただけで全部意図察したのか、にっこり笑いながら、そのまま側近と護衛の方へ歩いて行って……。

 

 

 

「皆様、『ご主人様』の『ご命令』です。どうか『速やか』に『ご退出』を……」

 

 

 

「完了致しました。ご主人様」

 

 ……全員一瞬で気絶した。

 え、今のあれか。『殺気』か。前にも執事長の俺に真正面から浴びせてた──あのとんでもねえ圧か。あれ受けて……全員気絶したと。

 

「レ、レミちゃん……!?」

 

「……っ!? ……!?」

 

 全員めちゃくちゃ度肝抜かれちまってる。

 そりゃそうだよな。自分の付き人だったはずのレミが、いきなり側近と護衛を気絶させて、しかも俺のことを急に「ご主人様」って呼んでるんだから。

 タリエとカルからすれば、自分たちの敵である王子が、自分達を監視してるはずの警備とそれらを纏めてるはずの側近を外からやって来たメイドを使ってぶっ倒したように見える訳だから……なんだこの状況。

 

 ……で、レミはなんで俺の斜め後ろにぴったり位置取ってるんだ。

 おい止めろよ。ロエマのあの顔見えねえのかよ。顔がますます困惑に染まってんぞ。

 さっきまで自分の付き人だったはずの人間が、いつの間にか王子の側についてるんだ。

 もうちょっとこう……なんというか。誤解を招かないような行動を……そもそも俺ってお前が近づいただけで悪寒が止まらなくて……ああ、もういいや。

 

「レミちゃん……どうして……」

 

「申し訳ございません、ロエマ様。後ほどご説明致します」

 

 それじゃ答えになってねえぞ。ロエマがますます混乱してるじゃねえか。

 

 ……いやまあ、そうだよな。俺が話さなきゃ始まらねえ。

 

 ここにいる四人のうち、レミだけは俺の秘密を知ってる。

 成り代わりのこと、何度も死んで生き返ってきたこと。だから俺の指示で動いてくれた。「ご主人様」なんて呼び方も、俺が教会の信者だった時からの流れだ。

 でも他の三人は知らねえ。文官の俺と写本師の俺と信者の俺を全部別人だと思ってるタリエ。写本師と信者の俺しか知らねえカルとロエマ。

 

 俺は、この因縁に──ケリをつけねえといけねえけど。

 そのために、今、こうしてる訳だが……やっぱり、信じてもらえるのか、こんな話。

 

 

 

 ──『だから、この話をしたんだ。キミになら、打ち明けてもいいって』

 

 

 

 ……いや、そうだよな。

 ノエリスも、あんな秘密を──俺のこと信じてるから打ち明けるって言ってくれたんだ。

 俺だって、コイツらのこと信じてるなら、向こうにも受け入れてもらえるって信じて、俺のこと打ち明けるべきなんだ。

 

「……皆、話がある。いきなりで驚くかもしれねえが……聞いてくれ」

 

 だから、俺も──信じてみよう。コイツらのことを。

 

 嘘ついてきた負い目はある。でも、それでも──俺はこいつらのことを信じたい。きっと受け入れてもらえるって、そう思いたい。 だって、こいつらは俺の大切な知り合いなんだから。

 

「俺は──」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「……という、こと、なんだ。信じられねえかもしれねえが──どうか、信じてほしい」

 

 ……よし、全部話した、全部話したぞ。

 成り代わりのこと。何度も死んで生き返ってきたこと。元は盗賊から始まって、文官になったり、写本師になったりして──今は王族だってこと。

 レミも途中から俺のぎこちない説明を都度補足してくれた。写本師のアシェルや信者のアシェルじゃねえと分からねえようなことを、毎回補足してくれたおかげで、俺がその他のアシェル全員と同一人物だってことをぐうの音も出ねえほどに証明してくれた。

 ここにいる全員が、「レミの知ってるアシェル」との知人であることも幸いした。これで、ここにいるのがルシアとかだったら、写本師や信者のことなんてまるで知らねえから何も解決しなかったはずだ。

 

 だから……俺にできることは──全部終わったはずだ。

 俺は決心して、レミっていう最終兵器も投入して、遂に皆にこの事実を打ち明けたんだ。ソラナやノエリスと違って、魔法や呪いの知識だって無い皆に。こんな信じようにも信じられねえ話を。

 

 だから……どうか、俺の言葉を、信じてくれれば……! 

 

 

 

「……先輩」

 

 ……っ! 

 

「じゃ、じゃあ……! 先輩、なんです、よね……本当に……?」

 

「ああ……そうだ、そうだよ!」

 

 や……やった! 

 タリエが、タリエが信じてくれた! 

 

 そうだ、俺はお前の先輩だよ! 一緒にあの王都政院で、書記局市務課で文官やってた、お前の先輩だよ! 

 兵士の時も、文官の時も、写本師の時も、信者の時も。全部俺だ。お前がずっと追いかけてた、お前が復讐しようとしてた、その相手は──ずっと生きてたんだ! 

 

「僕は……僕は、ずっと……」

 

「分かってる、分かってる。今まで悪かった、お前がこれまで苦しんできたのは全部俺の責任だ。今まで悪かった……!」

 

「そん、そんな……! ぼ、僕は、先輩の無念を晴らそうと、復讐を、しようと……!」

 

 俺のために復讐しようとして、猛毒にまで手を出して、挙句の果てに牢屋に入れられて。

 全部、俺が何も言わずに死んじまったせいだ。これ以上──お前がそれを気に病んだり、復讐に駆られたりする必要は無いんだ。

 

「じゃ、じゃあ。シェラさんとして僕の相談に乗ってくれたのも、ヴェインの殺害を肩代わりしてくれたのも、僕の、ために……?」

 

「当たり前だろ! 俺はお前が──無事でいてくれれば、それでよかったんだ」

 

 信じてくれて、ありがとう。

 

「……っ! アシェル、先輩っ!!」

 

 

 

「アシェル」

 

「……カル」

 

「お前が……本当に、アシェルなのか。今、王子になったお前は……」

 

「……その、実は俺、女じゃねえんだ。驚かせたかもしれねえが……」

 

「……!」

 

 ああ、そうだよ。 お前の写本工房で働いてた、あのアシェルだ。

 人と話すのが苦手なお前の代わりに受付やらせてもらってた。お前との日々は、気が楽で──すげえ楽しかったんだぜ。言ったことなかったけどよ。

 

「お前……本当に、生きてたのか……俺は……ずっと……!」

 

「ああ、生きてるよ──ごめんな、カル。お前を守れなくて」

 

 俺が死んだせいでお前は幻影を見るほどに壊れちまって。

 無口で不器用ではあるが、真面目で根は良いヤツだってのに。危ない計画にも加担して、復讐を果たせたからってそれ以上のことを諦めちまって、牢屋にぶち込まれても満足そうで……そんな風になってほしい訳じゃなかったんだ。

 

「違う……俺が、お前を守れなかったんだ……あの日、きちんとお前を止めていれば……」

 

「いや……!」

 

 あれは俺がベラと向き合うのを逃げようとして、時間を稼ごうとして、勝手やって勝手に死んだだけだ。お前が気に病むことじゃねえし、むしろ俺を責めればいいのに。

 

「それは違う、それは俺が勝手をやったからだ……お前のせいじゃねえ、カル。俺が勝手に死んだんだ。お前は何も悪くねえ」

 

「……」

 

 言葉が出てこねえみたいだ。コイツは元々、口下手だからな。

 でも、ちょっとだけ声が震えてるのは分かる。

 

 コイツは、俺の言い分を信じてくれて、この再会を、純粋に喜んでくれてるんだ。

 

「……それでも、俺は、お前が生きてくれてることが、嬉しい。生きててくれて、ありがとう──アシェル」

 

「……おう!」

 

 

 

「アシェルちゃん……」

 

「……ロエマ、さん」

 

「アシェルちゃん、本当に……本当にアシェルちゃんなの……?」

 

「えっと……化粧は、今は本当にちょっと、興味があって……うぉっ!?」

 

「アシェルちゃん! 本当に、アシェルちゃんなのね……!」

 

 おおおっとっとっと! 

 きゅ、急に抱き着いてくるな! 当たってる! 当たってるって! 

 

 そうだよ! 化粧を教えてもらって、妹みたいに可愛がってもらった、あのアシェルだよ! 

 レミが構えるから急に動くのを止めろ! ああレミ動くな! ロエマが俺の命狙う訳ねえだろ! 

 

「私、私、ずっと、あの日連れて行ったこと、後悔してて……!」

 

「いや、それだって違う。あの時死んだのも悪いのは俺だ。アンタには何の責任も無いって」

 

 カルにも風の強さを忠告してもらってたのに、馬車降りて外に確認に出て、風に煽られ落っこちたのは俺だ。ロエマは初めからちゃんと俺に注意してくれてたし、アンタの言うこと聞いてればそもそもあんなこと起こらなかったんだ。

 

「でも、でも、私ずっと……ずっと悲しくて……妹を亡くした時と、同じで……また私、大切な子を守れなかったって……!」

 

 ああ、やっぱりロエマは俺の死がトラウマになってたんだ。

 俺に死んだ妹を重ねて見てたから……化粧に興味があって、ロエマに懐いてて、若くして死んじまったってことが、ロエマの元のトラウマに重なって、より大きく響いちまってたんだ。

 でも、今こうして、俺のことを信じてくれた。

 

「ごめんな、ロエマさん。心配かけて」

 

「ううん、いいの……生きててくれただけで……それだけで……すごく嬉しい……!」

 

「……ありがとな。俺のこと、ずっと想っててくれて」

 

「当たり前よ……アシェルちゃんは、私にとって家族同然なんだから……」

 

 

 

 ああ! 

 よかった! 

 

 勇気を出して、皆に真実を告げられてよかった。

 不安だったけれど、皆、俺のことを信じてくれた。

 タリエも、カルも、ロエマも、俺に抱いてた後悔を打ち消すことができた。

 ああ、本当に、本当に──! 

 

 

 

「──見事皆様を懐柔されましたね。流石、ご主人様です」

 

「うおおおお!? ビビったあ!?」

 

「何故私だけ反応が違うのか……」

 

 何だよ! レミかよ! 

 急に話しかけてくるんじゃねえよ! せっかくの感動も縮み上がっちまったぞ!




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