【完結】俺は死んだはずだよな?   作:破れ綴じ

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ややこしすぎて、途中から自分で書いてて訳が分からなくなってました。
もっと時間かけて考えるべきだと思いますよ……(´・ω・`)


まさかの敗北とややこしい再会

 レミが、やられた? 

 レミが? あのレミが? 間違いじゃなくて? 

 

「それは……確か、なのか……?」

 

「あ、ああ……」

 

 マジか、マジなのかよ。

 

 カルの言葉が頭の中でぐるぐる回って止まらねえ。嘘だろ、あのレミがだぞ。俺を水槽に沈めて殺したような化け物が、殺気だけで人を気絶させるような怪物が──やられた? そんな馬鹿な話があるかよ。

 レミなら絶対大丈夫だって思ってたのに。アイツなら誰が来ようが絶対中の人間を守り切れるって思ってたのに。そんな、そんなことがあり得るってのか。

 

「隠れ家に、誰かが来て……メイドさんが『様子を見てくる』って、言って……」

 

「……それで?」

 

「そ、それからすぐに……外で大きな、戦う音がして、大丈夫だとは思ってたんだが──あのメイドさんの声が、聞こえなくなって」

 

「……!」

 

 カルは、嘘をついたりするようなヤツじゃねえ。コイツが余計なことを言うヤツじゃねえのは、一緒に過ごしてきた時間で嫌ってほど分かってる。人と話すのが苦手で、だからこそ無駄なことは口にしねえ、必要なことだけを伝えるヤツだ。

 そのカルがあんな顔で、息を切らして、俺を探しに来たってことは……クソッ、本当にヤバいことが起きてるってことじゃねえかよ……! 

 

「その後、扉をこじ開けようとする音が聞こえたから、タリエが『先輩にこのことを知らせてください』って、俺を裏口から……!」

 

「じゃあ、タリエは……!?」

 

「タリエは──政務の証拠を隠さなきゃだから、書類持って、地下の隠し部屋に籠ってる!」

 

「……クソッ!」

 

 ここまで来ると──もう確定だ。

 

 謎の客がやって来て、確認に出たレミと戦闘になった。

 その客が誰かは分からねえが──レミは負け、客は隠れ家の中に押し入ってきた。

 カルは俺にそのことを知らせるため、バレないように隠れ家から逃がされ。

 タリエは、俺の仕事の尻拭いの証拠を守るため、隠れ家の隠れ部屋なんてとこに立て籠ってる。

 

 あの建物に隠し部屋なんかあったのかよ。いざという時に隠れられる場所があるのは良かったが……こんなことで知りたくなかった! 

 というか、書類なんざ放っておけばいいのに何やってんだよ! 今の俺の立場よりお前の命の方が大事に決まってるだろうが! 

 

 レミは無事なのか、タリエは大丈夫なのか。

 レミは「やられた」って話だが、どの程度やられたんだ。意識はあるのか、動けるのか、まさか死んじゃいねえだろうな。アイツがやられるなんて想像もしてなかったから、どんな状態なのか見当もつかねえ。

 それに今、隠れ家にいるのはタリエだけのはずだ。ロエマは今日仕事で来ないはずだし、カルはこうして俺を呼びに来てる。

 でも、だからって──レミを倒せるようなヤツが来てる場所にマドリーやリアンやネルを呼ぶわけにはいかねえ。レミがやられた今、タリエを守れるヤツが誰もいねえってことだ。

 

 なんでだよ、なんでこんな時に限って。

 

「とりあえず、カル。お前はマドリーたちに状況を伝えてくれ。今日は危ねえから来るなって。俺は護衛連れて隠れ家に向かう」

 

「それは……! ……分かった。気をつけろよ、アシェル」

 

「ああ……!」

 

 カルは……よし、行ったな。

 前に顔合わせした時、バレク家とグロス家の支店の場所は共有しておいた。迷うってことはねえはずだ。

 

 にしても、レミをやれるヤツなんて本当にいるのかよ。

 俺の知ってる限り、あいつに勝てそうな人間なんてまるで思いつかねえ。数の有利だってものともしねえヤツだぞ。一体どんな化け物が来たんだ、何人で来たんだ、目的は何なんだ。

 

 ……俺がもっと早く気づいてれば、こんなことにはならなかったんじゃねえか。

 情報屋が潰されてるって分かった時点で、誰かが何かを探し回ってるって気づくべきだった。それが隠れ家に辿り着く可能性だって、考えるべきだった。なのに俺は、謁見だの書庫だのに時間を取られて、肝心なことを見落としてた。

 どうせいつかノエリスには会うんだから、呑気におとぎ話なんて読んでる場合じゃなかったんだ。

 

「それより──俺も急がねえと……!」

 

 襲撃者が誰であれ、目的が何であれ、レミやタリエを傷つけさせる訳にはいかねえ。

 アイツらは俺の仲間なんだ、俺のために働いてくれてる大切な人間なんだ。そんなヤツらが俺のせいで傷ついたり、最悪殺されたりなんてことになったら……ああもう、んなこと考えるな! 

 

 とにかく、頼むから無事でいてくれ、二人とも……!

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 ここだ、ここだここだ! やっと着いた!

 息も切れるし、足が重てえけど──でも止まってる場合じゃねえ。

 扉が見える、あのボロい建物の扉が。外からじゃ何も分からねえ、静かだ、静かすぎる。カルの話が本当なら中では大変なことになってるはずなのに……って。

 

「おい、待て、待てよ……」

 

 入口の前に誰かいる。倒れてる、動いてねえ。

 ……おい、嘘だろ。

 

 

 

「……っ……はぁっ……はぁっ」

 

「レミ……!」

 

 

 

 目は開いてる、息もしてる、でも壁にもたれかかったまま微動だにしねえ。服のあちこちが破れて血が滲んで……なんだよこれ、あのレミがここまでボロボロにされるなんて、一体どんな化け物と戦ったらこうなるんだよ! 

 

「レミ……! おい、レミ! しっかりしろ!」

 

「……! ご、主人、様……!」

 

「ああ立つな! 立とうとするな! そのままでいい!」

 

 声は出るな……よかった、意識はあるんだ。 

 でもその声があまりにも弱々しくて、いつもの余裕ぶった態度なんてどこにもねえ。お前がそんな声出すなんて思ってなかった、頼むからしっかりしてくれ。

 

「申し訳……ございません……不覚を、取りました……」

 

「謝ってる場合かよ……! 何があった、相手は誰だ!」

 

「王国兵と……女が、もう一人……」

 

 王国兵と、女が一人、だと? 

 俺が政務を罪人に肩代わりさせてることを、腐敗した上層部が嗅ぎつけたのか? それで、妨害のために刺客を送って来たって? 

 ただ、そんな刺客が例え複数人いようと──レミに勝てるイメージってのが全く湧かねえ。敵はレミをも倒せるようなヤツを雇ってるとでもいうのか。

 いや、そんな馬鹿な話があるかよ。アイツは俺を何度も殺しかけたような化け物だぞ。その化け物をここまでボロボロにできるヤツがいるなら、とっくに王国は悪の手に落ちてるはずだ。

 

「兵士、は……槍を使う、女で……私と、互角でした……」

 

 ……は? 

 

 槍を使う兵士の女? レミと互角? 

 待て。待て待て待て待て。

 

「かろうじて片腕と片足は封じましたが……まさか、首に刃が刺さらないとは思わず……ぐっ……!」

 

「ああもう、無理すんな……!」

 

 槍を使う、女の兵士。その上、レミと互角以上に戦える。

 そんな条件に当てはまるヤツ、俺の知り合いの中に一人しかいねえぞ。

 ていうか、首に刃が刺さらねえってなんだ。どんな鍛え方すりゃそうなるんだ。

 

 いや、そんな偶然があるか? 

 ……でも、でも条件が一致しすぎてる。認めたくねえ、認めたくねえが──

 

「もう一人は……?」

 

「もう一人は、フードを被り……戦闘に、参加せず……ただ、『タリエ様』が……『アシェルについての情報を知っているはずだ』と……」

 

 ──アシェルについての、情報。

 それって、俺を探してる、俺の居場所を知りたがってる……ってことだよな。

 レミを倒してまで、隠れ家に押し入ってまで、俺を探してる女が二人。

 さっきからしてた予感が確信に変わりそうで、頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。

 

 でもまだ分からねえ、まだ決めつけるには早い。世の中には槍を使う女の兵士なんて他にもいるかもしれねえし、フードを被った女だって珍しくねえはずだ。そうだよな、そうに決まってる……そうであってくれよ。

 

「……お前、動けるか?」

 

「申し訳、ございません、体が……言うことを、聞かず……」

 

 ……クソッ、やっぱりか。

 レミがここまでやられてるってことは、相手は本当にとんでもねえヤツらだってことだ。俺一人で何とかなる相手じゃねえかもしれねえ。

 どうする、どうすればいい。今すぐタリエを助けに行かなきゃならねえが、レミをこのまま放っておく訳にもいかねえ。

 

 ……そうだ。

 

「おい! 護衛! いるんだろ! こっちに来い!」

 

「……は、ははっ! 殿下!」

 

 やっぱり、護衛だ。後ろから追ってきてるはずの護衛がいる。

 当たり前だよな。俺は王族なんだから、お忍びだとはいえ、城の外に出るなら後ろからこっそり護衛が追ってきてるはずだ。

 

「話は後だ! ここは俺が私的に利用してる隠れ家で、今襲撃を受けている! ここに怪我人がいる、一人はこいつを安全な場所に運べ! もう一人は王城に戻って、増援を呼んで来い! 襲撃者は相当な手練れだ、急げ!」

 

「はっ……!」

 

 よし、これでレミは何とかなる。

 悪いなレミ、お前を置いていくのは心苦しいが、今はタリエの方が先だ。

 

「……ご主人様、申し訳、ありません……二度目の負けは、あり得ませんので、どうか……」

 

「あ? 何言ってんだ。無理するなって……」

 

「どうか──私を、見捨てないで、ください……どうか……」

 

 ……え? 何の話? 

 

「私は……まだ使えます、から……」

 

 ……あれか? レミは今まで優秀過ぎて失敗とかしたこと無いから、初めての失敗で主人に切られる可能性を今初めて危惧したってことか? 

 これまで自分に絶対の自信があったからそんなこと無かったけど、今回その兵士に負けちまったから自信を失いかけてるって? 正直今それどころじゃねえんだけど。

 

「それこそ何言ってるんだ。仲間がいるに越したことはねえんだから、お前みたいに優秀なヤツ、何があったって手放す訳ねえだろ」

 

「え……」

 

「それより今はお前を休ませるほうが先だ。変に気負わなくていいから、俺に見捨てられたくねえなら横になってゆっくりしてろ」

 

「は、はい……!」

 

 えっと、これでよかったか? 

 レミの顔が微かに緩んだ気がする、素の表情っていうのか、そういうのが見えたような。

 レミが安心できたなら俺としちゃなんでもいい。別に一度負けたからってレミほど有能な人間を手放す理由にはならねえんだ。お前には怖くない範囲でこれからも俺の役に立ってもらわねえと。

 

 それより、話で聞いた二人は──本気で俺を探してる、本気で俺に会いたがってるんだ。

 それが良い意味なのか悪い意味なのか、今の俺には分からねえ。でもレミをここまでボロボロにするぐらいの執念を持ったヤツらだってことだけは確かだ。

 

 相手が相手だから、増援も来てない内から俺が一人でその「隠し部屋」とやらに突っ込む訳にはいかねえ。

 ただ、今すぐならまだ間に合う、今すぐならまだタリエを助けられる。様子を見て、増援が来るまで時間を稼いで、タリエに危害が及ばないように見張っておかねえと……! 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 ここか……隠し部屋ってのは……! 

 

 

 確かに声が聞こえる。奥の部屋から女の声が二つと男の声が一つ、男の声はタリエだ、間違いねえ。まだ声が聞こえるってことはタリエは生きてる、話してるってことはまだ何もされてねえってことだ。

 ──じゃあ女の声が二つってのはレミを倒したあの二人か。すっげえ心当たりある声なんだけど。

 

『──だから、知らないと言っているでしょう!』

 

 ああ、タリエだ。怒ってるっていうか必死に抵抗してる感じ。

 よかった、まだ無事だ──つっても、この無事がいつまで続くか見当がつかねえが。

 

 えっと……?

 何を話してんだ……?

 

 

 

 

『嘘をつくな、タリエ。お前はアシェルについての情報を知っているはずだ』

 

『僕は何も知りません! 貴女たちが何を言っているのか分からない!』

 

『惚けるな。お前があの少女と繋がっていたことは知っているんだ』

 

『そうよ。何度も言わせないで。アシェルはどこ』

 

『知らないものは知らない! 貴女たちが訳の分からないことを言って僕を惑わそうとしているのは分かっています! 何を言われても僕は何も話しません!』

 

 ……えっ? 

 どういう会話だ、これ。

 

 

 

『いい加減にして。アシェルは私にとっても大切な人、あなたが何も知らないはずがない』

 

『私も同じだ。彼女の言うアシェルとは別人だろうが……彼にはなんとしても会いたいんだ。お前が何か隠しているなら力ずくでも吐かせるぞ』

 

『知らないものは知らない! 例え知っていたとして、貴女たちに教える理由がありますか!』

 

『理由ならあるわ。私たちはそれぞれのアシェルを探している、それぞれのアシェルに会いたいの、ただそれだけよ』

 

『会いたいだけなら、レミさんを押し切ってまで突入し、僕を脅すだなんて乱暴な真似をする必要がないでしょう!』

 

『……あの女が先に私たちを止めようとしたのよ。こちらは話を聞きたかっただけなのに』

 

『そもそも。こんな隠れ家に潜んで秘密の作業をしている時点で怪しいことをしていると自白しているようなものだぞ、タリエ?』

 

『……それでも、僕は何も話しません! あの人を売るようなことは絶対にしない!』

 

 

 

『あの人? あの人とは誰のことだ、タリエ』

 

『……っ! 何でもありません!』

 

『いや、確かに聞こえた。あの人、と言ったわね。お前の言う「あの人」とは誰? 裏で全てを操ってるの?』

 

『違います! 関係ありません!』

 

『その反応、図星でしょう。あなたは誰かを庇っている、そしてその誰かはアシェルについて何か知っている。違う?』

 

『違う、違います! 僕は……僕は……!』

 

 

 

『いい加減に白状しろ、タリエ。私が療養していた時、「シェラ」は「私のアシェル」が生きていると言った。お前がシェラと繋がっていたなら、その証拠を知っているはずだ』

 

『「シェラ」さんのことは知っていますが、僕は何も……!』

 

『嘘をつかないで。「シェラ」は私に言ったのよ、「私のアシェル」は生きていると。なのにシェラはガルトンの館の地下にある水槽で死んでいた。あなたが唯一の手掛かりなのよ』

 

『だから僕は何も知らないと……!』

 

 ん? 

 んん? 

 

 なんか、話がめちゃくちゃややこしい方向に進んでる気がするぞ。

 タリエが言ってる「シェラ」は写本師の俺が自分につけた渾名だよな。で、アイツは俺を守るために、敵対的な二人から俺の情報を漏らすまいと抵抗してるってことで。

 

 で、俺の考えが間違ってなければ……というかほぼ確定なんだが……。

 

 兵士の女は多分「見習い兵士だったアシェル」を探そうとしてて、コイツが言ってる「シェラ」は執事長の時の俺の偽名だ。俺がガルトン邸の拷問用の水槽で死んでることを知ってるんだから。

 フードの女は多分「文官だったアシェル」を探そうとしてて、コイツが言ってる「シェラ」は酒家の時の俺の偽名だ。本人が「療養していた時」って言ってるし。

 

 で、全員。自分のアシェルが別の人間で、自分のシェラが別の人間だと思ってて……。

 二人の女は自分の知るシェラに「自分の知るアシェルは生きている」と吹き込まれたから、それに関連しているタリエを探し当ててこの家を見つけ、そしてレミを倒してここまでやって来て……。

 ああもうややこしい! なんでこんな面倒な状況になってんだ! 

 

 

 

『……ッ! あなたッ!』

 

『何だ、何を取り出した、お前。それは……』

 

『近づかないでください! これ以上近づいたら……! 分かりますね……!?』

 

 え、何々。ちょっと分からない。

 タリエ、なんかマズい行動とろうとしてないか? 

 

 

 

『その瓶……その色……まさか……!』

 

『近づくなと言っているでしょう!』

 

『その毒は……その毒は……! お前、どこでそれを手に入れた!』

 

『答える義務はありません! 貴女たちの目的は知りませんが、先輩の情報を渡すぐらいなら──先輩を一度殺したこの毒を貴女たちにぶちまけて、僕も死んでやります!』

 

 え、毒? 俺を一度殺した毒? 

 タリエ? お前、その毒はヴェインを殺すときに使ったはずじゃ……。

 

 ……もしかして、また仕入れたのか? 

 味占めてないかお前? 

 

 

 

『その毒は……まさかあの時、アシェルと私の酒に毒を盛ったのは……!』

 

『何を言おうが関係ない! 先輩を守るためなら、僕は……!』

 

『……どうやらその瓶は危険物のようね。攻撃の意思があると見なすわよ……!』

 

 待て、待て、待て待て待て! 

 まだ増援が来てねえってのに! 何お前ら殺し合いみたいな雰囲気になってんだ! 

 

 

 

『まずい! ルシア!』

 

『了解、ベラ!』

 

『せ、先輩! 後は頼み──』

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「うおおおお!! 止まれお前らあああああ!!」

 

 ああ畜生! やっぱりだ! ルシアとベラだ! 

 だよなだよな! シェラを知ってて、アシェルを探してる女兵士とフード女なんてお前らしかいねえもんな! 会いたかったがタイミングと状況が最悪だよ!

 

「──先輩!?」

 

「──えっ、アシュレム殿下!?」

 

「──何だと!? 王子が何故ここに……!?」

 

 ああもう出ちまった! 策も増援も説得する手筈も何もねえのに出ちまった! 

 あーあ! これからどうしようか!




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