フェリス・マルフォイはもしかして   作:かぼちゃマン

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3.シューティング・スター

 

「____さっきのポッターを見た? ハッフルパフの女にサインをねだられていたわ!」

「そうだな」

「しかも少し喜んでいたように見えたわ!」

「そうだな」

「恥ずかしくないのかしら!」

「そうだな」

 

 フェリスが大広間でミリセントに“今日のポッター”について話していると、大慌てでパンジーがやってきた。

 

「ねえ、見た?」

 

 フェリスとミリセントが「何を?」と言おうとする前に、後ろから勢いよくフロイド・カローがやってきて、大人しくパンを食べていたノットに衝突した。「飛行訓練だってよ!」

 

「飛行訓練ですって!」フェリスは目を爛々と輝かせて大喜びした。

 

「しかも、グリフィンドールと合同らしい」ザビニと一緒にやってきたデイモスがそう言って、フェリスの向かいの席に座った。

 フェリスは内心大喜びした。マグルの世界で育ったポッターは箒になんて乗ったことないはず________ポッターをぎゃふんと言わせるチャンスだわ! 

 

「フェリスは箒に乗るのが大好きだものね」

「ええ。今年の夏だって、箒で遠出したの。お母様は危ないからと反対していたけど……ヒッポグリフの大群を見たのよ。近くで飛んだわ」

 

 フェリスは鼻高々にそう言いながら、グリフィンドールのテーブルをちらりと見た。ウィーズリーが自慢する隣で、ポッターは自信なさげにしている。_____ふん、ざまあみなさい。

 

「二匹しかいなかったろ。それに、怖くって遠くから見てただけじゃないか」

「デイモスは黙ってて!」

 

 ミリセントがデイモスと間違えてノットの脚を蹴飛ばした。

 

 

 

 木曜日になると、いよいよ飛行訓練が始まった。

 箒は全部ボロの“シューティング・スター”だったので、フェリスは少し落ち込んだ。コメットにしろとは言わないけど、せめてブルーゲールくらいにしてくれれば良かったのに。

 フェリスが早速箒を持とうとすると、マダム・フーチが「何をしているのです! あなた方新入生が箒を持ち上げるなんて十年早い!」と怒鳴りつけ、全員に箒にただ「上がれ」とだけ言うよう指示した。

 

「フェリスにあんな大きな声を出すなんて信じられないわ」とパンジーが怒った。

 

 皆フーチに不満たらたらだったが、スリザリンの生徒たちはすぐに箒を手にすることが出来た。フェリスやデイモスはもちろん、ザビニ、ノット、フロイドも一発だ。自慢しようとポッターのほうを見ると、なんとすぐに箒がポッターの手に収まった。一方ウィーズリーは箒に額を殴られていたので、フェリスは大笑いした。

 

「見てフェリス! 私も出来たわ!」パンジーも四度目で箒を手にしていた。

 しかし、ミリセントとヘクター・カローの箒は未だに地面をゴロゴロ転がるだけだ。

 

「弟よ、いっつも部屋にこもって勉強してばっかりだからそうなるんだ」

「うるさいな、お前は遊んでばかりのバカじゃないか」

 

 フロイドとヘクターは双子で、見た目は瓜二つだが、中身のほうは完全に正反対なのだ。

 兄のフロイドはいつもふざけていて、弟のヘクターは引きこもって勉強ばかりしている。

 

「ミリセント、大丈夫よ。箒に乗れなくたって困らないわ。そりゃあ、フェリスと箒でお散歩が出来ないのはすっごく悲しいでしょうけど……やだ、私なら耐えられない」

「別に、箒以外の移動手段なんかいくらでもあるんだから気にしてない」

 

 それからフーチは全ての生徒の手に箒が収まるまで待つと(この時点でもう授業時間の半分が過ぎようとしていた)、一人一人の箒の持ち方を指導して回った。

 

「マルフォイ!! なんですか、この持ち方は! 指はこう!」

「_____別にこれでだって飛べますけどね」

 

 フーチが通り過ぎると、ウィーズリーがフェリスに向かって指をさして笑った。隣のポッターもニヤニヤしている。一刻も早く飛んで、二人を黙らせてやらないと。

 全生徒の箒の持ち方をじっくり見終わると、フーチはやっと全員に飛ぶことを許可した。フーチがホイッスルを吹き、全員が一斉に地面を蹴った。

 

「あっ」その瞬間、フェリスの箒が制御を失い、ぐんぐんと高く飛び始めた。フェリスは一度だって箒のコントロールを失ったことがないのに! 

 

「ちょっと、言うことを聞きなさいよ!」フェリスは箒をバシバシたたくが、箒はますます高く上がっていく。

 

「言うことを聞かないとへし折るわよ! それか、燃やしてやるんだから_____ちょっと、ごめんなさい……燃やさないから……」

 

 フェリス以外の生徒も大混乱だった。デイモスの箒は左にばかり飛んでいく癖のあるものだったし、ノットの箒は臆病なのかずーっと地面スレスレをゆっくり動いている。ウィーズリーの箒は同じ場所をグルグル回り続けていて、「吐きそう……マーリンの髭……」と力なくつぶやいている。

 下を見ると、フーチがホイッスルを吹いて「降りてきなさい! さもなくば退学です!」と叫んでいる。みんな降りていくが、フェリスの箒は言うことを聞かないし、飛び降りることが出来ないほど高いところに来てしまった。

 

「マルフォイ!」少し下のほうを見ると、ポッターがぐんぐん上昇してきている。

 

「な、なによ。バカにしに来たの?」

「そんなこと言ってる場合か! 今から君の隣に行くから、僕の箒に移るんだ」

 

 ポッターがフェリスの隣に箒をつけて、手を伸ばした。_____こんなの有り得ない! 華麗に飛び回って、ポッターをぎゃふんと言わせるはずだったのに……。

 

「これで勝ったなんて思わないことね」フェリスはそう言って渋々ポッターの箒の後ろに乗った。その瞬間、フェリスの箒がものすごい速度で地面に急降下し、バラバラに砕けた。フェリスはポッターがいなかった時のことを考え、心臓がキュっと縮み上がる思いだった。

 

「ポッター、勇敢な行いですが危険でした。あなたは箒に乗るのも初めてだというのに……」

 

 二人が地面に降り立つと、フーチがポッターを叱った。フェリスは腰が抜けてしまいそうだったので、ミリセントが素早く支えた。

 

「でも、僕が行かなかったらマルフォイは死ぬところでした」

 

「落ちっちまえばよかったと思うけどね」ウィーズリーがそう言ったので、パンジーが向かっていこうとしたが、二人の間にロングボトムが勢いよく落ちてきた。どうやらずっと上にいたらしい。

 

「なんと、腕も脚も完全に折れてしまって……私はロングボトムを医務室に連れていきますから、絶対に箒を飛ばすんじゃありませんよ」

 

 フーチはロングボトムを抱きかかえて歩き去った。ロングボトムは情けなく泣き続けている。

 それと入れ違いで、マクゴナガルが早歩きでやってきた。

 

「ハリー・ポッター。着いてきなさい」

 

 _____フーチの命令を無視したからだろうか? みんな戸惑っている。

 ハーマイオニー・グレンジャーは「私は先生の言うことを聞きなさいって忠告したのに!」と言っていた。

 

「先生、ハリーは悪くありません」パーバティ・パチルが言った。

 

「そうです! マルフォイが危なかったから……ほら、お前もなんとか言えよ」ウィーズリーがそう言ってフェリスを促したが、マクゴナガルはすぐに「しつこいですよ」と言ってポッターを連れて行ってしまった。

 

「罰則じゃないといいね」デイモスがフェリスに言った。

 

「別に、どうだっていいわ」

「どうでもいいだって? ハリーがいなきゃ大けがしてたくせに!」

「何よ、私は「助けて」なんて頼んでないもの」

「やっぱりお前なんて落ちっちまえば良かったんだ!」

「ちょっとアンタ、フェリスに向かってなんてこと言うのよ! 悪いのは全部箒でしょ、こんなボロを使わせるなんて、ダンブルドアって本当にボケ老人! 落ちたのがロングボトムだけで幸いだったけど……」

「パーキンソン、それはネビルに失礼だわ」

「へーえ、パチルったら、あんなチビデブの泣き虫が好きだったなんて知らなかったわ」

 

 そう言い争っているうちに、あっという間にチャイムが鳴った。みんなが楽しみにしていた飛行訓練なのに、散々な結果に終わってしまった。

 ちなみに、この話をデイモスから手紙で知らされたルシウス・マルフォイ氏は非常に憤り、ホグワーツの箒はすべて新品のコメットに変わったという。

 

 

 

「ポッターだわ」夕食のとき、フェリスは目ざとくポッターを見つけた。叱られたはずなのに、妙に表情が生き生きしているのが気になるが……結果としては助けられたわけだし、お礼を言ってあげなくちゃ。

 

「あら、ポッター。罰則の日取りは決まったのかしら?」

 

 フェリスがそう言うと、ポッターはウンザリしたようにフォークを置いた。

 

「良かった。もう涙目じゃないんだね」

 

 フェリスはカッとなって、ついさっきまでお礼を言う気だったことも忘れてしまった。

 

「私が涙目だったことなんて一度もないわ!」

 

「へーえ、腰も抜けそうになってたくせに」ウィーズリーが隣から口をはさんできた。

 

「あなたの見間違いじゃないかしら? おつむだけじゃなくて、目もお粗末なのね」

「ねえマルフォイ。僕ら、ゆっくり食事したいんだよ。用事がないなら戻ってくれないか」

 

 ポッターは心底ウンザリといった顔でそう言った。____その顔が大嫌いなのよ。自分だけ大人ぶっちゃって。

 

「ちょっと上手く乗れたからって、調子に乗ってるみたいね。どうせ陸の上じゃ何にも出来ないくせに」

「地上だと元気なんだね。優秀な取り巻きがたくさんいるから」

「別にミリセントやデイモスがいなくたって、私だってあなたたちに比べればだいぶ優秀よ!」

「僕は何も、ブルストロードやグリーングラスのことなんて一言も言ってないけどね」

「フン、いいわ。私がどれだけ優秀か見せてあげる」

 

 フェリスはそう言って、必死に考えを巡らせた。魔法薬学の時間にまたペアを組んでやろうか? それとも、次の飛行訓練で華麗に飛び回るのを見せつけようか……。その時、フェリスの頭がある天才的な考えをひらめいた。

 

「決闘よ。もちろん、魔法使いのね」

 

 フェリスは呪文をたくさん知っている(使えるかはわからないが)。決闘でなら、きっと勝てるはずだ。

 

「あら、魔法使いの決闘なんて聞いたこともないかしら?」

「あるに決まってる。僕が介添人をやるぞ____お前のは誰だ? ああ、婚約者がいるんだって?」

「婚約者じゃないわ!」

 

 フェリスはウィーズリーを怒鳴りつけ……デイモスには絶対に頼みたくない。ノットに頼めばデイモスに伝わるだろうし、ミリセントに頼むのもダメだ。パンジーにバレて叱られてしまう。

 

「ザビニよ。時間は真夜中でいいわよね? あなたたちは知らないでしょうけど、トロフィー室はいつも鍵が開いてるの。じゃあ、真夜中にトロフィー室で」

 

 フェリスはそう言ってスリザリンのテーブルに戻った。真夜中のホグワーツは少し怖そうだけど、それ以上にワクワクしている____寮をこっそり抜け出して決闘! 絶対に今度こそポッターをぎゃふんと言わせてやるわ。

 

「フェリス、何の話をしてたの?」

「お礼を言っただけよ」

「ポッターなんかにお礼を言うなんて、さすがフェリスだわ!」

 

 フェリスは誉めそやしてくるパンジーを無視し、ザビニを探した。フロイドと一緒に座っている。

 

「ちょっと、ザビニ。今晩お暇?」

「____さすがに友達の婚約者に手を出すのは……」

「婚約者じゃないし、あなたに興味なんて無いわ!」

 

 フェリスはザビニの手を引いて、フロイドから離れ、声を潜めて言った。

 

「今晩、ポッターたちと決闘をするの。よろしければ介添人になってくれないかしら?」

「うーん、面倒くさいけど、まあいいよ」




グリーングラス(♂)
カローツインズ(♂)
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