無能な悪役貴族、奴隷少女と共に貴族学園を征服する 作:メソポ・たみあ
目が覚めたら、そこはハードな凌辱エロゲの世界だった。
――『グランギニョル・スレイヴ』。
貴族社会と奴隷をテーマとしたエロゲであり、過激な暴力描写やグロ描写、そしてなにより徹底した奴隷への責めを描く、倒錯しているとまで謳われた作品である。
俺は幼い頃のある日、自分がそんな世界の〝悪役〟だと気付いた。
名はヴォルツ・シュターク。
この世界の貴族であり、シュターク侯爵家の一人息子。
『グランギニョル・スレイヴ』の作中では、徹底した無能かつ小物として描かれる悪役貴族。
一番最初にメインヒロインの奴隷を凌辱するキャラであり、このゲームがどれほどハードなのかをプレイヤーに伝えるキャラでもある。
とにかく性格が悪く小心者で、しかもドSのド変態。
女を虐め抜くことに極度の快感を覚える、救いようのない真正のサディスト。
その性格の悪さはもはや顔に出ており、めちゃくちゃ目つきは悪いし、常に〝ニチャァ……〟という擬音が似合う笑みを口元に浮かべている。
もう顔立ちを見ただけで「あ、コイツは救いようがないな」とわかるレベル。
絵に書いたようなヘイトキャラなので、当然プレイヤーからは半端なく嫌われている。
作中のヒロインたちからも蛇蝎の如く嫌われており、どの
そんな、凌辱エロゲの登場人物としてはある意味で百点満点の男。
……俺は、そんなヴォルツに転生してしまった。
つまり奴隷ヒロインたちにやりたい放題した挙句に破滅するという、そんな未来が待っているワケで。
――ふざけんな、冗談じゃない!
破滅なんぞしてたまるか!
それに凌辱とかする気にもならん。
そういうのはエロゲとかエロ漫画でこっそり見るからいいのであって、リアルでやるとか普通に引く。
『グランギニョル・スレイヴ』の世界に転生したことを自覚し、あまつさえヴォルツという無能な小物になってしまった俺は――すぐに破滅を回避すべく行動を開始した。
「父上、俺に剣術を教えてください」
ある日の晩餐時、俺は父親であるテオフィールにそう申し出た。
「……ヴォルツよ、今なんと?」
「俺に、剣術を、教えてください」
「おぉ……私は夢でも見ているのか……」
テオフィールは目頭を押さえ、感涙に咽び泣き始める。
いや、そんな泣くほどのことかよ。
剣術を教えてパパって言っただけだぞ。
でもまあ、ヴォルツはマジで権力を笠に着る以外なにもできない無能オブ無能だからな。
ゲームの中でも、特別剣術が上手いって描写はなかったし。
自分がヴォルツだと自覚する以前を思い返してみても、努力らしい努力をした記憶がない。
なんなら甘やかされ続けてきたバカ息子って自覚があるくらいだわ。
だが……もう甘やかされてばかりではいけない。
このまま無能でいたら、俺は破滅する。
それに父親であるテオフィールは、剣術の達人として貴族の中でも知られている。
〝双剣〟を使いこなすシュターク流剣術と言えば、国内のみならず他国にもその武勇が知れ渡っているほど。
……その名声と侯爵家って立場に胡坐をかいて、自分では碌に剣術を学ばなかった結果破滅したのが、ゲーム中のヴォルツなんだけど。
「……よかろう、では明日からお前にシュターク流剣術を教えよう」
「ぜひお願いします、父上」
「やると決まれば厳しくいくぞ。お前をシュターク流剣術の後継者とするべく鍛えるから、そのつもりでいるのだ」
「――はい」
この時、俺ことヴォルツ・シュターク十歳。
『グランギニョル・スレイヴ』の舞台である貴族学園へ入学するまで、あと六年――。