無能な悪役貴族、奴隷少女と共に貴族学園を征服する   作:メソポ・たみあ

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第6話 人は人だ②

 

 俺は頭を抱えつつ、

 

「……シャンテよ、この際だからハッキリ言っておこうか」

 

 できるだけ彼女を警戒させない口調を心掛け、喋り始める。

 

「俺は、お前を慰み者として買ったつもりはない」

 

「では、なんのために私をご購入されたのです?」

 

話し相手(・・・・)だ」

 

 話し相手――という俺の返答を聞き、微妙に眉をひそめるシャンテ。

 

 あまりピンときていない様子だ。

 

 まあ世間一般にこの世界の奴隷=(イコール)ほぼ性奴隷って認識だから、無理もない。

 

「お前は貴族学園を知っているか?」

 

「……存じ上げません」

 

「正直に話せ。俺はまどろっこしいのは嫌いだ」

 

「…………多少なら、存じております」

 

 俺に問い詰められると、シャンテは僅かに目を逸らして本当のことを言う。

 

 やっぱりな。

 本当は知ってるくせに、知識を隠そうとする。

 

 奴隷とは()だ。

 物に知識など必要ない。

 それが性奉仕にまつわるモノでないなら、尚更に。

 

 大方、ロージェルか誰かに「奴隷なら頭の悪い振りをしろ」「なにも知らない振りをしろ」とでも言われたのだろう。

 

 奴隷を買いたがる奴っていうのは、詰まるところ〝自分より劣っているモノ〟を欲しがる奴だからな。

 

 バカで従順で、なんでも言うことを聞く。

 

 貴族連中からしてみれば、そういう奴隷の方がずっと可愛げがあるはずだ。

 

 逆に生意気で自分の知らない知識を有している奴隷など、少しも欲しくはないだろう。

 

 下手をすればコンプレックスを刺激してしまい、酷い虐待に遭う可能性だってある。

 

 だから彼女は、自分が賢いことを隠そうとしている。

 

 能ある鷹はなんとやら――というワケだ。

 

 俺は話を続け、

 

「もうすぐ俺は貴族学園に入学する。そこでは、貴族は奴隷を飼わねばならない」

 

「……」

 

「だが正直、俺は奴隷を好かん。奴隷から性奉仕を受けたいとも思わんし、他者に見せびらかしたいとも思わん」

 

「……それは、奴隷が薄汚れた存在だからですか?」

 

「違う。俺は奴隷を()として見られないからだ」

 

「……!」

 

 俺が言うと、シャンテは驚いた様子を見せる。

 

 貴族の口から出る言葉としては、予想外のモノだったのだろう。

 

「奴隷であろうがなんであろうが、人は人だ。違うか?」

 

 俺の価値観って、あくまで現代日本基準だからさ。

 

 この世界みたいに当たり前みたいに奴隷がいて、当たり前みたいに奴隷から搾取するみたいな世相じゃなかったんだわ。

 

 曲がりなりにも人権って概念があったんだわ。

 

 だから奴隷を非人扱いするっていう方が、俺にはピンとこないんだよな。

 

「……貴族様の口から出るお言葉とは思えませんね」

 

「なんとでも言え。とにかく俺は奴隷を奴隷として見られない。だから傍で侍らせたいとも思わんが……貴族学園ではそうもいかん」

 

 俺はため息を漏らしつつ、

 

「貴族学園に通う貴族は、奴隷を飼うことが義務付けられていてな。それは俺も例外ではない」

 

「だから、私をご購入なされたと」

 

「そうだ。お前には共に貴族学園に来てもらう。だが性奉仕などしなくていい。俺がお前に求めるモノは、さっき言った通りだ」

 

 そう言って、俺はシャンテの瞳を真っ直ぐ見つめる。

 

「俺の話し相手になれ。俺の知らない知識を語り、たまに俺が困ったらお前の知識で助けろ。いいな」

 

「――――は――あ――」

 

 俺の要望(・・)を聞かされたシャンテは、キョトンとした様子で目を丸くし、口を半開きにする。

 

「あ、あの……それだけ、ですか?」

 

「それだけだ。俺が貴族学園を卒業したら、奴隷から解放すると約束してやる。解放された後は好きに生きろ」

 

 俺はソファの上でゴロンと横になり、

 

「わかったら後は自由にしていいぞ。この部屋で適当に寛いでかまわん。俺は寝る」

 

 言いたいことを言ったら眠くなってしまった。

 

 今日は奴隷市場に行ってきて疲れたし、ひと眠りしよう……。

 

 ――なんて思ったのだが、

 

「えっ、あ、その……」

 

「まだなにか用か」

 

「い、言いたいことは色々とありますが……もっと気になさらないのですか? 例えば、どうして私が知識を有しているのか、とか……」

 

「興味ない。お前が賢いならそれでいい」

 

 いやまぁ、本音を言うなら興味ないってより「必要以上に関わりたくない」なんだけど。

 

 だって奴隷は俺を破滅させるかもしれんし。

 

 自分を破滅させるかもしれない相手に、深入りなんてしたいと思わんだろ。

 

 それにどうせ、奴隷なのに知識があって賢いなんて時点で、確実に出生にワケあり(・・・・)なんだ。

 

 俺だってそれくらいは予想できる。

 

 余計に首を突っ込まないのが吉というか、触らぬ神に祟りなしというか。

 

 俺は貴族学園を平穏無事に卒業できればそれでいい。

 他のことは知らん。

 

「で、では何故奴隷の私を解放するなどという約束を? もしかしたら、あなたに反旗を翻すかもしれないのに……」

 

「反旗を翻してほしくないから、解放すると約束するのだ」

 

 俺はソファの上で寝返り打ち、シャンテに背中を向ける。

 

「そもそもな、賢く聡明な者を奴隷として飼い殺して、誰になんの得がある?」

 

「……!」

 

「頭がいいなら、自由に働かせた方がよっぽど世のため人のためだろう。頭のよくない俺でも、それくらいわかるぞ」

 

「……ヴォルツ様、あなたは――」

 

「話は終わりだ。お休み」

 

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