転生テストケースNo.7   作:金の歯車

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はじめまして金の歯車と申します。
学生身分故投稿は不定期になるやも知れませんが、皆さんよろしくお願いします。
また、感想を書いて頂けると幸いです。


第0話「ハジマリ」

私は死んだ。

私は病院の中で死んだのだ。

 

 

記憶もはっきりしている。

 

小さい頃の私は頭は良いが変わった子として近所に名が通っていた。

確かに多くの本を読んだり沢山の質問を両親にしたりはしたが、それでも幾人かの親友と共に遊び回った。

花火の火薬をつかった小型爆弾を埋めて、地雷をつくったのは楽しかった思い出がある。

 

中学校にあがってからは、本格的に天才として名が通ってきた。

幼稚園、小学校と一緒に上がってきた親友達と学業、運動などを切磋

琢磨しあった。

後で知った事だが、私と親友達の5人のグループは「ペンタゴン」「変態戦隊キチレンジャー」「サッカー部の救世主(変態)」などと不本意な名で呼ばれていた。確かに色々したのは覚えているが、証拠は1つも残さなかった筈なのに何故こうなったのだろうか。

 

高校に上がってからも変わらなかった。

4人の親友は変わらず一緒だし、校内順位も1位から5位を独占していた。

周りは彼女を作ったりして恋を楽しんでいると言うのに、そんな話の1つも上がらなかったのは不思議だった。中学生の悪評がついてまわっているのだろうか。

 

大学に入ってからは行動範囲が広がり、旅行に行ったりしていた。

大きなテーマパークでナンパを試みた親友の1人が、失敗して帰ってきたのには大いに笑った。

 

大人になった私は研究者だった。

ノーベル賞を2度程とったことがあった。

世間では天才だとか鬼才だとか言われてきたが、TVに出たことは無かったと思う。

他の親友は火星のテラフォーミング、私との半永久機関の共同開発、プラスチックなどの石油製品の再石油化、完璧な自然災害の予知など様々な功績を残していた。

 

 

走馬灯のような回想を終えると、私は地面も空も何もないような白い空間に浮かんでいた。

 

死後の世界とはこういうものなのか。

 

と考えながら、よく私の家に押し掛けてきた宗教家の言う天国や地獄とやらが存在しないことに、少し残念な気持ちを抱きながら周りを見渡す。

改めて思うが本当に何もない。

誰もいない。

いつもなら4人の親友に電話でもかけたり、私の親友の1人が作り上げた意識をゲームに沈みこませるゲームに興じたりするのだが、あいつらはまだ死んでいなかったはずだ。

 

「少しよいかな。」

 

私の真後ろから突然声がかかる。

 

振り向くと何だか白い髭の生やしたお爺さんがそこにいた。

 

私も十分お爺さんといえる歳なのだが、誰だって認めたくないものはあるのだ。

白髪染めも白い髭を剃るのも悪あがきにしかなっていないと、助手に言われたときは心が折れそうだった。

あの助手は有能で私を尊敬しているらしいのだが、どうも口が悪い。若作りのために口調を変えたりして頑張っているのだが、細かいことに気付いてはズバズバと心に刺さるようなことをいってきた。

何故そこまで容赦なく言えるのかとたずねたら、

『これも僕の愛ですよ。』

と返答がかえってきたが、本当かどうかは定かではない。

僕っ子という珍しいキャラだったが今も元気にしているだろうか。

 

「かわいらしい助手さんとの思い出を振り替えるのはよいが、そろそろ此方をみてはくれんか。」

 

白い髭のお爺さんが困ったような顔と声色で、こちらに話しかける。

そのお爺さんは白いゆったりとした服装に、先がぐるぐると曲がった杖を持った背の高い人だった。

 

「失礼、私の名前は甲谷龍一郎(コウサキ リュウイチロウ)、あなたの名前は?」

 

「わし人間がは名前というものがなくての、強いているなら…神、かのぅ。」

 

私は訝しげな顔と、疑念のこもった声で、

 

「なるほど神、か…。私の思考を読み取れるのも説明出来る。何せ神だからな。それでその神は、既に死亡したはずの私に何のようで?」

 

少し挑発的に言った。

 

「それはのぅ、地上では死んだ人間が神によって別世界に転生する、という物語があるじゃろう。」

 

「確かにあるな。」

 

オリジナルの異世界だったり、ゲームや漫画のなかだったり様々な種類があったはずだ。

 

「それを真似する神が現れても対処がしやすいように、テストケースとして何人かを別世界に送り込むことになったのじゃ。」

 

何ともはた迷惑な話だ。

 

「それで、私は何処に転生するので?」

 

「恐ろしく冷静な人間じゃのう。他の人間は殴りかかってきたり怒鳴り散らしてきたりしたのにのぅ。」

 

そいつらは仮にも神に向かってなにをしているのだろうか。都合の悪いときにしか神に祈らない私ですら、敬う心はもっているというのに。

 

「転生に関してじゃが、転生する場所が何処かも何回かも言えん。が、幾つかの特典は与えることが出来る。なので、はやいところ何の特典がいいが決めておくれ。」

 

何時、何処に行くかも分からないのに欲しいものを言えというのか。

中々に難しいことをいう。

その世界に与えられる物が合致していなければそれは無意味になってしまう。

よく考えなければ。

 

「…では。私の研究したものを私の身体に適合させた上で植え付けてほしい。」

 

「龍一郎の研究したもの全てをか?」

 

「ええ。私の研究したものを全て。」

 

私の研究したもので個人的に誇れる物は3つ。

 

年月が経つにつれ変化していく自然に対して、環境を変えるのではなく人間そのものを進化させようという理念の下作り上げた、高速進化細胞。

 

食料問題を食料を増やすのではなく、人間そのものに自給自足出来る機関を作り上げれば良いのではないか。

という発想の下に作り上げた。

激しい運動をしないのなら日光と二酸化炭素と少量の水だけで半永久的に活動出来る、半永久機関細胞。

 

怪我をしたアスリート等に対して早く怪我を直すために作り上げた。

内臓の再生さえ可能にした高速再生細胞。

 

他にもその辺の雑草から簡単に作れる生分解性プラスチックなど、色々やったが誇れるのは上の3つだけだ。

どれも人間に植え付けないと効果が無いので、非人道的となどと言われて世界に認められることはなかったのが心残りだ。

因みにノーベル賞をとったのは、私が大したことがないと思ったもので拍子抜けしたのを覚えている。

 

これら3つの細胞は同時に体内に植え付けることはできないはずだが、神ならどうにかしてくれるだろう。

 

「無茶を言うのぅ…。」

 

「私の聞いた神は全知全能であったと記憶しているのだが。」

 

「ろくに神を信じたことも無い癖によく言うのぅ。」

 

神の言葉には呆れを感じさせる。

 

「それはともかく、1つ質問があるんだが…私は人間に転生するのか?」

 

「普通は特典を決める前にそれを聞くじゃろうに…。龍一郎が人間として転生するかどうかじゃが…、分からん。」

 

「…、全知全能の神様よ教えるわけにいかないのではなく、分からないとはどういうことだ?」

 

「特典を与えるのはわしの役目じゃが、何処に転生するのかを決めるのは別の神なのじゃ。確か今回の当番は…、」

 

神がいそいそと当番表のようなものを取り出す。

 

「狩猟神組合じゃな。」

 

「狩猟神組合とはなんだ?」

 

即座に質問を投げ掛ける。

ここにいつまでいられるか定かではない以上、早急にことを進めるのが吉だ。

 

「獲物を狩る権能を持つ神々が所属する組合じゃ、有名どころではアルテミスが所属しておるの。この頃地上のハンターが減ってきて仕事がないと、ぼやいておったな。」

 

「なんというか…、神聖なイメージが崩れてしまうな…。」

 

「まぁそういってやるな。…おっと、そろそろ時間じゃではのぅ。」

 

私の体が足下から光の粒子になって消えて行く。

このまま存在ごと消えてしまいそうな不安に駆られるが、ぐっと抑える。

 

「名残惜しいが…、ではさようなら。」

 

本当に名残惜しい。

この体も、神も、何の検証もしていないというのに。

 

 

甲崎龍一郎が完全に消えた場所で。

 

「老いてなおあの知識欲か…、本当に、恐ろしい。彼がもし、もっと遅くに、科学の更に発展した時期に生まれていたら…、神の領域すら侵せたかもしれんのぅ。」

 

人の底無しの無邪気な悪意と欲に神は恐怖する。

 

「彼を選んだのは間違いだったかもしれんのぅ。」

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