転生テストケースNo.7   作:金の歯車

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第1話「孤島生活」

重い瞼を上げて目を開けようとする。

しかし突き刺すような陽射しが、目を開けるのを妨げる。

潮の香りと波の音が感じられる。

起き上がり周りを見渡すと、広大な大洋と熱された砂浜が広がっていた。

自分の周りにはルドロスが数匹、私を警戒したように包囲している。

 

ルドロス?

どうやら私はモンスターハンターの世界に転生したらしい。

モンスターハンターといえば弱肉強食の自然世界。

否が応にも勝つか負けるか、食うか食われるかの競争に巻き込まれる。

正直なところ、また人間になって研究をしようとしていた私からしたらよい環境とはいえないのである。

取り敢えず、まずは状況確認のため声を出すことにする。

身体欠損などは無いとは思うが、万が一があって状況への対処が遅れて死んでしまっては目も当てられない。

 

ここはどこだ?

 

そう口に出そうとしても聞こえてくるのはコルルルという、唸り声だけだ。

唸り声?

これはおかしい、どういうことだ。私は人間に転生したのではないのか。

よく考えてみるとえらく視線が低い。30cm程だろうか。原作ではトカゲのような外観で、頭が低い位置にあったはずのルドロスが大きくみえる。

取り敢えずルドロスに襲われてはたまらないので、全力で陸地へ逃げることにした。

 

そうして全身に力を込めて砂を両手で掴んで四つん這いで動き出すと、景色が流れた。

そう流れたのである。

ルドロスに邪魔されるわけでもなく、走れずにこけるのでもなく、景色が流れたのだ。

それが表すのは人外じみた速さ。

全身の筋肉が無意識の内に躍動し、体を動かすという喜びが全身を駆け巡る。

研究者として建物の中にこもっていた身としては、これまでに感じたことのない喜びだった。

自然と笑みが浮かぶ。

そして私は柄にもなく、状況確認をしようともせずに陸地の奥にむけ走りだした。

頭では冷静でも体が運動を求めてしまうのだ。

取り敢えず沸々と沸き上がってくる、運動衝動を発散させるために走り回ることにした。

 

 

 

走り回ること、だいたい4時間程だろうか。

漸く全身に程よい疲労がまわる。

全速力で動いておいて程よい疲労で済んでいるとは、中々に強靭な体らしい。

見も心も冷静になった私は状況の整理を始めた。

 

周りの地形については、さっき走り回った時に確認した。

ここは孤島だ。

ゲームでも序盤に行くことになるステージである。

序盤に出てくる土地にも関わらず、様々なモンスターが迷い混んだりする修羅の土地でもある。

ただいくら走り回っても、ベースキャンプらしきものが見つからなかった。

原作でベースキャンプがあるであろう場所に行っても、何もなかったのだ。

この孤島はハンターが足を踏み入れていない、前人未踏の場所なのだろうか。

そうであるなら好都合だ。

人間に見つからないことに越したことはないし、ハンターに転生者が居ないとも限らない。

そうでなくてもG級のハンターは間違いなく強敵だろう。

 

次に分かったことはこの島に住む生物についてだ。

陸地にはアイルー、ブルファンゴ、アプトノス、オルタロス、ブナハブラ、ジャギィ、ドスジャギィ。

海にはルドロス、エピナス、魚類。

と、この島の暫定的なボスはドスジャギィになるだろう。周りを走り回った程度なので、まだほかにもモンスターがいるかもしれないが、取り敢えずはこれでいいだろう。

そのついでにキノコ類が多く生える場所、虫が沢山集まる場所を確認した上で覚えておいた。キノコや虫を主食とするモンスターが少ないせいか、どれもかなりの量があって群生地もゲームとは段違いの数があった。鉱石については今のところどうしようもないが、覚えておいて損はないだろう。

 

3つめに分かったことは自分の種族である。

冒頭の唸り声からもわかるように、間違いなく人間ではない。

異様に発達した両腕。

4本しかない指。

焦げ茶色の体毛。

こめかみより少し上にある小さな角。

発達した下顎の牙。

獅子のように先が膨らんだ尻尾。

 

金獅子ことラージャンである。

ただしラージャンの子供どころか赤ん坊ではないかという程に小さい。

事実、成体なら頭から横に長くのびるはずの角が、手のひらに収まるほどに小さいのである。

 

周りに親が居ないのなら、このラージャンは親や群れからはぐれたはぐれラージャンなのだろうか。

もしくはラージャンには、獅子が我が子を千尋の谷に突き落とすように、幼少のころからサバイバルをさせるような生態があるのだろうか。

どちらにしろ最強の保護者となる親ラージャンが居ないとなると、サバイバルをしなければならないのだ。諦めて寝床を探すことにした。

 

 

寝床を探して30分新しくわかったことがある。

この孤島にはアイルーやメラルーがほとんどいないのである。

ハンター達と協力するために、様々な土地に生息し秘密基地のような場所を作っているアイルー達が数匹しかいないということは、3つの推測が成り立つ。

1つめはアイルーが孤島に住み着き、ハンターが来るよりも遥か昔の太古の時代である。

2つめはハンターとアイルー達が、辿り着くまで長い時間を要するほどにこの孤島が辺境にある。

3つめはアイルー達だけがここに来て生存圏を広げている最中である。

 

どれにもモンスターとしては大きな利点があるが、私として一番好都合なのは2つめの推測である。

1つめは、遥か昔ならゲームの時のように強力な武器は無いかもしれないが、生存圏も組織も安定しないときにはハンス・ウルリッヒ・ルーデルや本多忠勝など、多くの場合英雄と呼ばれる化物が生まれることが多々あるのである。戦い方は体が知っているとはいえ元の私は研究者である、お世辞にも戦いに適しているとはいえないし、その程度で英雄相手に勝利出来るとは思っていない。

 

2つめはアイルーがいてもハンターが居ないのなら、この孤島は様々な強者が集まるとんでもない修羅の島になってしまう。

ハンターとは、モンスターにとって天敵になるかもしれないが、強すぎるモンスターを狩っていくことが多いので、私のようなか弱いモンスターからしたら、間接的にだが保護してくれるありがたい人種なのだ。そいつらが居ないとなると、恐ろしく面倒なことになってしまう。

 

しかし2つめならば、遠くともハンターがこれるなら修羅の土地でも安定するし、ここまで来れるなら技術も発展していないということはまずないので、安心してすめるということである。

 

長々とした考察は置いておいて、寝床を決めることにした。

 

寝床はハンターの使うマップの孤島4番の、アイルー達の住みかになっているところに決めた。

まだアイルー達が居ないので、真っ暗で何も見えないがそこは光蟲でも捕まえてくるとしよう。

取り敢えず背の高い草を乾かして干し草をつくって、簡単な干し草ベッドでも作るとしよう。

入り口は苔むした岩を嵌め込んでカモフラージュしておいた。自分の背丈と同じくらいの岩を軽々と運べたのには、流石に驚いた。やはり子供とは言えラージャンか。

 

まずは灯りを得るために虫を入れるための籠を作った。

籠を作るのは木材を爪で削って組み合わせればいけばよいのだが、問題は光蟲だ。

なまじ力があるゆえに、そっと摘まもうとしても潰してしまうのだ。上手く捕まえられずにイライラするわ、潰すごとに眩しいわで散々だった。

 

 

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