因習村VS異世界帰りの勇者   作:オシガマ侍

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第4話 女腹村会議

 女腹村の奥に、他の平屋よりも二回りほど大きな建物があった。

 

 チェッカーガラスの引き戸が、ギィ……ギィ……と不規則な音を立てて何度もスライドする。そのたびに、無言の人影が一人、また一人と中へ吸い込まれていった。

 

 建物の中には床張りの大きな部屋が一つ。あとは、黙して語らぬ流しと、何かを封じるような重い扉のトイレだけ。集会場のようだった。

 

 板張りの部屋の奥には、そり頭の老人が胡坐をかいて座り、目を瞑ってじっと時間が経つのを待っていた。

 

「村長……。役員が全員揃いました」

「わかった」

 

 声を掛けられた村長はゆっくりと瞼を開き、部屋を見渡す。四人の男達が村長と同じに胡坐を組んで座り、ちょうど円を作っていた。

 

「それでは、女腹村緊急役員会を開催する」

 

 村長の宣言に、四人の役員が無言で頷いた。役員の顔ぶれは様々、太った男に、背の低い男、髭モジャの男に、ちょろりと長身の男。個性豊かと言えなくもなかった。

 

「本日の議題は村に現れた【異物】についてだ。詳しくは牧田から、順を追って話してくれ」

「はい」

 

 牧田と呼ばれた長身痩躯の男は、他の役員を見渡す。皆、真剣な表情をして牧田を見ていた。軽く頷くと、牧田は話し始める。

 

「あれは昨日の19時を過ぎたころのことだ。俺は椎茸の原木の整理を終えてから、家へと向かっていた。あと数十メートルで家に辿り着く。そんな場所に、見慣れない男女の二人組がいた。女は手に持ったライトで俺の家を照らしていた。まるで、何かを探るように……」

 

「……怪しいやつだな」と髭モジャが顎鬚をしごきながら反応する。

 

「あぁ。今は土砂崩れで車が通れる道路は封鎖されている。そんな状況でこの女腹村に来るのは怪しすぎる。そう思った俺は警戒しながら近づき、『あんたら、何をしてる』と声を掛けた」

 

「それから?」

 

 背の低い男が小刻みに足を震わせながら、牧田に先を促す。

 

「女は『友達がこの村の出身で、実家に帰っているらしいので訪ねてきたんです』と。友達の名前を聞くと『月森アカリ』と返ってきた」

「……月森……!!」

 

 村長はかっと目を見開き、大声を上げた。集会場が震える。

 

「まさかそいつらが、月森アカリを逃がしたのか!? 月森夫妻を殺したのもそいつらか!?」

 

 太った男が性急に結論を求めた。ひょろ長い男は首を振ってから続ける。

 

「いや、それは分からない。俺と話した時は、何も知らない様子だったが……」

 

 村長は腕を組み、考えを纏めてから皆に問い掛ける。

 

「もし、その二人が月森アカリを逃がしたのだとすれば、なぜ戻ってきた? この女腹村に滞在する理由は何だ? 人殺しの嫌疑を掛けられるのを分かっていて、姿を現す理由がない」

 

 村長の言葉に四人は黙り込む。

 

「一旦、その二人は『月森アカリを逃がした犯人ではない』と仮定しよう。その方が辻褄は合う。両親に牢に入れられたアカリは何らかの方法で友人に連絡を取り、助けを求めた。アカリの出身地を知っていた友人二人が心配してやってきた。しかし、既にアカリは既に牢から逃げていた。この方が辻褄は合う。しかし──」

 

 鋭い視線を窓の外に向ける村長。

 

「あの、ドーム状の土の塊はなんだ!? あんなものが一晩で現れるなんて有り得ない!」

 

 また、四人は黙り込んでしまった。ちらちらと視線を交わし、誰が最初に話すかを牽制している。

 

 結局、事情を一番知っているひょろ長い男、牧田が口を開いた。

 

「村長。あのドームハウスのことは一旦忘れましょう。あれについて考えても結論は出ません。今は、アカリの替わりに開様に捧げる贄のことが優先です。私の考えですが……アカリの友人の女を贄にするのがよいのではないでしょうか……?」

 

 村長は牧田をじろりと見る。

 

「それは、本気で言っているのか? アカリと違い、外の女を贄にすると面倒になる……」

「今、この女腹村は陸の孤島です。土砂崩れで外界との道は断たれ、電波も届かない。外の人間がこの近くで行方不明になっても、我々が疑われることはない。遭難したと考えるのが普通では?」

 

 意外にも牧田は食い下がる。そしてそれは、村長に届いた。

 

「……牧田の言う通りかもしれない。そもそも、村には贄になるような若い女はアカリの他にはいない。アカリの友人を贄にする以外、選択肢はない……」

 

 考えを纏めるように、村長は呟く。

 

「早ければ今晩にもあのドームハウスを襲い、女に【首輪】を嵌めます。アカリが置いていった【首輪】を」

 

 牧田が冷たく宣言する。その声には、もはや情けも迷いもなかった。

 

「男はどうする?」

「生かしておく理由はありません」

「得体の知れない相手だ。くれぐれも抜かるなよ?」

 

 村長が念を押すと、四人の役員は深く深く頷いた。

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