アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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プロローグ(本編)
信じるからこそ疑うのも大事


 

 

「雑魚だったろ、相手」

 

 

 事実ではあるがジャックの防衛戦を見もせずにそんなことを言い出した遊星。

 話題はジャックが盗んだD-ホイールとなり、本当なら今頃ジャックじゃなくて遊星がキングになっていたかもと発言したタカにナーヴのゲンコツが落ちる。

 

「空気読めって言ってんだろ!そりゃそうかもしれないが本人の姉がいる前で言う事じゃねえだろ!」

「ん?いや、私もキレてる側だからその辺もっと言ってやってって思ってるよ?」

 

 タバコを大きく吸い勢いよく上へ煙を吐きながら

 

「コイツでお尻にあつ~いキッスをさせてから言い訳を聞こっかな〜」

 

 なんて冗談を半分になったタバコを揺らしながらケラケラ笑っていると

 

「ジャックのデュエル見て可愛いとか言ってたくせに……」

 

 ……って小声で引かれちゃったよ。悲しいね。

 

「まあね〜。弟ってのもあるけどさ、面倒見がいのある子がなんやかんや一番可愛く見えるのって本当不思議だよね〜」

 

 この私、セイラ・アトラスの年齢は24。

 5歳も離れた弟で守らなきゃという使命感から解放され立派?に自立してくれたのは良い事だけれどヤンチャが過ぎるしケジメ案件でしょ?

 ジャック側の言い分はまだわかんないけどさ。

 

 そもそも皆して私の事ハブいて秘密にしてるから私はこんなに判断に悩んでんじゃんかよ!?

 まあ、言わないけどさ。そこはやっぱり歳の差と異性ってところが大きいんだろうからさぁ〜。

 

「でもそれはそれ、コレはコレだよ。

 可愛いからこそ仕付けはしっかりしないとねぇ?」

「ケツといやクロウの奴、15の時セイラの姐さんにお尻ペンペンされてたっけ……ジャック、今19だよな?マジでするの?」

「あのね、私が何に1番キレてるかって、私が書類仕事で苦しんでいるの知っててその隙に全部終わらせて蒸発した計画性にキレてんだから。尻拭いしてる間に元凶が逃亡ってそりゃマジもマジになるでしょうよ?」

「ラリーと身長変わんないのに姐さんはおっかねえ」

「チビで悪かったな」

 

 ムスッとした顔でそっぽ向いてやると空気が和らぐ。

 

 ……ったく、姉弟の話は良いけど親の顔をハッキリ覚えている側からしてみれば『私の背と髪質は母親譲りなんだよ』なんて言いにくいったらありゃしない。地雷を踏まないように気をつけてるコッチの身にもなれっての。

 

 ちなみに目は父親似でジャックと同じくキリッと鋭いせいか初見の子供には怖がられがちだ。

 

「……っと、噂をすればってやつだね。ラリーお帰り」

「うげっ、セイラ姉さん」

「なあに?また盗みでもした?」

 

 お尻ペンペンしてやるからはよ来いと座ったまま膝をポンポン叩けば「そんなことより!」とD-ホイールのパーツを取り出し遊星君に渡そうとする。

 

「おっと、コレは本当に必要な感じかな?」

「ひっ!ちが、違うから!本当なんだって!」

「いや、いい」

「……そう?」

 

 クールに短くそう言った遊星は仲間の言葉を信じてパーツを付け替える作業へ入り、その背中を見ながら上げた腰を椅子に戻すことにした。

 

 その背中を眺めながら遊星ならそうするよねって思う気持ちと、仲間だからこそ嘘付いていると信じるのも大切じゃない?と思う気持ちで一瞬だけモヤッとする。

 

 そんなモヤッとした気持ちをD-ホイールの音が吹き飛ばす。

 

「ヒュ~♪……さて、お姉ちゃんは帰って暖かいお布団で寝るとするよ」

「え?これからだってのに!?」

「あのね、トークと容姿を売りにしてる店なんだからさ、用心棒だからって手を抜けるわけないでしょ?

 色々大変なんだよ?見ての通り目付き鋭いから少しでも柔らかくなるよう化粧するのが大変でね〜。具体的に言うと〜……」

 

 なんてぼやきながら支度をし階段の方へと足を進めると遊星達が照明に照らされてラリーに窃盗の容疑があるとかなんとかセキュリティのヘリから……

 

 ほ〜ら言わんこっちゃない。

 さ〜て。お姉ちゃんはここからどうやって帰ろうっかな。

 

 そう考えながら目の前の階段を眺めタバコふかしてると遊星がジャミングからの囮役をスムーズに行ってしまい距離もあったせいで止められなかった。

 

「俺たちも行こう!」

「セイラの姐さんは!?」

「ん?私?ん〜………いや、帰るわ」

「何で!?」

「遊星だからかな。遊星強いもん。

 ジャックくらい弱いなら話が変わったけどさ〜」

 

 それにお店の娘がお客さんから聞いたらしいのだけど、最近シティの方じゃD-ホイールの犯罪が横行しているらしいんだよね。

 セキュリティに軽い雑談できる程度のそこそこ仲良い顔見知りが居るから裏取りは今度するけど、そんな状況で天下のセキュリティ様がたった1人のサテライトの屑を相手に1ダースも人員用意しないでしょ?

 

 そんな訳で皆を見送りお店の布団でぐっすりと寝た。

 

 だけど私の見通しは甘かったと後日知ることになった。

 どうして人材不足の中でそんな無茶苦茶というか馬鹿としか言えない人員の割き方をするの?デュエリストだから?

 一応デュエリストだけどリアルファイト率の高いお姉ちゃんにそのこだわりはよくわからないなぁ……

 

 ちなみにジャックを弱いと発言したけど、実際のところ弱くは無いんだけど体の頑丈さに甘え過ぎてるから集団戦には向いてなく、室内の狭い通路で数人纏めてとかならともかく逃走しながら応戦、あるいは広い空間で電撃棒を武装したセキュリティ相手にするってなると極端に弱くなっちゃうんだよねぇ〜。

 

 もし追われているのが遊星じゃなくてクロウだったなら罪状次第じゃ他の組に頭を下げ、使える手段全部使って助けに行ってた。あの子逃げ足早くて捕まえるの難しいけど一度捕まったら本当に弱いから……

 沢山マーカー付いてるのにこれ以上逮捕されると本当に終身刑とか死刑にされても全然不思議じゃないから絶対に助けに行ってたよ。

 

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