アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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適切な服装

 

 唐突に始まった魔女ちゃん暗殺クエストに失敗し、続けて始まったドロップアイテム無し追い剥ぎ縛りのザコキャラ集団討伐クエストとかいうリアルって本当にクソゲーだと実感できる祭りを突破して本来の目的である護衛クエストを完了する目前まで来た。

 

 サテライトの屑の癖になんでゲームに詳しいんだって?

 サテライトにだって……いやむしろサテライトだからこそTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)の需要があるんだって。

 読み書きに暗算の練習、作戦計画の立案の重要性を理解させ、戦闘時の柔軟な発想力の強化にまで役立つ。

 金銭面に余裕が出てからは紙・ペン・サイコロなんかを使えるようになったけど、昔は枝で地面に書いて鉛筆サイコロ1つを皆で回してセッションしたものだよ。

 

「送ってくれてありがとう!」

「今日は本当にありがと!」

「2人とも今日は本当にお疲れ様。もう暗いから真っ直ぐ帰るんだよ。わかった?」

「「はーい!」」

 

 天兵君と龍亜君の2人は予想通りトップスの子だったので車で送り、少し離れたところから歩いてトップスとの境界線となる入り口まで歩いて送り届けた。

 こうでもしないとガードマン?それともセキュリティの人かな?とにかく境界線で常に監視をしている人に通報されかねないし現在進行系で視線が痛いです。貼り付けた笑顔の無表情でジッとこっち見てるのちょっと怖い。

 

 いやはや、念の為送り届ける前にシャワーを浴び髪型を整えドレスに着替えるっていう私自身ちょっと過剰かな?と思うくらい徹底した身支度をしておいたおかげでこの程度で済んでいるけど、してなかったら通報はされなくても肩ポンからの事情聴取へゴー!なんて可能性も十分あったんじゃないかな〜。

 これからもっと暗くなる時間ですものね~。そりゃ視線が厳しくもなりますよ。

 

 ちなみに遊星はいつも通りの格好。

 男の子のファッションは動きやすいの多いしだいたい何処でも問題無いのズルイよね。

 

「「さようならー!」」

「さよ~なら~」

 

 送り届けた2人が境界線を越えたところで振り返り手を振ってくるので振り返す。

 

「さよーならー!!!」

「ふふ……本当、あの子達が無事で良かった」

「そうだな」

 

 天兵君が曲がり角に入っていき、龍亜君も曲がったかと思ったらコッチを向いて両手を大きく振ってくるのでこちらも大きめに振り返す。

 なお遊星は一度も手を振ってない。

 ここに居たならクロウは当然、ジャックだって……手を振ることは無くても何かしらのアクションで返していただろうに、この照れ屋さんめ。

 

「……さて、帰ろっか。遊星」

「あぁ」

 

 そうして2人で来た道を戻っていく。他の3人には悪いけど不審者度合いマシマシになっちゃうからお留守番だよ。

 

「…………」

「ゆうふぇい?ちょっ!………なあに?遊星もタバコ吸ってみたかったの?」

「違う」

 

 タバコを咥え、いつぞや舐めた事してきた奴等の事務所から火事場泥棒したお高いイカしたライターを取り出したのはいいものの、燃料が少ないのかフリントホイールを何度か回しても着火できないでいた。

 ようやく火が付いてタバコに火を付けようとした時、横から手が伸びて咥えていたタバコを取り上げられてしまった。

 吸いたかったのかと火を差し出したけどいらないってさ。残念。

 

「その手、折れてるだろ」

「ん?折れるまではいってないと思うけど……まあヒビは入ってるだろうね」

「ならタバコを吸うな。

 以前マーサが体調悪い時に吸うものじゃないと言っていただろ?」

「ほぇ〜、興味無い事だろうに良く覚えてたね。珍しい。でも体に悪い物程美味しいからさ~」

「体に悪いならやめてくれ。それに、タバコの臭いは苦手だ」

「えぇ?お姉ちゃんそれ初耳なんだけど?……そっか〜。じゃあ控えるよ」

「控える……辞めないのか?」

「見た目で舐めてくる新参の馬鹿共に舐められない工夫をした結果コレが効果的だったからね〜。

 お姉ちゃん好き好んで人を殴る趣味無いし。ずっとシティで生活するなら禁煙できるんだけどな〜」

「……なるほど。それは確かに必須アイテムだ」

「でっしょ〜?」

 

 サテライトに落ちてきた連中は何でもかんでもパッと見の印象で全部決め付けるから、つなぎ服のチビ女ってだけだとカツアゲに来るんだよね。当然返り討ちだけど。

 コレが不思議な事にタバコ咥えて堂々としてると絡んでくる奴等がガクッと減るんだよね。本当に不思議だよ。

 

「代わりにこれで我慢してくれ」

「おぉ〜。棒付きキャンディーじゃん。貰っていいの?ありがとう遊星。いっただきま~す」

「一箱買ったから好きなだけ舐めてくれ」

「お、おぉ〜?もしやこの機会に本気で禁煙させるつもりだった?」

「そのつもりだったが理由が理由だからな。しない方が良い」

 

 走ると私の方が早いのだけど、歩くとめっぽう遅い私の歩幅に合わせて歩いているので時々止まって距離が縮まったら歩くを繰り返す遊星と駄弁りながら駐車場へ向かう。

 

 そんな最中、背後から慌しい足音が聞こえてそちらに振り返る。

 

「ん?この足音……」

「ガードマンが追って来たか?」

「この感じ、子供の足音?………って、普通に考えて天兵君か龍亜君しかいないか」

 

 のんびり歩いてたけど、ある意味大正解だったみたい。

 ん~……あ、あの電柱柱が丁度よさそう。影に入ってと。

 遊星、「しー」だよ「しー」!

 

「おーい!遊星!あれ?セイラねーちゃ「わっ!」ひょえー!?」

「ぷっ、なにそのポーズ?ふ、ふふふふ」

「か、からかわないでよもーっ!!!」

 

 龍亜君がパタパタと足音立てて遊星へ走り寄って来たので背後へニュッと寄って脅かせば100点満点のリアクションで可愛い。

 

 何故龍亜君が私の本名知っているかという話だけど、龍亜君が遊星の恩人だと発覚したからで、つまり私の恩人でもある訳なのだから理由があるとはいえ恩人に偽名だけしか教えないという不義理はできない。

 

 教えたまでは良かったけれど大声でセイラって呼ぶものだからちょっと後悔している。

 一応人の多い所ではステラって呼ぶように言っているのだけどもう諦めた方が良いと思ってる。

 

「それでどうしたの?って言いたいけど、これからもっと暗くなっていくんだから駄目じゃない」

「あ、ごめんなさい。でもさ、フォーチュンカップで合う約束はしたけど、やっぱり話しとか色々したいし明日って空いてない!?

 俺明日も休みなんだけど1日だけ!たぶん次なんて無いし!ねえねえどうかな遊星?」

「悪いがフォーチュンカップまであまり時間が無い。D-ホイールの性能向上や「ねえねえ、それお姉ちゃんが行くのは駄目かな?」

 

 ドストレートに「無理だ」で終わらせなかったのは偉いよ遊星!

 でもその方向性の言い訳は永遠と話せちゃうし、何よりも龍亜君が「えっ」て硬直した顔から徐々にしょんぼりしていってるの気付いてあげて。

 少なくとも遊星が期待しているような興味持って真剣に聞こうとする表情に変化していくとか無いから。

 

「遊星は忙しいのに?」

「そっ。こんな手だしね。

 一応私も機械いじりができてサポートもできるんだけど遊星の側に居ると安静にしてろって部屋に押し込まれちゃいそうで暇になるし丁度良いなって」

「え!?セイラねーちゃん女の子なのに遊星みたいにできるの!?」

「別に押し込んだりはしないぞ」

「しないけど無言の圧力かけてくるじゃん。今さっきも私のためにタバコ没収したくせに」

 

 私の服に胸ポケットは無いけど、遊星が没収ししまった服の内側のポケットと同じ位置を叩きながらそう言うと眉間にしわを寄せたので無事な左手でピースし笑顔で返してやった。

 

「それで遊星みたいには無理かな。遊星はシステム構築とかまでやるし。

 私ができるのは軽トラの修理とかのエンジニア技術の中じゃ比較的簡単な部類になるかな。

 ただ全くの素人じゃないから多少のサポートができる程度って話しで元から居ても居なくてもあんまり関係無いよね?」

「………そんなことは無い」

「ん~、気遣ってくれてるのは分かるけどそこはノータイムで答えてくれるとお姉ちゃん嬉しかったかなぁ~。

 ……と言うわけでお姉ちゃんは暇だけど、遊星じゃなくてごめんね」

「ううん!最初から2人誘うつもりだったし天兵にもいきなりだから無理だろって言われたばっかりだからむしろラッキー!

 んじゃあ明日俺ん家で自慢のグッズとか見せたいからそこの門のとこで待ち合わせでどう!?」

「えっ?」

 

 こうして私だけトップス行きが決まってしまった。

 

 帰宅後、上流階級の礼儀作法をうろ覚え(幼稚園くらいの頃の知識)を必死に掘り起こしながらネットで確認し遊星も巻き込んで綺麗にできるかどうかとか練習した。

 

 どう巻き込んだかといえば「フォーチュンカップでキングに勝ったらハイさようならで済むと本気で思っているの?」と突いてから「こういうのは完璧に出来なくていいの。全く知らないから馬鹿にされるのであって知ってはいるって思わせればそれで良いのよ」という感じの内容を数本お見舞いして渋々従わせた。

 

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