アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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きょうだい

 

 龍亜君のお家にご招待されてしまったのでそれは午後からと約束した。

 

 まさかご自宅にご招待されるなんて。やる事が多い……

 帰宅後、ご飯をご馳走になるつもりは無いけど万が一、億が一流されて共に食べる事になった時のためにテーブルマナーをネットで調べ遊星を巻き込んで練習をしてみたのだけど、コレがやってみたら意外と覚えているモノで忙しい中でも最低限の格好を教育してくれた両親に心から感謝したよ。

 

 とはいえ一桁の頃以来だし、小指付近の骨にヒビが入っている影響もあってぎこちない。

 それでも遊星と比べたらスムーズにできていたが、スムーズ過ぎた事で違和感を持たれてしまった。

 

「時々思うが、どこでこういうの身に付けたんだ?」

「バイト先の店長から習ったんだよ。西側組織のトップ、ほらあの遊星が一番嫌いな成金なデブ。

 トップ勢の中でアイツが一番店に来るんだけど、笑顔の裏でナイフとフォークの使い方すら知らないサルめとか思われたらムカつかない?(まあ嘘だけど)」

「それは殴っても許されるな」

「殴ったら戦争だよ。それにさ、コレに関しては出来ない方が悪いんだから殴ったら本気で格好悪いよ?」

「……………………………………………………確かに」

「ヤケに間があったね〜」

「だが……それでもヤツなら殴っても…………」

「どんだけ嫌いなのさ。んで、悔しいから最低限できるように学んだ訳。

 まあ披露できる場所も機会もまぁ〜るで無い訳じゃん?知らないのも当然だよねぇ〜」

 

 両親関連の話しは親の顔すら知らない子の前でするのはその子が大人になって受け止めきれるようになるまでしないと決めてるから、我ながら綺麗に受け流せたと思うよ。

 

 でもお姉ちゃんさ、今のサイゼ〇ヤで話す内容じゃなかったと思うんだ。

 

 いや〜、趣味の1つであった雑誌収集がこんなにも役立つとはお姉ちゃん思いもしなかったよ〜。

 サイゼ〇ヤの外装を見て萎縮する遊星、サイゼ〇ヤのメニューに書かれた値段設定の安さに思考停止する遊星は見てて面白かった。

 空腹がどうにかできればわりとどうでも良い……とまでは言わないだろうけど、そんな食に強い関心を持たない遊星が「美味い」と口に出したし、練習で食べた分じゃ足りなかったからとパスタを追加注文する姿は物凄くレアな光景だったよ。

 お姉ちゃんもティラミスっていう少し大人でオシャレなのを追加注文してみたよ。

 思ったよりもコーヒー要素が無くて甘かった。

 

 その後持って行くお土産を色々考えたけど、龍亜はトップスでも一番良い所に住んでいるとか遊星が後出ししてきて本気で困ったから明日の自分に丸投げする事にした。

 

 時間に攻められながら悩んだ末に氷要素強めのアイスバーを一箱を買うことにして沢山の保冷剤と一緒に保冷バックに突っ込んだ。

 コレならいくら舌の肥えてる子が相手でも不味いなんて言われる心配無いでしょ流石にさ。

 いや何だろうが言われはしないだろうけどガッカリされたくないじゃん!

 

「遊星遊星!どうかな?似合ってる?」

「それは確か、ジャックにジャーマンスープレックスを決めた時の…………待て、話せばわかる」

 

 最近はラリーがいたからお兄ちゃん風吹かしてた遊星が弟っぽさを久しぶりに出してきて楽しかったけど、オシャレしたのにジャーマンスープレックスの服って感想はその通りだけど酷くない?

 それにしてもお姉ちゃんに対して報告も連絡も相談もしてくれないことが多いくせに話せばわかるって命乞いがメチャクチャポイント高いよね。

 

 そんな時を過ごし本番、シティどころかトップスって普通に緊張してきたよ……

 

「セイラねーちゃん!」

「ヤッホー。……約束よりだいぶ早く来たけど待たせちゃった?」

「ううん!今来たところ!」

「お?そういう返しできたんだ。格好良いね」

「え?」

「あ、素だったんだ」

「???ねえそれよりさ、その中にジャックがいるの?」

「いるよ〜」

「それ俺が持っても良い?」

「持ってくれるの?ありがと〜。ただおデブ猫だから気をつけるんだよ〜」

「おぉ?思ったより重い」

「キツくなったら変わるからすぐに言ってね」

「わかった!よーし!それじゃ行こう!こっちだよ!」

 

 そうして入ったトップスの敷地内だけど、スゴイ。本当に凄い。

 なんかこう……凄いよぉ……………

 

「ほぇ〜……こう、なんだろう?なんていうか………ばえる?って感じのやつ?

 何処を見ても雑誌に載ってそうな景色」

「そうなの?俺が見る雑誌には載ってないからわかんねーや」

「雑誌読むんだ。ちょっと意外。………カード雑誌とかD−ホイール特集とか?」

「なんでわかったの!?」

「これがステラ流忍術でござる。……って言いたいところだけど遊星が好きなの言ってみただけ」

「遊星もそうなんだ!」

「まあ遊星は完成品よりもパーツとかカタログスペックの数値を見るのが好きなんだけど」

「え〜……それはちょっとわかんないや」

 

 まあこの辺にロマン感じるにはエンジニアの知識が無いと難しいとも思うから仕方ないね。

 もう少し景色を楽しみたいところだけれど龍亜君にとっては見慣れ過ぎた光景で退屈させるのは可哀想だし素直に付いていく。

 

「ほらこっちこっち!早く上がって!」

「お、お邪魔しま~す……」

 

 少し前まではまだ私のイメージが現実に現れたという印象だった。

 しかしエレベーターを出てからの光景は現実がイメージを超えてしまいちょっと怖くなってしまっていた。

 

 挙動不審になって歩くのが遅くなったのを見かねて龍亜君が私を引っ張り連れてってくれた。

 龍亜君がジャックを妹に見せたいと言ったから連れてきたけど本当に良かったのかしら???

 親御さんは全然帰ってこないって話しを聞かされた時は内心で怒りが湧いたけど、この生活を維持するためにどれだけ何を犠牲にしなければいけないの?

 こ、怖いよ〜。……ねえお姉ちゃん本当に大丈夫かな!?

 セキュリティに捕まらないよね!?

 

「龍可!ほら!遊星のお姉ちゃんが来てくれた!」

 

 わぁ……わぁあぁ…………え?

 コレ、リビング?リビングだよね?リビングって呼んでいいのコレ?

 いくらなんでも広すぎる。

 ポツンと置かれてるソファーにテーブルも普通に大きいはずなのにちっちゃく見える。

 

 そんなソファーから立ち上がり、龍亜君と同じ髪の色をした女の子が近付いてくる。

 しかしすぐ足を止め私の頭上から足下をじっくりと眺めてくる。

 

 うん、わかるよ。ちっちゃいよね。ラリーと身長変わんないもん。

 ゴメン嘘。最近ラリーにすらちょい抜かれた気がするけど気づいてないフリしてるし皆して気遣って身長の話題は出さないでくれてる。優しいね。なぜだか泣きたくなるけど。

 

「遊星のお姉さんって話だけど、思ったよりも……」

「ちっちゃいでしょ?同じ孤児院で育ってね、血縁の弟と遊星はほぼ同年代の親友で、私は遊星が赤ん坊同然の頃から面倒見ていたから弟って一括りにしてるだけだからさ。血が繋がってないし似てないのは当然だよね」

「そうだったんだ」

「自己紹介が遅れました。初めまして、私の名はセイラ・アトラスです。よろしくお願い申し上げますわ」

 

 昨日の夜練習したカテーシーを披露する。

 コレも一桁歳の頃に習っていたから存在は知っていて名前は完全に忘れていた状態だった。

 ただ動作は覚えてたから『スカート摘んで足下げて挨拶するやつ』と検索し動画見つけて少し練習した。

 

「初めまして、龍亜の双子の妹の龍可です。………ん?」

「セイラねーちゃんアトラスって苗字なの?キングと一緒じゃん!」

「ん~……まあ姉弟だからね」

「え?………うそ?エーッ!!!セイラねーちゃんがジャック・アトラスの!キングのお姉ちゃん!?嘘でしょ!?

「弟の恩人に嘘は付かないわよ。それに言いふらしても誰も信じないだろうから教えても良いかなって……」

 

 服の中、首元から下げていた父、私、ジャックの瞳と同じ色、アメジストの宝石が埋め込まれたロケット型ペンダントを外して開く。

 

「ほら、この人が私達のお父さん。あの子、本当に父親そっくりに成長したわよね」

 

 赤ん坊のジャックを抱える赤いドレスを着た幼い頃の私。

 私の肩に手を添えている限りなく黒に近い青のドレスの女性で私のお母さん。

 その隣にいるシルバーのタキシード姿の今のジャックを渋くした感じの男性で私のお父さん。

 

 なんのパーティだったかはもう忘れてしまったけれど、家族4人で撮った記念写真だ。

 

「うわ!超そっくりじゃん!?」

「本当……私達が言うのもどうかもだけど、瓜二つって感じ」

「何で教えてくれなかったのさ!?」

「あの場所じゃね。だってこうなるってわかってたし……」

「確かに」

「うぐっ!ちょ、俺ちょっと雑誌持ってくる!キングが表紙の!」

 

 そう言うと走ってたぶん自室へと向かっていった。

 ……部屋の中で走らないのって普段なら言うところだけどこの部屋って私の常識を当てはめて良いのか悩むしなんならこの部屋、マットを閉まってあるだけで運動するためにあるスポーツジムですって言われても何ら違和感を持てないと思う。

 雑誌でしかスポーツジムを見たこと無いからスポーツジムも走っちゃ駄目って言われてもそういうものなのかと思うしか出来ない常識の無さだもん。お姉ちゃん何も言えないよぉ~。

 

「あっ、もう!自分で連れてきたお客さん置いてくって何考えてるの!

 ………えっと、とりあえず座って話そ?」

「はい、失礼致します」

「え〜っと……さっきから思ってたけど歳上なのに何で敬語なの?」

「え、えへへ〜。その、私の身内、下の子は弟ばっかりで女の子、それもシティの女の子ってなると接し方がちょっとわからないからお姉ちゃん手探りになっちゃって困っちゃってるんだよね〜。

 気に触っちゃった?ごめんね?」

「ううん。全然」

「良かった。龍亜君ほど元気爆発って感じじゃなかったけど、ジャックもクロウも遊星もあんな感じの時期あった〜………遊星はそうでも無かったかも?」

「そうなんだ。……龍亜が2人になって振り回されるって想像するだけで頭痛くなってきそう」

「遊星は口に出さないだけで下手すると3人の中で一番ヤバイまであったかなぁ〜。

 具体的に言うと、遊星はやるより見る方が好きだから焚き付けて自分は逃げられる足残して突撃させたりとか……」

「えぇ……」

「ただ、それをするのは身内、主に私に何かする時だけで外で何かしなくちゃいけない時は絶対に裏切らない子。遊星は昔から情に熱い子だったよ」

「そうなんだ………」

 

 あれ?なんかションボリとした感じになった?

 

 ………あぁ、もしかしてマーカーのせいで警戒してたけど龍亜君が無理矢理押し通したのが原因で酷いこと言ったとかそんな事があった感じかな?それで気にしてるとかかな?

 

「まあマーカー持ちだしシティの子が怖がるのは当然だよね」

「あ、えっと……」

「大丈夫だよ。むしろ遊星は怖がらせてしまった事を気にするタイプだから、そんな感じでいると顔には出ないだろうけど内心ショック受けてイジケちゃうよ?」

「そうなの?」

「遊星がイジケると1人の世界に入って機嫌が治るまで永遠と機械いじりするようになっちゃうのよねぇ〜」

「……それはなんとなく想像できるかも?」

 

 最初は不安だったものの楽しく会話ができたしこの後龍可ちゃんからちゃん付けで呼んで良い許可を貰えた。

 

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