私がこのキャバクラっぽい店で高待遇を受けている理由は色々ある。
その中でも一番の理由はチームサティスファクションの名が売れに売れたこと。
その身内でデュエルもリアルファイトも強く裁縫に雑務に書類等まで粗方こなせる能力を持った女性となればこうもなる。
キャバクラっぽいというのは一度捨てられていた雑誌で見たキャバクラがあまりにも煌びやかで、比較しちゃうとこの店はあまりにも薄暗くて寂しく感じちゃうんだよね。
どちらかと言えばバーとかそっちの方にすればもっと良い感じの雰囲気にできたろうに……
でも残念ながらサテライトにお金持ちはほんの一握りで全員男性。ただのバーじゃそんなお金持ち様は来ないから女の魅力を売る形にしなきゃ経営が成り立たないのは悲しいね。
この店の魅力はシティのキャバクラと比べて圧倒的に安いところ。
サテライトのお金持ちに届かず
それでいてシティでも普通
もしくは少し低いくらい
そんな低賃金でサテライトの視察などで訪れた人がよく利用するのがこのキャバクラモドキ。
向こうでは手が届かなくてもコッチは比較的安価で何度でも来れて味を占めさせシティの人達のモチベーション向上として貢献している。
この店がなければこんな屑溜めみたいなとこ誰が来るかって考えの人も多いんじゃないかな?
「なあ、お姉さんはお話ししてくれない感じ?」
そんな店でのバイト中の私は常にドレス姿。
チビであるのは事実なのだがスタイルはかなり良い。
というより、これは自慢だけど胸と身長を除いたスタイルを見るとこの店1番だろうね。
ただしアスリート的な美しさって注意書きが入るけど。
店の娘達は筋肉が足りない。
胸こそ控えめだが引き締まった肉体はドレスの形状もあってスリムな印象を強く与えてくれて、黒を主体としたノースリーブのワンピースのようなドレスで短めなスカートにはスリッドが入っている。
その上に白っぽい薄手のカーディガンを羽織っている感じだよ。
腕に付けたデュエルディスクと腰に下げた警棒が無かったら完全に店の娘だと勘違いされちゃうだろうね〜。
だから今回みたいに初見のお客様が店に来てすぐ目にするだろう位置、入り口と店内の空気を察せられる位置で監視している私に声をかける事は希に良くある事なんだよね。
むしろ即指名じゃなくて警棒とかから察したうえで確認してみる分話の通じる相手なのがわかる。
「(マーカー付きなおマヌケさんじゃん……)……ん?私?」
「お姉さん意外いないでしょ、格好いい感じのクールで素敵なお姉さん」
言葉にしてないけど絶対(背は小さいけど……)とか思ってるなコイツ。
といより過去に私に声かけてきた奴全員口を揃えて身長さえあればって思ってる。なんなら口にしてくる。
例え口にする奴でも話しが通じるからフィジカルデュエルで語らずに済んで楽だなんだけどさ、ちょ~っとイラッとしちゃうよね〜。
なんて私情は頭の奥に押し込んで、無駄なやり取りをして時間を作る。
その隙に会計の方、続けて店内をチラッと見渡しどんな娘が居たか再確認する。
やはりというか、ギリギリ任せられなくないけど不安が残る娘しかいないね。時間帯もあって客も少ないし仕方がない。やるか。
「わるいけど店の娘達みたいなトークは期待しないでよ?出来る事と言えばデュエルかそれに関する話題で良いのなら」
「よっしゃ!全然良いって!」
「……あと飲み物とか奢ってくれるなら」
「もちろん!……あ、あんまり高い物は無理だからな」
「お兄さんが頼むのと同じので良いよ。……ステラ、よろしく」
セイラ→セイ→星→ステラって感じで作った仕事用の偽名を名乗り右手を差し出す。
無いとは思うけれどセイラって名からアトラスまで知られるとジャックに迷惑かかるのは不本意だからね。
何度でも言うがそれはそれとしていつか絶対しばき倒す。
「俺は瓜生。よろしくなステラちゃん!」
一度お互いに固い握手をし店内に足を進める。
……やってから思ったけど店の娘は初手握手なんて絶対にしないよね〜。ミスっちゃったな〜。
けどお相手も慣れてないんだろうね。気にした様子が無いどころか手を握れた事に喜んでいる節がある。
我ながら固くてゴツゴツした手だろうに、チョロいし可愛いね。
「とりあえず1杯注文して……そこのテーブルでデュエルしよっか。話すにしてもお互いを知らないとね」
案内したのは他の客から離れている席。
ある程度の広さがあるので机を蹴り上げやすくて不意打ちから取り押さえまでしやすいとっても素敵な席だよ〜。
「おう!俺のパワーインセクトデッキの力を見せてやるぜ!」
「(どんなデッキか言っちゃうんだ)コッチは小手先による戦術って感じかな〜」
お互いデュエルディスクを外し机の下の籠にしまう。
デュエル後に届けに来るよう注文をしてからデッキをシャッフルする。
「「デュエル!」」
セイラLP4000
瓜生LP4000
「んじゃあ先攻はステラちゃんからで」
「それじゃ遠慮無く。ドロー。《悪シノビ》を攻撃表示で召喚し、カードを3枚伏せてターンエンド」
「えっ?えっと、セイラちゃんそのモンスター攻撃力が400で守備力が800だから守備力の方が高いよ?攻撃表示で良いの?」
「大丈夫。罠カードがあるから」
「そ、そっか~。じゃあ大丈夫か!」
せっかく指名してくれたしピースでサービスしちゃう。
プロである店の娘達と比べたら素人丸出しな下手くそスマイルしかできないけど効果あるみたいだね。
それに、このプレイングで何か勘違いしたのか私に良いところ見せられそうだと気持ち良くなってるからこれで正解だね〜。
油断してるうちにサッと勝っちゃおう。
「俺のターン!ドロー!《電動刃虫》を攻撃表示で召喚!」
「え?レベル4なのに攻撃力2400!?」
「凄いだろ!んじゃ行くぜ、《悪シノビ》に攻撃!」
「《悪シノビ》が攻撃対象になったから効果を発動させてもらうよ。このカードが攻撃対象になったらカードを1枚ドローする事ができる」
「げっ!そんな効果あるのか!《電動刃虫》が戦闘したダメージステップ終了時1枚ドローさせる効果があるから2枚かよ!」
「ん?そんな効果あったんだ。教えてくれてありがとう瓜生さん。
けどその前に、罠カード《トゥルース・リインフォース》を発動。
デッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する。このカードを発動するターン自分はバトルフェイズを行えないって効果もあるけど瓜生さんのターンだしそっちは関係無いよね。
それじゃ私は《悪シノビ》を攻撃表示で特殊召喚」
攻撃力2400には驚いたけど相手が嘗めてくれているところに足を絡めて転ばせるのは気分が良いね!
ニコニコしながらカードをドローしデッキから《悪シノビ》を特殊召喚した。
「どうする?モンスターが特殊召喚された事によりもう一度攻撃対象を選ぶ必要が出たからまた《悪シノビ》の効果が発動するよ?」
「うっ……3枚ドロー………」
……さて、どうしよっか。伏せカードには重力解除があってこれで最初は《悪シノビ》を守るか伏せ除去の時に守備表示にするプランだったんだけどライフを2000払ってドロー枚数が増えるのはシンプルに魅力的だ。
「(そもそも攻撃してくれるかって話しか)……攻撃しない?」
「いいやする!《電動刃虫》で《悪シノビ》を攻撃!」
「(………受けちゃお)破壊はされるけど《悪シノビ》の効果で1枚、《電動刃虫》の効果でもう1枚ドローさせてもらうね」
セイラLP4000→LP2000
「ターンエンド!」
「私のターン、ドロー。魔法カード《無の煉獄》を発動。
カードを1枚ドローする事ができるのだけれどエンドフェイズに手札を全て捨てないといけなくなるデメリットがあるよ」
「は?手札をそんなに補充したのにそんなカードを?」
「まあそんなデメリットいらないからあげるね。
罠カード《精霊の鏡》を発動。この効果で《無の煉獄》の効果を相手に移すよ。さ、1枚ドローしてどうぞ」
「……は?え?ちょっと待て、もしかしてそっちのエンドフェイズで」
「全て墓地送りです♪」
小さかったクロウをガチ泣きさせた禁断のコンボだ。とくと味わうが良い。
「ドロー」
「私は《ヒーロー・キッズ》を攻撃表示で召喚し魔法カード《強制転移》を発動。お互いのプレイヤーは自分フィールドのモンスターを1体選択しそのモンスターのコントロールを入れ替える。私が選ぶのは《ヒーローキッズ》だよ」
「俺は《電動刃虫》しか居ない」
「はい、どうぞ」
交換こが済んだは良いけれど決め切れないなぁ〜……
まあいつもの事と諦めて攻めよう。
「バトル。《悪シノビ》で《ヒーロー・キッズ》に攻撃、そのまま《電動刃虫》でダイレクトアタック」
瓜生LP4000→3900→1500
「《電動刃虫》の効果で1枚ドローしてどうぞ」
「ド、ドロー」
「カードを2枚伏せてターンエンド」
「手札を全て捨てる……俺のターン、ドロー!………ぐ、《電動刃虫》を攻撃表示で召喚!《悪シノビ》に攻撃だ!」
「《悪シノビ》の効果。そして罠カード《闇霊術-欲》悪シノビをリリースしてその効果で2枚カードをドローするのだけど、相手は手札から魔法カードを捨てる事でこの効果を無効化することができるよ。
ま、それは今は関係無い話だったね。《悪シノビ》の効果に加えて3枚ドローさせてもらうよ」
「攻撃は、しない。ターンエンド」
「そっちのターンエンド時、永続罠《エンジェル・リフト》。墓地より《ヒーロー・キッズ》を守備表示で特殊召喚。特殊召喚に成功した《ヒーロー・キッズ》の効果を発動してデッキから《ヒーロー・キッズ》1体特殊召喚するね。
私のターン、ドロー。《ヒーロー・キッズ》を攻撃表示で召喚し魔法カード《痛み分け》を発動。この効果でお互いのプレイヤーは自分フィールドのモンスターを1体リリースしなくてはならない。私は当然《ヒーロー・キッズ》をリリースさせてもらうね」
「俺は《電動刃虫》をリリース」
「《電動刃虫》で瓜生さんにダイレクトアタック」
瓜生LP1500→0
「……雑魚モンスターばっかなのに、嘘だろ?」
呆然と盤面眺めてる。客相手にやり過ぎたかな?
だけど子供が相手ならともかく私より身長ある人に加減するとかできないし、したとしても遊星とかが相手なら手を抜いた事にキレてしばらく無視されそうだし……もしかして詰んでた?
念の為に机を蹴り上げる準備をしておこう。
「スゲェ……ステラちゃんメチャクチャ強いな!もっと強いカード持ってたらどうなんだよ!マジスゲェ!」
「……ありがとう」
ふぅ……どうやら杞憂だったようだね。
準備していた足を楽にしながら笑顔でお礼を言う。安堵からか私にしては珍しく自然な笑みを他人に出せていたと思う。身内や子供が相手ならけっこう出来るのだけれど他人は難しいよ。
雑誌に映る堂々としながらも柔らかな笑みを出せているジャックの姿は尊敬に値するよ本当に。可愛いしカッコイイとか無敵じゃんか。まあ会うことあったら引っ叩くんだけどさ。
「……けど、強いって攻撃力とかレベルの話だよね?そういう1枚でポテンシャルの高さを発揮するカードは全部弟達に譲っちゃってたからあんまり無くてね」
「へぇ、弟がいるんだ」
「歳がけっこう離れててね、面倒見がいのある凄く可愛い子達なんだ」
「ステラちゃんに……羨ましい」
「ん~?あんがと~。……ちなみにだけど、ほら。最初からずっと伏せていたのは《重力解除》だよ」
「あれ?それなら《悪シノビ》を守れた……そっか、《電動刃虫》の攻撃だったからドローを優先したのか」
「最後の方は《痛み分け》以外にも手札に《自立行動ユニット》が……っと、瓜生さん。ここは呑むための店だよ。だから続きは呑みながらにしよう」
デュエルが終わったのを見計らって持ってきてくれたドリンクを受け取り乾杯をする。
呑みながら肩を並べ瓜生さんが持参してきた予備カードでパワーインセクトデッキを強化するために語り合ったりした。
こうして私は瓜生さんから「俺は使わないから」とお礼に《月の書》を貰ってデッキを超強化する事ができた。瓜生さんめっちゃ良い人じゃんチョロいとか思ってゴメンね。
今日はバイトの用心棒はお休み。
趣味の雑誌とカード収集の為にいつものつなぎ服に安全靴でゴミ山パトロールをしていると3人グループを発見する。
その中に見覚えのある顔があったのでリストを確認すると案の定指名手配犯だったのでボコってグルグル巻きにした。
地形を生かした奇襲が上手くいったから楽な仕事だったと顔馴染みのセキュリティに世間話しつつ引き渡すというサテライトの日常といった1日になる筈だったんだけど本当に偶然だったんだよね。
いつも通り引き渡す時に小銭を貰うわけなんだけど、その時机に比較的新しい雑誌が置かれている事に気が付いたんだよ。
ゴミ山で見つかる雑誌なんて年単位で遅れてるのが殆どで物凄く欲しかった。
「こ、これ。コレ欲しいな~……」
欲しすぎて瓜生さんの時の経験を生かしたメチャクチャ似合わない猫撫で声をセキュリティのお兄さんに披露しておねだりしてみたら吹き出し笑われた。
「………むぅ」
笑われた。笑われたけどなんだかんだ仲良くなっていたんだろうね。
不思議と嫌悪感はしなかった。
いや、そりゃちょっとはイラッとはしたけどさ。ただ不快なのとは違うんだよね。
「ふ、ふふ……笑って悪かった。良いぞ、持っていけ」
「え?いいの?」
「ああ、いつも指名手配犯捕縛のご協力有り難う御座いますであります!」
まさかセキュリティ式の敬礼をしてくれるとは思ってなくて面食らっちゃって恥ずかしい事だけどお兄さんが敬礼を止めるまでポカンと間抜けな顔で見ていたと思う。
敬礼が終わったところでようやく正気に戻り口を開く事ができた。
「……ありがとう」
敬礼が終わったところでようやく正気に戻り口を開く事ができた。
いつもなら犯罪者捕まえてこの程度の小銭でポイント稼ぎができるとかセキュリティは良いご身分ですねと思うところだったのだけど嬉しさが強くて自然と笑顔を作れたと思う。
「……と、ちょっと待て」
「ん?」
「今後も読み終わったので良いなら物にもよるがやるよ」
「えっ!?いいの!?本当!?」
「あ、あぁ」
「そっか、それは凄く嬉しいな!ありがとうお兄さん!」
鬼柳の事があってセキュリティに対して当たりが強くて口数少ない私がここまで言った事に驚いて固まったお兄さんの手を無理矢理握って握手をする。
「約束だよ!それじゃまったね~!」
「……………………………えっ?そんなに?」
私が全力で感謝を伝えルンルンで軽トラに戻っていくと理解できないといった困惑した声が背後から聞こえてきた。
シティとサテライトの価値観が違うのは当然だし気にしても無駄だしルンルンな最高な気分で走らせる。
だってさ、高い安い以前にそもそも売っている場所が存在しないんだよ?
最新の雑誌がある場所なんて暴力団的組織やセキュリティの人が買ってきた物しかないからツテの無い私じゃ最新雑誌を入手するのが拳銃や電撃棒を入手するのと難易度がそんなに変わらないって頭おかしいんじゃないの?
そこまでして最新雑誌を入手するなら使いもしないで保管されてるレアカードを盗みに入るって。
「メリーさんのひ・つ・じ〜♪メェーメェーついてくる〜♪メリーさんのひ・つ・じ〜♪どこでもついてくる〜♪がっこうについてくる〜?かわいい……あれ?何か歌詞が変?どっか間違えた?
んん……メェーメェーついてくる〜♪メリー………お、いたいた。
お~いみんな~!最新のカードグルメ特集雑誌をゲットォ〜……って…………」
「……ステラちゃん!?」
「ん~?瓜生さん?どうして?あれ?皆知り合いだった感じ?」
「なっ!もしかしてコイツ!ステラちゃんのおとう……」
そこまで言って「いや、流石に無いか、全然似てないし………」と冷静になりつつも混乱している様子だったので不意打ちで遊星の背中を強めに叩いてバランスを崩させ肩を掴み抱き寄せる。
「そう!私の弟だよ!可愛いでしょ!」
「違う!」
と胸を張って自慢したのに強く否定されちゃった。悲しい。
今は痛くないだろうけどいつでもヘッドロックに移行できる体制である事に対する抗議も入ってるんだろうけど傷ついちゃうな~。悲しいね。