アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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歳の離れた従姉妹

 

 崩れていくビルからなんとか脱出できた。

 

「セイラさん!」

「セイラねーちゃん!」

「2人とも……よかった」

 

 2人に説得されて牛尾さんが助けに来てくれたと聞かされたから居ることはわかっていたけれど、口頭での報告と実際に元気な姿を見るのとじゃ安心感がまるで違う。

 怪我した様子も無く私を心配して酔ってくる姿を見て物凄く安堵した。

 

「ふぅ……コラ!危ないでしょ!」

「えっ!?」

「ひっ!だ、だってセイラねーちゃん!……って」

「……けど、ありがとう。おかげで助かった」

 

 大人としてこんな危険な場所に来た事は叱らなくちゃいけない。

 けれどこの子達に命を救われた。

 きっと私には魔女ちゃんを放って逃げるなんてできなかっだろうし。

 

「えへへ、セイラさんが無事で良かった」

「せ、セイラねーちゃん、恥ずかしいよ」

 

 恥ずかしそうにする2人をすぐには離してあげないと強く抱き締めた。

 こんな良い子が戦わなくても良いよう、救われた分だけ命をかけて戦うと背負い直す。

 

 


 

 

 その後が大変だった。

 社会的な動きもダークシグナーとの戦い的な動きも激し過ぎて。

 

 まさか魔女ちゃんのご両親が政治家だったとは驚いたよ。

 

 病院に来た2人を色々あってマーサハウスに連れてきた。

 あとついでにジャック(猫)も預かってもらう為に連れてきた。

 

 そこで遊星がショボくれていて強めに喝を入れる事になるとは思ってなかったよ。

 鬼柳は今のデッキと昔のデッキを合わせて更に強くなって、どんな形であれ全力で遊星に向かい合おうとしているのにお前はそんな腑抜けて鬼柳に失礼だと思わないのかとそこまで話して…………

 

「ぐあっ!?」

 

 そしてぶん殴った。

 

「なっ!?」

「あぁ〜……今回のは遊星が悪いから。サテライトじゃこれでも甘いくらいだよ」

 

 魔女ちゃんのご両親の前では常に敬語で余裕のある大人として礼儀正しく振る舞っていたからこそ唐突の暴力に強い衝撃を与えてしまったんだろうね。

 マーサが補足というか、擁護してくれたけれど暴力とは程遠い世界の人達だから今この場で受け入れるのは無理だろうね。

 

遊星!しっかり聞きなさい!

 殺したくなる程の怒りや悲しみ!憎しみなんてものはどうでも良い相手に湧く事なんて有りはしない!

 それだけ本気なのよ!なのにその相手がこの有様!?

 馬鹿にするのもいい加減にしなさい!

 ただ死でくれでなく本気で闘うことを望んていて、遊星も責任を感じているのなら向き合い全力で最後までやりきりなさい!

 そうでなければ!…そうじゃなきゃ……鬼柳があまりにも惨めすぎるじゃない…………」

 

 ここまで聞いてようやく鬼柳がどんな思いであの様な事をしでかしたのか。当然その全てはわからないけれど、自分の事しか考えられていなかった遊星の目に力が宿る。

 

「違う!俺は……俺にそんなつもりは………」

「ならさ、ぶつかるしか無いじゃん。

 フォーチュンカップっと同じだよ。今度は鬼柳ってだけ。

 ………だいぶマシな顔になったね。立てる?手、貸そうか?」

「いや、いい。自分で立てる。………ありがとう、セイラ」

「どういたしまして」

 

 こうして遊星は立ち直した。

 けれどこの後色々あって知る事になる衝撃の真実によって再び心が折れ、今度はジャックに腹パンされる事になる。

 

 


 

 

 遊星の説得によって魔女ちゃんが仲間になった。

 

「ねえねえ魔女ちゃん。魔女ちゃんって学生さんなんだよね?やっぱり制服とかってあるの?可愛い感じ?

 お姉ちゃん遊星と同じでサテライト暮らしだったから学校通えてないんだよね〜。どんな感じなんだろ?」

「えっと……」

「セイラ、アキは魔女じゃない。訂正してくれ」

「知ってるよ。でも私のは悪口じゃなくてあだ名で愛称だよ」

「…………」

 

 納得いかないと遊星が顔をしかめる。

 うんうん、言いたいことはわかるよ。

 

「遊星が仲間思いなのはとても良い事だけど、甘やかすだけが優しさだと思ったらそれは大間違いだよ。

 あ〜……でも、遊星はそのまま全面的に許していれば良いと思うよ?だってそれが遊星だもん。

 けどさ、過去は消えないよ?

 キチンと覚えていると伝える事も必要だよ。

 許されるだけじゃ人は救われないんだからさ。

 ちゃんと罰を与えてあげないと罪悪感はいつまでも心の中でくすぶりつづける事になっちゃうじゃない」

「許されるだけが救いじゃない……」

 

 たぶんマーサハウスで私に殴られた時の事を思い出してるんだろうな。実際遊星の罪の意識を少しでも軽くする狙いもあってぶん殴った訳だし効果あったんだろうね。

 

「大切な相手だからこそ心を鬼にして罰を与えるのも愛情だよ。

 魔女ちゃん本人も自分がしてきた事を自覚しているからこそ、指摘する人は必要なんじゃないかなって私は思うんだ。

 それに、丁度ダークシグナーとの戦いに参加しようって魔女ちゃんが言っている訳じゃん?なら止め時は終わってからだよ。

 ……魔女ちゃんはどう思う?」

「えぇ、それで良いわ」

「アキ!?」

「ありがとう遊星。けれど遊星は優しすぎるわ。優しいのはセイラさんもだけれど」

「当然じゃん。お姉ちゃんだからね」

 

 


 

 

 ゴドウィン長官が語るダークシグナーの内容を聞いて鬼柳は一度死んで蘇ったという真実を知る事になり強い衝撃を受けた。

 私もかなりショックだったけれど、一度立ち直った遊星がまた落ち込んじゃって心配が勝ってどうしたものかと考えていたけれどジャックが動くっぽい感じだから譲ってどう説得したか後で教えてもらった。

 姉には顔面を殴られて兄であり親友には腹パンされるって遊星可哀想。

 

 ジャックが遊星に腹パン決めるまでの間、私は龍可ちゃんと龍亜君を甘え倒しながら内心龍可ちゃんをシグナーに選んだエンシェントフェアリーとかいうクソ蛇にブチギレていたりしていた。

 

 それからしばらくしてサテライトで異変が起こり向かう事になる。

 

「牛尾リーダー!お疲れ様です!」

「おうセイラ臨時巡査!元気そうで何よりだ!」

 

 ヘリコプターで移動することになり、その操縦者として牛尾さんが来てくれたのでセキュリティ式の敬礼で挨拶をすればビシッと慣れた敬礼で返してくれる。

 

「しかし本当に怪我は無いんだな?」

「この通り元気100倍アン〇ンマンですよ!」

「アン〇ンマン!?」

「生粋のサテライトっ子ですけど実はフルでアン〇ンマンのマーチが歌えるんですよ!歌いますか!?」

「おい!歌詞わかってて言ってんのか!?洒落になんねーからやめろ!」

「了解であります!」

 

 牛尾さんとはフォーチュンカップ開催までの間に何度も一緒に仕事をして休憩時間に沢山雑談した仲なのでとても良い関係。

 なのだけど………

 

「うおっ!?」

「こら、お姉ちゃん取られちゃったとか思っていじけないの」

「思ってない。からかうのはやめてくれ」

 

 牛尾さんにガン飛ばし続けている遊星が余りにも隙だらけなのでニュッと背後を取り膝カックン喰らわせた。

 遊星と牛尾さんの関係は聞いているし、お互いがお互いに強い意志があっての行動だったと言う事は説明しているけれど飲み込めきれていないみたいだ。

 

 そんな風に戯れてるとジャックがコチラを睨んでいる事に気付いたのでウザ絡みしにいく。

 

「な〜に?セイラが取られちゃうとか思ってくれた?それだと嬉しいな」

「そこまでは思っていない。だが………」

「っ!?……ビックリした。意外に素直な返答だね。凄く嬉しい」

「アトラス様!準備が出来ました!」

「はい!只今参ります!」

「皆様もコチラです!」

 

 ジャックと戯れていたタイミングでようやく準備が完了したのか狭霧深影さんに呼ばれた。

 

 私は牛尾さんより下っ端な立場で仕事する事に慣れてしまったせいで上司の上司である彼女の指示は優先度が高く、速やかに側へと行きセキュリティ式の敬礼をする。

 

「えっ!?セイラさん今の大丈夫なの!?」

「ん?龍可ちゃん?今のって何?」

「返事したらセイラさんがジャックのお姉さんって言ってるようなものじゃ……」

 

 話しながら狭霧さんの様子をチラチラ確認している龍可ちゃんが可愛くて良い子過ぎるので頭を撫でる。

 

「心配してくれてありがとう。

 でももう隠す必要が無いから大丈夫よ。

 それに、後方支援とはいえ危険な場所で一緒に戦ってくれる人に本名を名乗らないのは失礼だと思うからね」

「あっ……うん。言われてみたら確かにそうかも………」

「あ、あの。あなたは、アトラス様……ジャック・アトラス様のお姉様なのですか?」

 

 狭霧さんの言葉に頷き服の中からロケットペンダントを取り出して開く。

 

「初めまして、セイラ・アトラスと申します。こちらが一応証明となる小さい頃の私と両親と赤ん坊のジャックの写真です」

「これは……!?」

「なにっ!?そんな物があるなど聞いていないぞ!?」

「だ〜め。ジャックにはまだ見せませ〜ん」

「なんだと!?何故だ!!!」

「意地悪っぽく言ったけど、本当はジャックが20歳になるか王様ごっこを卒業したら話すつもりだったんだよ?

 立派に自立したし話しても良いのだけど……

 今は1つでも多く終わった後の楽しみがあった方が良くない?

 ほら、勝つ為の理由は多い方が良いじゃん?」

「………ふん、ここは大人しく聞き入れよう。

 だが、王様ごっこだと!?その言葉、今すぐ取り消せ!」

「え?そこなの?でもやだ。駄目〜」

「何故だ!?」

 

 何故だも何も、あんな誰もいない劇場の廃虚で小物の玉座引っ張り出してずっとふんぞり返って何が楽しいのかわかんないし、何よりも……

 

「お姉ちゃんメイド服着させられて1日中後ろで付き合わされた事忘れてないからね?」

「誰も頼んでなどいない!しかもソレは貴様が勝手に着て来たではないか!」

「あっはは〜、そうだったけ〜?」

「ぐぅ……」

 

 このまま問答を続けてもからかい倒されると悟り押し黙っちゃった。

 ジャブである今の話の流れから次に繰り出す本命である必殺のショートアッパーを読み切る洞察力は流石だね!

 ただお姉ちゃんはもっとジャックと遊びたかったな。

 

「あの!お姉様!私の事は深影とお呼び下さい!」

「え?狭霧さん?」

「深影です!呼び捨てで構いませんので!」

「その、私の立場的に上司の上司を呼び捨ては……」

 

 何この熱量……というか、凄く嫌な予感がするんだけど………

 え?ちょっと?お願いだからこの予感外れて。

 

「あの、狭霧さん?1つお尋ねしますがジャックからあだ名といいますか、愛称としてカーリーと呼ばれたりしてはいませんか?」

「…いえ、カーリーは私ではなく…………」

「そうですか。………ねえねえジャック、ジャック!ジャック!!!ねえコレどういうことなの!?狭霧ちゃんなの!?カーリーちゃんが本命なのかなぁ!?」

「いきなり何のはなグオォッ!?」

「アトラス様!?!?お姉様!暴力はいけません!!!」

 

 ジャックの胸ぐらを掴みそのまま頭突きを決めたところで狭霧ちゃんに羽交い締めにされる。

 正直脱出は楽勝だけど乱暴する訳にいかないし……

 

「どうしたんだ?早く行くぞ」

 

 そこで先に乗っていた遊星が顔を出す。

 

「遊星!ジャックが二股してる!!!」

「なんだって!?」

「違います!そもそも私はまだ彼女ではございませんので落ち着いてください!!!」

「え?そうなの?でもまだって……まあ、本人がそう言うなら…………

 ごめんねジャック、痛かった?」

「ぐぅ……石頭め」

 

 という感じに一悶着あったがダークシグナーに襲撃されることもなく平和に出発できた。

 

 


 

 

 飛行機内で遊星のお父さんが旧モーメントの責任者だったという事を聞かされてビックリした。

 ビックリしたけど、それがジャックが付き合ってないが結婚詐欺モドキみたいなことしたかどうか問い詰める事を止める理由になることは無く、唐突に始まった家族会議によって機内の空気はいろんな意味で死んだ。

 

 機内の空気を犠牲にして得た答えはグレー。

 ジャックがしっかり答えれば良いのだろうけれど理由も無く女性を本気で傷つけるような物言いはできる子じゃないし仕方ない。

 この子は黙り込むのが基本で口に出す時はよっぽどだよ?

 

 なら今回のをよっぽどの中に入れてくれれば話は早いのに……

 

「わかったけど、嫉妬でいつか刺されちゃうかもよ?」

 

 とだけは言っておいた。このお父様似の色男め。

 

「牛尾さん、もう少し進んだ先に孤児院があるのでそこで降りてもらえますか?位置的にも拠点の1つとして使うのに良いかと思います」

 

 一部気まずい空気の中でマーサハウスの近くに来た事に気が付いて提案する。

 しかし牛尾さんは狭霧ちゃんがいるので当然と言えば当然だけど狭霧ちゃんにどうするか聞こうと顔をそちらに向けた。

 

「その孤児院は私達が育った場所で弟達の母親代わりであるマーサという人が営んでます。なのである程度信用できます」

「行きましょう!着陸してください」

 

 おっと、凄い食いつき。

 確かに狙って言ったけどさ。

 

「ある程度とはどういう意味だ?」

 

 しかし遊星は文句があります。あるいは理由によってはその言い方は許さないって顔で私に疑問を投げてきた。

 

「ある程度はある程度だよ。こっちにだって魔女ちゃんみたいな理解不能な不思議パワーがあるんだから敵が持ってても……というか、もう嫌と言うほど見てきたじゃん。

 でもそういうのって普通全部見せる?今までのは見せ札でダークシグナーの不思議パワーは他にもっとあると考えたほうが良いと思う。あんなバレバレな人体操作じゃなくて完全催眠とか認識阻害とかさ」

「なるほど……つまりマーサ達が強い催眠を受けている可能性があると?」

「そゆこと。いくらクオリティ高くてもマーサならおかしいって気付くの楽勝じゃん?

 遊星達は母親が、私は従姉妹のお姉さんが変だって気付いてから行動すれば良い訳だし」

「あぁ、そうだな」

「あの〜……」

 

 遊星とジャックが力強く頷く中、おずおずと龍可ちゃんが手を挙げる。

 

「どうしたの?」

「あの、あまり重要じゃないかもしれないけど気になって……

 マーサって人、遊星達にとって母親なのにセイラさんはどうして違うの?」

「なんで……そりゃ〜一緒に御守りして悪ガキ3人の愚痴言い合って家事分担してさ、偶に雑誌見ながらトレンドを語り合ったり……ねえ?ジャックと遊星はどう思う?」

「そんな話し今はどうでもいい!」

「流石にその話題の反らし方はどうかと思うな〜。遊星は考えすぎだし」

「……………………確かに、今思い返せばセイラは小さい頃から常に保護者側の立ち位置にいたと思う」

「ずいぶん長い長考だったね〜」

 

 この後無事に着陸し普段通りのマーサ達が出迎えてくれた。

 

 そこでジャックがマーサの手の甲にキスをするファンサービスをして。

 

「ずるいズルイ!?私も!お姉ちゃんにもして!ほっぺにチュー!」

「ええい!誰がするか!」

「あぅ……そっかぁ…………あっ」

 

 と露骨にションボリしたら舌打ちした後に私の手を無理矢理掴んで手の甲にキスしてくれて………

 

「………………」

「えっ!?セイラさん!?」

「セイラねーちゃん何で泣いてんの!?」

「え?」

 

 自分の頬に触れて涙を流しているのだとようやく自覚した。

 

「あれ……なんでだろ?」

 

 どんなに痛くても、どんなに悲しくて寂しくても出なくなってしまい枯れたんじゃないかって思っていた涙が溢れてきた事に困惑してしまい、あまりにも複雑な感情で……

 

「………嬉しすぎて、なんか他の言葉が見つからないなぁ」

 

 絶対に嬉しいという言葉だけで片付けられなくて、心がめちゃくちゃになってしまったので落ち着くためにジャック(猫)と一緒の部屋で2人ぼっちにさせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はどうしたらいい!?

 あいつらに!どうやって償えばいいんだ!?」

 

 愛情が 裏返った

 

 あれだけ愛した遊星が必死に叫んでいる

 

 なのに

 

 自分でも恐ろしく感じてしまうほど冷めきった眼で遊星を見ていた

 

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