アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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生粋のサテライトっ子

 

 皆に挨拶済ませてサテライトへと向かう。

 

 向かう数日前にはイェーガー様にも当然連絡入れて目的を告げて、その時にルートを用意しましょうか?と言ってくれたけれど向こうの人手の少なさは知っているので自力で行くと断りを入れといた。

 

 なので現在私は龍亜君と天兵君、あとアキちゃんが魔女ちゃんだった頃に初めて出会った思い出の場所へと訪れていた。

 

 訪れたのだけど………

 

「(特に怪しい匂いは無い……口の中で転がしても痺れる感じは無し。今のところ敵対するつもりは無さそうだね)」

 

 出されたお茶が盛られていないか確認し終えテーブルに置き、次はこの地区には似つかわしくない高級感あるソファーの良さを確認する。

 私の感覚に狂いが無ければたぶん龍亜君のお家のソファより数ランク落としたものだと思う。

 けれど間違いなく高額な物だね。

 つなぎ服で座るようなソファーじゃないんだよなぁ〜……

 

「(以前来た時は黒薔薇の魔女を制圧してからの第二ラウンドで馬鹿みたいに怪我人出したから警戒されるのはわかってたけれど、何でこんな好待遇なんだろう?)」

 

 現在私がいるのは預かり屋と呼ばれる場所でサテライトにも存在している何処にも属さない隙間産業的なとこのオフィスだ。

 大事な物(意味深)も預かってくれて凄く良いお店だよ。

 私もサテライトでよく使ってたしある程度は信用できる数少ない店だと思ってる。

 

 思ってるんだけどサテライトへ行くために訪れたら筋肉モリモリなデュエルマッスルに囲まれてここに連れてこられて私の信用がちょっと減っちゃったよ〜。

 ちょっとなのはマッチョリーダー風の人、スーツ姿のインテリ風細マッチョさんに来てくださいと丁寧に頼まれて敵意を感じなかったから従った結果が今。

 こんな治安の悪い場所には不釣り合いな清潔な場所に通されたらこの好待遇。

 信用がガタ落ちしてからの持ち上げるのが上手いね〜。

 

「オーナーがご到着しました」

 

 どれくらい待てば良い?と聞いて1時間程と聞かされて本当に1時間待たされるとはね。

 

 そうして入ってきたのはオールバックにした清潔感ある凛々しい感じの40代くらいの男性だった。

 

「お待たせして申し訳有りません。お久しぶりですねセイラさん。

 まさか再びこの地に足を運ぶとは、いったいどのようなご要件で?」

「……初対面じゃ?」

「初対面ではございませんよ。玉砕クイー……」

 

 派手にテーブルを蹴り上げる。

 

「うおぉッ!?」

 

 蹴り上げたテーブルを目眩ましにソファーの影へと飛び込むと同時に近くに飾っていた花瓶を取りタイミングを計りドアへ向かって投げつける。

 

「何事で、ガッ!?」

「なっ!?佐々木ィーツ!?」

 

 扉の外から聞こえてくる物音や距離などを考慮してタイミングを計った投擲は計算通り入ってきた奴の顔面にクリーンヒットする。

 

 その隙に窓ガラスを突き破り2階から飛び降りて脱出する。

 

 玉砕クイーンとはサテライトでの私の数ある異名の1つなのだけれど、異名の中でも特にマイナー寄りで態々この異名を呼んでくるってことは我々はセイラ・アトラスを良く知っているぞという威嚇行為であり、今私がいるのは敵の本拠地で戦力も未知数な状況で目の前の相手が親玉の保証なんて無いし十中八九捨て駒。

 となれば玉砕クイーン呼びはただの宣戦布告でしかないし私がする事は逃走一択だ。

 

「待て待て待て待って!?敵対するつもりねーから待てってば!?」

「ん?……あれ?暗黒行商人?」

 

 嫌がらせのつもりで外に置いてあった車の上を狙って着地し一度完全に姿を消し各個撃破する形で熱りを冷ますつもりでいたけれど聞き覚えのある声に足を止め振り返ると突き破った窓からサテライトでも屈指の邪悪な存在である暗黒行商人が顔を出していた。

 

「ひひッ!ようやく気づいたか玉砕クイーン!平和ボケしちまったんじゃねーか!?」

「否定できないけどそれにしたってイメチェンが過ぎるでしょ?」

 

 私の知っている行商人は猫背で自分のロン毛で目元を隠している50代程の自称40代な男性。

 服装は帽子付きのロングコートで常に帽子を被っていて口元をマフラーで隠している。

 背中には無駄に大きなカバンでサテライトに相応しい不潔な感じで常にひょうひょうとした怪し過ぎる男だ。

 

 少なくともこんな清潔感溢れるスーツでピシッとキメた中年男性じゃないって。

 というかさっきオールバックだったのに何でいつものロン毛に戻って……カツラか!初めて見た!

 

「気付いたのたら戻ってきてくれねーかな?少し話しをしようや」

「……まあ行商人なら話が変わってくるか。今行くよ」

 

 


 

 

 ちょっとしたトラブルが起きてしまったので仕方なく部屋を変る事になっていつもの怪しい格好に着替えた行商人の話を聞いていく。

 

「え?トップスの住人?」

「ひっひっひ!金持ちじゃねーとこんな道楽やってらんねーっての!」

「(コイツ本当に沈めてやった方が世の為人の為になるんじゃ……?)」

 

 なんと行商人はトップスに住む上流階級の人間であり、警備員の派遣や預かり屋、その他流通に関する諸々の株主であり物凄い偉い立場の人間らしくてさ、それ聞いて預かり屋が自分のホームならそりゃ何でも持ち込み放題じゃんって心底ゲンナリしたよ。

 

「で、そんな事教えて何のつもりかな?」

「なぁ~に、ただの恩返しよ。なんせ俺は玉砕クイーンのファンだかんなぁ~」

「え、キモ」

「いひひひひひひひ!ここまでシンプルな罵倒が来るとは思わんかったぜぇー!!!」

 

 弟やツトムとかラリー達に言われたら普通に嬉しかったかもしれないけどコイツに言われると物凄くキモイ。

 別にコイツが嫌いって訳じゃ無いし端から見ている分には面白い奴なんだけど深く関わると碌な事にならないし嫌なんだけど。

 

「んでよ、仲良くさせてもらったしサテライトから足を引くから最後に恩返しで何かしてやりたくってな」

「ふ〜ん……サテライトから出ていくんだ?」

「サテライトっつうおもちゃ箱がつまんない場所になりそうなんでねぇ。

 まあ次はクラッシュタウンって遊具場辺りに行こうかと考えてるがね。いっひっひ!」

「麻薬中毒に刺されないように気をつけなよ」

「ざんねん。俺ゃ〜麻薬は取り上げる派でね。真っ当な思考回路で狂うのが楽しいんだろうがよ」

「良い趣味してるね」

「わかってくれるかぁ?ひひっ!あんがとよ!」

「死ね☆」

 

 嫌味が通じないのはわかっていたけど本気で喜んでるの見てつい暴言からの中指立てるお下品極まりないセットが出てしまったが私は悪くない。

 というか暴言受けて益々笑いやがって。笑い過ぎで噎せんな。

 

「ひっひひっケッホゴホ………で、何か欲しいものは無いのかなぁ?

 俺ゃ〜大抵の物なら何でも用意できるよぉ?」

「あるけど……なんでそんなに何かくれようとしてるのさ?」

「俺にとって最高の瞬間をアンタ等が提供してくれたんだから正当な報酬は払わねぇといかんよなぁ〜」

「最高ねぇ……狂乱の宴?」

「さっすが!鋭いねぇ〜!!!

 狂乱の宴。その序章にて玉砕クイーン、アンタは俺にデュエルで敗北した!」

「………そうだね」

 

 コイツの言うように私は一度敗北している。

 

 話に出た狂乱の宴とはチームサティスファクションがサテライト統一の為に奔走していた頃、手中に収める速度が速すぎた為に取りこぼしが起きてしまい空白地帯が生まれてしまったのが事の発端。

 その空白地帯は正にチームサティスファクションの急所でありソコを抑えられると1からやり直さなければ統一は不可能になってしまい、ヤクザ等の他の組織から見ても敵対組織へのカチコミや防衛、他にも流通の利点等から最高の土地であった。

 

 その事に一番最初に気が付いた東側の最大勢力が送り出した連中を粗方ぶちのめし撤退にまで追い込む事に成功したのだけれど、そんな中現れたのが目の前の男、暗黒行商人だ。

 

 デスマッチ用デュエルロープを私のデュエルディスクと繋いだ行商人のセリフ、『戦略が個人の作戦に覆されるのはロマンかもしれねぇがよ、こりゃ〜流石にツマンネーだろうがよぉ?そうは思わねぇか?玉砕クイーン』というデートのお誘いの後にデュエル開始の宣言がされ激戦の末に私は敗北した。

 

 敗北したが見逃され、徹夜の疲労(弟達の尻拭い)+デュエルでのダメージにより倒れ伏す私を鬼柳が発見し拠点へと連れ帰る。

 私という防衛線がいなくなり本当に空白となった土地を取り合うように4つの組織による抗争が勃発。

 セキュリティはDーホイール導入直前による配置転換などで忙しい時期であり戦力がガタガタという奇跡に奇跡が重なった産物が狂乱の宴である。

 

 気絶した私が目覚めたのは丸一日後でその時にはどの組織も消耗から引くに引けない泥沼に突入。

 私は睡眠を十分に取れたので囮作戦を提案し私とセキュリティを囮に手薄になった4つの組織にそれぞれカチコミを仕掛けて王を獲る。

 

「そして俺ゃ〜不動遊星に敗北した訳だ」

 

 カチコミしてきた遊星とデュエルになり、私のデッキから奪った《渋い忍者》を破り捨てるなど煽りに煽って派手に負けたらしい。

 

「俺はなぁ、舞台をセッティングして特等席で眺めてるのが好きなんだよ。

 行商人なんて事をしてるのも特等席に限りなく近い場所にいられる率が高ぇからしてたんだが……

 いひひっ!たまにゃ最悪のヴィランになるのも最高に乙なものだって理解させられた!

 その事に俺ゃ〜はとても感謝しているんだぜぇ?」

「そりゃど〜も」

「お、そうだった。ほら、何時だったか奪った《渋い忍者》。あの時のは破いちまったが同じの用意したから受け取ってくれねーかい?」

「それならもう持ってるからいらない」

 

 デッキから《渋い忍者》を取り出し見せつける。

 ダークシグナーとの戦いが終わった時に神様が満足したぜと褒美にカードくれて今の私のデッキは忍者デッキでござるよニンニン!

 

「なんだ持ってるのか……ってなると本格的に金しかねーか?おい、小切手とペン用意しろ」

「招致しました」

「………う〜ん」

 

 正直コイツから無償?で金銭をもらうのは物凄く嫌だ。

 それに今欲しいのは金銭じゃないし………

 

「ッ!?」

 

 デスマッチ用デュエルロープを投げ暗黒行商人、そして私のデュエルディスクへと取り付けた。

 

「負けて施しを受けるのって趣味じゃないんだよね。

 とりあえずボコしてから考える」

「…ぷっ、だーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!

 それでこそだぜ玉砕クイーン!いや、リトルゲヘナだ!!!

 シティで平和ボケしようがテメーは生粋のサテライトっ子だよ!!!」

「「デュエル!!!」」

 

 苦戦したけどなんとか勝てました☆

 こうして私はシティとサテライトへの行き来が顔パスでできるようになった。

 なんか「そんなんで良いのか?」とか本気で不思議そうな顔されたけど知らないでこんな交渉仕掛けてきたんだね……

 行動してから考える辺り、私もだけどアンタも十分サテライトに染まってるよホント。

 

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