アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

4 / 33
なくしもの

 

 足を捻ってから数日が経った。

 捻ったといっても強くはやってなかったので問題無く仕事をしていた。

 とはいえパトロール等は当然はお休みにして移動も極力軽トラを使うようにしたおかげもあってだいぶ良くなった。

 

「……もうこんな時間か」

 

 遊星が居なくなってテレビを見る事くらいしかする事のなくなったこの場所。

 テレビの電源を落とし寝転がっていたソファから起き上がって雑誌を丁寧に元の場所にしまってから仕事へ向かう。

 

 数時間椅子に座ってラジオを耳に見張りをし、時に小さなトラブルのフォローをしていればあっという間に時間が過ぎる。

 

「……なあステラ、アンタもしかして具合悪い?」

「あ、店長お疲れ様です。別に風邪っぽさは感じないけど……そんな顔色悪かったですか?」

「顔色は悪くないんだけどねぇ……なら何かトラブルとかはあったかい?」

「何かって……強いて言えば弟達がみ〜んな自立しちゃったくらいですかね?

 肩の荷が下りたのは良いのですが、お姉ちゃんちょっと寂しいかな〜……と言っても、まだ孤児院の支援やこの店の娘達の為に治安維持とかやることは多いんですけどね」

「そうかい。……支援といやそこに今回の分が届いたよ」

「おぉ。今回は少し早い到着ですね。いつもありがとうございます」

 

 軽トラに届いた荷物を乗せて走らせる。

 これらはマーサハウスに持っていく差し入れとキャットフードだ。

 

 目的地へ到着し挨拶もソコソコにしてそれらの荷物を置いてからキャットフードを持って外へ出るとわらわらと10匹強くらい出てくる。

 

「ニャ〜、ニャニャニャんニャ〜。……あれ?一匹少なくないかにゃ?」

 

 無防備に勢い良く食べているところを撫でさせてもらっていると一番小さい子がいない事に気が付いた。

 

「あ……セイラ姉さん、あの子は…………」

「?」

 

 …………あの子は轢かれて死んじゃったんだって。

 凄く言いにくそうに、けれどきちんと教えてくれた。

 教えてくれた子の頭を撫でてありがとうと感謝の言葉を口にし、埋めてくれた場所に野草の花を何本かお供えして帰った。

 

 


 

 

 目を覚まし時間を確認する。

 

 少し寝すぎた。

 

 早く起きないと仕事に遅刻し給料が減る………………

 

「………………………」

 

 あれ……どうしてだろう。起きれない…………………

 

 


 

 

 ドンドンドンと扉が乱暴に叩かれ私の事を呼ぶ声がする。

 

 一度静かになったかと思えば叩いただけじゃ鳴らない、明確に破壊するという意思を持て行動しなければ出ない音が扉からして、それが数回鳴って鍵が壊される。

 

「姐さん!………って、いるじゃねえか。返事くらいしろよ」

 

 入ってきたのは遊星を除いた遊星のイツメン全員だ。

 女性の部屋に無断で入ってくるような躾はしてないつもりだったのだけど………まあ、丁度良いかも。

 

「心配したんだよ。もしかして姉さん風邪ひいた?」

「ちがう……」

「違うならとりあえず布団から出ろよほら!……アァッ!?」

「うわっ!うわぁ……」

「ちょ!馬鹿!なんでズボン脱ぎかけでそのままなんだよ!!!俺は悪くねえぞ!?」

 

 ナーヴが布団を剥いできたくせになんかキレながらかけ直してくる。

 

「起きようとしたんだ………でも、できなかった……………だから……せめて着替えようとして……面倒で……辞めた……………………」

「セイラ姉さん……?」

「……ちょっとタイム。全員こっち来い」

 

 そう言って私を残して部屋から出て内緒話をしをはじめる。

 お話するならお姉ちゃんも連れていってほしいな……

 

「なんか……やばくね?」

「あの儚げな美女がサテライトの生きる伝説リトルゲヘナや血化粧の魔女本人だなんて言われても誰も信じねーぞ」

「いやそれはわりと普段からそうじゃね?」

「どっちにしろあんな姿は絶対に見せる人じゃねーよな」

「あぁ、何かはわかんねーけど絶対なんかの病気だって」

「病気?やっぱりそう?あの……俺さ、姉さんの下着見れてラッキーとか思っちゃったけど、そうならかなり最低じゃん俺………」

「いや、それは仕方ねーよ。男として当然だ誇れ。……って、そうじゃなくて病気なのはわかるが病名なんてわかんねーしよ、あの人がただの風邪じゃああはならないだろ。そもそも熱はあるのか?」

「ラリー、お前ちょっと熱っぽいか確かめてこいよ」

「俺!?何で俺!?」

「しー!声がデケーよ!」

「適任はラリーしかいないだろ?」

「俺らの中で唯一姐さんから子供扱いされて抱きつくなんかが愛情表現で済ませられてるのはラリーしかいねーし」

「……やっぱり俺、ガキ扱いされてた?」

「実際一番歳下だろ?あと数年もすればしてくれなくなるから今のうちに堪能しておけ。その方が姐さんも喜ぶだろうし」

「うぅ……それでセイラ姉さんが元気出してくれるならするけど、ガキ扱いは嫌だよ俺。………とにかくちょっと熱があるか確認してくる」

 

 所々聞き取れなかったけど私の事を心配してくれている内容だということはわかる。

 わかるけど内緒話するなら部屋から出るだけじゃなくてもっと離れるとかしなよ。………それくらい混乱させちゃってるってことかな?

 悪い事しちゃったなぁ……………

 

「セイラ姉さん、大丈夫?熱あるの?手当てるよ?」

 

 ラリーが戻ってきて自分と私の額に手を当て熱を測る。

 熱なんて無いし意味無いと思うよ?……と、そう口にしようとしたけれどできなかった。そして案の定というか熱は無かった。

 

「ねえラリー………」

「なに?」

「喉乾いた………」

「わかった。水持ってくるね」

 

 皆が来てくれて丁度良かったと思ったのは喉が渇いていたからだ。コレで水が飲めると少しホッとしていた。

 

 ラリーが水を持ってきてくれた。けれど受け取る事ができない。

 その様子を見かねたラリーがすぐ横に机を持ってきて置いてくれたのだが、置かれたコップが大量の汗を流し始めても飲むための動作が取れない。

 

「セイラ姉さん、ごめん、体触るよ」

 

 ラリーが私の脇に手を突っ込み背中を抑え上半身を起こしてくれて、私の手を動かし器用にコップを持たせてくれる。

 それでも一向に呑む事ができない様子を見てコップを取り上げ「口に当てるよ」と飲ませてくれる。

 

「ごめん皆……俺、こんな状態のセイラ姉さんを1人にできない!」

「ああ、わかってる。俺等も同じ考えだった。こっちは外で足使うが、そっちも姐さんの事頼んだぞ」

「うん、任せて!」

 

 こうして私の長い休暇が始まった。

 この時は休む事に罪悪感があったのだけど休日が休日になってない事がおかしいのだと気付けないって凄く悲しいと思わない?

 趣味も入ってるとはいえ毎日パトロールするのは仕事してるのと変わんないんだってさ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。