アトラスお姉ちゃんの日々   作:メリルメリルメリル

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血縁者との再会

 

 雑賀さんが出ていってから私も外に出る事にした。

 

 外に出たのは古着でもいいから……というか中古が良い。安いから。

 シティを出歩くのに問題無い服を買う為で目的地はリサイクルショップとかの中古店になるかな。

 

 今着てる服はバイトの時のドレスだからさ、コレを常に着てると違和感を持たれるだろうけど最低限問題無い清潔さの服なのだけどこの一張羅しか無いから早めに他のが必要だね。

 サテライトでは破れにくく潜伏、追跡、逃亡、戦闘のしやすさを追求していた結果つなぎ服で出歩く事がわりとザラだったし流石にシティ向けじゃないよ。

 つなぎ着て駅ビルやデパートにまで行く度胸はお姉ちゃんには無いかなぁ。お姉ちゃんだって乙女心を完全に捨てたわけじゃないから流石に恥ずかしいよ。

 

 ドレスでも良い気はするけど派手っていうか背伸びし過ぎだし、最寄りの駅周辺がどんな場所か知らないけど場所が場所なら服装で勘違いされて「いくらいい?」とかいきなり言われたら拳で断りかねないし………

 自惚れって思われるかもしれないけどバイト先で警備員してる時、稀に指名されてた事実は無視できない。

 身長と胸のサイズはスモールサイズだけど肉体の引き締まり具合も顔も良いんだよ?顔に関しちゃジャック(キング)の血縁者で同じ親から生まれたお姉ちゃんだし当然でしょ?

 我ながらイケメンだと思う。子供に怖がられちゃうのが傷だけど……

 

 そんな事はとにかく服を買いに行く為の服が欲しいんだよ。

 

「ん。……ジャック」

 

 ほんの少し歩いただけでキングのポスターが貼られている店を見つけた。

 フォーチュンカップの広告も至る所に貼られていたしシティ全体が祭り……サテライトと違う本当の意味でお祭り騒ぎなんだろうね。

 そしてここは……文房具店かな?

 

「………」

 

 ランドセル。買ってもらってすぐにゼロ・リバース事件が起きて結局1年も使う事無かったな。

 

「帰ろ……」

 

 なんか、急に面倒になった。

 完治したと思っていたけどまだ鬱が残っていたのかな?今、無性に誰かに甘えたい。

 

「……ん?」

 

 帰ろうと来た道へと向きを変えようとした時、文房具店の中の一角、角度を変えた事で偶然目に入った文房具とは呼べない物が目に入り自然と店の中に体が吸い込まれて……

 

「いらっしゃい」

「わ……美人なおねえさん」

「ありがとう」

 

 この辺に住んでる子供かな?男の子2人に女の子1人で奥に店主だろうおばちゃんがいる。

 私のドレス姿を間近でじっくり見た女の子が「綺麗で格好いい」と言ってくれたからもう一度「ありがとう」と撫でてあげる。

 

 男の子の方は大分意識してる様子なのに「でも大人なのにチビじゃん」と言ってきて、この年頃の男の子は変にひねくれてるというか、見栄っ張りな子が多いのを身に染みて理解してるのでそっちにも「ありがとう」と言っておいた。

 

 まあそんな事より本題へ向かい合うことにしよう。

 

「……おばちゃん、これ売り物?」

「ん~、それは1枚3000円だよ」

「3000円………」

 

 めっちゃ悩んだ。物凄く悩んだ末に買っちゃった。

 ジャックの金色サイン入りの光る写真のカード。

 他のカードは高くても500円だったのに。

 流石は不敗のキング。安くない。安くなかったよぉ……

 私のおサイフにダイレクトアタック!アブソリュート・パワーフォース!!!……だ、大丈夫。私のおサイフのライフは封筒の中身も含めて38万あるから(震え声)

 

 


 

 

 ジャックのカードで精神力が回復し無事に服を購入する事ができた。

 文房具店のおばちゃんにお店の場所聞くことができたから時短になった。……なったのかな?たぶんなった。

 カードを買った時に男の子達が物凄く反応したから「お姉ちゃんはね、ジャックがキングになる前からファンだったんだよ?」とマウント取ったりと余計な時間を使った気もするけど、流石に場所も解らず適当にぶらぶら探し回るよりは早かったでしょ。

 

 現在はバイトのドレス姿からチェックのロングスカート、黒のリボン紺のブラウス、限りなく白に近いピンクのパーカーにブーツと全身着替えている。

 数も少なかったし1時間だけと決めていた中では大分オシャレができたと思う。

 

「遊星、褒めてくれるかな……ま、口にしてくれないのはしってるけど」

 

 化粧品はバイト先が餞別としてくれたからそれで事足りるし、ちゃんとした服買うまではこの格好をベースにしてどうにかする。

 

「ん?危な!?何考え……え?ホイール・オブ・フォーチュン!?」

 

 あと建物数個分の距離で帰れるというところで背後から猛スピードですっ飛んでいったD-ホイールに文句を口にしようとしたが真っ白なそのボディー、ホイール・オブ・フォーチュンの姿に驚いて数秒固まる。

 私が固まっている間に入って行った場所、あの場所は確か空き地になっていて出口は入り口と同じで一箇所しか無いはず。

 

「う~ん…………………………よし、やろう」

 

 遊星にジャックをぶっ倒すのを託した手前どうするかと悩んだ。

 けどそれってさ、キング相手にそんな機会は訪れないと思ったからであってこんな絶好のチャンスが訪れたのならラリー達の為にも一発重いの喰らわせないといけないよね。

 

 やると決断すると同時に駆け出す。

 

 よし、デュエル中じゃない。

 

 遊星と睨み合いをしているジャックへ全速力で接近する。

 

 右手を大きく後方へ引き、走る勢いと引いた腕を突き出す形で放つその威力は成人男性を軽く浮かせ転倒させる程で胸などに直撃させれば最低でも数秒間は呼吸困難に持ち込む必殺の喧嘩タックルだ。

 

「なっ!避けろジャックーッ!!!」

 

 腕を放つ体制を取ったところで遊星が気付き大声で叫ぶが何もかも遅い。

 

 勢い良く放った腕でライディングスーツの肩付近を掴み引き倒すようにし体制を崩し、崩れた事で圧倒的な身長差のアドバンテージを封じて「なにっ!?」とか言ってるジャックの声を無視しながら背後からしっかりと腹部をホールドし……

 

こんの愚弟がーッ!!!

 

 自分でも花丸満点をあげられる程の芸術的なジャーマンスープレックスを決められた。

 物凄く綺麗に決められたから見た目よりダメージ入ってないのが尚良し。

 

「よし!………ん?大丈〜夫!加減はしたよ☆」

「お……おぉ………」

「ジャ……ジャックーッ!!!無事かーッ!?!?!?」

 

 サムズアップでお姉ちゃんやったよとアピールすれば何故か2・3秒くらい止まっていた皆の時間が動き出し、丁度あぐらをかいた姿勢を上下逆にしたみたいになっているジャックへと遊星が助けに入る。

 

 そしてジャックは1度大の字で寝転がってから遊星の肩を借りてゆっくりと立ち上がった。

 

「せ、セイラ……お前もコッチに来ていたのか………」

「ジャック、あまり無理をするな。傷が深いんじゃないか?」

 

 これやっぱりというか遊星は別にジャックのした事に対して………何も思っていない訳じゃないし謝罪も欲しいとは思ってるけど、それはそれとして許してる感じだよね?

 

 ほら、ジャックもわかってるでしょ?

 このドサクサに紛れて一言「すまない」と言えば遊星なら足りない文脈を無限に読み取って完全に許してくれるから!

 

「ええい離せ遊星!余計なお世話だ!」

 

 うん、そうなるよね。男の子でデュエリストだもん。デュエルで決着付ける以外に道は無いって事だね。

 

「遊星はともかく、セイラ!貴様は何の用でここへ来た!」

「何のって、1番の理由はジャックがD-ホイール盗んだりとかいろいろやってくれたからラリー達の代わりに仇討ちの為に1発制裁を~……って、それは今ので終わったからもう1つだね」

「終わり?こんな事で終わらせると……?いや、それよりももう1つだと?」

「そうだね。もう1つ。いや、もういっぱい?……とにかく、ジャックに言いたいことがいっぱいあったし確認したい事があったから来たんだよ」

「ふん、下らない恨み言でも言いに来たか」

「大好物だからってカップラーメンばっかり食べたりしてない?」

「………………………は?」

 

 ジャックは何を言っているのかわからないという表情で、遊星も何の話しをしているんだ?とちょこっと表情が動いたけれど気にせず続ける事にする。

 

「カップラーメンばかり食べてないかって聞いたの。いくら美味しくてもそればかりだと体に悪いよ?

 今日、というよりついさっきシティをちょっとぶらついたんだ。本当にちょっとだよ?だというのに少し歩けばフォーチュンカップの広告やキングとしての姿が至るところに、それこそ文房具店のガラスに張られていたくらいだよ?そんなキングが経済的に困るなんて事はまず有り得ない。

 サテライトで生き抜く方法ばかり教えていたからシティの常識なんてこれっぽちも知らなくて困った事とかなかった?エレベーターの降り方がわからなくて閉じ込められたりしなかった?

 あと、遊星達もだけど、沢山不自由させちゃったから反動で贅沢の仕方が下手で借金するなんてしてないよね?

 あ、ほら、コレ見て。さっき話した文房具店でジャックのカードが売ってて買っちゃったんだ。

 それで、他は……他には…………」

 

 困ったな……聞きたい事も話したい事も多すぎて何からすればいいか悩んじゃうよ。

 

「……ねえジャック。私が、お姉ちゃんが怒っていると思った?

 残念ながら叱らなきゃとは思っても怒った事は1度も無いよ。あるのは悲しみや喪失感といったものばかりだった。

 今ジャックはシティのキングで戻ってこいとは言わないけれど、ちゃんと貴方を愛している人がいるのは忘れないでほしい。もし今後皆に謝りたいと思うことがあればお姉ちゃんも一緒に謝るから…………いや、こんな事が言いたいんじゃない」

 

 一度深呼吸をし頭の中で何を本当に伝えたいか整理し直す。

 

「ジャック。貴方が私をどう思っていようが私は貴方を愛しているし応援している。

 貴方はキングで、もう貴方だけの体じゃない。少し話しただけの子供が本当に楽しそうにキングの格好いい姿を話してくれて、キングごっこって言って真似っこをするんだよ?

 だから、風邪なんて引いちゃ駄目。体を大切にね」

 

 整理した結果が1番最初に口にした栄養バランスと同じ、

 元気に生きてほしいというシンプルな内容だけだった。

 

「………」

「……………応援はしてるけれど、お姉ちゃんは遊星の事も応援しているんだよね。

 キング。フォーチュンカップで遊星は必ずアンタの元へ行ってデュエルでブチのめすから覚悟しておいて」

 

 困惑し、私が怒っていない事に驚き、なんとも言えず気まずげなのを必至で押し殺そうと怖い顔をしていたジャックだったが、最後の言葉を受けると猛獣のような自信と余裕に溢れた不敵な笑みを浮かべた。かと思えばクールな表情作って言葉も無くD−ホイールに乗り込んでしまう。

 

「遊星に、チャレンジャーに何か言う事は無いの?」

「伝え終えたタイミングで貴様が来たのだろう!」

「そっか。この先遊星が勝つかジャックが勝つか本当に分からないけど、どちらにしろ立場の違いから2度と会えないかもしれないから最後にこれだけ。元気でね、ジャック」

「………フン」

 

 やはり思うところはあるのか、手を振っている私の姿をキチンと目に収めてから行ってしまった。

 

「………さて、お二人はどちら様なのかな?」

「そりゃコッチの台詞だ。いきなり現れ滅茶苦茶してよ」

「お前さん随分とキングと親しそうじゃったが何者なんじゃ!?」

「何者……遊星とジャックのお姉ちゃんだけど、とりあえず自己紹介からしよっか。……っと、その前にそこ置いた買い物袋取ってくるね」

 

 そう言って買い物袋を回収し戻ってくると遊星が目を見開いて「盗まれていないだと!?」と無言で叫んでいてつい笑ってしまった。

 誰かの落とし物はおまわりさんに届けましょう。

 幼稚園児だって知っている常識だけどサテライトじゃ通用しないもんね。

 なんならおまわりさんが「サテライトのクズが何処からカード盗みやがった!」とか言ってカツアゲしてくる始末だし。悲しいね。

 

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