八葉を継ぐ者──AAA──   作:クラウンドッグ

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これまでの八葉を継ぐ者

 

 

 

 

七耀歴1202年12月。

エレボニア帝国アイゼンガルド連峰、雪の降り積もるユミルで青年は救助された。

 

青年を助けたのはユミルを治める貴族、シュバルツァー男爵。

シュバルツァー男爵は青年が記憶喪失である事を知り、ナギト・シュバルツァーという名を与え、息子リィンと共に帝都近郊トリスタにある名門、トールズ士官学院へと入学させた。

 

 

トールズ士官学院に入学したナギトは新設された特科クラスⅦ組に配属され、級友と親交を深めていく。

 

学院生活と月に一度行われる特別実習で失った記憶の一部を取り戻したナギトはかつて自分が《剣鬼》と呼ばれた剣士であった事を知る。

《剣鬼》とは隣国カルバードで100人斬りを果たした殺戮者。その事実にナギトは揺らぐも、級友ラウラの言葉で再起。かつての実力を取り戻していく。

 

 

そんな中、エレボニア帝国にて内戦が勃発。ナギトは自ら売り込む形で貴族連合に潜入する事になる。

機甲兵プロトタイプを与えられ、いくつか戦場を駆け抜ける間にナギトには新しい渾名がつけられた。《閃嵐の騎士》。騎神オルディーネを駆る《蒼の騎士》と双璧として活躍していく。

 

やがてリィンがパンタグリュエルに囚われると、機を見て貴族連合から離脱。カレイジャス──《第三の風》に合流。Ⅶ組の級友たちと再会を喜んだ。

《第三の風》に合流したナギトだが、たびたび単独行動を起こす。

幾度かの作戦行動を行う間に《第三の風》Ⅶ組はナギトが貴族連合の英雄《閃嵐の騎士》である事を知り、問い詰めるも回答は先延ばしにされた。疑惑が深まるナギトが提案したのは“幻獣討伐作戦”。帝国各地に出現した幻獣を一斉に討伐する事を目的とした作戦であった。果たして“幻獣討伐作戦”は実行され、その様子を使い魔セリーヌの魔術により視聴していた帝国市民からⅦ組は英雄視されるようになる。この事についてもⅦ組はナギトを詰問したが、やはり先延ばしにされた。

 

事件が起きる。ケルディックを領邦軍が焼き討ちする際に居合わせたラウラが凶弾を受けて倒れたのだ。それを受けて同道していたナギトは激昂、かつて《剣鬼》と呼ばれた実力を取り戻して敵を鏖殺した。

撃たれたラウラだったが、幸いにして命に別状はなくしばらくの後に目を覚ました。

 

そしてⅦ組一行は今度こそナギトに《閃嵐の騎士》について、“幻獣討伐作戦”について問い詰める場を設けた。

腹を括ったナギトは自らの行動の意味が解き明かされるのを見届け、罵声も受け入れて、それでも微笑んだ。

やがてナギトの狙いが“内戦後のクロウの助命”にフォーカスされていたものである事が判明し、ラウラの鉄拳制裁をもって罰は与えられたものとし、改めてナギトはⅦ組の仲間となった。

 

トールズ士官学院を解放し、カレル離宮で貴族連合で知り合った友リヴァルとの決着をつけて、煌魔城へ乗り込む。

緋の玉座でリィンとクロウの決着を見届けたナギトは、カイエン公により《緋の騎神》に取り込まれるセドリックを助けようとしてテスタ=ロッサに飲み込まれてしまう。その内側で目を覚ましたナギトはセドリックと共に《紅き終焉の魔王》の身体の一部を制御。クロウの胸を貫くはずの尻尾を押さえつけると、リィンの無想覇斬が炸裂して魔王は斃れた。

 

こうして“クロウの死”という運命が回避された事でナギトは薄々勘付いていた己の正体を完全に理解する。

それは、クロウの死を認めたくないプレイヤーの願いが織り重なって生まれたのが己だという事だった。

 

煌魔城で目を覚ましたナギトは完全に記憶を取り戻しており、その場でオズボーンと交渉し、事後のⅦ組──特にクロウの身の安全を約束させた。

 

 

内戦終結後、トールズ士官学院の皆と過ごす間にナギトは自らの消失を感じていた。“クロウの生存”が果たされたのなら、以後の世界に自分はいらない。

それは事実で。しかし日々を過ごす内に消えたくないという想いは強くなっていった。

そして正体を明かしたトマスとの会話でそれを自覚し、言葉にした。決意となった想いを胸にナギトは旧校舎無間回廊に挑む。

 

やがてその最終階層に至った時、ナギトの眼前にある存在が現れる。それは“俺たち”──プレイヤーの願いが織り重なったナギトという存在の、言わば本体であった。

その存在が語るには、ナギトという存在がこの世界に確立したと。つまりは以後もこの世界に生きていけるのだと言う。しかし喜ぶナギトの前に現れたのは煌魔城で斃されたはずの《紅き終焉の魔王》だった。

曰く、ナギトを消去する事でクロウの生存すらなかった事にしようという運命の強制力の顕現だと。

 

 

軌跡改竄 / 落涙叛転(ラクリモサ・オーダー)───!」

それは根源の斬撃に願いを乗せた一閃。定められた運命に叛逆し、流れ落ちる涙に叛逆し、己の望むように軌跡を改竄する願いの一撃。

それは運命の強制力の顕現たる《紅き終焉の魔王》を両断して、世界をシステムの手から解き放った。

 

かくして“ナギトの存在”と“クロウの生存”は世界に確定し────、その時がやってきた。

別れの季節。Ⅶ組の解散の日だ。トリスタ駅前に集ったⅦ組は思い思いに言葉を交わして駅に入る。やがて行き先の違う者たちも別れてナギトはレグラム行きの列車に乗った。

 

目的はヴィクター・S・アルゼイドに娘との交際を報告するためだった。彼がどんな顔をするかはわからないし、何なら怖いがこれもまた消えるはずだったナギトのやりたい事のひとつなのだ。

 

だからナギトは言う。

「俺も生きよう。この素晴らしい世界を」

 

 

 

 

☆★

 

 

己の過去を取り戻し、トールズ士官学院を卒業したナギトは養父にして師たるユンと再会し、シュバルツァー男爵夫妻と話をして名をナギト・ウィル・カーファイと改めた。

 

そこからナギトは各地を巡る。共和国に赴き先輩遊撃士に謝罪したり、Ⅶ組の級友だった者たちを訪ねたり。それはまさしくナギトが願ったその後の世界であった。

 

大小様々な出来事があり、その中でナギトはオズボーンの命令によりクロスベルへ行く事となる。クロウを見逃し、Ⅶ組の平穏を約束したオズボーンとの契約の代償によりナギトは《鉄血の子供達》のひとりとなっていたのだ。

 

クロスベルでは《帝国解放戦線》の後継たるテロ組織《Ω》や、特務支援課の面々と対峙する事となる。渦中では《アナザーフォース》という大陸西部で活動する猟兵団の介入や《赤い星座》の乱入がありつつもそれらの問題を対処したナギト。内心ではクロスベルに肩入れしつつも《鉄血の子供達》として、クロスベル再独立のために立ち上がった特務支援課の最後の壁となり立ち塞がる。クロスベル市民によるルーファス総督へのリコールは受諾され、クロスベルは再独立を勝ち得たのだった。

 

 

帝国に戻ったナギトは僅かな平穏の時を過ごしていた。帝都にて暗黒竜が復活するなどのトラブルはあったものの友人知人の力を借りて事態は終息した。そんな短い平和な時間でナギトは《鉄血の子供達》である後ろめたさを感じつつも仲間との友情を深めていった。

 

 

次にナギトが大きな事件に関わったのは旅行に訪れたリベール王国での事だった。

八葉一刀流の兄弟弟子であるカシウスを訪ねてリベールに旅行したナギトだったが、そこで争いに巻き込まれる。それはナギトと同じくカシウスの休暇を聞きつけた帝国による侵略戦争だった。

ナギトはエレボニア帝国からの旅行者という怪しい立場ながらリベール王国軍に協力して王国領内に侵入した帝国軍を駆逐していく。その活躍もあってか戦況はひとまず膠着し、リベールとエレボニアは和平交渉のテーブルに着く事になる。

 

 

その場ですべてが、これまでのすべてが“激動”への序曲であった事が判明する。

 

リベール王国では浮遊都市《リベル=アーク》が、クロスベル自治州では《碧の大樹》が、エレボニア帝都ヘイムダルでは《煌魔城》が再臨していた。

すべてはオズボーンの仕業であった。

 

ナギトはそこから現地の仲間たちと協力し、まずは《リベル=アーク》を、次に《碧の大樹》を攻略する。

そして《煌魔城》の《緋の玉座》で待ち受けていたオズボーンとの対峙。そこでは運命に導かれたように《七の騎神》の起動者たちが集っており、オズボーンは七騎の騎神がいっせいに争う騎神大戦の宣言を行った。

 

騎神大戦が終わり、ナギトとリィンの一閃によってオズボーンの目的は潰えたかに思われた。

しかし時空に孔が穿たれるとオズボーンはその白い闇に消えていく。

オズボーンが《リベル=アーク》や《碧の大樹》、《煌魔城》といった規格外を顕現させたのは、“ありえない事象”の積み重ねによって世界を根底から覆し、“時獄牢”という次元に干渉するためだったのだ。そして先の騎神大戦によって生じたエネルギーによってついに世界に孔が穿たれた。

このままオズボーンを放っておけば世界に明日がないと確信した一行は、戻ってくると約束したナギトを時獄牢次元へと送り出した。

 

 

時獄牢次元でナギトはオズボーンと相対する。そこで明かされたオズボーンの目的の真奥とは、喪われた時に連れ去られた妻カーシャの奪還だった事が本人の口から語られる。妻を取り戻し時間をやり直すためにオズボーンは《鉄血宰相》として“激動の時代”を導いてきたのだと。

 

しかし時獄牢にさえ妻カーシャの姿はなく、絶望したオズボーンは蹲っていた。

そんな時、次元が崩壊している事がわかったナギトは己の身を犠牲に世界そのものの時間を巻き戻す事にした。

“特異点”であるナギトは自身というバグデータを消費する事で世界の理すら歪める超越的な権能を有しているのだ。

しかしそれを使うという事はナギトの消滅を意味していた。

 

それでもナギトは、この愛する世界のために、愛する者たちのために躊躇わず力を行使───。

 

ナギトというイレギュラーがなくなった世界は本来の形となって“閃の軌跡”という物語は動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし。

世界はナギトを覚えていた。縁を結んだ者が、背中を預けた者が、共に笑い合った友たちが。

 

ナギトのいない世界に違和感を覚え始める。

それはいずれ集積し、《煌魔城》にて発露する。

 

 

ナギトがいなければクロウ・アームブラストは死亡する。

この、幾億も繰り返された軌跡が棄却されたのだ。

 

そして、それによりナギトは復活する。

ナギトがいなければクロウは死ぬ。しかしクロウが死なないのであればナギトがいなければならないという逆説だった。

 

ナギトの復活により仲間たちの記憶も甦り、ナギトと同じく前の世界を覚えていたオズボーンが意気消沈していた事で事態は急速に鎮火していく。

 

 

その後、ナギトはリィンを除くⅦ組の友人たちと一緒にトールズ士官学院を卒業した。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあまた、いつか」

 

 

 

 

未来での再会を約して、その足取りは次の目的地へと向かう。

 

ナギト・ウィル・カーファイの軌跡は始まったばかりだ。

 

 

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