カレイジャスの到着は、終わりが近い事を示していた。
シメオンを降した今、カレル離宮外部には現有戦力+カレイジャスを止める敵戦力はない。
つまり、あとは黒キ星杯内部を制圧すれば事は終わる。
アーサーが絶望した未来は回避され、世界は新たな軌跡を歩んで行く─────
黒キ星杯に飛び込もうとしたナギトの頭上で、カレイジャスが弾けた。
「────は?」
紅き翼は爆散していた。絢爛だった紅色の飛行船はばらばらになって墜落していた。
何故、という疑問が脳内に氾濫する。思考が漂白される。
オリヴァルト・ライゼ・アルノール。
ヴィクター・S・アルゼイド。
トヴァル・ランドナー。
それからカレイジャスの乗組員。
それら全部の命が喪われたのだ。
ひっくり返るはずの盤面が元に戻された。
「───クソが」
ナギトとアーサーはカレイジャスの乗組員に爆弾が仕掛けられている事を伝え、それは解除されたはずだった。
それでもカレイジャスが爆散したからには、爆弾は複数個───見つけられなかったものがあるということだ。
しらみつぶしに、隅々まで点検されたはずだ。それなのに見落とされたという事実は。
やはり、運命が“閃の軌跡Ⅲ”という物語を全うさせるために強制力を働かせたとしか思えない。
甘かったのだ。ナギトは。
運命の強制力、システムの修正力。それらが物語を既定路線通りに進める力を有していると知りながら。それらに対抗できるのは“特異点”だけであると知りながら。他人に任せるなんて選択肢を取った。
悔やむのは後だ。盤面は終局に近づいている。
アーサーの話ではすでに黒キ星杯内部でも決着がつきかけているはずだ。
アーサーは確かに強いが、それでもまだ物語をひっくり返せるだけの実力はない。だからナギトがなんとかしなければならないのだ。
しかし敵は強大──────。事ここに至り、ナギトはようよう腹を括った。
黒キ星杯を包む結界を“八葉一閃”で斬り裂き、内部に突入する。そのまま最深部までダイブした。
呼ぶ。
「来い──────」
かすかな縁を辿り、かつて紡いだ繋がりを取り戻す。
それは人には不可能な業───“特異点”を消費するナギトの秘奥。
世界を超える縁の修復に、ナギトの肉体はおよそ5割が失われた。
だが、その代償に────
「───《緋の騎神》テスタ=ロッサ!」
かつての愛騎は起動者の元に舞い戻っていた。
☆★
黒キ星杯を降っていく。突入した最上部からオズボーンたちが待ち受ける最深部まで、落ちていく。
その中途の階層には強敵たちを足止めするために残ったⅦ組のメンバーたちがいた。その表情は総じて絶望に近しいものだ。《緋の騎神》核の中でナギトは歯噛みした。
他にもっと良い未来はあったのではないか。やり方を間違えたのではないか。そんな負の感情が渦巻く。振り払った。
黒キ星杯は、元々は帝都ヘイムダル大聖堂の地下にあった“始まりの地”のレプリカだ。七曜教会にとって重要な施設であるそれは、いつの間にかカレル離宮地下に移動し、更には暗黒竜の瘴気を引き受けた大地の聖獣が眠っていた。
アーサー曰く、大地の聖獣が己の内に封印していた瘴気が帝国に拡散する事で黄昏は始まるのだという。そして、瘴気を帝国に蔓延させるためには、それを封印している大地の聖獣を殺さなければならない。そのために必要になるのが《根源たる虚無の剣》───《黒の工房》が創り出したOzシリーズが剣になった姿なのだと。
すでに物語は終わっていた。
ナギトが黒キ星杯の最深部に到達した頃には、すでに。
「アーサー!」
大地の聖獣はすでにリィンと剣になるために犠牲になったミリアムによって斃されている。
黄昏まで秒読みという段階で、ナギトは蹴散らされた機甲兵に搭乗していたアーサーの名を呼んだ。
「……もう………終わりだ…………。ミリアムは剣になって……リィンは……………」
「まだ最悪は避けられる!弱音吐く暇あったら手ぇ貸せや!」
アーサーからの返事はない。この場の誰よりもアーサーが1番の絶望を宿していた。
「失敗した。俺は失敗した。失敗した……だから────」
ぶつぶつとつぶやくアーサーからナギトは視線を逸らした。あいつは、今はもう使い物にならない。
「おいおい、ここから盤面をひっくり返せる気かよ?」
挑発げに声をかけてきたのは《紫の騎神》ゼクトール──《猟兵王》ルトガー・クラウゼルだ。
「ひっくり返すんだよ!……クロウ!クロウだな?クロウでいいよな!?よし手伝えクロウ!」
そんなルトガーにナギトは吠え、手近な味方候補に声をかけた。事前にアーサーから聞いた話では、この時点で《蒼のジークフリード》はクロウ・アームブラストに戻っていると。
声をかけられたクロウはテスタ=ロッサを見て。
「─────、ナギトか?」
「ああ!……ああ?………いいから手伝えクロウ!」
その妙な反応に違和感を感じたが今は無視。眼前の脅威たちを見やった。
「──────」
が、その反応は総じてにぶい。
この世界のテスタ=ロッサの起動者たるセドリックの衝撃は計り知れないものがあるだろうが、オズボーンやアリアンロードまでが茫然としているように感じられた。
「閣下。どうなされました?」
《黒の騎神》イシュメルガ───ギリアス・オズボーンに侍る《黒のアルベリヒ》が声をかけた事でようやくオズボーンは意識を現実に引き戻した。
「───フ。……黄昏がついに始まるかと思えば、最後にこんな障害がいたとはな。……此度は、あの時のようにはいかんぞ……ナギト・ウィル・カーファイ」
オズボーンに呼応するようにアリアンロードもまた《銀の騎神》の中で覚醒する。
「ええ。我々に起きたコレについては後回し───今はただ、役目を果たすとしましょう」
それは。その発言は、おかしい。
クロウの事で芽生え、押し込めた違和感が再びナギトの中で首をもたげる。
それと同種の発言をしていないルトガーについては「?」であり、それもまたナギトの中でとある確信を深める要素となった。
「クロウ、聖女を10秒止めろ!」
「また無茶言いやがる!」
ナギトとクロウは阿吽の呼吸で分かれるとそれぞれ得物を持って突っ込んだ。
魔剣プロパトールと、ゼクトールに誂えられたバスターグレイブが交差する。
火花が、弾ける。
「んん?なんだこの記憶……ゼノとレオが……」
それは《猟兵王》の脳内にも。
ナギトにとっては福音だ。ルトガーの集中が途切れた一瞬で剣を翻すとバスターグレイブを絡め取ってゼクトールに斬撃を刻み込んだ。
「うおおっ!?」と起動者の声と共にたたらを踏んだゼクトールに追撃────
「なんだこれは……!?ふざけるなっ!僕が、僕こそが本物の────」
そこで乱入してきたのは、もう一騎のテスタ=ロッサ。セドリックを起動者とする《緋の騎神》だ。
「すっこんでろ三下!」
その狂気の突撃を無下にする。中空に出現した数十もの刀剣がセドリックのテスタ=ロッサに殺到して不出来な起動者もろとも《緋の騎神》はリタイアした。
「チィ、皇太子のおかげで助かったが───」
その間に体勢を整えたゼクトールの中でルトガーは思案する。舌打ちもセットで、自身の実力ではナギトのテスタ=ロッサには勝る事ができないという確信があった。
だが─────
「ぐう……っ!」
この乱戦ならば勝機はあった。
アルグレオンに弾き飛ばされたオルディーネの中で苦悶を漏らすクロウ。
「おいナギト!30秒は稼いだんだが!?」
「悪ぃクロウ、邪魔が入った!」
言いながら、2人はスイッチ。互いの相手を入れ替える。
「オマケだ!」と言ってナギトは先程セドリックにしたように数十もの刀剣を生み出してゼクトールに差し向けた。
それから《鋼の聖女》アリアンロード──《銀の騎神》アルグレオンに向き合う。
「因果なものですね、ナギト。かつては協力し《黒》を討ち祓った我々が争う事になるとは」
「────あなたの腹は知りませんが、容赦はしませんよ」
アリアンロードのその発言で、ナギトはとある事実を確信した。だが今は後回しだ。
「──参る!」
決意と共にナギトは駆けた。
そこから先は自身も戦っているはずの者たちすら魅了するほどの剣舞の時間だ。
刹那に思える十数秒のやり取りで互いに決め手がない事を理解。アリアンロードの技量に対しナギトはテスタ=ロッサの“千の武器”による手数で対抗している。
「スイッチ!」
そこから再度敵を入れ替える。戦術リンクで繋がった2人のコンビネーションは縦横無尽で、それが敵対するアリアンロードとルトガーに勝る点だ。
2人のスイッチを呼んだルトガーは迎撃の構え。しかし“千の武器”が再びゼクトールの構えを崩して有利を取る。
「八葉一閃!」
大上段から振り下ろされる一閃はゼクトールを掠めた。核を裂いて内部のルトガーの胴体を斬傷を刻み込んだ。
ルトガー・クラウゼル、ダウン。
これであとはアリアンロードのみ。クロウ込みでも厳しい相手だが、何とかしてみせる。
「下がれ、リアンヌ」
その意気込みを凍らせる悪意。
これまで傍観を決め込んでいたギリアス・オズボーン───《黒の騎神》イシュメルガの参戦だ。
その手に握られた黒く赤い大剣は超絶規模のなにかが込められている。
それは闘気とは呼べない、悪意の塊だ。この世全ての悪を凝縮し地表を薙ぐ一撃だ。
「退け、クロウ!」
ナギトも負けじと闘気を剣に込めた。自分のそれだけではまるで足りない。霊脈から強引に霊力を汲み上げて剣に注いでいく。
それはナギトが八葉刀神流として生み出した、最大威力の光の斬撃。
「零の型────!」
身に余る霊力を急速に取り込んだナギトの肉体はずたずたに裂けていく。血管がちぎれて気脈も寸断されて────しかし、その手を緩める事はない。
イシュメルガが闇の剣を振るった。
“ダージュ・オブ・エレボス”
降り注ぐ闇が世界そのものを砕かんばかりの勢いで迫る。
それを迎え撃つのは光の剣。
「──龍脈凱旋・王剣神授!」
極大の光の帯が闇の斬撃と衝突した。
「う、ぐくっ……ぢぃあああああ!」
拮抗。互角。
それはナギトの裂帛が保つ間の事だけだ。
テスタ=ロッサの召喚により肉体を5割喪い、零の型を発動するための工程を省略した事で、ナギトはとうに限界を迎えていた。
「リィイイイイインっ!!!」
カレイジャスが爆散し、ミリアムは己を庇って剣になった。
暴走した“鬼の力”に呑まれて斃すべきでない大地の聖獣を弑したリィンは、オズボーンに首根っこを掴まれていたが、そのオズボーンがナギト打倒に出張った事ですでに縛は解けている。
リィンもまた限界を迎えていたが、兄弟分の声によって覚醒した。
「おお…ォオオオオオ!」
大地の聖獣によって半ばから損傷したはずのゼムリアストーンの太刀を霊力でカバーしてイシュメルガに突撃する。
「──────」
それを止められたはずのアルグレオン───アリアンロードは動かず。その迷いを見て取れた者はいなかった。
ヴァリマールの太刀が“ダージュ・オブ・エレボス”を放つイシュメルガを捉えた。
斬りつけられたイシュメルガは戦技の継続をやめてヴァリマールと相対する────
「づっ……はぁ……はぁ…………。こんな……いや、これが原作の………」
イシュメルガの奥義を何とか凌いだナギトとテスタ=ロッサだったが、すでに限界だった。
イシュメルガの強さが、ナギトの記憶にあるより数段上だ。元々の世界より騎神のスペックに差があるのが、この本来の世界に程近い異世界という事なのだろう。
と、そこまで思考したところでテスタ=ロッサの姿が光の粒子となってほどけていく。
「くっそ……やっぱ因果の強度で負けるか………」
息も絶え絶えになりながらナギトは時間切れを悟る。
「フフ……ハハハハハ…………やはり僕が、僕のテスタ=ロッサこそが唯一の《緋の騎神》───!」
それを見ていたセドリックは歓喜の淵に立っている。腹立たしい歪み方だが、今のナギトにそれを戒めてやる余裕はない。
「テスタ=ロッサ……すまんが最後にもう一度命を懸ける」
「了承した、起動者よ。我が五体…砕け散るまで友のために使うが良い」
急に呼び出されたというのにテスタ=ロッサは尽くしてくれている。呼びかけに応じてくれたのだって奇跡みたいなものなのに。
「最高だぜテスタ=ロッサ!」
限界を、さらに超える。
肉体が千々に弾け飛ぶ激痛を耐えながら。身体のあちこちから血が吹き出すのも構わずに。血反吐を吐いても気にしない。
「千の武器、破空装填────破軍!」
霊力で鋳造した千の武器に“破空”を込めて撃ち放つ。それは接触すると同時に炸裂する爆弾でもあった。
「エンノイア、バルバトス」
次いで魔弓と魔槍を顕現させる。どちらにもはちきれんばかりの霊力を流し込んで、魔弓バルバトスに魔槍エンノイアを番えた。
「魔槍一擲!」
放つのは戦艦ガルガンチュア級すらをも墜とす一撃。
降り注ぐ刀剣と魔槍の脅威は確かにイシュメルガを震え上がらせるに足るもの。
「荒ぶる神の雷よ、戦場へ来たれ!」
──だが聖女の“アングリアハンマー”によってその大部分は届かずに散った。
「───大神雷槍!」
残った“魔槍一擲”もまた、アリアンロードの破局的一撃と相殺した。
「───ここではありません。退きなさい、ナギト・カーファイ」
ついにテスタ=ロッサは完全に消えた。光の粒子となってほどけていく様はある種幻想的ですらあったが、そんな感慨を抱いている場合ではなかった。
生身となったナギトにアルグレオンで槍を突きつけるアリアンロードに勝機を見出せない。
協力していたヴァリマール──リィンはすでにイシュメルガに敗北を喫し、遊撃に動いていたオルディーネ──クロウも力尽きている。
完全敗北の文字が脳裏を過った。
☆★
「───それでは始めるとしよう、リィン。世界を絶望で染め上げる、昏き終末の御伽話を」
ギリアス・オズボーンのそのセリフを聞いた瞬間。アルトリウス・ルグィンの脳内で火花が散った。
同時に至る感慨は、───ああ、今回も失敗した。
バツン、と画面が消える音がした。
「アーサー!」
己を呼ぶ声に、アーサーは目を覚ました。ナギトだ。ナギト・ウィル・カーファイ。運命を変えた彼が、八葉を継ぐ者である彼が、この場に来ていた。遅過ぎた。
「もう終わりだ」と教えてやる。リィンは“鬼の力”に呑まれて、ミリアムは死んで剣になった。救えたと思っていたカレイジャスもどうしてか爆散した。もう打つ手立てがない。
「失敗した。俺は失敗した。失敗した。だから────」
すべて、全て、総て、思い出した。
俺は前回も失敗したから、この世界にナギト・ウィル・カーファイを呼んだのだ。
だが彼がいても運命には勝てなかった。
敵が強過ぎる。《鉄血宰相》の一味に《身喰らう蛇》、《黒の工房》も。すべてが敵だ。敵うはずがない。
力は尽くしたんだ。やれる事はやったはずだ。
生まれてからこっち、ずっと力を蓄えてきた。その全部を振る舞った。この運命を回避するためだ。
失敗した。無理だった。無茶だった。無謀だった。これは運命だった。あらゆる希望が破却されて黄昏が始まるのは決まっていた事だった。
────なのに、なんで。
────まだお前は諍っているんだ、ナギト。
「ああああああ!」
遅過ぎた。きっと、立ち上がるのが遅過ぎた。
「聖剣解放───!」
でも、立ち上がらずにはいられない。もう負けが決まったような状態で、それでも戦う英雄の姿に、そう───感動したのだ。
「我が剣の内にて燃え上がる日輪の刻印よ───」
七曜教会の裏側たる星杯騎士団。聖痕に選ばれし12人の騎士を戴く騎士団。アーサーは騎士団において正騎士という身分であり、単独での任務を与えられる一人前である。
アーサーはその騎士団においてアーティファクト“太陽の聖剣ガラティーン”を用いる事で擬似的に聖痕を再現────
「天に輝きてその威光を示せ────!」
───十三人目の守護騎士と呼ばれている。
ぐるぐる、炎が渦巻く。それは味方にとっては身を守り癒す息吹となり、敵にとっては身を焦がす灼熱となる。
「ほう……ようやく全力を出したか、十三人目……《太陽の騎士》アルトリウス・ルグィン」
イシュメルガの中でオズボーンがベールを脱いだアーサーに目をやる。
《黒の工房》を取り込み《身喰らう蛇》と手を組み、Ⅶ組を降して、八葉を継ぐ者を退け、黄昏に至る。
その道筋の最後に立ち塞がったのがアーサーだ。
「出し惜しみしてたわけじゃねえよ。使うタイミングを逃し続けてただけだ」
大地の聖獣との戦いは機甲兵で、聖剣 / 聖痕を解放する機会を逸していた。
「もうこの場面で勝てるとは言わねえよ。だが完全敗北にはさせない────黄昏は俺たちが食い止めてみせる!」
「フフ………意気や良し。諍ってみせるがいい!」
禍津大剣を構えるイシュメルガ。そこに渦巻くのは暗黒の悪意──ダージュ・オブ・エレボスの準備に入っている。
「いえ、オズボーン宰相……ここは僕に任せて下さい」
と、そこに割って入ったのはナギトによって損傷したテスタ=ロッサを修復したセドリックだ。
「アルトリウス・ルグィン………、ルグィン伯の弟君である君は、僕たちの世代で最強の名を欲しいままにしていたね。……その最強の名、ここで僕が貰い受ける!僕だけに許された僕だけの力で!!」
剣を構えるテスタ=ロッサに、アーサーは渦巻く炎を操って味方を戦域から離脱させる。
「そうやって力に酔ってるからお前は三下なんて呼ばれるんだよ───!」
《緋の騎神》テスタ=ロッサを駆るセドリックに、アーサーは聖剣に炎を集中する。
「グローリープロミネンス!」
解き放つ灼熱は、生身と騎神という差を丸ごとに埋めた。
その熱量は魔神マクバーンの“ジリオンハザード”にも匹敵する。
未だ騎神に慣れていないセドリックと聖剣にストックした力を聖痕として解放したアーサー───微かな勝機を一瞬の間隙を見計らって掴み取った。
再度戦闘不能に追い込まれるテスタ=ロッサ。「殿下、ここは」とオズボーンが撤退を指示して彼らは転移によって黒キ星杯から立ち去った。
黒キ星杯がほどけ、歪みが発生する事を悟った魔女エマがⅦ組メンバーを転移によってこの場を脱出させようと動く。
ついに新Ⅶ組も外に脱出させようと駆け寄ったエマだが、その転移陣から離脱したのはミュゼだった。
その手には蒼い羽が握られていて、かつてヴィータ・クロチルダが使い魔としたグリアノスの残滓を使った転移具だと言う。別行動をしようとするミュゼに、ナギトが同行を請願した。
ミュゼはそれを了解するとナギトとふたりで黒キ星杯を脱出する。
アーサーたちもエマの転移によって黒キ星杯を脱出した。
転移で消える最中、ナギトはこう言った。
「すまないアーサー。……またな」
その目に謝意はあれど諦観はなく───、この絶望的な状況からでも未来を見ているようで。
だからアーサーも未来を諦める事はしないと決めた。
「ああ、また………ナギト、次は一緒に」
そうして、八葉を継ぐ者と太陽の騎士の物語は次の幕へ移行する。