八葉を継ぐ者──AAA──   作:クラウンドッグ

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追想〜Failure ∴ Remeke〜

 

 

アルトリウス・ルグィンがエレボニア帝国を旅立って約2年の月日が経過した。

その間帝国では十月戦役やクロスベル併合、北方戦役などが起きて大陸は激動の時代に向けて助走を始めている。

 

七曜暦1206年。リィン・シュバルツァーがトールズ士官学院を卒業し、新設されるトールズ士官学院第Ⅱ分校へ教官として就職する年に入っている。

 

 

 

「行くのか?」

 

 

「はい」と振り返るアーサーの目に映ったのはセリス・オルテシア。七曜教会は星杯騎士団の栄えある頂点の12人、守護騎士の1人だ。ここ一年と少しアーサーが世話になった相手でもある。

 

 

「ずっと言ってたしな、お前。帝国が起こすであろう世界的な大戦争──それを未然に防ぐために自分を含めた戦力を宛てろって」

 

 

「そうすね。まあ今や大陸全土がきな臭い。副長やガイウスさんを派遣してくれるだけでも助かりますよ」

 

 

アーサーの言は半ば愚痴だ。七曜教会はゼムリアの防人を自認している。だからその脅威となるものに目を光らせてはいるが、切札である守護騎士12人にはゼムリア大陸は広過ぎた。

もちろん教会には守護騎士麾下の星杯騎士団や、省を別とする僧兵もいるが、それでも人数は不足している。

 

アーサーは帝国が起点となり厄介事が起こると知っているが、教会もアーサーの言葉を鵜呑みには出来ずに、いわゆる適正な戦力を大陸に配分している。

 

 

「ま、なんかあったら呼べや。お前がいれば大抵の事は何とかなるだろうけどな、十三人目さんよ」

 

 

十三人目──というのが星杯騎士団でのアーサーの渾名だった。アーサーが所有を許可されたアーティファクト《太陽の聖剣》は能力を解放すると、その力の発露の証として使用者の背に聖痕に酷似した紋様を浮かび上がらせる。それを揶揄して周囲はアーサーを十三人目などと呼ぶのだ。

ちなみにアーサーは件のアーティファクトを用いて星杯騎士団において、一年余りで正騎士という身分にまでなっている。

 

 

「あなたの担当共和国周辺でしょ。……心の支えにはしてますけど」

 

 

アーサーは騎士団の許可を得て潜入捜査という体裁でエレボニア帝国のトールズ第Ⅱに入学する手筈になっていた。

 

 

セリスとの短い挨拶を終えてアーサーは帝国に戻る。

2年前とは比較にならない力を得て。《太陽の聖剣》に、羅刹たる姉の教えがようやく実を結び。その胸には熱く燃える決意を宿して。

 

 

 

──運命を変える。あの悲劇的な結末はもう見たくない。

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

そして、そして、そして─────────。

 

 

 

 

 

 

「───それでは始めるとしよう、リィン。世界を絶望で染め上げる、昏き終末の御伽話を」

 

 

 

 

 

 

 

───────失敗した。

 

 

失敗した。失敗した。失敗した。

俺は、失敗した。何もかもが不足していた。

力も知恵も、すべてが足りなかった。

 

運命は変えられなかった。

1度目のサザーラント州での演習。変えるべきほどの悲劇はなかった。2度目のクロスベルでもそうだ。

3度目のオルディスでの演習は違った。あれは列車砲で街に被害が出る。食い止めた。4度目の帝都での演習は変えるべき運命はたくさんあった。そのすべてに手が届いたわけではなかったが、運命は良い方向に変わったはずだ。

 

だが、大一番で。最も大切な場面でアーサーはしくじった。

 

 

悲劇の結末は変えられなかった。

シナリオに定められた通りに物語は収束した。

 

 

 

───運命は変わらなかった。

 

 

 

 

「あぁ、……ぁぁぁ…………ダメ……だ。こんなのは間違ってる。……………間違ってるのになんで───!!?」

 

 

なんで、変えられないのだろう?

運命はそれほどに強固なのか。神の定めたシナリオからは外れられないのか。

そんな事はないはずだ。彼に出来て俺にできないなんて、そんな不条理。

 

 

 

 

「うあああああああああああああ!!!!」

 

 

 

それは醜く不細工で、みっともない絶叫だった。魂からの叫びだった。その本質から来る願いだった。

 

 

 

変えたい。変えなければならない。この運命を。皆が笑って終われる物語を。誰もが認めるハッピーエンドを。希求する。

 

 

アルトリウス・ルグィンは“特異点”だ。

それは物語を変革するための存在。より正しく表現するのなら、彼の存在が物語を正史から異聞史へと枝分かれさせる。彼がいる時点で物語は変化している。アルトリウス・ルグィンがいる閃の軌跡へと。すでに変革の種は撒かれているのだ。そこから先は彼次第。変革を成すか、物語に呑まれるか。

 

そして今回、彼は物語に呑まれた(失敗した)

 

 

だが、彼はそのエンドを否定する。

 

魂の叫びが、彼の“特異点”の力を解放した。

すでに閃の軌跡Ⅲは終わっている。締めのセリフまでが紡がれて、彼の“特異点”はすでに無限ではなく、消費性だ。

彼は自身を消費して、物語を起点の時刻まで巻き戻す。彼の知る物語を変革した誰かをこの世界に造り出して。この世界での出来事すべてと誰かの記憶を喪う事を代償として。

 

 

 

「やり直しだ」

 

 

 

アルトリウス・ルグィンの物語は再び始まる。

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

 

 

「ご紹介にあずかりました、ナギト・ウィル・カーファイです。今日から皆さんの副担任となります」

 

 

 

 

 

そして《八葉を継ぐ者》と《太陽の騎士》の道は交わるのだ。

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