八葉を継ぐ者──AAA──   作:クラウンドッグ

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アルトリウス・ルグィン

 

 

ギリアス・オズボーンの真実が判明した。

稀代の宰相である彼が、エレボニア帝国中興の祖である《獅子心皇帝》ドライケルス・ライゼ・アルノールの転生した姿であること。

そのドライケルスの晩年は《黒の騎神》イシュメルガに付け狙われ、今生においてもそのせいで悲劇に見舞われてリィンをシュバルツァー家に預ける事になった過去。

 

かつてオズボーンの語った“時間に関与しない絶対敵”がイシュメルガを指すのだともわかった。オズボーンの背後に何者かがいる、というナギトの考えは正しかったのだ。正しかったところで救いようはなかった。

 

 

 

第三の相克があった。

ルトガー・クラウゼルの駆る《紫の騎神》ゼクトール。《猟兵王》たるルトガーの戦闘力は凄まじくリィンは苦戦を強いられたが、仲間の協力もあり相克を制した。

それに伴いゼクトールはヴァリマールに吸収される。不死者であったルトガーもまた《西風の旅団》の家族たちと別れを告げた。

 

 

 

 

 

その翌日。オーレリアからの呼び出しを受けたアーサーはナギトを伴ってトールズ第Ⅱ分校、アインヘル小要塞へと向かった。

 

小要塞の最深部に通されたアーサーを待っていたのは宝剣アーケディアを抜いたオーレリアだった。

 

 

「………姉上、何の用ですか?剣も抜いて……物騒ですね」

 

 

「なに……彼の地にてⅦ組の力は示してもらったが………そなたの深奥までは見ていなかったと思ってな」

 

 

オズボーンの真実を知るための道中にて試練として立ち塞がったオーレリアとクロチルダの2人をⅦ組は降して見せたが、その戦いではアーサーが全力を出していなかった事をオーレリアは見抜いていた。

 

アーサーは「はぁ」と視線を虚空に泳がせた。姉の悪い癖だ。若者の力を自ら測りたがる。

 

 

「ナギト、そなたを呼んだのはこの戦いの見届け人になってもらいたいと思ったからだ。………そちらも活動があるだろうが、どうか我ら姉弟の我儘を聞いてはもらえまいか」

 

 

「俺はいいんですがね」

 

 

ナギトは許諾したが、当人であるアーサーは姉との戦いに前向きなのかわからない。それを“姉弟の我儘”と表現するとは、リィンのナギトへの雑な扱いに通ずる所がある。

 

 

「どうせ逃がしちゃくれない。………ナギト教官、お願いできますか」

 

 

アーサーは諦観を示すと共に聖剣を鞘から引き抜いた。

「引き受けた」とナギトは言って一歩下がる。そのナギトにオーレリアが問いかけた。

 

 

「ナギトよ、我が弟は如何程だ?」

 

 

「もはやⅦ組の主力と言って過言ではなく。………内戦当時の俺なら負けます」

 

 

アーサーの知らない過去のナギト。煌魔城でウィル・カーファイの名前を取り戻す以前のナギト・シュバルツァーなら負ける可能性がある。

 

ナギトのアーサーへの評価はオーレリアの心胆を沸き立たせるに充分だった。

 

 

オーレリアは宝剣を構えて「構えよ」とアーサーに言うが、しかしアーサーはこまっしゃくれた顔で姉とナギトを交互に見た。

 

 

「ずるいな。姉上ばかり情報を得て」

 

 

それは闘争前にオーレリアだけがアーサーの実力を聞き測れた事実に対しての指摘だった。本来のオーレリアならやらない不公平。弟の実力を知りたいがための勇み足はオーレリアにとってのアドバンテージ。それを姉だけが得られた事への不満だ。

 

 

オーレリアはその指摘に笑い、「らしくなったものだ」と剣を下ろした。

 

 

「ならばそなたもナギトからの助言を受けるが良い。それで公平だ」

 

 

アーサーはナギトを見やり、視線を向けられた本人は肩をすくめた。強かになった。

 

ナギトはアーサーの元に行くと、オーレリアには聞こえない声量で話した。

 

 

「俺があの姉に勝てる方法ある?」

 

 

「初手で最大火力ぶっ放せ。遠慮せず殺す気でやってようやく互角に持ち込めるかもわからん」

 

 

短いアドバイスを与えたナギトは「じゃ」と気軽に、足早に身を引いた。2人から充分な距離を取った。

 

 

 

「さて……では準備は良いな?」

 

 

改めて宝剣アーケディアを構えたオーレリアの鋭い眼光がアーサーに刺さる。姉弟だからと言って手心は期待できそうにない。

 

アーサーもまた聖剣ガラティーンを構えて《黄金の羅刹》に相対した。

 

 

 

 

「………始め!」

 

 

ナギトの合図でルグィン姉弟の試合は始まった。

 

 

 

「マルスフレア」

 

 

まず動きを見せたのはアーサー。聖剣に秘められた機能を解放した。

“マルスフレア”は使い手の能力を限界まで向上させる業だ。しかし暴走のリスクもありリィンの“鬼気解放”と類似する点がある。

この“マルスフレア”を制御化に置いたものが、聖痕の解放ではあるが、あちらは発動にやや時間がかかる。

 

 

 

「天照 / 草薙────!」

 

 

 

解き放たれた炎熱は聖剣を極光で彩る。その光と熱は、まるでそこに太陽が顕現したかのようである。

太陽は刃となり、その窮屈な刀身から解放される。巨大化した炎の斬撃がオーレリアを襲った。

 

 

 

「………………マジか」

 

 

やもすれば───否、確実にアインヘル小要塞そのものを破壊できる火力を前にナギトはそうこぼした。正直ビビった。

 

だが、現に小要塞は未だ在る。という事はオーレリアがその破壊規模をかなり減衰させたという事だ。

 

 

 

「我が剣の内にて燃え上がる日輪の刻印よ、天に輝きてその威光を示せ」

 

 

オーレリアの気配は未だ健在である。煙と粉塵で遮られた視界の中で膨れ上がる彼女の闘気。オーレリアが体勢を立て直す一瞬でアーサーは“マルスフレア”の熱量を擬似聖痕によってコントロール下に置いた。

 

 

黄金の影が煙を突き破って吶喊。アーサーに肉薄する。激突する聖剣と宝剣。間近で交わす視線。オーレリアの瞳は爛々と輝いていた。

 

 

「驚いたぞ、我が弟よ!」

 

 

力任せにオーレリアは宝剣を振るう。直当ての“覇王斬”はアーサーを吹き飛ばし───否、アーサーは自ら飛び退いて威力を軽減していた。

 

飛んだアーサーは炎熱を利用して空中に留まる。

 

 

「まだまだ……これくらいは序の口!」

 

 

アーサーが聖剣を掲げると、周辺に火球がいくつも浮かんだ。聖剣の切先がオーレリア向けられると火球はその指揮に従って迸った。

 

 

 

 

「────果てよ」

 

 

“覇王斬”。覇気をまとって豪快に振られた宝剣は斬撃を飛ばし、殺到する火球のすべてを、自身に届かせる事なく炸裂させた。視界を灼く火球の余熱に、アーサーが目を細めると、その端で影が踊った。

中空で振り返ったアーサーが目にしたのは姉オーレリアの姿。

 

慌てて防御に回した聖剣ごと地面に叩きつけられる。

「かはっ」と肺の中から空気が逃げて、しかし空中で宝剣を構えたオーレリアは回復を待つ気はないらしい。

 

 

「四耀剣!」

 

 

大地を砕く衝撃がアーサーに降りかかる。絶死の状況を聖剣を掲げて回避する。

 

 

「天照 / 八咫鏡」

 

 

炎のフィールドが“四耀剣”を受け止める。しかし急造の奥義ではタメも足りずに時間稼ぎにしかならない。

やがて打ち砕かれた炎熱の盾が砕け散り、着地したオーレリアは体勢を立て直したアーサーと向き直った。

 

 

 

「中々だ。《黒の工房》にてかの《聖女》とやり合ったという話はまことのようだな?」

 

 

 

リィンを取り戻すために潜入した《黒の工房》でアーサーはアリアンロードに単騎で戦闘を挑んだ。様々な要因が噛み合って互角だった。

 

だが、今対峙している姉はそんなアリアンロードをすら屈服させた《黄金の羅刹》。

 

 

「……ああ、そういう事か。やっとあの時の言葉の意味がわかった」

 

 

 

 

──“「それに勝因はもうひとつ。相手が《鋼の聖女》ではなく《槍の聖女》だったからだ」”

 

 

オーレリアとアリアンロードの戦いの後、ナギトはそうこぼしていた。

これはきっと、リアンヌ・サンドロットは生前を指しており、アリアンロードは不死者となって研鑽してきた今の彼女を指しているのだ。

 

そしておそらく、《黒の工房》で自分の対峙したのもリアンヌの力量としてなのだろう。

 

 

彼女の気高さに、胸中に炎が渦巻く思いをした。

 

 

 

「…………………見せてみよ。我が弟、アルトリウス・ルグィンよ……そなたの剣、そなたの道を」

 

 

 

 

アリアンロードの気高さはいち軌跡ファンとしての心を思い出させる。

ああ、そうだ。自分は憧れたこの世界に生きているではないか。あんなに前からナギトは言っていた。

 

 

──“「お前は生きてるか?俺は生きてるぞ。この世界に、ひとりの人間としてな」

 

──“「お前はもっと自由にやれよ」”

 

 

 

あの時の言葉が、ようやく腑に落ちる。

アルトリウス・ルグィンは──俺は、今この世界に生きている。

 

 

「我が姉、《黄金の羅刹》、軍神オーリア・ルグィンよ………どうか受け止めてください。俺の──いや、俺自身を」

 

 

アーサーはその言葉をオーレリアへの返答とし、それ以上の言葉を紡がなかった。代わりに紡がれたのは火球。先のものとは比較にならない、あの魔神マクバーンにさえ勝るとも劣らぬ熱量の塊。

 

極小の太陽だ。発する熱さだけで耐熱コーティングされたらしい小要塞の壁面が溶け始めている。

アーサーはそれを圧縮した。5アージュはあった太陽がバスケットボールサイズにまで。それと同時に放たれていた熱も収束する。溶解していた壁や床はそれを止める。

 

ナギトは戦慄していた。それは己の絶招たる“無縫真気統一”に通じる技量だ。

 

 

 

「──── 天照日之神威(あまてらす)

 

 

 

星が墜ちる。太陽が落下する。

これが炸裂すれば小要塞が──第Ⅱ分校が──否、リーヴスそのものが壊滅する。

オーレリアであっても長期の戦線離脱は必至。ナギトも弱体化している今なら死ねる。

 

 

これは介入すべきだ、と太刀に手を置いたナギトを、オーレリアが視線だけで制した。

 

 

 

「────まさか………できるのか?」

 

 

ナギトの疑問は、次の瞬間に答えが示された。

 

 

 

墜ちる太陽を、オーレリアは宝剣で斬り絶った。

 

太陽そのものも、炸裂する炎熱も、その余熱すらもを無に帰した。

 

 

 

「…………界理剣」

 

 

ぽつりと、ナギトはつぶやいた。

オーレリアのそれは、ナギトの“八葉一閃”と同じものだ。万象の根源を宿す一刀。ゆえにこの世の総てに対して絶対的な有利を取れる。

ジャンケンで例えるなら、世界の総てはグーで勝負しているのに“界理剣”はパーを出しているようなもの。どれだけの強度のグーでもパーには勝てない。

 

 

これは、そういった理不尽だ。

 

 

 

炎が消え去り、開けた視界をオーレリアが疾る。アーサーに肉薄し────、その剣を止めた。

アーサーは気絶していた。あの奥義を放ち、精魂尽き果てたという事だろう。

 

 

オーレリアはマントを翻して剣を納めた。

 

 

「ナギトよ、言伝を頼む。……悪くなかった。そのまま励め、と」

 

 

「了解です」とナギトの返事を聞き届けたオーレリアは小要塞を去っていく。やるべき事は山積しているだろうに、それでも弟の成長を見ておきたかったのだ。

 

がらん、と音を立ててアーサーの手から聖剣がこぼれ落ちた。次の瞬間には膝から頽れるアーサーをナギトは受け止める。

 

アーサーの奥義───“ 天照日之神威”はまさに地表を灼き尽くす一撃だった。それを無にしたオーレリアも見事だが、己が失神するだろうとわかっていながら、それを姉に撃ったアーサーも然りだ。あの超抜的な火球をオーレリアならなんとかするという信頼が成した結末だった。

 

 

 

「……大した姉弟過ぎんだろ」

 

 

 

☆★

 

 

閃の軌跡が大好きだ。

 

キャラクターが好きだ。世界観が好きだ。シナリオが好きだ。演出が好きだ。システムが好きだ。

とても語り尽くせないくらい大好きだ。

 

ワクワクする。ハラハラする。ドキドキする。

 

 

閃の軌跡は良かった。

これから主人公たちが大きな戦いに巻き込まれていくのがわかった。何も喪われなかった。

 

 

閃の軌跡Ⅱは良い。

戦いの果てに喪われたものもあったが、この先で取り戻せるかもしれない希望があった。

 

 

閃の軌跡Ⅲは─────

 

喪われたものが大き過ぎた。

きっとこの先にもハッピーエンドが用意されているだろう。そう思いつつも、心は焦れて。

 

焦れて、焦って、焦がれて。

いくつの夜を越えても嘆きはリフレインして。

 

焦れて、焦って、焦がれて。

焦れて、焦って、焦がれて、焦れて、焦って、焦がれて。

焦れて焦って焦がれて焦れて焦って焦がれて。

 

 

 

 

 

気付けば、この世界に転生していた。

 

アルトリウス・ルグィン──それが今生での名前。ルグィン伯爵家の長男。帝国に名高き《黄金の羅刹》オーレリアの弟。

 

この夢のような奇跡に胸が踊った。

閃の軌跡Ⅲの結末を思い出して血が凍った。

 

 

変えなければ。

 

 

そこからはひたすらに努力した。研鑽した。研ぎ澄ませた。来るべき時に運命を超えられるように。

 

無駄な時間は1秒も過ごしていない──なんて、口が裂けても言えないけれど。

 

 

力をつけて、縁を結び、運命に挑む。

 

 

 

 

 

────失敗した。

 

 

 

俺は失敗した。カレイジャスを救えず、ミリアムを救えず、リィンを救えず───運命に敗北した。

 

 

絶望は“特異点”の真価を呼び覚まし、世界の時間は巻き戻される。

けれど、役者が同じではまた同じ結末になるに決まっている。

 

 

ならば新たな役者をこの世界に。

 

あの英雄をこの世界に。

 

 

 

だから、きっと彼は────────

 

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

目が覚める。アーサーがいたのは第Ⅱ分校の医務室だった。ベッドに寝せられている。オーレリアとの試合で意識を失い、ここに運ばれたのだろうと推測した。

 

 

「起きたか」

 

 

ベッドのすぐそばでアーサーの起床を待っていたナギトは読みかけの本を閉じて傍に置いた。“3と9”というタイトルが見えた。

 

 

「俺は…どれくらい……?」

 

 

「1時間も経ってない。外傷は特になかったけど一応回復アーツをかけといた。どこか異常あるか?」

 

 

ベッドから身を起こしたアーサーは自身の身体を確認した。異常はない。疲労感だけが残っている。

 

 

「大丈夫そうだな。分校長から伝言がある」

 

 

アーサーの様子から無事を察したナギトはオーレリアから預かっていた伝言を伝える。聞いたアーサーは「そうか」とぽつり、続けた。

 

 

「俺の実力の大部分は聖剣ガラティーンに依るもの……ズルしてるようなものだと思ってた。……ズルしてもいいと、何でも利用して運命を変えてやると、そう思ってた。そのために……俺は転生したんだと…………」

 

 

アーサーはベッドのそばに立てかけられていた聖剣の柄を撫でた。

 

 

「自分語り、聞いてくれるか?」

 

 

ナギトは僅かな逡巡のあと、「おう」と短く応じた。

 

 

「俺は……何の因果か、この世界に転生した。望んだわけじゃない。気づいたらそうなってた。……でも、だからこそ…これは天命なんだと思えた」

 

 

「天命…………」

 

 

ナギトの実感は薄い。己が挑むべき運命への反逆当時、記憶を失っていたからだ。だがそんな当時でも漠然とした使命感はあった。裡側から化身が“運命を変えろ”と叫び続けていてくれた。

 

 

「頑張ったよ。頑張ったんだ……無駄な時間は1秒も過ごしてない、なんて口が裂けても言えないけどさ」

 

 

頑張った。頑張れた。頑張れるだけの環境があった。

 

 

「俺はきっと楽しかったんだな。姉上に剣を教わって、食卓を囲む。騎士団のやつらと修行して笑い話をする。Ⅶ組のクラスメイトと───」

 

 

 

ぽろりと、雫が落ちた。

どうして涙が出たのかわからない。

振り返った思い出のひとつひとつが愛おしくてたまらなかった。

 

 

「わかるよ」

 

 

ナギトはアーサーの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

 

 

「楽しいもんは楽しいで良いんだよ。天命のために生きたとしても、それが全部じゃない。………色んな事に一喜一憂してさ…その積み重ねを人生と呼ぶんだから」

 

 

存分にアーサーの髪型を崩してやったナギトは手を離してからにかっと笑った。

 

アーサーは思い出す。ナギトはアーサーに呼びかけていた。ひとりの人間としてこの世界に生きているのかと。それはこういう意味だったのだ。

 

 

 

「やっと……わかったよナギト教官。俺は天命のために生きてきた。あの運命を変えるためだけに………。だけど、俺の人生はそれだけじゃなかった。………今はこの世界のすべてが愛おしいよ。………それで、良いんだよな…?」

 

 

ほんの少しの不安を滲ませた問いかけにナギトは「ふっ」と笑った。

 

 

「良いんだよ、それで。お前はアルトリウス・ルグィン──この世界に生きるひとりの男なんだから」

 

 

ゼムリアに生きる一員として、もっとこの世界を楽しんでいいんだと。これはそういう肯定だ。

 

 

「ありがとう」と礼をするアーサーの頭をナギトはまた雑に撫で回す。照れ隠しだとアーサーも理解した。

 

 

すっくと立ったナギトはニヤリと笑って言う。

 

 

「しかしまあ、ようやくスタートラインだな」

 

 

「これでようやく……?真理だと思うんだけど」

 

 

「いやいや、この世界のやつらはみーんなわかってる事だからな?口にはせずとも深層心理で」

 

 

「………やっぱ異世界人?転生人?はディスアドバンテージだよなー」

 

 

「人生を楽しむって意味ではな。…………何はともあれ、ハッピーバースデイ、アーサー」

 

 

「違うが?」

 

 

「違わねーよ。今日こそお前がアルトリウス・ルグィンとして正しくゼムリアに生まれた日だ」

 

 

言われてアーサーは納得した。これまで、運命を変える事に躍起になって、アルトリウス・ルグィンの人生を蔑ろにしてきた自分。そして、これまでのすべてを、これからのすべてを愛しく想っていいのだと、世界の一員として人生を楽しんでいいのだと気付けた自分。

確かに誕生日と言えるかもしれない。

 

 

「産声上げとく?ばぶーって」

 

 

「バブゥゥゥ!!」

 

 

「ホントにやるやつがあるか!保健室で変なプレイしてると思われるだろうが!」

 

 

台無しであった。

ナギトとアーサーは顔を見合わせて笑い合った。こんな馬鹿げたやり取りすらも、素晴らしい人生のいちページなのだと胸の奥にしまい込むのだ、そっと。

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