セドリックとの邂逅を終えたナギトはその足で列車に飛び乗った。行き先はバリアハートである。
バリアハートはアルバレア公爵家が統治するクロイツェン州の中心だ。翡翠の公都の別名でも知られる貴族の街。
ナギトがそこに向かうのはアルバレア公爵代理を務める級友ユーシス・アルバレアと、そこに身を寄せているミリアム・オライオンと会うためである。
列車から降りたナギトは夜半のバリアハートの街並みを抜けてアルバレア城館に足を運ぶ。すでに連絡をとっていたおかげか、執事とメイドが揃ってナギトを出迎えて、懐かしのクラスメイトたちとの再開を果たす。
「久しいなナギト。いや、それともこう呼ぶべきか?……《皇の手》ナギト・ウィル・カーファイ殿、と」
「やめとくれ。今はお前らのお友達のナギトだ」
「ナギト、ひっさしぶり〜!また少し太ったんじゃない?」
「久しぶりだなミリアム。お前は変わってないようで安心したよ。主に身長とか」
嫌味だったりデリカシー皆無だったり。気心を知れた間のやり取りは疲れた心を癒す楽しさだった。
再開した3人は笑い合い、ユーシスはナギトを城館の奥に案内する。ナギトのお願いで軽食をメイドに作らせて馳走までしてくれて、ナギトの腹は心と共に満たされた気分だ。
ナギトの食事が終わったあと、3人の密談は開始された。
「リィンから話は聞いている。ナギト……お前が未来の記憶を持っていると」
切り出したユーシス。リィンから多少は聞いているようで、話は早そうだった。
「並行世界の未来な」と補足してナギトは語った。これから帝国で起きる事、これから帝国が起こす事。それらの事象を余さずすべて。
喋り終えたナギトはコーヒーの最後の一口を飲んだ。小一時間は喋り倒したが、ユーシスとミリアムは黙って聞いていた。
ナギトの嚥下を見届けてユーシスは座ったまま腕組みをして、
「それが真実だと仮定して……お前は俺に何をさせたい?……たまたまうちに来ていたミリアムを引き留めさせてまで………」
「そういえば、すっごく都合が良かったよねー。ナギトの連絡のちょっと前から情報局の指示系統が麻痺してさ。それで僕の任務も宙ぶらりんになっちゃった」
ミリアムは情報局に所属のエージェントだ。指示系統が麻痺して、指令が届かないならば友人の家で過ごす事もできる。
「ああ、それ俺の仕掛け。……情報局には過去に渡り帝国内で不法侵入や破壊工作をしていた疑いがある…って名目で監査が入ってる。そっちはマキアス経由だな」
「ええー!?情報局に監査ってありえないでしょ!?」
「いやいや。情報局もあくまで公的機関。確かな地位にある者からのリークがあれば動けるさ。何せ後ろ盾は我らが皇帝陛下だ」
「……そのための《皇の手》でもあるのか…………」
ミリアムの言う通り、本来なら情報局に監査なんてありえない。国家の情報戦を担う重要機関。国内外問わず極秘情報を集積しているそこに監査が入るなんてのは常識知らずこの上なしと言ったところだ。
その機密性ゆえに情報局はこれまで監査を免除されていたが、それは特例だ。情報局も公的な組織である以上、監査局から求めがあれば応じるしかない。
《皇の手》の権力をもってしても一筋縄ではいかない案件だったが、各方面にたくさんの賄賂を渡して監査は実行される事になった。それで得られる効果は情報局の一時的な指示系統の麻痺くらいだが、それこそナギトの狙った間隙だ。こうしてミリアムと会う事ができているのだから。
ちなみに“たくさんの賄賂”の出所はナギトに与えられた予算からだ。急遽成立した《皇の手》には国家予算から割り振られたミラはなかったが、これは皇族の私財から出ている。本当にユーゲントには頭が上がらない。
「で、ミリアム……お前、情報局クビな」
「ええ!?」と再びミリアムは叫ぶ。こうもいきなり職を失う事と、それがあまりにもスムーズに運んだ事実に対して。
「さっき言った疑いの大部分はミリアムの仕業だしな。オーロックス砦への侵入とか、ノルド高原の歴史ある石切り場の破壊とか」
あろう事かナギトは同級生の任務を罪として監査局に伝えていた。それも言ったのは極一部であり、余罪を含めれば情報局はかなりまずい。
「トカゲの尻尾切りだな。《鉄血子供達》のひとりであるミリアムを罷免できたって事実は監査局からすれば満足できる大手柄だ」
「ええ……」と今度は力なく肩を落としたミリアムにナギトは笑ってみせる。
「まあそんな心配するな。事が終われば“全部誤解だった”で復職させる」
そんな無理を通せるのが権力なのだ。人間社会において暴力より恐ろしい力である。
「で、無職のミリアム。お前には明日から俺の助手をやってもらう」
ミリアムがそうなるよう追い込んだナギトからの転職の強制。厚顔極まれりな行いだが、だからこそ本気度が窺える。
「……まったく。オジサン並みに剛腕だね。仕方ないから付き合ってあげる!」
ニシシ、と笑うミリアム。ナギトの無茶に突き合わせる事になったが、そこが一番安全だ。
女神の聖獣を弑し得る“終末の剣”となるミリアムの身柄が重要である事は先に告げている。だからミリアムはナギトの強引さに驚きはあっても拒絶はなかった。
これでひとまずここに来た用件の半分は終わった。残りはユーシスへの依頼がある。
「ミリアムの件はそれでいいだろう。……ミリアムの意思を無視した行動だったのは引っかかるがな」
ユーシスの人としての真っ当な憤り。根っこが良いやつであるユーシスは己に懐くミリアムが有無を言わさず無職にされた事に怒ってはいた。
「それでナギト……再び聞くが、お前は俺に何をさせたいのだ……?」
しかし、ナギトがこんな剛腕を振るう理由も充分に理解している。自分の不満感だけで急ぐべき事項を遅延させるわけにはいかなかった。
「んー………この話、明日にしない?」
向けられた真剣な眼差しを避けたナギトはわざとらしく時計を見た。すでに日付が変わっている。
「ぜってー話は拗れるからさ」
「またぞろ悪巧みか」
「ガチのな」とナギトは含みを持たせる。
ユーシスはナギトの悪辣を知っている。たった今その片鱗を見せられたのもある。それでもナギトはミリアムに悪びれなかった。そんなナギトの“ガチの悪巧み”………今から戦慄を覚えてしまうのだった。
☆★
「領邦軍の軍備増強をして欲しい」
翌日、いつものように馬鹿げた話をして。それからまた3人で密室に籠もる。準備された紅茶を一口飲んで。放たれた一言はそのタメに違わぬ重さがあった。
たった一言。それだけで聡いユーシスは理解してしまった。ナギトの発言の意味、その意図を。
「───ふざけるなっ!」
テーブルを叩いて立ち上がる。茶器が揺れて音を鳴らした。ナギトはゆっくりと瞬きをして「さすが」と褒め称えた。
「これだけでわかるとは。………一応、答え合わせしてみる?」
「あの時の再現でもしようと言うつもりか……!」
内戦時にナギトが画策した“幻獣討伐作戦”──もとい“Ⅶ組英雄化作戦”。各地に出現した幻獣を討伐する事で、その被害に晒された民衆より英雄として支持されるための作戦。
それを実行したナギトを当時のⅦ組は詰め寄った。これはその再来となる───否、それ以上の最悪だった。
「領邦軍の軍備増強だと?……そんなもの、有事の際の備えに決まっているだろう!」
果たしてユーシスは一発で正解を引き当てた。
ナギトとユーシスは思考の経路が似ている。どう考えるか、どう答えに至るか。ナギトの考えを読んだのはそれが大きい。それにユーシスは元々頭がいいのだ。“観の眼”がなければ同じ次元に立てないくらい地頭の出来に差がある。
「本当に…悪いと思ってるよ。でもこれは必要だ。俺が全面的に敗北し、それからの最悪の場合を見据えれば……わかるはずだユーシス」
哀しげに、しかし冷徹に。告げる男をユーシスは睨め付ける。立ち上がったまま見下ろしているはずなのに、見上げている気にさえなる友人の覚悟を。
「それってさ、昨日言ってたEOS計画って言うのが失敗したら、って話だよね?」
押し黙った2人に代わりミリアムが問う。ナギトが提示し、ユーシスが怒号したその内訳を。
「………そうだな。EOS計画が失敗し、サブプランも失敗し────俺が死んで。もう共和国と開戦しちまうって時のための窮余の一策だ」
言って、沈黙。自分の命を軽く扱っているわけではない。しかし、友人に自分が死んだ後のための備えをしてもらうのは心が苦しい。
「俺に……お前が死ぬ前提の作戦を進めろと言うのか……ッ!」
ユーシスもナギトと同じように苦しそうで。だからと言ってやめるわけにはいかない。事態はそれだけ深刻なのだ。
「……………………」
またしても沈痛な雰囲気に返す言葉もないナギト。再び沈黙が木霊する。そんな時に口を開いたのはミリアムだ。こういう時の男は情けない。
「領邦軍の軍備増強………それが共和国と開戦するって時の策になるのはなんで?」
ミリアムは若くして《鉄血の子供達》に名を連ねる《白兎》。その答えには薄々勘付いてはいるものの、やはり明確に言葉にする事で情けない男たちに現実を直視させる必要性を感じていた。
「この男はな………ミリアム。再び帝国で内戦を起こせ、と言っているのだ……!」
ギリアス・オズボーンの《大地の竜》はやがてゼムリア大陸を呑み込む。
対抗できる《千の陽炎》は、オズボーンに知られている。各国の連携は阻害されるだろう。
そうなれば、エレボニア帝国の対抗馬たるカルバード共和国も一国のみで強大な軍事力を相手にせねばならない。敗北は必定だ。そして共和国を下してしまえばあとは消化試合だ。
これは、それを阻止するための策だ。
帝国で再び内戦を勃発させ、正規軍の戦力を削る。内戦の間に共和国も《千の陽炎》なしで各国と連携を取るかもしれない。世界がイシュメルガの手のものとなる未来を否定するための作戦だ。
「すでに軍拡を進めている正規軍に領邦軍は遅れを取っている。内戦を起こしたとして敗北は決まっているようなものだ。………ただでさえ一年半前の内戦で貴族は様々な面で弱体化している………次の内戦で負ければおそらく貴族は解体されるだろうな」
2年弱の間で2回も内戦を起こして、そして負ける。それは帝国民に“貴族は不要”という論説を植え付けるには充分な根拠で、そこに敗戦した状況ならばなおさらユーシスの懸念は的を射たものとなっている。
「それだけならまだ良い。……もし仮に内戦が長引けば共和国の侵攻も予想できるだろう。最悪の場合、エレボニア帝国は亡国の危機に瀕する事になる………!ナギト……そこまでわかっての発言だろうな………!?」
凄むユーシスだが迫力はなかった。ナギトはそんな事は百も承知で。だからこそ思考回路が似ていると思えるのだ。
「………わかってる。……だが、最大多数を守るにはこれがベターだと、俺は思う」
代理とは言え、ユーシスはアルバレア公爵領を治める大貴族だ。大のための小を切り捨てる事に忌避感はあれど、選択肢としては頭にある。
しかし、ナギトの言うこれはスケールが大き過ぎた。世界という大を守るために、帝国という小を切り捨てる。これはそう言った話なのだ。
「すでにカイエン公爵家の次期当主には話を通してある。………ユーシス、お前の賛同が得られれば、2ヶ月後の領邦会議で四大名門の過半数が賛成票を投じる事になる」
ユーシスがどう語りナギトを説き伏せているか考えている間に、言葉にされたのは衝撃の事実だった。
「もう…そこまで………やっていた、とはな………」
覚悟が決まり過ぎている。もはや自分がいくら言葉を弄そうとナギトの説得は不可能だと思い知った。
☆★
「ひとりにしてくれ」
と言ったユーシスを残して退室する。
ミリアムと話し合ってアルバレア城館を出て市街地の店で昼食を摂る事になった。
特別実習の時にも行ったユーシス馴染みの店に、ユーシス抜きで行く。どこか侘しさを感じずにはいられない。
「それにしても、ひどいねナギト」
注文した品を待っていると、急にミリアムが詰ってきた。
「自覚はある。お前らに相談もせず作戦を練った事についてもな」
「ほんとだよ!……まったくもう。でもわかるよ……ここまでしないとオジサンには対抗できないもんね?」
「それは俺がオズボーンと同じ手管を使ってるって悪口の認識でいい?」
「いいよー!」
明朗な肯定にずっこけそうになる。こうまでしないとあのギリアス・オズボーンに対抗できる気がしないのは確かだ。
ユーシスに語った最悪の想定も杞憂かもしれないが、準備をし過ぎる事はない。
「それでさ、剣…だったっけ?僕がなるってやつ」
「そうだな」と頷いてみせる。普通、オメー剣になっから!と言われても“?”だろう。しかし妙に納得した面持ちのミリアム。
「そっかー。OZシリーズって、そのためだったんだね……」
自身の生まれた意味。それが何かを殺すためだっという事実。重過ぎる真実だ。
女神の聖獣を弑す───そのために生まれ、そのために心の成長を促された。これまでの人生すべてが製作者の意図の通りだったのだ。
「まあ、知った事か…って話だよね」
「その通りだけどさ。…‥もっと何か慰めの言葉とかないのー?」
尤も、それでミリアムを心配するなどナギトには100年早いのだが。
あの場で、ミリアムは全員の思惑を超越していた。本当はアルティナを剣にするつもりだったが、ミリアムがそうなった事でアルティナは助かった。
“みんな守ってみせる”───と言っていたそうだ。その宣言に違わず、あの黒キ星杯での死者は0だった。
「すごいやつだよ、お前は」
「それって、ナギトより?」
「俺なんかよりずっと。俺は所詮スペック通りの事しかやれてない」
「自虐風の自慢?」
「実はな」
2人で笑みを交換した。軽妙なやり取りにトールズ時代を思い出す。
やがて注文した品はお出しされ、それに舌鼓を打った後に2人は街道に出た。
雑談混じりに魔獣を倒し、連携を確かめていく。ARCUSの戦術リンクは久しぶりの協働でも十全に作用し、2人が感覚を取り戻すのに時間はかからなかった。
「でもさー、やっぱりナギトってひどいよね」
歩きながら、ミリアムは切り出す。
「ユーシス、ナギトが来る前に言ってたよ。あの阿呆が人を頼るとはな……傲慢癖は直ったか?どんな無茶を要求されるのやら……、ってね」
ユーシスの物真似をしながら喋るミリアムに「言いそう」と相槌を打つ。
事を単独で成し遂げられるナギトはこれまで仲間を頼る事が少なかった。それが遠慮なしに頼ってくるのだ。嬉しさもあるが不安もあった。
そして不安は的中し、ユーシスは選択を迫られている。
「僕についてもそう!仮にも年下の女の子に対して、いきなり狙われるからって同行を強制するかなフツー」
「わりーとは思ってるよ。言わないけど。まあ精々半年未満だ、我慢してちょうだいな」
「それは別にいいんだけどさ。どこかでフォロー入れるとか、あっても良くない?」
「いる?フォロー。俺、ミリアムは半分以上ガイウスと同じ枠に入れてんだけど」
「それってどーゆー意味……?」
「心配いらねえ、って意味」
街道から逸れて高台にたどり着く。ここはいつだったか、リィンとユーシスが剣を交えた場所だ。それをもってユーシスはⅦ組に戻った。内戦中の話だったか。
「それじゃ……やろっか」
ナギトに相対したミリアムはファイティングポーズをとる。その背後では戦術殻アガートラムも同じく。
「ああ」とナギトはそれに応じる。予定調和の出来事だった。
ナギトがミリアムと合流したのは、彼女を剣にさせないため。そのために監査局に手を回して情報局に圧をかけた。ミリアムは自由の身となり、これからはナギトに随行する。ナギトはミリアムの護衛役となったわけだ。
この試合は、ナギトが護衛役足り得るのか。それと人を頼りつつもすべてをひとりで背負うつもりのナギトへの鉄拳制裁だった。
「………抜かないんだね?」
得物を鞘に納めたまままのナギトにミリアムは鋭い視線を送った。
「
ミリアムはしばし瞑目し。それから開いた瞳には闘志を滾らせていた。
「僕にはよくわかんないや。リィンやラウラならわかるのかな……?」
「あいつらはまだこの境地に達してねぇよ。………さて、やるか」
「うん。いくよ」
ミリアムは全力を尽くした。
《鉄血の子供達》の一角である《白兎》としての経験のすべてを。Ⅶ組のミリアム・オライオンとして培った全霊を。
「破空」
指先に凝縮された闘気が発散される。
ミリアムはアガートラムごと吹き飛ばされて戦闘不能だ。
「う〜ん、負けちゃったかぁ……」
地面に仰向けになったままミリアムはつぶやく。空は蒼く、どこまでも広いのに、自由に飛ぶ事はできない。それはきっとナギトも同じだ。背負うものが大きいほどゼムリアの重力に魂を引かれる。
それはナギトの好む生き方ではないはずだ。それなのに、自分の心を無視して、他人の心から目を逸らして。機械のように事を進めている。
「ナギト…………僕は応援するよ。君のこと」
ミリアムは同情していた。己より遥かに強い男に対して。己のすべてを受け止めた男に対して。
己の全存在を懸けて挑み、それを歯牙にもかけないような男が、こんなに必死になっているのだ。何の力になれないとしても、応援くらいはしてやりたい。
「ありがとう、ミリアム。今度は俺がお前の代わりに言うよ」
ミリアムに手を貸して立ち上がらせる。あの時のミリアムのセリフを使わせてもらう。
「みんな……俺が守ってみせる」
ミリアムを。ユーシスを。リィンを。クロウを。ラウラを。Ⅶ組のみんなを。オズボーンも。帝国の未来も。
もう幾度となく心に誓った決意を言葉にする。
「ふ、ふ、ふふふ………」
「ど…どうしちゃったのさナギト……いつにも増して顔が変だよ!?」
いきなり含み笑いをしたナギトにミリアムが目を丸くした。
「いやあ、改めてこう…口にするとさ。俺もやっぱりⅦ組なんだなあって実感が」
「ナギトは最初からⅦ組の一員でしょ?」
「それはそうだが」とくつくつ笑いながら返す。
ナギトはこれまでⅦ組でありながら、彼らと同じではなかった。ミリアムに語った通りナギトとして与えられた力を振るっていただけだ。
彼らのように常に限界に挑み、よりよい未来のためにそれを超克する事はなかった。
今がその時だ。
これまで通り、運命を変革する“特異点”としてだけの力では願いは叶わない。ナギトが限界を超越すべき時が来ているのだ。
今こそⅦ組のあいつらに──憧れの英雄たちに並び立つ時だ。
「セドリック……今度は俺の番だよ。お前はもう少し遅れて来い」
彼方の敵対者に語りかけた。“次は僕が英雄になる番だ”と言った彼へのアンサーが今ようやく出たのだ。ミリアムは当然「?」だった。
そうした決意表明のあと、高台を降りた頃合いでユーシスからの連絡があり、アルバレア城館に戻り、公爵代理としてナギトからの提案を飲む旨を伝えられるのだった。