八葉を継ぐ者──AAA──   作:クラウンドッグ

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ゆえにひとりの人として

 

 

駆け上がる。クロスベルの地に築き上げられた大伽藍。摩天楼オルキスタワーの外壁を。

 

 

 

 

 

トールズ士官学院第Ⅱ分校、二度目の演習地はクロスベルであった。

エレボニア帝国クロスベル州。その中心とも言えるオルキスタワーを襲撃する者たちがいた。《身喰らう蛇》である。

折しもオルキスタワーにいた第Ⅱの面々はその襲撃に対応する事となった。

 

タワー内部に入り込んだ人形兵器を駆逐しつつ、ナギトは迷っていた。

 

 

オルキスタワーを襲撃した《身喰らう蛇》のメンバーは執行者No.0《道化師》カンパネルラとNo.Ⅰ《却炎》のマクバーン。

事直接戦闘においてマクバーンはゼムリアにおいて最強と言っても過言ではないクラス。リィンと、たまたまクロスベルに来ていた同級生アリサ・ラインフォルトのメイドであるシャロン・クルーガーが迎撃に向かっているが安心できない相手だ。

リィンとシャロンも一流の戦士ではあるが、マクバーンはそこからさらに一線を画す存在。まさしく格が違うと言っていい相手だった。

 

ナギトの安心材料があるとすれば、それは執行者2人のいる屋上に向かったⅦ組にアルトリウス・ルグィンがいる事だ。

 

アルトリウス──アーサーは間違いなく“特異点”だ。本来なら存在しないはずの人物。何らかの願いが働いてこのゼムリアに発生した異物。

正史においていなかったはずの彼がここにいる事で生じるはずの悲劇が不発する可能性もあった。

 

 

しばらく気配で屋上の戦闘の様子を観察していたナギトだったが、リィンとシャロンはマクバーンに圧倒され、アーサー含むⅦ組と+αの者たちはカンパネルラに抑え込まれていた。

 

 

 

「悪いランディ!ここは任すぞ!」

 

 

 

気づいた時にはナギトはガラス窓を切り裂いて屋上に向かっていた。

 

 

ナギトができるだけ物語の筋書きを変えようとしないのにはいくつか理由がある。

まずは大前提として物語に過干渉する事でアーサーの知る歴史が訪れず、未来の出来事を知っているというアドバンテージが崩れてしまう事。

それにこれはおまけでしかないが、ナギトはオーレリアと少しばかり約束していた。第Ⅱは元々が捨石とされていたが、そこに予定していなかったナギトという戦力が降って湧いた。いざという時の切り札のためにその戦力を隠しておく事。それがオーレリアとの取り決めだ。

 

 

だが、事ここに至り実力を隠すのは不可能だ。

ナギトにリィンを見捨てろ、なんてのは。

 

 

 

「今が、その時だ」

 

 

 

 

濃縮され、凝縮され、集束された焔が撃ち出される。

《灰色の騎士》、《死線》を相手にして興が乗った《却炎》が戯れに放つSクラフト“ジリオンハザード”だ。

 

 

体勢を崩したリィンを庇うようにシャロンが割って入る。

 

 

 

「───八葉一閃」

 

 

 

そこにさらに横入りしたのがナギトだった。

一年ばかりのぬるま湯で鈍っていた剣技。その奥義をナギトは取り戻していた。

 

刹那にして練り上げられていた火球は消失した。

 

 

 

「へぇ……」

 

 

マクバーンは愉快げに口角を吊り上げた。

 

 

「間に合ったか。……無事だなリィン?」

 

 

 

 

「あ、ああ……すまない。助かった」

 

 

リィンは立ち上がり得物を構えようとするが、途中で膝から崩れ落ちた。マクバーンを相手にして限界だったのだ。

 

 

 

「しゃあねえ。あの化け物を相手にしたらな」

 

 

 

ナギトは優しく笑ってそう言った。

己に背を向けてマクバーンと対峙する背中に、リィンはまざまざと格の違いを思い知らされる感覚を味わった。

 

 

 

「俺の焔を消すとはな。アンタ……いったい何者だ?」

 

 

 

「トールズ士官学院第Ⅱ分校所属、特務科Ⅶ組副担任」

 

 

いかにも舐めた態度でマクバーンの質問に答えてみせる。

 

 

「ハッ、ジョークのセンスはねぇみてえだな」

 

 

「うっせぇな、笑ってんじゃねえか」

 

 

「こりゃ失笑だ。………いや、だが思い出したぜ。お前さんが《神速》や紅の小娘が言ってた野郎だな?」

 

 

 

「さあな。………確かめてみるかよマクバーン。……だが、そのつもりなら覚悟する事だ。俺を舐めてかかると火傷じゃすまねぇぜ?」

 

 

 

 

「……ククッ。さっきのは撤回するぜ。……俺を相手に火傷じゃすまねえなんて……笑わせてくれるじゃねえか────!」

 

 

 

 

喉を鳴らしたマクバーンが焔を腕に溜めて突っ込もうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「そこまでだ、結社《身喰らう蛇》の諸君」

 

 

 

クロスベル総督であるルーファス・アルバレアが、オルキスタワー屋上に現れたのだ。しかもオルキスタワー内の敵は一掃し、強力な仲間たちを引き連れている。

そんな群れに突っ込むほどマクバーンは愚かではなかった──否。まだそこまでは興が乗っていなかった。

 

 

 

「チッ………」

 

 

舌打ちをして引き下がるマクバーン。視線の先ではナギトが肩を竦めている。マクバーンにはそれだけでさっきの軽妙な会話が、ルーファスらを待つための時間稼ぎだとわかった。

 

 

「……ったく、白けさせてくれるぜ」

 

 

「はっはー、悪いなマクバーン。バトルはまた今度ね」

 

 

 

ルーファスの登場により事態は一応の決着を見た。結社の面々は退き、襲撃は終わった。

 

しかし、その最中に知らされた事実はクロスベル出身のユウナを絶望させるのだった。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

「ユウナの様子は……?」

 

 

 

翌日、旧Ⅶ組でクロスベルに来ていた仲間たち──エマ、アリサ、マキアスと共にリィンは政府からのオーダーを受諾し、その達成に向けて出発する間際だった。

 

 

「まだ膝抱えてる。……まあこっちは任せろ」

 

 

「ああ。俺はこれからみんなと《星見の塔》に行ってくる」

 

 

「おうよ。……相手はあの《却炎》だ。気ぃつけろ。……ピンチの時ほど落ち着いて相手の動きを良く観るんだ。今のお前たちなら勝ち目はある」

 

 

リィンはナギトの忠告を「ありがとう」と受け取った。

 

 

「お前らも、頼むなリィンのこと」

 

 

「ええ、任せてちょうだい。──ってあなたに言われるまでもないんですけど!」

 

 

と、そこでナギトに噛みついてきたのはアリサだ。自分のほうがお前らよりリィンをわかっている、という態度がアリサの癇に障ったのだ。

 

 

「はっはー、そう怒るなよアリサ。ミニスカからパンツ見えてるぞ」

 

 

「嘘!?」

 

 

「ウ・ソ♡」

 

 

アリサの平手打ちがナギトの顔面を強打した。

 

 

「……うん、今のは君が悪いな。……しかしなんだ、その……まだ信じられないな。君が…並行世界で僕たちの同級生だったなんて」

 

 

ありがたくも話題を変えてくれたのはマキアスだった。切り込んだのはやはりナギトの、言わば出身についてだった。

 

 

「……ま、そうだろうな。今はそれでいい。突然現れたやつなんか信用するな」

 

 

少なくともナギトがマキアスと同じ立場なら信用しない。

しかし、ここでエマが透徹した眼差しでナギトを見た。それはおそらくナギトの立場でものを考えた才女の視線だった。

 

 

「それはなぜですか?私があなただったら、きっともっと必死になってみんなに呼びかけてると思います」

 

 

ナギトにはそれが無駄な事だとわかっている。ナギトの知るみんなは、ナギトについて記憶を失っているわけではなく、そもそも知らないのだ。いくら呼びかけても甦る記憶がない。

それでもまた仲良くなりたいのなら、呼びかける──エマが言っているのはそういう事だ。

 

だが、ナギトの答えはシンプルだった。

 

 

 

 

「俺がお前らを信じてるからだよ」

 

 

 

それは一方的な信頼だった。しかしナギトはそれでいいと言っているのだ。

仲間たちが自分を信じなくても、自分が仲間たちを信じているからそれでいいと。

 

答えを聞かされたエマは──旧Ⅶ組の面々は少しばかり面食らってしまう。

それを言ったナギトからは確かに信頼の声音があったからだった。

 

 

「そういうわけで、頼んだぞお前ら。俺も行けたら行くわー」

 

 

が、そこで話を打ち切ったナギトは身を翻すとひらひら手を振ってデアフリンガー号の中に消えていく。

 

 

リィンらも準備を整えて決戦に臨む事にした。

 

 

 

 

 

デアフリンガー号内では未だにユウナが絶望の中にいた。

昨夜、オルキスタワーの襲撃を退けた帝国勢力だったが、その中でクロスベルの英雄たる特務支援科がルーファスらの手により“鳥篭”に囚われて動けない状態である事が判明した。

 

クロスベルを襲う災厄である《身喰らう蛇》。その脅威を退かせる希望である特務支援科が帝国の手によって動けない状況に、ユウナは絶望しているのだ。

 

デアフリンガー号に備え付けられたベッドの上で膝を抱えて悲嘆に暮れていた。

 

 

あの元気の塊だった娘が、友人らの慰めの言葉にも反応を見せずに目を伏せているだけだ。

 

そのあまりにも情けない姿にナギトは声をかけようと近づいていく。が、アーサーに制止された。首を振るアーサーに、ナギトは介入せずとも良い筋書きである事を理解した。

 

だが────、

 

 

「止めてくれるな、俺はあいつの副担任だ。子供を導かずして大人は名乗れまいよ。……アーサー、お前は生きてるか?俺は生きてるぞ。この世界に、ひとりの人間としてな」

 

 

ナギトは気取った言い回しでアーサーを躱わすと、ずかずかと進み生徒たちの間をかき分けて、ユウナの隣に座った。

 

 

「……ナギト、教官…………?」

 

 

「ユウナ……ちょっと昔話するか」

 

 

「え……?」とまるでユウナの気分も絶望感も丸無視したかのようなナギトの言動にユウナも困惑した。

 

 

「特務支援科……クロスベルの英雄だな。数々の難事件を解決したクロスベル警察の若きホープ……。当然知ってるよな?」

 

 

「……知らないわけないでしょ。教官…私の経歴知ってますよね?」

 

 

ユウナは第Ⅱに来る以前はクロスベルの警察学校に通っていた。特務支援科に憧れて、彼らの後輩になるために日々訓練をしていたのだ。

不幸ながら、決まっていた卒業は破談にされてしまったが。

 

 

「ん、そうだな。じゃああいつらがはじめ……なんて呼ばれてたかは知ってるか?」

 

 

「…………」

 

 

ユウナは無言だ。知っているのか知らないのか。知っていても口にする事を憚っているのかもしれない。

 

 

「遊撃士の真似事、だ。……魔都クロスベルにおいて帝国と共和国に挟まれて身動きの取れない警察に代わり活躍していた遊撃士───その真似事をして人気取りをしよーって思惑で特務支援科は設立された」

 

 

「……ナギト教官が何を知ってるって言うんですか。帝国の人間のあなたが!支援課を……あの人たちを馬鹿にしないで!」

 

 

声を荒げるユウナにしかし、ナギトは微笑んでみせる。それはまさしく子供を導く教育者の表情だった。雛鳥の巣立ちを期待する親鳥の顔だった。

 

 

「俺はな、知ってる。あいつらの軌跡を。いちから──いや、零から積み上げたものを。……あいつらが新米だった頃から、クロスベルの英雄になるまでの物語を。……なんならお前以上のファンかもしれんぜ?」

 

 

「ナギト教官………?」

 

 

ナギトの言い様にユウナは確かに敬意を感じ取る。しかし何を言いたいのかは迂遠にしてよくわからない。

 

 

「支援課だって最初から英雄だったわけじゃない。数々の実績を打ち立ててそう呼ばれるようになったんだ。……しかし英雄にも限界はある。あいつらは今“鳥篭”に囚われて動けない。………で、ユウナ。お前は今、何をしてる?あいつらに憧れて、あいつらの後輩たらんとするお前は」

 

 

だが、続く言葉で疑問は氷解した。ナギトはユウナに発破をかけているのだ。ここで立ち止まっていいのかと、壁に阻まれて俯いているだけなのかと。

 

そんなわけがない。それではいけない。そうあってはならない。

特務支援科ならどうするのか。

 

 

ユウナは立ち上がって答えを突きつけるつもりだったが、それより早くナギトが立った。

 

 

 

「話はそれだけだ。ユウナ……支援科がいない今、誰がクロスベルの意地を見せるのか……お前がどんな答えを示すのか……。たぶん、ここで色々決まるぜ」

 

 

スタスタと歩き去っていく。その後ろ姿にユウナは呆気に取られていた。ユウナだけではない。それ以外の第Ⅱの面々だってそうだ。

 

 

「ナギト教官………ああもう!言うだけ言ってこっちの返事も聞かないんだから!」

 

 

立ち上がって拳を握るユウナ。その動機こそナギトへの憤りだが、立ち上がったからにはやる事は決まっていた。

ユウナはその後、仲間たちからの励ましの言葉を受けて改めて再起。クロスベルの意地を見せるべく準備を進めるのだった。

 

 

 

 

「余計な事を……」

 

 

ナギトがデアフリンガー号から出る寸前、すれ違うアーサーはつぶやく。

 

 

「はっ。お前はもっと自由にやれよ」

 

 

そしてまた教官の顔でユウナにしたように言葉をかける。

 

 

 

「俺は────っておい」

 

 

デアフリンガー号を出るナギト。

やはり生徒の返事などナギトは聞かないのだ。

青少年の小っ恥ずかしい決意表明は、こんな場所ではなくもっと良い場面で聞きたいから。

 

 

 

☆★

 

 

 

「はっ、はは……ははは………ははははははは!」

 

 

 

大爆笑。呵々大笑。狂ったように笑っていたのはナギトだった。

クロスベル《星見の塔》での決戦に駆けつけたナギトだったが、見せ場は立ち上がったユウナに譲り、対峙していた機神はヴァリマールとユウナの駆るドラッケンによって戦闘不能に追い込まれた。

 

 

事態は収束するかと思われたが、そこに現れたひとつの人影が、ナギトにある現実を叩きつけたのだ。

 

その人物は《蒼のジークフリード》と名乗った。

仮面こそ着けているが、間違いない。

《蒼のジークフリード》はクロウ・アームブラストだ。煌魔城で死んだはずの、死ぬ運命にあったはずのクロウだった。

 

 

ナギトは笑う。狂ったように。人目も憚らないそれはある種、慟哭のようでもあった。

 

 

「気でも触れたか?」

 

 

そのジークフリードに問われてナギトはようやく笑い声を収めた。

 

ナギトが発生した理由は煌魔城にて死ぬはずのクロウをその運命から救い出すためだった。

それがどうだ?当のクロウは生きている。ナギトのいた世界より正史に近い世界で。

 

それはナギトの存在意義の否定だった。

生まれたのが無駄。力をつけたのが無駄。運命を変えた事さえまるで無意味。閃の軌跡Ⅱでクロウが死んだ時点で見切りをつけて、その生存を願ったプレイヤー(俺たち)は、その後のストーリーで、その願いを否定された。だってクロウは生きているんだもの。

 

 

「いやあ……悪いな。俺がとんだ早漏野郎だってわかってよ」

 

 

だが、愉快だ。

 

 

「……んで、お前はいつまでそんな役割に殉じてるつもりだ、クロウ?」

 

 

クロウ・アームブラストを生存させる事。それがナギトの生まれた意味だ。

しかし、その意味を否定されたところで揺らぐほどやわな自我を持つナギトではない。

この世界で生きてきたひとりとして、ナギトは己として確立していた。

 

 

「言っている意味がわからないな」

 

 

「………なるほどな。どっかで見た意匠だと思ったが………そいつは《黒の工房》の仮面だな。厄介なこった」

 

 

ナギトはジークフリードが装着している仮面に見覚えがあった。まるで正体を隠そうともしない仮面には、役割を押し付ける働きがあった。

あの仮面は《蒼のジークフリード》という役割をクロウに演じさせているのだろう。それも記憶を封じて。

 

 

「だが……関係ねえな。おいクロウ……甘ったれてんじゃねえぞ! とっととそんな拘束なんか引きちぎれ!……それとも引っぺがしてやろうか……!?」

 

 

言うが早いか、ナギトは脚力を爆発させた。

 

今はぎりぎりで実力を隠せているとも言える状況で、しかしそんな事はまるで頭に浮かばなくて。

 

トールズ第Ⅱにはナギト・ウィル・カーファイという戦力がある、その情報開示をしてしまう事に躊躇いなんかない。

 

 

ジークフリードに一瞬で肉薄したナギトだったが、惜しくも空振りしてしまう。ジークフリードが転移して避けたからだ。

 

 

「チィ……逃げてんじゃねーぞコラ!」

 

 

 

「そうか……お前が《猟兵王》の言っていた第Ⅱのジョーカーか。捨石に過ぎないはずの第Ⅱにこれほどの戦力があるとはな。戻って分析した方が良さそうだ」

 

 

 

やはりと言うべきか、《蒼のジークフリード》と《猟兵王》ら《西風の旅団》は同じ組織に所属しているようだ。しかもその組織というのが、十中八九《黒の工房》──つまりは裏にギリアス・オズボーンがいるという事だ。

 

 

「むっ」

 

 

その時、ジークフリードの顔を隠す仮面にピシリとひびが入った。

ニヤリとナギトは笑う。

 

 

「触れてたぜ。気づかなかったか?」

 

 

転移でナギトを避けたかと思われていたジークフリードだったが、その指先は確かに仮面に触れていた。

仮面の一部がひび割れ、剥がれ落ちる。そこから現れた相貌は紛れもなくクロウのものだ。

 

ジークフリードは膝を折り頭を押さえた。堪え切れぬ頭痛に襲われている様子だった。

 

 

 

 

「くっ…………ここ、は…………?…………リィ………?」

 

 

 

 

彼が、呻く。ひび割れ剥がれ落ちた仮面──そこから現れた赤い瞳には正気の色が見て取れた。

 

だがそれも一瞬で、彼の眼差しに困惑した皆が動けない内に、ジークフリードの傍らに侍っていた黒い眼球を模した端末が、彼に何かをした。

 

 

 

ジークフリードは立ち上がり、高い位置からナギトらを見下す。その瞳に先はあったクロウの眼差しはなく。

 

 

「………やっぱ、そう簡単にはいかねーか」

 

 

それを見てナギトは息を吐く。カバーが早過ぎる。この時点でジークフリード=クロウという図式が確立されないための運命の修正力なのだろう。

 

 

「この場は退かせてもらうとしよう。……ナギト・ウィル・カーファイ………この借りはいずれ返してやる」

 

 

 

「はっ。お前じゃ無理だジークフリード。偽りに生きる空っぽのお前じゃな」

 

 

 

そのやり取りをもってナギトの出番は終わりだ。

その後は《星見の塔》に集った面々が、その思いを見え隠れさせる牽制の会話があり───二度目の演習は終わった。

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