Dendrogram Record   作:貴司崎

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序章:GAME RESTART
お使いクエスト


 □決闘都市ギデオン・呪術師ギルド【高位呪術師(ハイ・ソーサラー)】レント・ウィステリア

 

「依頼にあった呪術付与した【ジェム】と解呪済みのアイテムです、お納め下さい」

「いつもありがとうございます。確認しますね」

 

 全世界で話題沸騰のVRMMO<Infinite Dendrogram>の発売から約4ヶ月、ゲーム内での三倍時間によってデンドロ内部ではプレイヤーもとい<マスター>が現れてから一年ぐらいが経った頃。

 アルター王国に所属している<マスター>の1人である俺、アバター名『レント・ウィステリア』は呪術師ギルドの受付嬢さんにジョブクエストとしてアイテムを納品していた。

 

「確かに依頼したアイテムで間違いないですね。品質も問題ありませんので納品依頼はこれで完了になります。……流石は<マスター>ですね、呪術系のジェムは作るのが難しいのですがこう短時間で仕上げてみせるとは」

「まあ俺の<エンブリオ>はジェム作りにも向いてますからね」

 

 今メインジョブにしている【高位呪術師】の《クリエイト・カースオブジェクト》などの呪術アイテム生産スキル、そこに【高位魔石職人(ハイ・ジェムマイスター)】のジェム生産スキルを組み合わせ、そこに【呪物職人(カースマイスター)】の呪術アイテム生産補正を加えれば呪術ジェムを作るのはなんとかなる。

 まあ【ジェム】はサブジョブの魔法を込めるのが基本なので生産に必要とされるジョブの数が多いから難易度が高いんだろうが、その辺りの制限は俺にとっては大した問題ではない。

 

「レントさんのお陰で塩漬けになっていた依頼が少しは減りました。()()()()()()でジョブクエストを積極的に受けている<マスター>と聞いていましたが評判通りですね。<マスター>の方は冒険者ギルドを主に利用していて専門ギルドを利用する人は少ないと聞いてましたが」

「専門ギルドのジョブクエストは特定のジョブに就いていないと受けれませんしね。達成で経験値も貰えるし、上級職の転職条件やスキルの取得にも関わってくるんだけどな」

 

 対応するジョブに就いていなければ基本的にジョブクエストは受けれないから、ソロならともかくパーティーで活動している<マスター>とかだとそういった制限がない冒険者ギルドを利用する事が多い。経験値もモンスター狩れば良いじゃんってなる模様。

 経験値や報酬以外にもそのジョブに関する情報や伝手が手に入ったりもするんだが。ここの呪術師ギルドも他者を呪うとか非合法な事はやってなくて、主に合法的なアイテム生産や呪われたアイテムの解呪、教会や死霊術師ギルドと協力してのアンデッドモンスターへの対処とかがお仕事になってる。

 

「それでなんですが、丁度今アルテアの呪術師ギルドに呪術系のアイテムを届けてほしいと言う依頼がありまして。これまでのレントさんの評判から任せても良いと判断したのですが受けて貰えるでしょうか」

「ふむ、王都アルテアまでの輸送依頼ですか。……報酬も良さそうですから受けましょう。大した手間でもないですし」

 

 報酬は成功報酬で物品を運ぶ為にアイテムボックス保有を推奨、何らかのトラブルによって物品を無くしたら搬送者の賠償が必要で持ち逃げした場合は呪いますと言う普通の搬送依頼みたいだしな。

 王都までの距離ぐらいなら問題ない“足”はあるし、これでも戦闘能力はそこそこある方だから道中のモンスターも余程の相手でもないなら問題ない……その辺り含めて俺の評判を聞いて頼みたいって事だろうな。

 

「これが今回の依頼で運んでもらう各種アイテムが入った箱です。普通の箱ですからアイテムボックスにも入りますので。……最近はモンスターの生息域が変わったり、<マスター>の野党に輸送中を襲われたりする事件が増えていますから」

「<マスター>が強くなって活動範囲が広がったからかねぇ。分かりました、お預かりします」

 

 デンドロが始まって多くの<マスター>がゲームに慣れたからモンスターが狩られすぎて生息域が変わってるからなぁ。どっかの“スライム”や“ゴブリン”みたいな強い<マスター>の犯罪者やPKも増えて来てるし。

 そんな事を考えつつ受付嬢さんから受け取った箱をアイテムボックスへとしまった俺はギルドを出てギデオンの外へ、北門から出た所で右手に付けられている【ジュエル】から騎乗用のテイムモンスターを呼び出した。

 

「《喚起(コール)》ヴォルト。王都まで頼むぞ」

『了解』

 

 この【ライトニング・トライコーン】の『ヴォルト』は三本の金色に輝く角を持ち暗めの青色の身体を持つ純竜クラスの馬型モンスターであり、騎乗しての移動や戦闘を担当しているテイムモンスターである。

 元は【ライトニングホース】と言う下級の馬型モンスターだったのだが、モンスター取扱店で見た時に賢そうで“才能”もありそうだったので購入してテイムしたら純竜級まで育ってくれて今に至る。

 

「じゃ行くか、はいよー!」

『ヒヒーン!』

 

 そうして俺はまず街中用の私服を《着衣交換》で戦闘用の防御に変えてからヴォルトに騎乗し、手綱を握って一路ギデオン北の<ネクス平原>に走り出し王都アルテアへと向かって行ったのだった。

 

 

 ◇

 

 

 それから暫く走りつつけて<ネクス平原>を抜けて<サウダ山道>の入り口に差し掛かりそうな所まで来たが、特に何かトラブルに巻き込まれる事はなく普通に移動しただけだった。

 

「全然モンスターや野党には遭遇しないな。あれだけ受付嬢さんがフラグを立てたのに」

『人間が使う街道にモンスターや野党がそうポンポン出たら困るのでは? そもそも今の私は主人のスキルのお陰で音速に近い速度で移動してますし』

 

 そうモンスターのヴォルトに《人間範疇生物言語》で常識的なツッコミされたが、確かに今は俺のサブジョブの一つ【騎手(ジョッキー)】のジョブスキルで亜音速を超える速度で走っていれば襲える者はそういないか。

 この【騎手】は乗馬師系統の上級職で騎兵系統と違って戦闘能力はないが純粋に『乗馬』に特化しており、騎乗している馬を強化する《騎馬強化》を始め騎馬の走行能力や持久力なども強化されるので純竜級の馬型モンスターに乗れば音速に近い速度を出し続ける事も出来る。

 

『……しかし、どうやら主人の言う“ふらぐ”とやらは成立した様ですよ』

「別にトラブルが起きてほしい訳ではなく単なるネタだったんだがな」

 

 ヴォルトがそう言いながら<サウダ山道>の入り口直前で止まったので、俺はすぐに【斥候(スカウト)】のスキル《遠視》を使うと多数のゴブリンに襲われている複数の馬車が見えた。

 

「クソッ! このゴブリン共ヤケに強い……!」

「まさかこいつら……!」

『『『GUAAAAAA!』』』

 

 恐らく護衛の鎧を着た戦闘職らしきティアン達が襲い来るゴブリン達と戦ってはいるが、敵の数が多い上に包囲されて馬車にいる非戦闘員を守らねばならない事、何より下級のゴブリンにしては全体的に動きが良いのもあってかなり追い詰められていた。

 さて、今回俺が受けたジョブクエストは荷物の宅配であり、ここで戦闘を行なってデスペナになったり荷物をロストする様な事があれば依頼失敗なので迂回して王都へ向かう選択もあるにはあるが……。

 

「……それは面白くないな」

『主人?』

「俺はこの世界を楽しみたいから此処にいるんでね。ここでティアンを見殺しにするのは世界(ワールド)としても遊戯(ゲーム)としても面白くない。何よりあのゴブリン共は通行の邪魔だ」

『了解、まあゴブリン如きを恐れて迂回するのは気に入りません』

 

 そもそもゴブリン達を全滅させた上で荷物を届ければ良い話だと結論付けた俺は【付与術師(エンチャンター)】の《ブースト・エンデュランス》でヴォルトのENDを上げ【抵抗術師(レジストマンサー)】の《ハイ・サンダー・レジスト》を自らに施していく。

 同時に俺の意を受けたヴォルトも前進から電撃を迸らせて戦闘態勢へと入り、俺が禍々しいデザインの黒い剣【ブラックオーダー】を《瞬間装備》で取り出して準備を整えると馬車を襲うゴブリンに向けて全力疾走した。

 

「《デッドヒート》!」

『《トライホーン・ブリッツチャージ》!』

 

 ヴォルトが三本の角を中心に莫大な電撃を撒き散らしながらゴブリンの群へと突っ込み、そこに俺が騎乗している馬のSTRとAGIを短時間倍化させる【騎手】の奥義を重ねてその速度を超音速まで加速させた。

 一条の閃光って化したヴォルトはゴブリン達の後方で指揮していた《ハイ・ゴブリン・ウォーリアー》を角で串刺しにしつつ電流を流して黒焦げにし、そのまま突撃を続けてゴブリン達を角で貫き電撃で焼き払い蹄で踏み砕いていく。

 

『ブルウウウウアアアァァァッ!!!』

「《ブレイズ・バースト》!《エメラルド・バースト》!」

 

 そのまま馬車の周りを囲むゴブリン達を引き潰しながら進むヴォルトに合わせ、俺も魔剣を奮ってゴブリンを切り裂きつつ【紅蓮術師(パイロマンサー)】の範囲火炎攻撃魔法で焼き払い【翠風術師(エアロマンサー)】の奥義による暴風で吹き飛ばしたりして敵の数を減らす。

 そうして一通りゴブリン達を馬車から引き剥がした所で《デッドヒート》を解除したのだが、この奥義は解除後に馬のSTAとAGIを一定時間半減させるデメリットがあるので一旦ヴォルトから降りてから馬車に向かった。

 

「通りすがりの<マスター>です、助太刀に来ました。《フォースヒール》」

「あ、ああ、助かった……」

「共に戦ってくれるのなら有り難い」

 

 ティアンの護衛は少し動揺していたが怪我人に【司教(ビショップ)】の回復スキルを使った事でこちらを味方だと判断し、残ったゴブリンとの共闘を打診して来たので承諾する。

 だが、その直後に奇襲によって包囲を崩していた筈のゴブリン達が森の奥から現れた援軍のゴブリン達と合流して戦力を立て直し、更には敵の親玉らしき巨大なゴブリンが姿を見せた瞬間に歓声を上げた事で状況が一変した。

 

『BURUUUAAA!!!』

『『『『『GAAAAAAA!!!』』』』』

「なっ!? あれはまさか《ハイ・ゴブリン・キング》!?」

「純竜級モンスターの中でも発見次第即討伐指定されるレベルの危険モンスターじゃないか!」

 

 その巨大なゴブリンの正体は《ハイ・ゴブリン・キング》、その名の通り亜竜級モンスターでありながら純竜級に近い脅威度と認定される事もある《ゴブリン・キング》の上位種である。

 こいつらの脅威度が並のモンスターより高く設定されるのは《ゴブリン・キングダム》……配下のゴブリンの全ステータス2倍化・配下が得た経験値を自身にも加算・自身の受けたダメージを配下のゴブリンに転嫁するという<エンブリオ>でも中々見ないてんこ盛りスキルがあるからだ。

 

「純竜級の《ゴブリン・キング》なら亜竜級ゴブリンも配下にできるぞ……!」

「亜竜級ゴブリンのステータスが倍化すれば今の俺たちよりも……」

「下級のゴブリンも数がかなり多い! かなり長い時期を掛けて群れを作ってるな……」

 

 配下を率いて統率者するモンスターのスキルは自分より格の低い対象にしか効果がないのだが、キングの場合《ゴブリン・キングダム》の配下獲得経験値を得る効果でレベルが上がりやすいので勢力の拡大速度が非常に速い。

 そして質・量共に拡大した配下に全ステータス倍化が掛かる上、バフを齎すリーダー狙おうにもダメージ転嫁で凌がれる為に討伐も難しく、結果として放置すれば名前の通り『ゴブリンの王国』を作りかねないからこそ《ゴブリン・キング》は恐れられているのだ。

 

「馬車も馬をやられているし包囲されているから逃げるのも難しいか。すまん<マスター>殿、せっかく助けに来てくれたのにこれでは……」

「流石に俺一人ではゴブリンを倒すなら兎も角ティアンまで守りきれんな。《喚起》ネリル、クルエラン。お前達にも働いてもらうぞ」

 

 何か絶望しているティアンの護衛を他所に俺はジュエルから見た目は唯の少女の様にも見える精霊【アース・エレメンタル】のネリル、そして伝説級金属(オリハルコン)で出来た【ゴーレム・クルエラン】を呼び出した。

 ネリルとはとある“契約”の元で俺の従魔となっている非常に強力なエレメンタルであり、クルエランの方はそのネリルの協力の元で手に入れた特典武具とジョブスキルを合わせて作られた精霊封入型のゴーレムである。

 

「ネリルは馬車のティアンの護衛を頼む。死人が出ない程度で良いから頑張ってくれ」

「そこまで気にせずとも普通に『ティアンを守れ』と命じてくれてもいいんじゃがのう。……つまり()()()()()()()()()()()()()の排除などをすればいいんじゃろ?」

「ああ、頼む」

 

 そう言いながらネリルが指を鳴らすと馬車の周囲の地面が牙のような形状に変形しながら隆起し、キングとは逆方向より姿と気配を消しながら迫っていた三体の【ハイ・ゴブリン・アサシン】を噛み砕いた。

 それに気付いたキングは【ゴブリン・アーチャー】の部隊に弓矢による遠距離攻撃を指示するが、降り注ぐ多数の矢はネリルの地属性魔法により瞬時に隆起して壁となった土石に防がれた。

 

「ほれ、これで良いんじゃろ。それと先日作った【ミスリルゴーレム】も出してくれ、試運転には丁度いいからの」

「いいだろう」

 

 言われた通りアイテムボックスより三体の【ミスリルゴーレム】を放出、これらはクルエランと違って自我がないアイテムとしてのゴーレムであり基本的に手動操作(マニュアル)で動かす事が前提に作られているがネリルが手を向けるとまるで意志があるかの様に動き出して戦闘態勢を取った。

 ……やっぱりコイツの地属性魔法技術は色々と凄まじい。さっきの暗殺者も地面を歩いていたのを感知していたんだろうし、スペック的には単なる純竜級エレメンタルなんだが“素性”が特殊だからな。

 

「ヴォルトはデバフが解けるまでネリルのサポート、クルエランは敵本隊を殴る俺の援護。護衛の皆さんは馬車と非戦闘員を守ってください」

『承知』

『わかったよご主人』

「あ、ああ。任せてくれ」

 

 俺はそれだけ言うと土壁から出てゴブリンの群れと相対するが、敵の方も遠距離攻撃では仕留め切れないと判断したのか鎧を纏った【ゴブリン・ウォーリアー】達を全面に出しながら向かって来たので俺も【ブラックオーダー】を構えて先頭のゴブリンに斬りかかる。

 この【ブラックオーダー】は装備者に【吸魔】【吸魂】の呪いを与える魔剣だが、同時にHPを継続消費する事で装備攻撃力を装備者の合計レベルの10倍だけ引き上げる強力な装備スキルを有する魔剣である。

 

「邪魔だ」

『GUIEE!?』

 

 故に()()()()()3()0()0()0()()()()()俺が装備すれば【ブラックオーダー】は攻撃力三万越えの魔剣と化し、その一閃は身につけていた金属製の鎧を紙切れの様に切断した上でゴブリンを両断する。

 本来ならば人間範疇生物が取得できるジョブは最大で下級職6つ・上級職2つ、レベル制限のない超級職(スペリオルジョブ)を除けば合計レベル500までが普通なのだが、俺の有する<エンブリオ>【才器換発 ルー】によりその“普通”は捻じ曲がる

 

「《リバース・クルセイド》《ホワイト・フィールド》《ゴールデン・グリッド》!」

『『『『『GIAAAAAAAA!?』』』』』

 

 その常時発動(パッシブ)型必殺スキル《我は万の職能に通ず(ルー)》の効果は『ジョブ枠の拡張』であり、第五形態現在では元々の500レベル分に加えて下級職・上級職それぞれに追加で20個のジョブに就職可能で最大レベルは3500まで上げられる。

 他者より多くのジョブに付けるこの必殺スキルは他のスキルの効果もあって上級奥義を複数使う事も可能になるなど非常に強力なのだが、その分デメリットとして『全ステータス補正に−50%』『超級職への転職不可』が課せられており、俺が魔法系や生産系ジョブ中心に就いている事もあって特に物理ステータスはレベル程に高くはない。

 

「近づいて来たヤツは斬る! そんで《グルーム・ストーカー》!」

『GUAAA!?』

 

 まあその辺りは合計レベル基準でステータス補正を掛ける防具で補っており、各ステータスを純竜級モンスターとも渡り合える程に引き上げているのでステータスが倍になった上級ゴブリンぐらいなら近接戦でも問題ないのだが。

 ……とは言え相手も数の有利を活かして連携を取りながら攻め立てて来るので近接戦だけではキツくなって来たし、上級奥義の連打による範囲攻撃もクールタイムや消費MP・SPの問題もあって連発は出来ない。

 

「じゃあ幾らかコストを切るか。そう言う訳で各種広範囲攻撃魔法・上級奥義魔法【ジェム】詰め合わせを食らえい!」

『『『『『GAAAAAAA』』』』』

 

 なので《即時放出》機能付きアイテムボックスから複数の【ジェム】を取り出してゴブリン目掛けて投擲、命中と同時に込められた魔法が解放されて爆炎・白氷・暴風・電撃が敵陣に降りかかってその数を減らしていく。

 所謂『ジェム貯蔵連打理論』ではあるが魔法系生産系ジョブで固める故にAGIが足りず“投げるまでに潰される”と言う欠点は装備のステータス補正や【投手(ピッチャー)】などのサブジョブでカバーでき、サブの魔法上級職を複数持てるので制作出来る【ジェム】も多種多様。

 

「尚、投擲した【ジェム】のお値段に関しては考えないものとする! 自作だからそこまででもないし……っと、流石にこうまでされて『王』が何もしない訳がないか」

『GUOOOOOO!!!』

 

 攻撃魔法の連打を突破して叫び声を上げながら突っ込んできたのはやはりボスである【ハイ・ゴブリン・キング】であり、相手は防御や回避など一切考えていないかの様に大上段に構えた大剣を全身全霊の気合と殺意を込めて俺に叩き込んできた。

 流石にこの一撃をまともに喰らえば即死しかねないので俺は魔剣をキングの大剣の側面に沿わせる形で受け流して回避、そのまま反撃の横一閃を胴部に見舞ったが《ゴブリン・キングダム》のダメージ添加効果のよって傷一つ与えられない。

 

「防御をダメージ添加に任せて敵を最優先で排除する為の攻撃特化の剣術って所か。いい殺意じゃないか」

『GUOOOOOOOO!!!!』

 

 攻撃が無効化された俺に対してキングは即座に横薙ぎの一閃を見舞うが、予備動作自体は分かりやすかったので同じ様に魔剣を使って受け流しつつ流し切れなかった衝撃を利用して後方に飛んで距離を取る。

 だが、そこで多分キングの側近らしき【ハイ・ゴブリン・ランサー】と【ハイ・ゴブリン・ボクサー】が左右から強襲、ランサーの突きを魔剣で斬り払いつつ槍を破壊し、直後のボクサーの鉄拳を剣を持っていない方の掌で受け止めつつ相手の重心をずらしながらSTRを使って投げ飛ばして凌ぐ。

 

「【ジェム】を投げる余裕もないしこのままだと押し切られるか。……じゃあこっちだな《レベルフォース・アジリティ》《レベルフォース・ストレングス》《レベルフォース・エンデュランス》」

『GUAA!?』『GIA!?』

 

 このままだと不味いと判断した俺は【高位強化術師(ハイ・ブースター)】の自己強化スキルを使用、直後に折れた槍で突き掛かって来たランサーを超音速軌道で逆に斬り伏せ、背後から殴りかかって来たボクサーを後ろ回し蹴りで粉砕した。

 強化術師系統は付与術師派生で自己に単体バフを掛けながら戦うジョブであり、その中でも《レベルフォース》は強化するステータスの基本数値を参照する他のバフスキルと異なり自分の合計レベル×スキルレベル分だけ対応するステータスを強化するスキル。

 物理ステータスが低い魔法系ジョブでも大きな強化が齎される分だけ消費MPは多く持続時間も控えめ、かつ上級職の【高位強化術師】でもスキルレベルは5までしか上がらないが俺が使えば各ステータスを一万以上強化する事が可能になる。

 

『主人! 援護します!』

『ご主人、後ろは任せてー』

「頼んだ、キングの相手は俺がする!」

『GAAAAAAAA!!!』

 

 デバフが開示されたヴォルトが電撃によって周りのゴブリンを蹴散らし、右腕部のブレードを赤熱化させたクルエランがゴブリン達に襲い掛かった事で俺を包囲しようとしていたゴブリン達の陣形が乱れたので改めてキングに向けて魔剣を構える。

 とは言えステータスを強化してもダメージ添加スキルを突破出来る訳でもないし、今は一時的に引きつけられているだけで配下のゴブリンはまだまだいるからな、それが分かっているからキングも再び攻撃一点特化でこっちに斬りかかって来ている。

 

「ならダメージ以外の搦手で行こうか。《カース・ゾーン》《カース・バレット》」

『GAAA!?』

 

 上昇したAGIでキングの大剣を回避しつつ呪術師系統の一定範囲内の呪怨系状態異常発生率上昇のフィールド形成スキルを使い、更に片手を鉄砲の様な形にして相手に【呪詛】を与える呪術と闇属性の複合攻撃魔法を撃ち込んだ。

 大剣を振り終えた隙に放たれた闇の弾丸はキングに命中するもダメージは添加されたが、添加出来るのはダメージのみである為に追加効果である【呪詛】は通った。

 

『GAAAAAAAA!!!』

「《フラッシュ》《シャドウ・スキューア》!」

 

 自身に状態異常を掛けようとしているとキングは察したのか大剣を振り回して攻勢を強めたが、それに対して俺は光属性初歩魔法で強烈な閃光を発生させて目眩しを行いつつ回避する。

 そして光源を維持したまま移動させて作り出したキングの影に魔剣を突き刺し、呪われた武具で対象の影を刺す事で発動する【暗黒騎士(ダークナイト)】の呪術によって闇属性ダメージと【呪縛】を与えた。

 

「【呪詛】に呪怨系状態異常強化のフィールドが重なれば【呪縛】も通るな。そしてこれだ」

『GA、GUAAAAAAA!?』

 

 呪術による拘束を解こうともがくキングだったが物理的な拘束ではないので強化されたステータスでも解けず、その間に俺は【ジェムー《ブラッド・アレスト》】を投擲、割れたジェムから血でできた網が展開されてキングを更に拘束する。

 すると周りのゴブリン達の動きが目に見えて悪くなったので狙い通りに《ブラッド・アレスト》のスキル封印効果で《ゴブリン・キングダム》が封じられた様だ。これでダメなら【呪縛】されたキングを殴り続けてダメージ添加先のゴブリンを全滅させるつもりだったが運が良かった。

 

「《リーダーブレード》火属性選択!《バースト・エレメント》!」

『GAHAAA!!!』

 

 そして俺は【呪縛】させて動けないキングに炎属性を付与した魔剣を突き刺し、更に属性を付与した剣に追加でMPを注ぎ込む事で炸裂させる【魔剣聖(イリーガル・ソードマスター)】のスキルを使用。

 深く突き刺さった魔剣から炸裂した爆炎はキングの体内を蹂躙し、肉体の穴から穴より炎が噴き出る程に荒れ狂いながらキングの肉体を焼き尽くして程なくして光の塵へと変えてしまったのだった。

 

「って熱っつい! ちょっとMPを込めすぎたか。次からは《ファイア・レジスト》使おう。……さて、禍根を残さん様に他のゴブリンも殲滅するか」

『『『『『GI、GIAAAAAAAA!!?』』』』』

 

 キングがいなくなり統率とバフを失ったゴブリンの群れなど文字通り烏合の衆に過ぎず、俺とその従魔達とティアンの護衛達が残った群れの半分以上を削った辺りで生き残ったゴブリンは方々に逃げていった事で戦闘は終結した。

 追撃しても良かったがまだ怪我してるティアンの人とかいたし、何より届け物のジョブクエスト受けてるんだからそっちを優先せねばな。




あとがき・各種設定解説

 アバター名:レント・ウィステリア
 本名:加藤連
 性別:男
 メインジョブ:【高位呪術師】
 上級職:【魔剣聖】【暗黒騎士】【騎手】【紅蓮術師】【翠風術師】【金雷術師】【白氷術師】【暗黒術師】【抵抗術師】【司教】【高位強化術師】【高位魔石職人】【巨像職人】など
 下級職:【騎士】【剣士】【魔剣士】【投手】【斥候】【乗馬師】【魔術師】【呪術師】【司祭】【付与術師】【強化術師】【呪物職人】【戦象職人】【魔石職人】など
・妹に誘われてデンドロ初日からプレイしているベテラン<マスター>、プレイスタイルはゲームのつもりで行動している遊戯派だが『ここは単なるゲームじゃないだろうな』とも思っている。
・デンドロでのプレイスタイルは自身の<エンブリオ>【ルー】のスキルで大量のジョブに就けるので戦闘も生産も出来る万能キャラ。リアルでは余りやらない事をやりたかったので魔法系や生産系のジョブを優先して取っているが、本人の技術と装備と魔法によって近接戦闘の実力も非常に高い。
・他者の“才能”を見抜く事が得意だがこれは技術や頭脳面での事であり、モンスター相手でも技巧や知性の度合いを見破る事は出来るが成長限界などのデンドロ内のシステムによる素質を見破る“天然物の審獣眼”の様な事は余り出来ない。
・【ブラックオーダー】はレベルを参照する装備を探していた時に見つけて購入した物だが、手に入れたは良いが呪いによるHPMPSPの消費が酷かったので【暗黒騎士】を始めとする呪いのアイテムに補正が入る呪術師系統のジョブを後で取得した。
・普段は生産系ジョブクエストを軸に資金稼ぎと経験値稼ぎをしているゲームとしてデンドロを楽しんでいるエンジョイ勢であり、ソロプレイだけでなく普通に他の<マスター>や同じくデンドロをやっている“妹二人”と行動を共にする事もある模様。

【才器換発 ルー】
<マスター>:レント・ウィステリア
 TYPE:ルール・アームズ
 到達形態:Ⅴ
 能力特性:才能
 固有スキル:《労働は報酬ありき(ワーキング・リワード)》《諸芸の達人(スキル・マスタリー)
 必殺スキル:《我は万の職能に通ず(ルー)
・モチーフは『諸芸の達人』ともあだ名されるケルト神話の太陽神“ルー”。紋章は『光り輝く人間』。ジョブ枠と言うデンドロ世界における“才能”て呼べるモノを強化することに特化した<エンブリオ>
・実体がない<エンブリオ>だがアームズ系統であり、これはジョブの器を納めるジョブ枠……デンドロ世界に於ける“才能“とも言える概念をルール複合の非実体型アームズが置換しているから。
・必殺スキル《我は万の職能に通ず《ルー》》は第五形態時点で下級職と上級職が20ずつ追加で就く事が出来るパッシブスキルだが、デメリットとして『全ステータス補正がマイナス50%化』と『超級職への就職不可』があり、他のスキルもこの必殺スキルを補助する為のもの。
・《労働は報酬ありき》はジョブクエスト達成時に獲得する経験値を増加させるパッシブスキルであり、《諸芸の達人》はカンストしているサブジョブのスキルをメインジョブに寄らず使用可能出来る様になるパッシブスキルで一応サブジョブとメインジョブの接続は任意でオンオフ可能。
・上記スキルと経験値増幅系のジョブスキルと特典武具を組み合わせる事で短時間で3000近くレベルを上げる事が出来ていて、それで得た多数のジョブスキルを使え分ける事で万能な立ち回りを実現している。


読了ありがとうございました。
最近気落ちしてるので気晴らしに書いた作品を投稿してみる。以前に書いていたデンドロ二次の設定を踏襲している続きモノみたいに見えるけど細かい設定は違っている部分もあります。
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