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【アースワーム】と言うモンスターがいる。大体地球のミミズの様な外見をしたモンスターであり、土中の鉱物を捕食して生きる鉱石食のモンスターで排泄物には土壌の自然魔力を活性化させる効果がありその土地を良質化する有益なモンスターとして知られている。
そんな【アースワーム】の一匹に過ぎなかった“彼女”は地上が後の世に『先々期文明』と呼ばれる程に栄えていた時に生まれたが、地中で鉱石を食べる生態から人間を襲う事がなく益虫とされていた種族なので人間と敵対する事はなく、他の同族と同じ様に土の中で鉱物を食べては土壌を活性化させる日々を過ごしていた。
強いて彼女と他のアースワームとの違いを挙げるとすれば生まれながらに高い知性と魔法を使う才能を持っていた事であり、地中に住む他のモンスターに襲われた時も土壌操作用の地属性魔法の応用で退けるなど戦闘を不得意とする【アースワーム】としては秀でた能力を有していた。
そしてそんな知性を持つからこそ地中で鉱物を食べては土壌を改善する毎日変わらない作業にほんの少しだけ“退屈”を感じ、発展している地上の様子に興味を惹かれて一度だけ地上付近まで出てその光景を探ってみた事があった。
その時は賑やかで活気のある地上に興味は惹かれただけだったが、同時に自分が住める様な所ではないとも理解していたので再び土の中でいつも通りの日々を過ごす事になった。
やがて突如現れた“化身”と先々期文明との大規模な戦乱が大陸中を覆ったが、彼女はその危険性を察知して更に地中の深い場所に潜る事でやり過ごした。
かの“化身”達も地中深くに住む一匹のミミズに対して積極的に干渉する事はなく、戦いが終わった後の“モンスターからのドロップアイテム”と言う新たな理による環境変化も鉱物を主食とするアースワーム種である彼女には余り関係のない話だった。
まあ地中に住む飢餓状態の他のモンスターに襲われる事もあったが、偶然環境変動によりリソースが多分に含まれた鉱石が発生する場所に居た事で豊富なリソースを宿した鉱石食らって成長していて、そこに本人の知性と資質でアースワームの土壌操作用の地属性魔法を戦闘に転用する事が出来たので並のモンスターであれば襲われても返り討ちにして生き延びる事が出来た。
やがて一匹のアースワームに過ぎなかった彼女は<
だが、<UBM>になっても彼女の在り方は変わっておらず、基本的に日々をアースワームの役割として土壌の良質化に努めながら過ごしていたのだが、ある日に昔に見た地上の景色を思い出して今の地上がどうなっているのかがふと気になった。
とは言えグランワームは自分が強いのは地中と言う地形の有利による影響が大きいと自覚しており、何より小さなミミズだった昔と違って巨大なワームとなった今では自ら地上に行くのは危険だと考えていた。
そこで自然魔力を扱う過程で覚えたエレメンタル召喚と精霊召喚と地属性ゴーレム生産の応用で自分と感覚を同期させる特殊なエレメンタルを作成、それを地上に派遣して地脈を介して同期した感覚によって地上の様子を覗き見る事にしたのだ。
久しぶりに覗き見た地上は嘗て先々期文明と呼ばれていた頃程には発達してはいなかったが、それでも地上に生きるティアンやモンスターの様々な姿はずっと1人で地中で過ごしていた彼女の目を惹きつけた。
先々期文明が滅びた後に生まれた様々な国や文化、その中で生きて死んでいく多くのティアン、同じく嘗ての“化身”の進行から復活した自然とその中で生きて死ぬモンスター……そんな者達を見続けるのは地下深くで鉱石の捕食と土壌の改善しかする事がないグランワームにとって何よりの“娯楽”であったのだ。
そんな風に感じたグランワームは感覚を同期させた精霊を介して地上を散策しながら、様々なティアンやモンスターをもっと近くで見てみようと思って早速行動に移す事になった。
まあ最初の精霊は人間の街に近づく前にその辺のモンスターにあっさり倒されたりもしたが、本体であるグランワームには特に影響もないし、より地上を見やすい様な“アバター”を試行錯誤しながら作る事も今までのアースワームとしての役割からの仕事と違い楽しい趣味だった。
そうして何度も試作品を作っては地上に送り込みその度にティアンやモンスターに討伐されるなどをしながら、最終的に地属性魔法で作ったゴーレムに自分の感覚や意識と同期する人工精霊を封入して遠隔操作する《
まあそれでも自分の身体とは全く違う精霊の躯体を遠隔操作するのは苦労したし何度も討伐されたが、そんな経験を幾度も得て地上でも活動出来る様になった後で興味を惹かれる様な場所へと“観光”に行く事にした。
そんな観光の中で出会った様々な超級職など異才を示すティアンや異質な進化を遂げた<UBM>、卓越した頭脳を持つ魔王の最後と残されたいずれ星喰いに至る竜王、王道を示した男に惹かれて多くのティアンを束ねた末に生み出された王国、その王国が晩年に地竜の王国に挑んだ結果滅んだ諸行無常。
龍の帝国に生まれたあってはならない程の才を持つ龍の皇帝、滅びた機械文明の復興を目指す研究者達のキャラバン、異質な天竜の王が納める天竜の国、様々な種族が住まい権謀術数が渦巻く妖精郷、魔術師達が集まって作られた魔法の都、力持つ超級職が作り上げた多くの都市国家、その全てを飲み込んだ覇者の如き1人の男。
後に“三強時代”と呼ばれる【覇王】と【龍帝】と【猫神】の争い、龍帝が死に覇王が封じられ猫神が去った後の群雄割拠、その中で生まれた【聖剣王】と【邪神】の戦いからの騎士の王国の設立、そして現代の七大国家と<マスター>の時代。
そんな風に地上の時代の流れを見るのが趣味だったグランワームは<マスター>達の増加による新たな時代の流れを感じ、せっかくだからと今回は結構な気合いを入れた美少女アバターを作り上げて地上に派遣したのだが……。
◇◇◇
□王都アルテア 【
「……そうしていざ地上探索とアバターを地上に派遣した所で地中の本体である【グランワーム】が何者かに襲われて精神を同期させてるリンクが断絶、途方に暮れていた所に偶然俺が通り掛かってテイムされる事にしたと」
「大体そんな感じじゃな。正確に言えば万が一本体が死亡するなどした場合、現在活動中の躯体に自らの精神と記憶と人格を完全に移して“自分”と言う存在を存続させる《
つまり神話級<UBM>【グランワーム】が創り出した特注のエレメンタルであり、その精神と記憶と技術を引き継いだ存在なのがこの【アース・エレメンタル】ネリルという存在な訳である。
本来なら<UBM>やその配下はテイム出来ない筈なのだが、グランワームとの繋がりが完全に絶たれて普通のモンスターになった故にテイムも可能になったのだと言う。
「あの時は割と大変じゃったんだがのう。《本霊移換》を使ったのが<クルエラ山岳地帯>に複数の<UBM>と<マスター>が集まってるから見に行ってみようなタイミングじゃったから、このままだと純竜級程度のスペックしかない躯体じゃ普通に死ぬ可能性が高かったからの」
「俺の従魔になった後【クルエラン・コア】を速攻で始末しに行ってた辺り生き残るだけなら十分だったんじゃないか?」
「アレは念の為に持っておいた予備魔力を蓄積したジェムを使ったからじゃしな。相性も良かったからどうにかなったがジェムは一戦で使い切ってしもうたし」
デンドロ時間で半年程前に戦った地脈の魔力を利用してゴーレムを作る魔法装置の慣れの果てらしい【妄創器核 クルエラン・コア】は地中深くに埋まってるので発見され難く、その状態で山全体の土石を使って多数のゴーレムを作り上げて無差別に生物を襲う恐るべき<UBM>だった。
……のだがネリルは地属性魔法により速攻で本体の居場所を把握、取り巻きの土石ゴーレムや切り札だったっぽい伝説級金属ゴーレムも無効化して地面の下の本体も引き摺り出して戦闘能力の無い本体を俺が殴って倒しておしまいだったしな。
「それにあそこには他にも<UBM>が二体もおったからの。あの場所でワシが死ぬ確率がを下げるには不死身である<マスター>の従魔になる事だったからなぁ。ちょうど良く《テイム》スキルを持つ<マスター>であるお主と出会えたのは幸運じゃったよ」
「ヴォルトを従魔にしたから【
クルエラ山岳地帯の調査クエストを妹達含む<マスター>の野良パで受けたら山賊に誘拐されたティアンの救出依頼を受けて、更に【クルエラン・コア】と伝説級<UBM>【熱体竜 ヒートライザ】が山岳内の生物を襲い始めたと言う酷い状況だったからな。
何とかする為にパーティーを二手に分けて妹達含めた面子は【ヒートライザ】を撃破、俺の方は誘拐されたティアンを救出して他の<マスター>に任せてゴーレムを出してる【クルエラン・コア】を撃破しに行く事に……改めて思い返しても良くどうにか出来たな。
「加えて人質ティアンを護衛していた妹達の所には例の古代伝説級な【蠱毒蟲人 ラーゼクター】が現れたらしいからな。殿に残ったウチの妹2人をデスペナにするぐらいの相手だったから接敵しなかったのは運が良かったか」
「妹御2人が相応に手傷を負わせたから撤退戦したっぽいがのう。リソース使い果たしたワシらの所に来たら主人殿の【ジュエル】に篭ってやり過ごすぐらいしかてはなかったじゃろ」
<マスター>の従魔ならデスペナ時に一緒に回収されるからな。確かにあの状況では野良のモンスターで居るよりは生存確率は上がってただろうって辺り、長く生きてきた経験から来る判断力は十分にあるんだなコイツ。
「そんなお前でもアバター使った異世界探索ゲームしてたらゲームプレイヤー本人が押し込み強盗喰らった感じで本体が死ぬとかうっかりし過ぎでは? アバターに集中し過ぎて本体が疎かになるのは本末転倒じゃね」
「それを言われると何も言い返せんのじゃが、ちゃんと分割思考で本体と分体は両方同時に制御していたのじゃ。そもそも地下1000メテルよりも下にいるワシを仕留めるなど早々出来ない筈で、これまでもずっと安全だったから油断していたと言われれば否定出来んが」
ネリル曰く、確かに【グランワーム】はMPSP特化でその巨体からHPは高めだが物理ステータスは高くはないし、元が土壌環境操作を主とするアースワーム種なので鉱物操作を中心として地属性の非戦闘・生産系魔法スキルに特化したスキル構成だから神話級<UBM>としては戦闘能力は下の方ではある。
だが鉱物・鉱石を捕食・蓄積してそれらをMP・SPとして使用出来るスキルを持ち、2000年以上の土壌環境調整の合間に蓄積してきた膨大なリソースを使って大陸でも最高位の地属性魔法技術を有し、それにより地上から自分がいる地下深くまでの地層全てを武器とする事が出来る地中と言う環境に適応した条件特化型<UBM>なので地中では早々やられないとの事。
「偶に地中でボスモンスターや<UBM>と遭遇する事もあるが蓄積したMPを数百万ぐらい使って周囲の土石を数十トンぐらい強化・操作して押し潰せば大体カタが付くし、やろう思えば蓄積した億単位のMPを使って地下1000メテルから地上へ地属性魔法による広域殲滅も出来るしな」
「頭おかしいMPの単位が聞こえたんだが神話級<UBM>ってそんな連中ばかりなのか?」
「まあ大体トンデモ固有スキルによる『神話に語られる程の力』を押し付けて来るのが神話級<UBM>みたいな所はある」
そんな『神話に語られる程の力』でやってた事がアバターを使った地上観光とか言う、多くの遊戯派<マスター>と変わらない娯楽を楽しんでいたのがコイツなんだが。
まあそんな風にグランワーム自体が基本的に無害どころか土壌環境を改善する有益な<UBM>であり、そもそも地中深くに住むので知っている者も少ない事もあって引きこもりゲーム生活を2000年続けられた訳の様だ。
「なら本体を殺した奴の情報は何かないのか? ……いや、そもそも本体後殺されてネリルが生き残ったのなら契約条件に『グランワームの調査や討伐』なんて付けないから、一体何があってネリルとグランワームの同期が切れてそんな事になったんだ?」
「そう言えばその辺りは詳しく話をしとらんかったな。使うのが初めてだった事もあって《本霊移換》を使った時に若干同期した意識に損耗があったから曖昧じゃったから話さんかったが、今は大分記憶の整理が出来たから思い出せる範囲で話しておく事にしようかの」
どうも今は『ネリル』になっているアバターを地上に送り込んだ直後、こっちを狙って来たボスモンスター【ハイ・メタル・ドラグワーム】がいたからいつも通りに地属性魔法で潰したらしい。
そいつは金属を捕食して金属質の甲殻を保有するドラグワーム種の一体だったが、数百万のMPと地属性魔法技術を合わせて神話級金属クラスまで強化された土石に押し潰された事によって死亡して光の塵になったのだが……。
「その直後にワシの肉体の中に“何か別のモノ”が発生したんじゃその“何か”はワシの肉体を侵食して乗っ取ろうとしており、更に魔法やスキルなども急速に使用不可能……恐らく制御権を奪われ始めたと察したワシは《本霊移換》を使いつつ自分自身に封印系の魔法を掛けて“何か”の侵食を抑えようとした辺りで意識が途絶えて同期が切れた形じゃな」
成る程、ボスモンスターを倒したと思ったら何者かに侵食されて肉体の制御権を奪われる、明らかな異常事態ではあるが俺は似た様な能力を使う<UBM>を見た事があった。
「あの【ヴァルシオン】みたいな他者を乗っ取るタイプの<UBM>か? アイツも装備者の死後に呪いで他者に自分を装備させるスキルを使って来てたし、その【ハイ・メタル・ドラグワーム】にも“何か”が寄生されて宿主の死亡と同時にお前の元の肉体に寄生したとか」
「それがワシも考えた。一応光の塵になる所は確認した筈じゃし、常時展開している土中の情報を把握する生命探知・振動探知・魔力探知・空間探知など各種探知スキルに引っかからなかったがのう」
一応、例え相手が物理無効のエレメンタルとスライムであろうともダメージを与えられる様に土石の性質を変更するスキルは使っていたし、死後発動する呪いや空間跳躍攻撃に対する対策用の防御魔法や回復魔法も準備していたらしいが使う間もなく侵食されたとの事。
「まあ、ワシの探知を潜り抜けて寄生して肉体を乗っ取るなんてふざけた能力もこの世界ではあり得るからの。特化した古代伝説級以上の<UBM>とかであればな」
「相変わらずゲームバランスなぞ考えられてないなデンドロ、今更だが。……所で契約の内容はグランワームの調査と討伐であって元の肉体を取り戻すとかではないのか?」
俺はそう聞いてみたがネリルは苦笑気味になりながら首を横に振った。
「神話級<UBM>であったワシに寄生してみせるヤツから元の肉体を取り戻せる確率はまずないであろうし、生け取りなどと言うヌルい考えではなく初めから討伐前提で挑まねば“神話級”を相手にする事は出来ん」
「まあ巨大ミミズ生け取りは厳しいか」
「既にワシはこの躯体で生きていく覚悟は出来ておるし、何よりもしワシの元の身体を悪用されてしまえば地上にどれだけ被害が出るか分からんからな。一応大地を保全するのがアースワームとしてのワシの仕事じゃから面倒ではあるが最低限の責任は果たさねばな」
曰く、その“何か”がただ嘗てのワシ【グランワーム】を殺したのなら新しい神話級<UBM>が生まれるぐらいで済むだろうがが、もし肉体が乗っ取られて2000年掛けて蓄積して来たリソースを良からぬ事に使われるのはまずい。
もし<UBM>が吸収すれば『イレギュラー』の領域に届きかねないリソース量だし、乗っ取られた肉体でも地属性魔法を全力で使うだけで小国を滅ぼすぐらいは余裕で出来るぐらい蓄積しているとの事。
「そもそも色々面倒くさいから得たリソースを貯蓄して神話級の領域に留めておいたんじゃが、それを上手く使えればレベル100の上限を突破してイレギュラーになる事も理論上は不可能ではないの。ただ死んだだけなら蓄積リソースは自然魔力に還元されるんじゃが」
「成る程、確かモンスターのレベル上限を超えるとイレギュラーと呼ばれてめっちゃ強くなるんだったか」
「神話級の次の段階、レベル100を超えるモンスターは本当にヤバいからのう。とまあ、放置しておくと色々不味い事になるから、グランワームの調査と討伐をしてもらいたいとお主に契約を持ち掛けた訳じゃ」
契約の詳しい事情は大体分かったが意外と責任感があるんだな。今までのコイツの行動からして自分の趣味に生きてる様に見えたから、元に肉体の事はすっぱり忘れて新たしい生活を送るタイプだと少し思っていた。
「趣味だけやっていても別に良かったんじゃが、土壌を改善する仕事自体は嫌いな訳ではなかったしな。単に同じ作業を繰り返して飽きて来たから地上観光を趣味にして楽しんでいたんだけで、アースワームとしての役目もちゃんとやっておったぞ」
「アースワームでなくなってからも仕事をきっちりとする辺りは意外と真面目なんだな」
「ぶっちゃけ責任なんて背負いたくないのが本音じゃが、自分の仕事のミスを放置したままで被害が出るかもしれんとなれば寝覚めが悪い。そんな状態だと趣味でやってる従魔生活も楽しめんから後始末ぐらいはしてスッキリしたいのじゃ」
まあ
「分かった、確かにお前はこれまで色々と俺の事を手助けしてくれてたしな。なら俺も契約に従って【グランワーム】及びそれを襲った何者かの調査と討伐は成し遂げるさ」
「ああ、今後ともよろしく頼む」
こうして改めて契約を結んだ俺達は神話級<UBM>、及びその肉体を乗っ取った“何者か”を追う
◇
それから一通りの【ジェム】を創り終えた俺は早速魔石職人ギルドに納品してジョブクエストを達成、幾らか【魔石術師】のレベルも上がり条件を満たしていた奥義含めて幾つかのスキルを取得出来た。
「上級魔法ジェムの一定数生産とジェムによるボスモンスターの一定数討伐、既に条件を満たしてたから後はレベルを上げれば良いと。確かにこの奥義は色々と使い道がありそうだ」
「事前準備が少々面倒ではあるがな。まあそこはワシがいれば問題ない。……それで主人殿、さっそく例の調査で<トーラス廃鉱山>に向かいたいのじゃが」
「<トーラス廃鉱山>……確か王都から見て東側にある自然ダンジョンだったな」
その<トーラス廃鉱山>は大体200年前までは希少金属が採掘出来るので鉱山として使われていたが、環境の変動からかレベルが高い鉱物系エレメンタルモンスターが出現する様になったので使われる事がなくなり自然ダンジョンとして扱われる事になったらしい。
自然魔力が集まる秘境やパワースポットと呼ばれる場所になっている為に鉱山だった時代と比べてもより高品質な希少鉱石が採掘出来るのだが、その自然魔力を利用する強力なエレメンタルやゴーレムが多数生息しているので鉱石狙いで侵入して来た者を多数葬っているのだとか。
「まあ原因はワシと言うか【グランワーム】なんじゃがな。この辺りの自然魔力の流れに異常が起きていたから調整して、近場にあった鉱山に自然魔力を流して周囲の地脈を安定化させるパワースポットにした結果エレメンタルモンスターが出現する様になったんじゃ」
「鉱山を一個潰してるのか」
「希少鉱石の再生産も行われるから鉱山としては再生されとるんじゃし良いじゃろ。それに放置しておくと周囲の環境にも影響与えそうじゃったし」
……【アースワーム】は土壌を良質化させるから人間にとって益のあるモンスターだと見られているが、決して人間の為に生きている訳でも人間の味方であるという訳でもないって事かね。
「んで、その廃鉱山に何をしにいくんだ? ゴーレムやジェム作成に使える希少鉱石が手に入るなら行く価値はあるとは思うが」
「それもあるが同期が途切れた時の【グランワーム】が居た地点はこの近辺の地中深くじゃから、この鉱山のパワースポットとしての機能を介してグランワームが今もそこにいるのか、或いはどんな状況なのか調査して情報を集める為じゃな」
具体的には俺の【
「最悪反撃で鉱山ごと潰されるかもしれんが問題ないの、従魔が無事な様にわざわざ【ジュエル】をワシが作ったダメージ添加機能付き最上位品にしたのじゃからな」
「最悪俺がデスペナになって逃げる算段な訳ですね、まあこの世界での<マスター>の命なんてチリ紙より安いから良いんだが」
「なるべく気付かれん様にするつもりじゃが情報の入手が優先じゃ」
コイツやろうと思えば【ジュエル】すら作れるんだよな。そもそも【グランワーム】時代から生産の方が得意で、特に鉱物操作系の生産技術は大体最高レベルで出来るらしいが。
「そもそも<トーラス廃鉱山>は相当難易度の高いダンジョンだがそこで調査とか出来るのか?」
「ワシが作った自然ダンジョンじゃから勝手は心得ておる。今のワシは地属性のエレメンタルじゃから同種としてエレメンタル用の交渉・隠蔽・精神干渉魔法を使って戦闘を出来るだけ回避すれば踏破は可能じゃろう」
確かに俺も【
「最深部には地脈調整補助用のボスエレメンタルを配置したんじゃが、地属性魔法で負ける気はないし倒せば良い。……まあ200年も前の事じゃから今どうなっておるかは分からんが」
「なら事前にダンジョンの詳細な情報を集めるべきだな。直近の情報はあった方がいいだろ」
以前に王国にある自然ダンジョンを調べた時には前述の情報ぐらいしか分からなかったから、とりあえず魔石職人ギルドで<トーラス廃鉱山>についての詳しい情報を調べていく。
……とは言え、ジェム用の鉱石を集めるジョブクエストがあるから王都周辺の採掘場所の情報はあったけど事前に調べたのと大して変わらんな。鉱石は
「魔石職人がわざわざ採掘なぞせんじゃろうからなぁ。じゃがエレメンタル以外のモンスターも確認されておるらしいな、まあ200年も経ったなら外から住み着くモンスターもおるか」
「自然ダンジョンなら神造ダンジョンと違って生息モンスターの変化も当然あるだろうな。後は現地調査するしか「おっ、レントじゃん久しぶり。今日も納品クエストか?」ん?」
そうして調べていると声を掛けられたので振り向くと、そこには額に宝石をあしらった小動物を肩に乗せた顔見知りの男性<マスター>がいた。
彼は【
「久しぶりだなダヴィーデ、納品クエストは既に終わらせてあるから【ジェム】が欲しいならギルドで買ってくれ」
「ギルドを介するより生産者から直接買う方が安上がりなんだけどな。カーバンクルが覚えてない魔法の【ジェム】ならいつでも買い取るぞ」
『KYUU〜』
ちなみに魔石職人である彼が俺からジェムを買い取るのは肩に乗せた小動物、ガードナー系列の<エンブリオ>である【カーバンクル】がジェムを食べる事で低確率でジェム内の魔法をラーニングするスキルを持っているからである。
ただし基本的にラーニングした魔法は使用出来ない代わりに<マスター>のジェム制作時にサブジョブの魔法スキル扱いに出来るスキルらしく、それによりラーニングされた魔法が増えれば増える程に多様なジェムを作る事が出来るのだと言う。
「確か決闘ランキング30位以内に入れたんだってなおめでとう。王国でも最強クラスの『ジェム生成貯蔵連打理論』の使い手現るとギデオンで話題になってたぞ」
「褒め言葉は素直に受け取っておくけど、俺より強いジェム使いにそんな事言われても反応に困るぞ」
『KYUU……』
ちょっと不満そうな顔をするダヴィーデだったが彼の【カーバンクル】にはジェム投擲を補助するスキルぐらいあり、彼自身も魔石職人系ジョブのみでジェム生産が行えるのでサブジョブに戦闘系ジョブを入れる事が出来る。
そして上級ガードナーと戦闘系上級職のステータスを使ってジェムを投擲する事で亜音速以上で動く相手にはジェム投擲前に倒される弱点を克服しており、決闘のレベルが高いアルター王国でランキング入りするだけの実力を有しているのだ。
「倍率が高い王国でランキング入りするぐらいなんだからもっと自信を持っても良いと思うが。俺がジェム投げるのはあくまで手札の一つだしな」
「それが手札の一つってのがヤバいんだろお前は。王国の決闘上位連中ならジェム連打掻い潜ってくるしさぁ。他のクランメンバーはこのまま決闘王者になって自クランの作品宣伝してくれとか言ってくるが、上位勢相手じゃジェムと装備性能だけだと厳しいし」
ちなみにダヴィーデが所属している<プロデュース・ビルド>は複数の<マスター>によるオーダーメイド合作武具の作成を得意としている生産クランで、決闘への出場も本人の意思以外にもクランで作った装備の宣伝も兼ねているらしい。
彼等が作るオーダーメイド装備の性能は確かで俺も合計レベル基準の装備補正防具を発註した事もあるし、ダヴィーデが決闘ランカーになれた一因も高性能な装備を使っていた事もあるので宣伝としては上手くいっていると言えるだろう。
「もう少し使えるジェムの種類を増やして状況に応じて最適なジェムを投げられる様にすればいいんじゃないか? 後は近接戦闘の技術がもう少しあれば十分に上位とも戦えるだろう」
「カーバンクルの魔法習得ガチャを上級魔法ジェムでやるのは大変なんだが? ランクが高い魔法だとラーニング確率体感1%ぐらいだから食費が掛かるんだよ。技術に関してはもう少し磨かんといかんのは自覚してるけど」
『KYU……』
溜息を吐くダヴィーデは申し訳なさそうに鳴くカーバンクルの頭を撫でているが、以前に彼等の決闘を見た限りだとジェムの魔法の格が低かったので上位の魔法ジェムを複数種作れる様になれば更に上を目指せるポテンシャルはあると思う。
決闘のルール上消費アイテムは自作品限定で使える種類にも制限はあるが、闘技場の結界内部でなら消費したアイテムは試合終了後に元に戻るから高級なアイテムを使いたい放題だしな。
「そこは地道に試行回数を重ねるしかないんじゃないか? じゃあ俺はこれから<トーラス廃鉱山>って自然ダンジョンへダンジョンアタックしに行くから」
「え、お前もあそこに行くのか? あそこのエレメンタルや【メタル・モール・ドラゴン】達クッソ強かったぞ」
「……ちょっと詳しく事情を聞かせてくれないか? 情報料は払うから」
聞き捨てならない情報を口にしたダヴィーデに詳しく話を聞くと、先日<プロデュース・ビルド>は<トーラス廃鉱山>に
アダマンタイトは上級職だと加工が困難な金属ではあるが自分達なら問題ないと考え、自然ダンジョンからの採掘なら生産素材を実質タダで手に入るとダヴィーデ含む戦闘も可能なメンバーで採掘に行ったらしい。
「一応エレメンタルが多いって言うから対策装備は用意してたんだけど、亜竜から純竜クラスのドラゴンに襲われて最後にはデスペナしたからな。お陰で大損だ」
「初めて聞く話だが辺境のダンジョンの情報だから更新が遅れているのか。自然ダンジョンなら外から来た勢力が占拠するのもあり得る話か」
「【メタル・モール・ドラゴン】は地中で過ごしながら土中の金属を食べる生態を持つモンスターじゃから鉱山を縄張りにしてもおかしくはないの」
ただ、話の中で『純竜が複数いた』って部分は気になるな。普通の群れなら純竜クラスぐらいボスを張れるぐらいの実力なんだが、純竜複数で作った群れなのか、或いは
ネリルに聞いた話では<トーラス廃鉱山>には最深部には地脈管理用に上位純竜クラスのエレメンタルを配置したらしく、200年前の情報だから確度は薄いがその廃鉱山を縄張りに出来る以上は相応の戦力があると考えた方が良いか。
「良い情報だった感謝する。これは情報料な」
「別に大した話でもないんだが……って、市場じゃあんまり見ないジェムばっかだな」
とりあえず余り出回らない強化術師系統や闇属性雷属性辺りの魔法を渡しておいた。俺に取っては幾らでも作れるジェムだから作ったが使う機会が少なくダブついてたやつだけど。
「さて、情報は集まったし後は現地で確認するか」
「いや純竜の根城に採掘しに行くのか? いやお前ならやれるのか……」
「採掘するかは現地の状況次第だがな。まあ邪魔するヤツがいたら倒しておくが」
目的は採掘というより調査だからな。鉱山のパワースポットとしての機能を利用出来るかどうかは現地に行って確かめる必要がある……と考えていたらダヴィーデが何か悩んでいる様な素振りを見せた。
「……コイツならあそこも普通に攻略出来そうだな。俺らはあくまで生産クランだから正直言って持て余してるし……」
「ふぅん? まだ何か隠している事がありそうだな」
「別に隠してた訳でもないぞ、ただ言ってないだけで。……お前が<トーラス廃鉱山>を攻略するなら俺達<プロデュース・ビルド>にも一枚噛ませてくれないか。そうすれば以前俺達があそこで遭遇した<UBM>【掘竜王 ドラグディグ】の情報を提供する用意がある」
へぇ、何か隠してると思ったら<UBM>の情報だったか。確かに『亜竜から純竜クラスのドラゴンに襲われて最後にはデスペナした』とは言っていたが亜竜や純竜にキルされたとは言ってなかったな。
……思ったよりも<トーラス廃鉱山>の現状は面倒な事になってるみたいだし、こちらにはこちらの目的もあるんだがさてどうしたものかな。
あとがき・各種設定解説
【大地蟲 グランワーム】:バ美肉生活エンジョイ系<UBM>
・“彼女”と呼称しているがアースワーム種は種族的に雌雄は存在せず、アバターのエレメンタルが美少女型なのも今までの経験からその方が色々と“ウケ”が良いと知っているのもあって割と趣味でやってる。
・大昔からアバターを使って地上を観光していたので多くの歴史的事件や伝説の存在に遭遇しており、その時々で協力したり敵対したりただ見ているだけの謎エレメンタルだったりしたので知っている事は結構多い。
・元々【アースワーム】が土壌改良を得意とするモンスターの為、その頂点である<UBM>としての資質と長年の経験から鉱物・鉱石操作の地属性魔法や自然魔力を操作する精霊魔法やゴーレム生産などを超高レベルで行使出来る技術を有している。
・更にアバターであるエレメンタルは地属性魔法以外の適正を持たせる事も可能であり、本体は行使出来ない技術もあるが長年のアバター生活から得た経験で多くの技術や知識を有している。
ネリル:転生したら美少女だった系元<UBM>
・今は純竜級の【アース・エレメンタル】なので<UBM>時代と比べて性能は雲底の差だが、元より最も得意な地属性魔法に長けたエレメンタルでありアバター活動による長年の経験と技術もあって純竜級の枠に収まらない非常に高い能力を有する。
・元々が土壌を操作する生産系のモンスター故に生産スキル適正も高く、謎のエレメンタル鍛治師とか彫金師とか魔道具職人ムーブをしていた時期の経験もあるので鉱物加工の領分なら様々な生産を行える。
・この様に戦闘・生産問わず規格外の技術を有して世界の秘密とかもけっこう知っているが、現状では主人であるレントの成長の為に必要な時以外では過剰な助力はしない様にしたり伝えない方が良いと判断した情報が言わなかったりしている。
アバター名:ダヴィーデ
メインジョブ:【高位魔石職人】
サブジョブ:【剛闘士】【戦士】【闘士】【投手】【斥候】【魔術師】【魔石職人】
<エンブリオ>:【魔宝玉獣 カーバンクル】
・生産クラン<プロデュース・ビルド>所属の<マスター>で魔石生産及び戦闘行動及び装備の運用試験及び決闘での宣伝担当、貴重な戦闘要員なので仕事は多めだが決闘も好きなので割と楽しんでいる。
・【カーバンクル】はジェム運用補助を能力特性とするTYPE:ガーディアンで、ラーニングした魔法をジェム生産時に込める魔法として使える《宝玉の導き》やMPを込めてジェムの投擲速度と効果を強化して多少の追尾機能を付加する《宝玉の軌跡》などのスキルを有する。
・戦闘スタイルは魔石職人系統でカーバンクルのスキルにより多様なジェムを生産し、戦闘時には闘士系統をメインとしてそれらを投擲しつつ接近されれば自クラン製のオーダーメイド装備で固めて強化した近接戦闘能力で戦うスタイル。
・普通のジェム生成貯蔵連打理論よりジェムの種類や質も強化されて弱点の接近戦にもある程度対応出来るが、やはり半分生産職なので純粋な戦闘ジョブで固めた相手に接近されると不利は否めない。
・カーバンクルも生産補助と投擲の為にMP、AGI・DEXが高めのガードナーなので近接戦には向かず、接近戦だとジェムを使うと自滅の可能性もあって援護も難しく爆炎纏ったレスラーにワンパンされたり仮面被ったライダーに飛び蹴りされたりして倒される事も多い模様。
・レントとは<プロデュース・ビルド>の客だった彼が多様なジェムを納品していると聞いて交渉の結果ジェムを購入した形で出会い、その対価で戦闘系クエストを手伝わされた時に『コイツ絶対フィガロとかフォルテスラとかの同類の<マスター>最上位勢だろ』と思ったらしい。
読了ありがとうございました。
今後しばらくの主人公の行動方針は『超級職・超級<エンブリオ>無し縛りでの神話級<UBM>討伐RTA』となります。だからネリルを従魔にしておく必要があったのですね。