□■<トーラス廃鉱山>内部
『MOMOGUGUMOO!』
『GOGOGOOOO』
自然ダンジョン<トーラス廃鉱山>、そこでは希少金属目当てで占拠していた【メタル・モール・ドラゴン】の群れと、元々そこに住んでいたエレメンタル達が激しい戦いを繰り広げている真っ最中。
今まで大人しくしていた筈のエレメンタル達がいきなり反抗してきた事で不意を突かれたドラゴン達は混乱しており、その隙に地属性魔法による攻撃やゴーレムの召喚、自爆系エレメンタルによる特攻を繰り出してエレメンタル達は優位に戦っていた。
『《マッドクラップ》。ごーれむよろー』
『《ピットホール》。そこです、じばくしなさい』
『《グランドグレイブ》。われわれのいのちはやすいものですー』
『MOGUUU!?』
実は【ドラグディグ】達の襲撃を受けたエレメンタル達は怯えて大人しくしていた訳ではなく、ドラゴン達に気付かれない様に密かに犯行の為の準備を整えていたのだ。
具体的には弱いエレメンタルやゴーレムを定期的に出して倒される事で占拠が上手くいっていると誤認させつつ、強力なゴーレムやエレメンタルモンスターを作ってドラゴン達がまだ見つけていない廃鉱山の一角に隠していたのである。
『はいそこでかべくずしてー』
『うごきとめてからじばくエレメンタルごー』
『たいりょくへらしたらごーれむでとどめー』
『MOGUUUUU!?』
元より自然魔力と自然物から生まれたエレメンタルはホームグラウンドで戦う時に真価を発揮する上、このダンジョンのエレメンタル達はどっかの神話級ミミズが設定したせいで戦略的な行動までとってくる。
本来なら本能で動く事が多い下級のエレメンタルすらも連携を取ってくるので、ここのエレメンタル達はダンジョン内部で戦うなら生半可なドラゴン程度では敵にならない能力を持っているのだ。
『GUMOMOGUUU!!』
『うわーゴーレムたべられたー』
『やっぱあいしょうわるくねー』
だが、竜王がいたとは言えそんなダンジョンを一度は制圧した【メタル・モール・ドラゴン】達も決して弱くはなく、地面を掘り進む《掘削》で地属性魔法による生き埋めと拘束を突破し、金属を補食する為の《金属補食》による金属強度低下により金属製ゴーレムを噛み砕いていく。
地属性魔法とゴーレムを主戦力とするエレメンタル達にとって【メタル・モール・ドラゴン】は相性の悪いモンスターであり、奥の手の自爆型エレメンタルも廃鉱山内部の高品質な金属を補食して高強度の金属の表皮を得たドラゴンには効きが悪い。
『MOGUGUGUMOO!!』
『やっぱかたーい』
特定の金属の名を持ちその金属しか食べられないメタル系のモンスターと違い、ただ【メタル】の名前だけを持つモンスターは殆どの金属を捕食出来る雑食性モンスターだが、格が高過ぎる金属は食べれないか食べても自身の肉体に反映出来ない、または反映しても質が大きく劣化する事が多い。
なので亜竜級の【メタル・モール・デミドラゴン】はそこそこの金属しか食べられないので鱗も雑多な合金製で、純竜級の【メタル・モール・ドラゴン】でようやく低品質のアダマンタイトを食べられる程度である。
『GOGOO……』
『MOGUAA!!』
だが、アダマンタイト鉱床のある廃鉱山で補食を繰り返す事で純竜クラスは低品質とはいえアダマンタイトを中心とした合金で鎧っており、元のENDと合わせて一万近い防御力を獲得していた。
そして金属の表皮はそのまま攻撃にも転用出来て、今も純竜クラスの【メタル・モール・ドラゴン】が【グランドゴーレム】を低品質アダマンタイトで形作られたの爪によって引き裂いている。
「ふむ、アダマンタイト合金の表皮といった所か。だが品質は余り高くなく、身体全部が同じ強度という訳でもなさそうだな」
「急所に当たる部分は強度が高めの合金で出来てるっぽいね。後は関節部までは完全に覆ってないね」
「蛇腹状になって動きを阻害しない様に出来ますわね。全身鎧と同じなら弱点も同じかしら」
だからエレメンタル達も自分達だけでは相性が悪くてドラゴン達を倒しきれないと分かっていたので人間達に協力を求め、それを受けた<プロデュース・ビルド>のメンバーが厄介な純竜級の【メタル・モール・ドラゴン】を相手にする事となっているのだ。
「
『────!』
<プロデュース・ビルド>クランオーナーのエドワードが呼び出したのは暗い色合いのマーブル模様で出来たゴーレムであり、彼はそれを【
またゴーレムかとドラゴンは再び《金属補食》によってゴーレムを噛み砕くが、直後にとても不味い物でも食べたかの様にゴーレムの破片を吐き出して何かに酔っているかの様に足元がフラつく。
『MOGUGUGUGU……!?』
「拾い物をそうポンポン口にするものではないぞ。毒があったりするからな」
このゴーレムは彼の<エンブリオ>【幻創合金 オレイカルコス】で【キングバジリスク】の毒液などの毒素材と金属を混ぜた特注の合金で出来ており、摂食するだけで相手を【猛毒】【酩酊】などの毒に侵す事が出来る代物なのだ。
彼は事前の情報から【メタル・モール・ドラゴン】が金属を補食する能力でゴーレムを倒していると推測して、壁役として補食が困難になるゴーレムを<エンブリオ>とジョブの力で制作していたのである。
「クロ、【カース・ゲイザー】の素材で《天糸縛り》」
『KYUU!』
『MOGUA!?』
続いてエドワードの隣にいた少女【
この【クロートー】は素材を補食して糸に作り替える『紡績』を能力特性とする<エンブリオ>で、今は敵を【呪縛】する魔眼を持つ【カース・ゲイザー】の素材で【呪縛】状態異常を齎す糸を作り、それを敵を【拘束】する糸を放つスキルによって敵の動きを止めてみせたのだ。
「トモ、【爆裂矢】を撃ちなさい」
「了、《長弓・船穿ち》」
『MOGA……!?』
そこに【
日本史上の強弓の使い手をモチーフ使い手する【タメトモ】は非常に高い弓の技量に弓の威力を強化する各種スキルを取り揃えているが弓矢自体は持っておらず、更に強弓の逸話が由来なのか各種スキルには反動で弓に負担が掛かるデメリットがある。
「流石の純竜でも頭を内側から爆破されれば死ぬよね。まあ【爆裂矢】は一本作るのに十万は掛かるんだけど」
「だが今の我らの中で防御特化の純竜に攻撃を通せるのはアルテミシアとエルザぐらいだ」
「ドラキルを酷使して対ドラゴンと対金属のスキルを付与した武器は出来るだけ作りましたが、戦闘型じゃないメンバーだと限度がありますわね」
リソースを集中してデメリットも有する分だけ弓矢を運用する能力は非常に高いガードナーであり、【
そんな風に<プロデュース・ビルド>には生産職と<エンブリオ>の組み合わせで戦闘も出来る所謂戦闘班もいるが、やはり生産に興味がある<マスター>が集まっているのでそうでない者の方が多い。
『『『《グランド・ホールダー》』』』
「ヒヒヒ、動きを封じるぐらいは出来るねぇ、《ブラッド・アレスト》」
「亜竜でも防御力が高いからイマイチダメージ出せないけど拘束ぐらいならね。《ブランチ・バインド》」
『GUMOMO!?』
今もエレメンタル達の地属性魔法によって生み出された手で拘束された亜竜級ドラゴンを、メンバー【
彼女達の<エンブリオ>は呪物生産と木材生産特化の非戦闘型だがエドワードと同じく生産活動の補助目的で魔法系上級職を取っており、自作の呪われた装備品や木製装備を使ってある程度は戦える生産職である。
「今だ行くぞ。セイッ!」
「でも下級職のスキルじゃ特攻武器込みでも大したダメージにならないぞ。《ソードスラッシュ》」
「止まってる的に武器を振るうぐらいならなんとかなるけど戦闘はキツい《ハンマーストライク》!」
「アクティブスキルもないから普通に殴るしかないんですけど」
動きを止めた亜竜に対ドラゴン・対金属効果の武器を持ったサブオーナーである【
この4人は上級職・<エンブリオ>共に完全な生産系である生粋の生産職なので戦闘時は戦闘系下級職をメインにしており、ステータスの固定値増加装備で下駄を履いているが戦闘向きではないので亜竜級相手の戦闘のサポートに徹している。
「今回は装備もアイテムも準備して来たからパーティーで挑めば十分戦えるな」
「鉱山内部のエレメンタルが味方なのが大きいですが」
「レントとネリルが通訳の為のゴーレムを作ってくれたから連携も取れますし」
『みなさまそこそこつよいですねー』
そう言ったエルザの足元には人間の言葉を話す身長1メートルぐらいの人型ゴーレムがいたが、これはネリルが作り上げたゴーレムで廃鉱山内のエレメンタルの中でもまとめ役の個体を封入した物であり、ゴーレム自体にエレメンタルの言葉を人間に通じる様に翻訳機能が付けられている。
この【エレメンタル言語翻訳ゴーレムくん】のお陰で<プロデュース・ビルド>の要望をある程度エレメンタル達に伝える事が可能になり、両者の連携が円滑に進んでいるので今は複数のチームに分かれてエレメンタルが苦戦している場所で戦っているのだ。
「廃鉱山内部のエレメンタル達のお陰で敵の位置が分かるのが偉いわね」
「現状はエレメンタルとドラゴンの抗争があって、エレメンタルだけでは倒し切れない純竜がいる所に援軍を要求されている形だが」
「それが上手く嵌っているお陰で優勢ですけれど……」
『あっちからなにかくるよー』
翻訳ゴーレムがそう言った瞬間、彼等が戦っていたのと逆方向から一体の【メタル・モール・ドラゴン】が現れて、怒りを露わにしながら彼等に向かって突っ込んできていた。
『MOOOGUUUU!!!』
「チッ! やはり俺達では敵の感知とかには難があるな!」
この個体は群れの中でも上位のレベルを持っているのかエレメンタル達が作り出した土の手や鉱石の壁を砕きながら、自らの同胞を次々と殺したエレメンタルと人間を討ち滅ぼすべく爪を振り翳して襲い掛かる。
咄嗟にエドワードが【ポイズンメタル・ゴーレム】と不意打ち対策に事前に呼び出していた【アロイ・ゴーレム】を嗾けて壁役にするが、ドラゴンはそれらを爪の一振りで粉砕しながら速度を落とさずに突撃する。
「《貫弓・鎧通し》!」
『MOGUA!!!』
だがそれにより速度が僅かに落ちた一瞬を弓の達人である【タメトモ】は見逃さず、マスターを守る為に防御力・防御力スキル貫通特化の一矢を放つが、それに対しドラゴンは僅かに身を捩り急所を外して矢に貫かれながら尚も前進する。
野生の勘なのか歴戦の経験なのかこのドラゴンは敵の人間達に接近戦に長けた者はいないと判断しており、故に多少のダメージは無視して接近すればエレメンタルも援護し難くなり全員叩き潰せると踏んでいた。
「……《
「《アクセルダッシュ》《カバームーブ》《ピンポイントガード》《シールドパリィ》!」
だが、その直前に超音速機動でドラゴンとエドワードの間に割り込んだ1人の影がその爪を盾で受けて弾き返しながらまるで守護者の様に立ち塞がる。
「《ストライククロー》!」
『GUMOO!?』
攻撃を弾き返されてよろめいたドラゴンに出来た隙を突き、割り込んだ影──狼の様な衣装を身に纏った女騎士は逆側の手に持っていた剣を一閃して高い強度を持つ筈の金属の鱗を切り裂いてダメージを与える。
「エルザ!」
「こちらが片付いたので合流しようと思ったんですけどいいタイミングでしたね。セレナ、トリム」
「《ブーステッド・オール・ストレングス》《ブーステッド・オール・エンデュランス》《ブーステッド・オール・アジリティ》」
「《アサルトランス》《ストーム・スティンガー》!」
坑道の奥から現れたのは<プロデュース・ビルド>の最大戦力【
それに応えたセレナと呼ばれた魔術師風の女性が【高位付与術師】のスキルで全体バフを掛け、続いてトリムと呼ばれた突撃槍を持った女騎士が【槍騎士】の刺突速度に応じた攻撃力上昇の奥義と【疾風槍士】の刺突速度上昇の奥義を組み合わせてドラゴンの金属鱗を貫いた。
彼女達は総じてエルザの<エンブリオ>である【アヴァターラ】だが、当然の様にジョブスキルを行使しているのはマスターの常時戦闘不可と引き換えにガードナーが上級職2つ・下級色6つの戦闘系ジョブに就く事が出来るようになる固有スキル《戦の化身》の効果である。
加えてマスターの全ステータス補正半減と引き換えにガードナーに各々のステータス補正を与える《化身への恩寵》というスキルも有しており、第五形態の現在では5体の各ガードナーに与えられた補正にあったジョブビルドを構築している。
ENDを中心とした物理ステータスに秀でた補正を有して【
MPに秀でた補正を有して【
AGIとSTRに秀でた補正を有して【
AGIとDEXに秀でた補正を有して【
生まれたばかりだが補正がバランス良く高めなので【
「みんな、今!」
「《ヒート・ジャベリン》!」
「《コメットシューター》!」
「《シールドバッシュ》!」
「《ランスチャージ》!」
『MOOGUUMOOOO!?』
モチーフである神が特定の目的の為に地上に派遣する化身の通りに、主人の代わりに戦う為のジョブに就いて主人が望む戦いを演じる“戦闘用別アバター”の<エンブリオ>である。
更にジョブに就けると行ってもあくまでモンスター扱いのガードナーなので、補正を得たステータスにエルザの《魔物強化》スキルが乗る事で連携すれば純竜級すらも圧倒出来る能力を発揮する。
今もセレナとリーファの魔法と弓矢がドラゴンに突き刺さり、怯んだ隙にアリアの盾が頭部を揺らしてトリムの突撃槍が装甲を穿つが、それでも耐久型の純竜である【メタル・モール・ドラゴン】はどうにか猛攻を耐えた上でなんとエルザに向けて突進して来たのだ。
「まずい! エルザ!」
『MOOGUUMOOOO!!!』
指示を出している従魔師である彼女を殺せばまだ勝機はあると考えた末の行動であり、実際強力なレギオンである【アヴァターラ】はマスターであるエルザの戦闘能力を犠牲に成り立っているので彼女が狙われる事こそが最大の弱点である。
「……うん、やっぱり賢いね。アーシー」
『RURURURU……』
『GUMO!?』
勿論、エルザ自身もその事は重々承知であったので純竜の突撃にも動じずに一言指示を出すと、彼女とドラゴンの間の地面から泥の様な何かが噴き出してドラゴンに纏わり付いた。
その正体は彼女の従魔の一体である【グレーター・マッドスライム】のアーシーであり、ドラゴンは即座に爪で纏わりつくスライムを斬り裂こうとするも《液状生命体》の物理無効効果によってただ泥を引き裂くだけになりその間にも更に拘束を強める。
エルザは従魔師として複数の従魔を有しており、アーシーの他にも【イクスプローラー・グレイウルフ】のヴォルフ、【テンペスト・ゲイズホーク】のウォズ、【シャイニング・ドラゴン】のシャイナ、【ウォール・カーバンクル】のサフィアといった従魔がいる。
今回廃鉱山という環境と相性が悪い怪鳥のウォズと天竜のシャイナは呼び出していないが、今も護衛役ってして肩に乗せたサフィアが《ハイ・キネティック・レジスト・ウォール》を展開しているし、自分を狙う者への罠としてアーシーを《土中行動》スキルで地面の下に潜ませていたのだ。
「マスター!《カバームーブ》《アクセルダッシュ》!」
そしてヴォルフは既に【アヴァターラ】と従魔を融合させる必殺スキル《人獣一体・化身合一》によってアリアと融合しており、純竜クラスのAGI型モンスターとの融合とジョブスキルとモンスターのスキルの合わせ技で超音速機動を行ってエルザの元へ駆けていた。
この必殺スキルは【アヴァターラ】と従属キャパシティ内の従魔を融合させる融合系スキルの変則版であるが、それぞれの基本ステータを足し合わせるので従魔とガードナーのステータスを合算した上で《化身への恩寵》による補正が掛かるので最終的なステータスは超級職にすら迫る。
『GUMOO!?』
「《ブレイクブレード》!」
その融合により増強されたステータスをもってアリアは泥のスライムに纏わりつかれて動きを封じられたドラゴンに接近、それと同時に《瞬間装備》で攻撃力に特化した特注の剣を装備。
そのまま【剣騎士】の奥義、掛かる負担を3倍化するのと引き換えに剣の装備攻撃力を3倍化する斬撃をドラゴンの頸部に振い、強化されたSTRと攻撃力でもって金属鱗ごと首を断ち切ったのだった。
「ふぅ、必殺スキル解除っと……アーシーとアリアとヴォルフはご苦労様。他のみんなもね」
「助かったよエルザ」
「とりあえず此処らの敵は片付いたか」
『もうこのへんにてきはいないよー』
そうして戦闘を一旦終えた彼等は周辺に敵のドラゴン達がいない事を確認しつつ、連戦で消耗したMP・SPをポーションなどのアイテムを使って回復していく。
「これで純竜クラスは結構倒した筈だが鉱山内部の戦闘はどうなっている?」
『みんなわりとがんばってる、ありゅうあいてならちのりをいかせばじゅうぶんだし』
「問題は【ドラグディグ】ですがね。<UBM>が動き出せば一気に戦局はひっくり返りますよ」
この様に<トーラス廃鉱山>内部での戦いはエレメンタルと<プロデュース・ビルド>が優勢に進めていたが、この有利は敵の首領である【ドラグディグ】が動き出せばすぐさま覆されるとは分かっていた。
『あいつひとりいればぼくらぜんめつできるしー』
「<UBM>に関しては“あの3人”に任せる他ないだろうよ。リベンジがしたいと張り切ってたしな」
「私も再戦はしたかったんですけどね。まあこっちにも戦力を回さないといけないから仕方ないですが」
だからこそ彼等は既に【ドラグディグ】に対抗する一手として、<UBM>を討伐出来るだけの『戦力』達に別行動をさせていたのだ。
◇
『MOGGU! MOMOGUMO!』
『……MOOGU』
一方その頃、<トーラス廃鉱山>の最新部にある大広間ではドラゴン達の長である【堀竜王 ドラグディグ】が鉱山内のエレメンタル達が反旗を翻した事、それに外から来た人間達が手を貸している事を部下からの報告を聞いて把握していた。
部下が言うにはいきなり鉱山全体でエレメンタル達が暴れ始めたので苦戦しているという話だが、以前にここを襲撃した時はボスらしき【アダマンタイトゴーレム】を一撃で粉々にしたらエレメンタル達は連携を取らずに散発的な戦闘しか行わなかった筈であった。
『MOGU、GUMO……MOGUMO!』
『MOMO! MOGUMO!』
故に彼は本能で動きがちなエレメンタル達は指示する上位者が居なければ組織的な行動はしないと判断しており、だからこそ新しいボスが出てエレメンタル達を指揮しているか、或いは外から来た人間とやらが指示しているのだと考えている指示者を見つけ出す様に配下へ指示を出した。
その指示を鉱山の同胞に伝えるべく大広間から出ていった部下達を見つつ、彼は地中という環境下で戦い続けた事で得た高レベルの各種探知スキルを駆使して高レベルのエレメンタルや人間の所在を割り出して、それらを全員殲滅する為に動き出そうとしていた。
他のエレメンタルに指示を出せる個体であればレベルが高いであろうし、人間でも強い者が上に立って指示を出す事が多いだろう。そうでなくても強者を先に潰していった方が優位に戦えると考えての事だ。
だが<UBM>になる前から逃げ腰な同胞達は自分が敵の強者を打ち取れば勢いに乗って盛り返す、自分が勝ち続ければ群れも勝てて居場所も手に入るとこれまでの経験から考えていつも通りに動こうとし……その直前に大広間から上層へと繋がる唯一の通路が崩落した。
『ッ!? MOMOGUMO!』
掘削を生業とする【ドラグディグ】はこれが自然現象ではなく地属性魔法による通路の封鎖だと見破り、居るであろう敵に対して『何者だ!』と問いかける様に吠え立てながら周囲を警戒する。
土中行動を得意ってする彼にとって通路が封鎖されてもさしたる問題はないが、自分が他の者による地属性魔法に気付かなかった事実から警戒を最大にしており、自身の叫び声を利用した反響定位を介して周囲を索敵していく。
更に振動感知・光源探知・気配察知など土中を探る複数の探知スキルを全力で機動した【ドラグディグ】は、“何か”が鉱山内の坑道を無視して地中を掘り進みながらこの大広間に近付いて来た事を察知した。
「……うむ、まあここでやり合うのが一番じゃろうしな」
そんな言葉と共に大広間の壁の一部に音もなく穴が開くと、そこから1人のエレメンタル──【アース・エレメンタル】のネリルと3人の人間──【
彼等は初めから【ドラグディグ】を倒さなければ勝機はないと考えており、エレメンタル達と<プロデュース・ビルド>のメンバー達を鉱山内部で暴れさせて囮にして他のドラゴン達を惹きつけている間に精鋭を<UBM>の元に送り込んで撃破する作戦を立てていたのである。
元々が地中で過ごす神話級ミミズだったネリルの地属性魔法を持ってすればドラゴン達に気付かれる事なく、3人の人間ごと鉱山の地下深くまで地中を掘削して辿り着く程度は訳ない。
その場所のエレメンタル達が味方であれば尚更、他のドラゴン達に遭遇せずに【ドラグディグ】の元へと向かう直通の坑道を即興で作り上げる事も可能となる。
「よっしゃぁ! リベンジの時間だぜ!」
「ドラゴンは今度こそぶっ殺す」
「じゃあやるか、今回はネリルも本気を出してくれよ」
「ワシの目的もあるから今の躯体で出来る限りの全力を出すわい」
そう言いながら彼等が戦闘態勢に移るのを見た【ドラグディグ】は『この場で目の前にいる敵を倒すべき』と判断して、静かに赤いオーラ──《竜王気》を身に纏う。
先程の地属性魔法の技量からあのエレメンタルが鉱山のエレメンタルを統括しているボスだろうと判断し、その側にいる白色の男は人間達の中でも上位の力を持っているので自らが倒さなければならない相手だと判断したからだ。
「ッ! 来るぞ!」
『MOOGUUUU!!!』
そうして《竜王気》を纏った次の瞬間には【ドラグディグ】は咆哮を上げながら地面を勢いよく踏み込んで駆け出し、殺気からその予兆を感じ取ったレントは他の2人に警告を発する。
ステータス面ではAGIこそ亜音速には届かない程度の【ドラグディグ】だが全長5メートル程度とドラゴンとしては小型故に体重は軽いので、AGIに加えて高いSTRによる踏み込みを合わせればレント達の元へ一気に距離を詰める程の俊敏性を見せるのだ。
「まずは試しじゃな、《グランド・ホールダー》」
だが、その機動は直線的なので豊富な経験を持つネリルにとっては機動を読みやすく、豊富な自然魔力を利用してその移動先に魔法を発動する事で土石で出来た腕が【ドラグディグ】を拘束しようとする。
鉱山のエレメンタルが使うそれと比べても速度・制度・強度の全てにおいて上回る土石腕は純竜すらも拘束してのける代物であり、突進する【ドラグディグ】を確実に捉えて四方から掴み掛かろうとするが……。
『MOGUU!』
それらの腕は【ドラグディグ】が纏っている《竜王気》に触れた瞬間に砕かれて塵になる程に粉々となってしまい、その進行を僅かにも遅らせる事も出来なかった。
ENDを防がれるのでもなくSTRで砕かれるでもない、ただ接触しただけで粉々に粉砕されるのは土石の強度から明らかに不自然な現象ではあった。
「ふむ、まあ予想通りじゃな」
「ダヴィーデ、ドラキル、まずは検証だ」
「分かってる!」
「これらも中々高かったんだがな!」
しかし、それを見たネリルは想定通りといった態度を崩さず、更にレントの指示の元でダヴィーデとドラキルが多種多様な投擲用の短剣を取り出して【ドラグディグ】へ投げつける。
両者共に投擲に補正が入るサブジョブを有しているのか放たれた刀剣は正確に【ドラグディグ】へ命中したが、それらは《竜王気》に触れただけで粉々になるか金属の表皮に弾かれて何の痛痒も与えられず突撃の速度が落ちる事もない。
「やっぱり砕けたのは
「モンスター素材と木製の投剣は弾かれた!」
「了解、まあ予想通りだな」
最もそれらの投剣の目的は【ドラグディグ】の能力を明らかにする為であり、金属製短剣は砕けて木製やモンスター素材製の短剣は弾かれたという予想通りの結果になったのを見たレントは一本の木刀を持って前に出た。
それは【魔纏の木刀】というレジェンダリア土産であり、刀身に纏わせる魔法の効果を引き上げ長時間維持できる様になる装備スキルを有するが【ブラックオーダー】やオリハルコン製の剣などと比べれば強度や攻撃力では劣るサブウェポンである。
『GUMOOO!!」
「《リーダーブレード》
木刀を手に向かってくる敵に対して【ドラグディグ】は掘削にも使う鋭く大きな爪を持つ腕を振るうが、その軌道を見切ったレントは身を屈めて回避すると同時に雷属性を木刀に纏わせての横薙ぎを胴部に打ち込む。
木刀そのものは金属の表皮に弾かれるが纏わせていた電撃が金属表皮を通じて内部の肉体にダメージを与えて動きを止め、何より木刀は《竜王気》に触れても砕かれる事はなかった。
「やはり、コイツの能力は“鉱物の強度低下”だ!」
『GUGUGU……!』
それこそが【ドラグディグ】の固有スキル《竜気変鉱》、硬い地盤を掘り進めたり強度の高い金属を捕食する為の鉱物操作能力から派生した自身の《竜王気》に触れている鉱物の強度を操作するスキルである。
鉱物にしか効果を発揮しないが強度を下げるなら最大でマイナス五万以上の強度低下を引き起こし、例え神話級金属の武器すらも《竜王気》に触れた反動で自壊させる程に脆くする事が出来るのだ。
「金属操作魔法の基礎じゃの。《竜王気》の応用じゃから効果は桁違いじゃが」
「エドワードや鵜崎のお陰で俺達の武器は金属製がメインだったしな、相性が悪い」
「だから今回は木材やモンスター素材、有機物製の武器を用意してきたぞ! ついでに【ジェム】もたっぷり準備してきた!」
元々は【メタル・モール・ドラゴン】が有していた捕食・掘削用の鉱物操作スキルより発展したスキルだが、地属性魔法を操る鉱山のエレメンタル達や金属武具を使う<プロデュース・ビルド>戦闘班にとっては天敵となっていたという訳である。
『GUMOOO!!!』
「【尾竜王】よりは遅いな。《魔石解放》《サンダーバースト》」
電撃で痺れる身体を無理矢理捻って金属で覆われた尾で薙ぎ払おうとする【ドラグディグ】だが、レントは素早くバックステップで交わしつつ【ジェムー《サンダーバースト》】を取り出し、手に持った【ジェム】から放射状の雷撃を【ドラグディグ】へ放った。
この《魔石解放》は【魔石術師】の基本スキルであり【ジェム】に魔力を込める事で内包した魔法を強化した上で発動でき、【ジェム】さえあれば準備時間なしで魔法を使える上に威力などを引き上げる事が出来るのだ。
「オラァ!闇属性と雷属性の【ジェム】を喰らえ!」
『KYUUU! KYUKYUKYU!』
その電撃を浴びて一瞬だけ【麻痺】した【ドラグディグ】に向けて、ダヴィーデとその<エンブリオ>の【カーバンクル】が多数の【ジェム】を投擲、強度低下により《竜王気》に当たった時点で砕け散るが破壊をトリガーに込められた闇属性と雷属性の魔法が解放される。
防御力の影響を受けない属性を中心とした集中砲火でも【ドラグディグ】は《竜王気》の効果もあって軽微なダメージしか受けていなかったが、複数の【ジェム】を受けて動きが止まった隙にドラキルがモンスター素材製の剣を構えて接近する。
「【デュアルホーン・グランドドラゴン】素材製の剣だ!《竜殺しの祝福》《レーザーブレード》!」
『MOGUU!?』
自家製の武器【双角竜の殺竜剣】の《竜殺し》スキルと自らの<エンブリオ>【殺竜聖印 ゲオルギウス】のスキルを乗せ、ドラゴンに対する威力20倍の【剣聖】の奥義たる光の剣が【ドラグディグ】に振り下ろされた。
純竜相手でも致命傷を負わせる威力と防御スキル無視効果がある《竜殺しの祝福》によって《竜王気》を貫通する一閃は【ドラグディグ】の背中に突き刺さり……その金属製の表皮に僅かに斬り裂くに止まった。
「耐久型の純竜も倒せる斬撃なんだが!? アダマンタイトの防具だろうが斬り裂ける威力の筈だ!」
「ダメージ軽減の《竜王気》は貫通効果突破出来るんじゃなかったのかよレント!?」
「……成る程、アイツは鉱物の強度を下げるだけじゃなくて上げる事も出来るんだな」
そう《竜気変鉱》は《竜王気》に触れている鉱物の強度操作、故に強度を下げるだけでなく上げる事も出来るので今は<トーラス廃鉱山>最深部の高純度アダマンタイト鉱石を捕食する事で獲得したアダマンタイトの表皮の強度を引き上げていたのだ。
数値にして5万を超える神話級金属以上の強度となった金属表皮に加えて元々のENDと《竜王気》を合わせた【ドラグディグ】の防御力は凄まじく、ドラキルの《竜殺しの祝福》による防御スキル貫通も金属へのバフスキルは対象外なので単純に強化された防御力を突破できなかったのである。
「防御スキル突破もステータスバフは対象外だからな。ミカの必殺スキルもそうだし……ドラキル下がれ!」
『GUMOOO!!』
むしろ戦闘時の《竜気変鉱》の使い方はこちらがメインであり強度を大きく引き上げられた金属表皮は防御だけでなく『硬い物を強くぶつける』という単純な理屈によって強力な武器となる。
特に掘削に使う巨大な爪は竜王としてのSTRと合わせて神話級金属の武器に匹敵する攻撃力を発揮し、電撃による【麻痺】から回復した【ドラグディグ】がその大爪をドラキルへと振るう、
「うおおお!?」
「《リフトアップ》《スカイ・ブーム》」
「《魔石解放》《エメラルド・バースト》!」
自らに傷を付けたドラキルへと勢いよく大爪を振るう【ドラグディグ】だったが、ネリルの地属性魔法で盛り上がった地面に足を取られて体勢を崩されて攻撃を外してしまい、同時に彼女が放った地属性・天属性複合の衝撃波を頭部に叩き込まれる。
そして頭部に衝撃を受けて僅かに怯んだ隙にレントが【ジェムー《エメラルド・バースト》】から放たれた暴風が【ドラグディグ】を襲い、ダメージこそないが風の勢いで動きが鈍ってその間にドラキルは距離を取った、
「鉱物強度操作は任意で制御しておるな。まあそうでなければ地面を踏み締める事も出来んからの」
「ダメージは与えられんが、そこまで大きくはないからノックバックはさせられるな」
元々鉱物強度の低下以外にも【ドラグディグ】が高い防御力を備えている事は分かっていたので各種【ジェム】などそれに対応出来る準備をしていて、何より<UBM>であれば異質な能力の一つや二つは有していると知っているレントとネリルは特に動揺する事はなかった。
「鉱物操作が余り通じんのは面倒じゃがまあやり様はある。とりあえず精度は落ちるが他の地属性派生魔法で攻めようかの」
「このぐらいなら想定の範囲内、むしろ予想していたEND型ステータスがより強力だっただけだ。予定通り防御力に影響され難い闇と雷の属性中心でダメージを与えていく」
「あ、ああ!」
「分かった!」
『KYU!』
そんな2人を見て調子を取り戻したダヴィーデとドラキルも【ドラグディグ】へと向き直り、それを見た【ドラグディグ】も敵はまだ戦う気があると油断なく《竜王気》を更に強めて迎え撃つ構えとなる。
そうして廃鉱山での争乱の趨勢を決める最深部での人間達と<UBM>との戦いは更なる激しさをもって続いていくのだった。
あとがき・各種設定解説
アバター名:アルテミシア
性別:女
メインジョブ:【高位弓職人】
サブジョブ:【高位矢職人】【弓職人】【矢職人】【木工師】【匣職人】【弓手】【観測手】
<エンブリオ>:【強弓豪傑 タメトモ】
・<プロデュース・ビルド>の弓矢生産担当及び戦闘班の<マスター>で、リアルでは弓矢のDIYが趣味でデンドロを始めたのも最近は色々煩いから自由に弓矢を作って撃ってみたいと思ったからなエンジョイ勢<マスター>。
・<エンブリオ>の【タメトモ】は鎧武者型のTYPE:ガーディアンで第四形態現在は純竜クラスのステータスと弓矢を操るセンススキルを有しており、パッシブスキル《強弓一矢》によって弓矢による攻撃力を上昇させている。
・更に矢の威力を上昇させる《剛弓・山崩し》、矢の速度と射程を上昇させる《長弓・船穿ち》、矢が装備の防御力と防御スキルを貫通する《貫弓・鎧通し》、矢が数十本に分裂して降り注ぐ《散弓・雨降り》といったアクティブスキルがある。
・ただし武器は付いてこない上にアクティブスキルを使うと弓に負担が掛かるので、マスターは予備を含めた多くの弓矢を用意しなければならない外部コスト要求型の<エンブリオ>。
・アルテミシアの生産技術自体は上級職の範囲内だが“<プロデュース・ビルド>に所属していれば上級職の領分を超えた生産が可能”なので、自作した強力な弓矢を【タメトモ】に使わせる事で高い戦闘能力を発揮する。
アバター名:
性別:男
メインジョブ:【剣聖】
サブジョブ:【剣鍛治】【剣士】【投剣士】【斥候】【冒険家】【鍛治師】【彫金師】
<エンブリオ>:【殺竜聖印 ゲオルギウス】
・<プロデュース・ビルド>の対ドラゴン武装生産担当及び戦闘班の<マスター>で、色々なゲームでドラゴンスレイヤー的な生産と戦闘を行ってるゲーマーなのでデンドロでもいつも通りやっているエンジョイ勢。
・【ゲオルギウス】はモチーフ通り『竜殺し』を能力特性特性するTYPE:ルールの<エンブリオ>であり、一つ目のスキル《竜殺しの祝福》は第四形態現在だと種族がドラゴンの相手に対して与えるダメージが10倍化して防御スキルを無視するアクティブスキル。
・もう一つの《竜殺しの刻印》は武器の生産時にドラゴンへのダメージを2倍にするパッシブ装備スキル《竜殺し》を付与するスキルであり、上級<エンブリオ>に進化した時に許可が有れば他人の生産物にも付与出来る様になった。
・ただし生産過程でスキルを使用する付与する必要があるので買って来た完成済の武器に付与などは出来ず、付与する武器にはそれなりのリソースを有しているか付与が出来るだけの余裕がないと失敗する事もある。
・基本的に自分で使う武器を作るかドラゴンを狩って素材を手に入れたクランメンバーに売る感じのプレイをしているが、今回はドラゴンの群れとの戦いだと分かっていたので《竜殺し》スキルを付与するマシーンと化すぐらい事前に働いていた。
【掘竜王 ドラグディグ】:伝説級<UBM>
・基本的に戦闘を避ける性質の【メタル・モール・ドラゴン】の中でも例外的に生まれつき好戦的な性格をしており、才能もあったので戦い続けた結果として竜王となって群れの頂点となった。
・伝説級竜王として相応の強さを持っており、相性もあるが廃鉱山内部のエレメンタル達ならソロで全滅させられるぐらいで、だからエレメンタル達は勝てないと分かって隠れていた感じ。
・<UBM>としては【メタル・モール・ドラゴン】時代から戦い続けて進化した認定型であり、それ故にHP・STR・ENDを中心として竜王としての高いステータスや強力なスキル以外にも戦闘経験が多く戦闘技術も高い。
・ただし逃げ腰な他の仲間達を背にずっと1人で戦っていたからか集団戦闘は苦手と言うか1人で戦ってどうにかするしかないと思っている節があり、エレメンタル達の話からそれに勘づいたレントとネリルは【ドラグディグ】を引きつけつつ他の群れを倒す戦略を考案した。
読了ありがとうございました。
エルザの<エンブリオ>は旧作とはモチーフが変更されてます。こっちのが良いと思った設定は結構変更されています。<プロデュース・ビルド>の<エンブリオ>とかも結構変わってます。