Dendrogram Record   作:貴司崎

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VS【掘竜王 ドラグディグ】

 □<トーラス廃鉱山>最深部

 

「アイツにダメージを与えられるドラキルを中心に攻めるぞ。他は魔法か【ジェム】で援護しつつ動きを止める」

「俺はカーバンクルと雷と闇属性の【ジェム】を投げる。近接だとあんまりダメージ与えられんだろうし」

『KYUU!』

「俺は動きを止めた時に切り込むって事だな」

「ワシが必要に応じて援護するぞい」

 

 そう簡潔に今後の戦術を決めたレント達は再び突撃してくる【掘竜王 ドラグディグ】から距離を取る様に散開、同時にレントが牽制として【ジェムー《グルーム・ストーカー》】を使った《魔石解放》により闇属性誘導弾を放つ。

 防御力を無視する闇属性攻撃は【ドラグディグ】の高いENDや《竜気変鉱》によって強度が強化されたアダマンタイトの表皮も無視してダメージを通せるが、同時に使われている赤いオーラ《竜王気》の万能ダメージ軽減までは無視出来ずに微々たるダメージしか負わせられない。

 

『MOGUUU!!!』

「しゃぁ!《ストレート・スローイング》!」

『KYUU!』

 

 続けてダヴィーデが【ジェムー《ダークロアー》】を全速力で投球し、その<エンブリオ>である【カーバンクル】がスキル《宝玉の軌跡》を使って【ジェムー《サンダーバースト》】を投擲する。

 闇属性魔法の中では威力は高いが射程が極端に短い《ダークロアー》、同じく雷属性魔法の中でも広範囲に電撃をばら撒くが短射程の《サンダーバースト》、どちらも射程が短いという欠点があるが直接敵にぶつけて炸裂させる仕様の【ジェム】として使うなら問題ない故に多めに作って保持していたのだ。

 

『GUMO!?』

「しゃぁっ命中!追加をもっと投げるぞ!」

『KYUU!』

 

 伊達に決闘で慣らしている訳ではないダヴィーデ達が投擲した【ジェム】は正確に突進する【ドラグディグ】の移動先へと飛んでいき見事に命中、内包した闇と雷の魔法が炸裂してダメージを与えると同時に電撃によるスタンで怯ませる。

 そうして出来た隙に彼等は即時放出機能付きアイテムボックスや魔石格納・放出スキル《宝玉獣の頬袋》から追加の【ジェム】を取り出し連投、決闘ランカーに上り詰めた原動力である【ジェム】の連打による広域殲滅戦術を披露した。

 

『GUGU……MOGUUU!』

「……ちょっと待て、なんかあんまり効かなくなったんだが!?」

「ふむ、《竜王気》を対魔法に切り替えたか」

 

 だが、それらの【ジェム】による爆撃に対して【ドラグディグ】は万能防御スキルの《竜王気》を魔法のダメージを軽減するように変質、闇と雷の魔力はオーラに触れた瞬間に大幅に減衰してしまい真っ向から突き破られる結果に終わった。

 MPで《竜王気》を作りSPで《竜気変鉱》という特性を持たせる領域に至っている【ドラグディグ】にとって、《竜王気》のダメージ軽減特性をある程度操作する事ぐらいは容易いのだ。

 

『GUMOOO!!!」

「《スカイ・ブーム》……ふむ、魔法耐性を上げた分だけ物理耐性は下がってそうじゃが。あの防御力ではドラキル以外の物理攻撃はどうせ効かんなぁ」

「そのドラキルの攻撃は防御スキル無視だから物理耐性は意味はない。竜王だから当然かもしれんが頭もいいな」

 

 突撃してくる【ドラグディグ】から距離を取りながら分析していたネリルの見立てでは魔法ダメージ軽減に特化させた分だけ物理ダメージは素通しになっているが、元より神話級金属以上の強度を持つ鎧に身を包んでいる以上は物理攻撃の対策はさして必要としていない。

 そしてドラキルの《レーザーブレード》でダメージを受けた時に《竜王気》が貫通されている事にも気付いており、他の人間が使う魔法を優先して《竜王気》で防ぎつつドラキルの近接戦は耐久性と技術で対処する狙いの一手である。

 

「なら俺が前に出る必要があるか。《フィジカルブースト》《告別の黒闇》」

『MOOGU!』

 

 だからこそレントは【高位強化術師】の自己STR・END・AGI・DEXの複合強化スキルを使い、更に【暗黒騎士】の装備を呪うスキルで【魔纏の木刀】を呪物に変えながら【ドラグディグ】へと距離を詰めて近接戦を仕掛けた。

 このまま遠距離から魔法を打ち込んでも効果が薄く、近接戦を仕掛けてでも足止めを仕掛けて動きの自由を制限しなければ一方的に殴られ続けるだけだと判断したからだ。

 

「シィ!」

『GUMO!』

 

 そのまま接近して呪われた木刀で斬りかかるが武器の呪いを攻撃力に変える【暗黒騎士】のスキル込みでも強化された金属表皮にはかすり傷一つ付けられず、逆に【ドラグディグ】は攻撃を受けるのと同じタイミングでカウンターの大爪を振り下ろす。

 自らの防御力で敵の攻撃を耐えつつ同時に反撃する攻撃即応撃(インパクトカウンター)は【ドラグディグ】の常套戦術であり、幾度とない戦いと研鑽で<UBM>となった“認定型”故の技巧は完璧なタイミングでのカウンターを実現していた。

 

「そのぐらいの技術がある事は分かっていた、《魔石解放》《エア・ハンマー》」

『GUMU!?』

 

 しかし振り下ろされた大爪はレントもう片方の手で準備していた【ジェムー《エア・ハンマー》】を解放して炸裂させた暴風に逸らされ、同時に風でレント自身が【ドラグディグ】から離れる様に押し出された事で空振りとなる。

 これまでの行動からレントは【ドラグディグ】が高い技量と知性を有すると察しており、その防御力を活かすなら敵の攻撃に合わせてのカウンターを仕掛けてくると読んで事前に対応策を準備していたのだ。

 

「分かっていたが木刀でどうこう出来る防御力じゃないが……《魔法範囲指定拡大》《リーダーブレード》(ダーク)。魔力刀身延長」

『GUGU!?』

 

 予想通りとは言え木刀の斬撃ではまるでダメージを与えられないと見たレントは木刀に闇属性の闇属性の魔力を纏わせて、同時に魔法拡張スキルを応用して刀身を覆った闇属性魔力を伸長させて再び斬りかかる。

 闇属性の魔力を纏わせての魔法剣は纏っている魔力部分にしか物質透過の効果が発揮されずに刀身には普通に当たるのだが、魔力部分を延長して内側に刀身がない先端部分を作ってその部分だけで斬りつければ闇属性の物質透過斬撃とする事も出来る。

 

「刀身を延長してリーチを伸ばし、敵の爪の間合いから僅かに遠い位置での近接戦なら出来なくはないな。防御以外の近接戦闘能力も【尾竜王】よりは低い。《魔石解放》《ダークロアー》」

『MOGUGUMOO!』

 

 そのままレントは近過ぎず遠過ぎない間合いを測りながら闇属性の刃で斬り付けつつ、振るわれる【ドラグディグ】の大爪や尾による攻撃を先読みして回避、時折【ジェム】の即時解放による魔法攻撃を織り交ぜながら近接戦闘を続行していく。

 装備とスキルによる強化でレントのAGIは【ドラグディグ】を上回っており、STRを絡めた踏み込みは近接戦闘なら予備動作から先読み出来るのでこの間合いで戦い続けるのが相手の動きを最も制限出来るとしての戦い方であった。

 

「ふむ人使いが荒いのう。ほれダヴィーデは今の内に【ジェム】投擲準備。ドラキルは主人殿が足止めした隙を突いて奥義で攻撃じゃ、今はお主しかまともに攻撃が通らんでな」

「え?」

「何だと」

「主人殿があそこで近接戦しとるのは自分を囮にする為じゃ。ダメージを与えられるお主らの攻撃を通す為のな」

 

 そんな風にいきなり従魔であるネリルから指示を出されたダヴィーデとドラキルは困惑するが、レントの狙いが足止めと言われて気付いた時点で隙を見て【ドラグディグ】へと攻撃するのが自分達の役割だと気付いて動きだす。

 ちなみに事前の打ち合わせなどは特になかったがネリルならこのぐらいの判断と指揮は熟せるとレントは考え、特に何も言わずに足止めに向かってその間の戦術立案を任せたのだが彼女は従魔に指揮任せるのはちょっと大胆過ぎるなとも思っている。

 

「さて配置についたか、では足止めをするじゃな……《デザート・ホールダー》」

『GUMO!?』

 

 そして出した指示の言葉そのものを《詠唱》としたネリルは【ドラグディグ】周囲の地中の鉱石を粉砕、微細な砂粒に変えた上で粒子操作魔法で操り“砂の腕”を形成して暴れ回る敵を拘束に掛かる。

 砂も鉱物である以上はオーラに触れた時点で《竜気変鉱》によって強度は下がるが、その結果砕けたとしてもネリルはより細かくなった砂を継続的に粒子操作魔法で操る事で【ドラグディグ】へと纏わり付かせて拘束していく。

 

「やはり粒子が細かくなり過ぎて拘束性能は大きく下がるの。地を掘り進む《掘削》や《土中行動》もあるじゃろうから土石による拘束では突破されるか」

「ならば物理的ではない拘束を追加するまでだ。《ブラッド・アレスト》」

 

 その拘束も【ドラグディグ】は数秒もしない内に突破しようとするが、そこにレントが攻防の内に負ったかすり傷から流した血で作った呪術による網を投げかけて呪怨系状態異常による拘束を追加する。

 物理型ステータスの【ドラグディグ】にはSTRやENDではなくMPでレジスト出来るかが決まる呪術の方が効果があり、加えて【高位呪術師】のスキルの他に【暗黒騎士】の《ブラッド・カース》も加えた事で【呪縛】されて動きが封じられた。

 

『GUGUMOGUGU!?』

「動きが止まった今なら!《レーザーブレード》!」

「ダメ押しだ、《シャドウ・スタンプ》」

 

 そこにドラキルが急所である首筋を狙って<エンブリオ>のスキルによりドラゴンに対して20倍の威力となる光の剣を振り下ろし、その剣の光によって出来た影を利用してレントが影踏みの呪術を行使して更に【呪縛】【恐怖】【吸魔】の三重状態異常を重ね掛けする。

 それで更に【ドラグディグ】の動きは制限されるが強化された高純度アダマンタイトの表皮は強化された奥義だけでは完全には斬り裂けず、そこでドラキルは《瞬間装備》で二本目のモンスター素材製の剣を装備した二刀流での連撃を叩き込み続けた。

 

「あああああ!クッソ硬い!……が、傷は付けられるならこのまま打ち込み続ければ……!」

「チッ、ドラキル下がれ!」

『……MOOOOGUUUUU!!!』

 

 そうしてどうにか鋼鉄の表皮を斬り破ろうとするドラキルだったが突然レントが声を上げて、その直後に【ドラグディグ】は雄叫びを上げながら身に纏う《竜王気》に更なるMPを注ぎ込んで出力を一気に引き上げる。

 凡ゆる事物に耐性を有する《竜王気》は当然ながら呪怨系状態異常に対しても耐性があり、その出力を瞬間的に引き上げる事で【ドラグディグ】は呪怨耐性を引き上げて掛かっている呪術をレジストしに掛かったのだ。

 

「元から《竜王気》のせいで掛かりが甘かったからな。《リバース・クルセイド》!」

「超級職ならざる呪術では限度があるじゃろ。《スカイ・ブーム》」

『GUMO!?』

 

 そのオーラの強度からこれ以上の拘束は無理と判断したレントとネリルはそれぞれ地から噴き出す暗黒の波動、強力な衝撃波を【ドラグディグ】が拘束を解いて動き出す直前を先読みして当てた。

 それらの攻撃は魔法防御に特化された《竜王気》で減衰されたが動きの出掛かりを封じて、彼らの狙い通り一瞬動きが止まった隙にドラキルは【ドラグディグ】から距離を取る事が出来た。

 

「危うく巻き添えを食う所だったんだが!?」

「あのままだとお前がやられてたから仕方ないだろ。もっと相手の動きの一手先を読め」

「ほれダヴィーデ、さっさと【ジェム】を投げんか」

「コイツら人使い荒いな!」

『KYUUUUU!』

 

 文句を言いつつもカーバンクルと共に連続して【ジェム】を投げるダヴィーデだったが、そう何度も喰らえば慣れると言わんばかりに【ドラグディグ】は素早くその場から飛び退いて回避、誘導効果が付与された【ジェム】は《竜王気》で受け止めて凌ぐ。

 戦闘技術と戦闘の場数による経験で敵の動きを読みながら有利に戦いを続けている様に見えるレントとネリルだったが、相手も歴戦の<UBM>故に一度見た攻め手にはキチンと対応してくる相手を見て長引けば不利になるとも考えていた。

 

「戦えない相手ではないが問題は今の所はヤツにまともに通る攻め手がない事だ」

「《竜王気》の扱いからして防御力と耐久力を活かした持久戦型じゃな。相手の攻め手を受け止めつつ分析して反撃する技巧派って所かの」

「普通のモンスターの戦い方じゃない」

「純竜以上は頭脳も人間並みなのも珍しくないが……これが『竜王』か」

『MOOGUUU!!!』

 

 全力で攻撃しても碌なダメージを与えられない相手にどう対処するか考える彼等だったが、その思考を纏めるよりも前に【ドラグディグ】は大爪を地面に減り込ませてから勢いよく振り抜き土石を散弾のようにして飛ばしてきた。

 普通なら地面を僅かに抉る程度の掘削は【ドラグディグ】の各種土中行動補助スキルの応用でその10倍以上の質量を抉って射出、更に《竜気変鉱】を付与して強度を上げた土石群は強力な弾丸と化して襲い来る。

 

「遠距離攻撃もあるのかよ!」

「《グランドウォール》」

 

 それに対してネリルは土中の鉱石を操作して前方に数枚の土の壁を展開、強度は強化されていても射出速度は亜音速にも満たない土石の弾丸は土壁を砕きながらぶつかるがその時点で運動エネルギーを削がれて停止する。

 だが、この土石弾の役割は敵への牽制と副次的に発生した土煙による視界の阻害であり、それは読めていたレントは土煙に紛れて距離を詰めてくるかと視覚以外の感覚器官を研ぎ澄ませて警戒する。

 

「……いない?」

「地中に潜った!全員地面と壁を警戒!ネリル!」

「索敵じゃろ、分かっておるわ!」

 

 しかし砂煙が晴れた時には既に【ドラグディグ】の姿は何処にもなく、それに困惑するダヴィーデとドラキルに対して何をしたのかを見破ったレントが即座に警戒を促す指示を発する。

 そも【モール・ドラゴン】の亜種である【ドラグディグ】にとって得意なフィールドは地中、ならば戦闘時に地中に潜る事も当然あるだろうと彼等も予想自体はしていたが地上を行く人間にとって地中に潜るモノへの対応手段は限られる。

 

「……ふむ、どうも地下にあるアダマンタイト鉱石を貪っておるな。損傷した金属表皮の修復目的じゃろう」

「メタル系モンスターは金属部位の修復には同種の金属の捕食が必須だったな」

此処(鉱山)でなら回復し放題って訳か」

「マジかよ、あれだけ苦労してぶっ壊したのに」

 

 ここは高品質アダマンタイト鉱脈がある場所故に損傷した金属表皮の捕食回復も容易く、地中に潜ってしまえば人間では自分に通じるまともな攻撃手段はないのでゆっくりと回復、或いは地中からの奇襲を仕掛ける自身の特性と地の利を活かした【ドラグディグ】の戦術だった。

 だが、此処には地属性魔法に関しては大陸でも最高位の技術を持つ元神話級<UBM>なエレメンタルのネリルがおり、彼女は魔法を駆使して即座に地中にいる【ドラグディグ】の行動を把握した上で対抗手段を打つ。

 

「じゃあこっちも今の内にポーション飲んでおくとして、まあ向こうの態々回復を待ってやる義理はないな。ネリル」

「やれやれ人使いが荒い。……土石操作の地属性魔法は強度を下げられるから無意味じゃが、土石を介しての振動属性魔法ならば効くかの。空気を伝わる《スカイ・ブーム》よりもこっちの方が得意じゃからな。《地震(アースクエイク)》」

 

 レントに促されて膨大なMPを込めただけの【ジェム】を取り出したネリルは地面に手をつきながらそれらを解放、封入されていた十万を超えるMPと周囲の自然魔力を利用した超級魔法を行使した。

 使用したのは空振術師派生超級職【震王(キング・オブ・クエイク)】の奥義《地震》、その名の通り大地を震わせて地上・地中の敵手を攻撃する災害級の威力を持った振動魔法が鉱山最深部全体を揺らしながら【ドラグディグ】を攻撃する。

 

「うおっ! めっちゃ揺れるんだけど!」

「鉱山は大丈夫なのか!?」

「流石に局所的に振動させてるだけだから鉱山自体がどうこうなる事はないだろ。それに地下にだけ振動のエネルギーが向かう様に調整されてるみたいだし」

「……だがこの魔法で倒し切るのは無理じゃ、ダメージは与えられたが元の防御力と《竜王気》で凌がれた」

「下から来るぞ。散開!」

 

 そんなレントの指示を受けて彼等がその場から散らばった次の瞬間、奥義魔法を凌いだ【ドラグディグ】が地面から勢いよく飛び出しながら大爪を振るって奇襲攻撃を仕掛けてきた。

 地上に出た【ドラグディグ】は若干フラついたがダメージ自体はそこまででもなく、これは地下に潜っている間は地属性魔法を警戒して《竜王気》を使っていた事と本人のENDで振動魔法のダメージを大きく軽減していたからである。

 

『MOOGUUU……』

「俺が付けた傷が治ってるんですけど」

「補食して回復したって言ってただろ。金属表皮だけでHPまでは治ってないと思うが」

「超級職の奥義でもあの程度のダメージね。まあ地下に潜るのを辞めさせただけでも良しとするか」

「単純な防御面では伝説級竜王としても上位に位置するかの」

 

 スキルによって強化されたアダマンタイト金属表皮を含めた【ドラグディグ】の防御力は、数値上では耐久型超級職や伝説級モンスターのそれと比べて尚数倍する上、防御面での《竜王気》を使いこなしている事を含めれば超級職の奥義クラスの攻撃力でも倒す事は出来ない。

 そんな防御力を活かして耐えながら相手が死ぬまで殴る、技術的な搦手を駆使する事はあるが基本的にはそんな単純だがダメージを通せる手段がなければどうしようもない戦術が【ドラグディグ】の戦い方なのである。

 

 

 ◇

 

 

『GU MOOOO!!!』

「そこだ!《レーザーブレード》!……ッチィ! 捌かれた!」

「ドラキルは下がれ!《魔石解放》《エア・ハンマー》!《リーダーブレード》!」

 

 それから彼等と【ドラグディグ】の戦いは長時間に渡って続き、今もドラキルが振るう竜殺しの光の剣を特に装甲が厚い腕部金属表皮で受け流しつつ反撃の大爪を振るい、それを見越したレントが暴風の槌を見舞って牽制しながら斬り込んでいた。

 もう何度目かになる攻防で唯一ダメージを与えられるドラキルの近接攻撃を他のメンバー、特に相手の動きを読んで豊富な手札で対応出来るレントが支援する攻撃パターンだったが、長時間の戦いで相手の動きやクセを【ドラグディグ】は見破り始めていた。

 

『GUGU……MOOOO!!!』

「げ、俺が狙われてないか!?」

「向こうもこっちの動きや能力に慣れてきたのう。《スカイ・ブーム》」

 

 だが、その魔法や魔法剣は致命打にならないと判断した【ドラグディグ】はレントを無視してドラキルへと突撃、その動きを読んだネリルが衝撃波を放つものの高い防御力でそれも無視して接近して大爪を一閃する。

 いきなり行動パターンを変えてきた事もあってドラキルはその攻撃を躱しきれず超強度の大爪を食らって吹き飛ぶが、懐にあった【救命のブローチ】を代償にする事で致命傷となるダメージは回避出来た。

 

「ガハッ! クソッ!【ブローチ】が……!」

「ドラキル! ええいっ!」

『KYUU!』

『GUMOMO!』

 

 更に追撃しようとする【ドラグディグ】に対してダヴィーデとカーバンクルが風属性や火属性の【ジェム】を連続投擲して暴風や爆風で無理矢理ノックバックさせて足止めするが、魔法耐性に特化した《竜王気》と防御力でダメージ自体は皆無なので直ぐに動き出す。

 狙いは引き続きドラキル、自身の金属表皮を破壊してまともなダメージを与えられる相手を始末すれば戦局は優位になり、最後の命綱(救命のブローチ)を失った相手ならば倒し易いとの判断。

 

「舐めんな! 俺がどれだけドラゴンを狩ってきたと思ってやがる!《サンダースラッシュ》!」

『MOGUGU……!?』

 

 だが、このままでは逃げ切れず捉えられると考えたドラキルは突進に合わせて逆に距離を詰め、振るわれた大爪の軌道を見切り掻い潜る形で回避しながら横薙ぎの一閃を胴部へと見舞った。

 敵の動きに慣れたのは【ドラグディグ】の側だけでなく何度も近接戦を挑んで、更に竜王相手に一歩も引かずに戦うレントの姿を見てきたドラキルも動きを先読み出来るぐらいには敵の動きを学んでいた。

 

「足止めといくかの、《マッドプール》」

「俺を無視するとはな!《魔石解放》《ホワイト・フィールド》!」

「オラ氷属性【ジェム】を食らえや!」

『KYUU!』

『GUMOMO……!?』

 

 それに加えてネリルが【ドラグディグ】の足元を沼地に変える泥属性魔法を使って脚部を沈めて、そこにレントとダヴィーデ達が氷属性魔法の【ジェム】を駆使して足が沈んだ泥ごと氷漬けにする事で動きを封じる。

 

「まあこの程度なら直ぐに脱出されるじゃろうな。多分20秒も保たんぞ」

「クッソ、マジでどうすんだよ。俺の剣も捌かれるか躱される様になって来たし」

「竜王だけあって特化してないAGIも半分生産職な上級職の俺らよりも高い。レントの支援で何とか戦えてるけどこのままじゃジリ貧じゃね?」

 

 耐久戦特化の<UBM>相手の長期戦、しかも向こうの攻撃はこちらに一撃で致命傷を与えられる事もあってダヴィーデとドラキルは相当に疲弊しており隙を見てポーションを呷る合間にも思わず愚痴が漏れる程だった。

 そんな2人を支援しながらまともな攻撃が通じない【ドラグディグ】相手に誰も落とされない様に戦局をコントロールし続けていたレントも、そろそろ手札が尽きそうな上でこれまでの戦闘で既に命綱(ブローチ)を3人全員使い切った事もありこれ以上持ち堪えるのは厳しいと考えていた。

 

「【ジェム】もダメージを通せる闇と雷の上位魔法は品切れだぞ」

「おいレント、戦いの前に金属や土石操作系の<UBM>なら勝算はあるって言ってたよな。何か手はないのか?」

「……勝算はあるがそれを持っているのは俺じゃない。ネリル、準備は?」

「大体“解析”と“調整”は終わったの。いつでも仕掛けられるぞい」

 

 だがレントとて何の勝算もなく【ドラグディグ】と戦い続けてきた訳ではなく、今までの戦いは敵の詳細な能力を把握する為。そして能力が明らかになった相手に対して有効な手札を使えるネリルの準備が整うまでの時間稼ぎという意味もあったのだ。

 そしてネリルの準備が整った所で一気に仕掛けるつもりで他のメンバーに指示を出そうとするレントだったが、それよりも僅かに早く【ドラグディグ】が【凍結】を解除して再び地面に潜っていったのだ。

 

「凍結が解けたぞ‥なにっ!?」

「また地面に潜りやがった!」

「面倒な、ネリルの“手札”は地中だと使いにくいか? ならもう一度《地震》で攻撃させる……それが分かっていて地中へ?」

「ふむ、どうもただ地中に潜った訳ではなさそうじゃぞ」

 

 地面を見たネリルが顔を顰めてそう言った直後、彼等が立っている地面一帯が異常に細かい砂へと変わり流砂の如くその足を絡め取って地中へと沈めようとし始めたのだ。

 これが《竜気変鉱》の鉱物強度減算能力の応用で地面の強度をマイナス化させて砕いた砂を土石操作と組み合わせて流砂へと変じさせ、地上にいる敵を地中という自らのホームグラウンドに引き込む【ドラグディグ】の対地上戦力用の奥の手《竜砂埋葬》である。

 

「足が抜けないんだが!?」

「このままだと地中に引き摺り込まれる!」

「此処まで大規模な鉱物への干渉も出来たのか!」

「ヤツめ此処らの地形に予め“細工”をしておったな?」

 

 ただし《竜気変鉱》で広範囲の地面を砂に変えるためには長い時間が必要なので扱いが難しいスキルなのだが、この最深部では鉱石を捕食し易い様に地面へ《竜王気》を浸透させており、更に戦闘中地面に《竜王気》を少しずつ浸透させてスキル発動の準備を密かに進めていたのだ。

 そして【ドラグディグ】は高レベルの《土中行動》スキルによって流砂の中であろうが自由自在に動けるので動きが制限されたレント達を確実に始末、或いはネリルが対抗して地属性魔法を行使したとしても地形へ対応している隙に攻め立てて優位に戦える地形を作り上げる一手。

 

「どうすんだレント!?」

「……仕方ないから無理矢理どうにかする。《魔石威力強化》《魔石解放》《アップドラフト》」

 

 そこでレントは【ドラグディグ】が攻撃に移るよりも早く上昇気流を引き起こす風属性魔法【ジェム】を強化した上で解放、発生させた暴風によって流砂に飲み込まれていた自分達を無理矢理上へと打ち上げたのだ。

 とは言え、このままでは重力に従って再び流砂に囚われるだけなので更にレントは追加で風魔法を発生させて全員を壁際に移動させて、さらにネリルが土魔法で壁から生やした出っ張りに着地させる事で難を凌いだ。

 

「た、助かった……ってコレ詰んでね? 地面の大半が流砂になってるんだが」

「このまま下に降りてもさっきの二の舞だし、かと言ってこの足場に止まっていても戦えんぞ」

 

 ギリギリで流砂に呑み込まれずに済んで一息付くダヴィーデとドラキルだったが、もう地上では戦わせないと言わんばかりに【ドラグディグ】の力で地面の大半が流砂へと変わっていく光景を見て絶句する。

 

「想定よりも面倒な切り札を持っていたな。……ダヴィーデとドラキルは援護出来る様になったら援護してくれ。ネリル、行けるか?」

「まあ流砂程度ならどうとでもなるし、地中に居たとしてもワシ以上の地中戦闘が可能な者はそうはおらんよ」

「ならやるか。《ポゼッション・アドベント》」

 

 だが、それを見てもレントとネリルは冷静さを失わずにで【降霊術師】の奥義を使用、内部に人工精霊を宿したエレメンタルであるネリルをレントは憑依させて合体、ごく自然な様子で足場から飛び降りて流砂へと着地した。

 憑依したネリルが使用する砂上を自由に歩める様にする地属性魔法の恩恵で流砂に沈み込む事はなく、更に彼女は土中を移動する【ドラグディグ】の位置と移動方向を索敵して地上へと出ようとしていると判断する。

 

『下からの奇襲で来るな。有利なフィールドを作ったが沈んで来ないから直接仕留めに来るといった所かの。《竜王気》が邪魔で“アレ”は直接接触しか効果はないぞ』

「だからこその合体スキルだろう? バフ掛けての殴り合いはミュウちゃん程に上手くないがやってみせるさ。《レベルフォース・ストレングス》《レベルフォース・エンデュランス》《レベルフォース・アジリティ》」

『ならよい……下じゃ』

『MOGUUU!!!』

 

 効果時間とクールタイムの関係から使わなかった合計レベル基準の強化魔法を使ったレントは憑依したネリルが指示したタイミングで後方に跳躍、それと同時に地上にいる獲物に奇襲を仕掛けようとした【ドラグディグ】が勢いよく地面から飛び出した。

 地上に出た【ドラグディグ】は即座にレントへ向けて防御を考えぬ突撃で接近しながら大爪を振り下ろし、それに対してレントは木刀を握っている右手ではなく無手の左手を握りしめて【高位強化術師】の奥義を使用して殴り掛かる。

 

『GUMOMOMO!』

『《レゾナンス・シェイカー》』

「《インパクト・ブースター》!」

 

 その奥義《インパクト・ブースター》は自身の肉体を使った攻撃力そのものを強化する魔法、自己強化特化の強化術師系統の魔法故に攻撃力を倍以上に出来るがが徒手空拳の攻撃でなければ効果を発揮しないので元の攻撃力が低くなりやすい。

 レントの拳は本人の技術もあって鋭い軌跡を描いて【ドラグディグ】の脇腹に突き刺さったが、強化バフを施したとは言え格闘系ジョブも取っていない彼の拳では強化されたアダマンタイト金属表皮に通じる筈もなく阻まれる……事はなくそれを粉々に粉砕してみせた。

 

『GUMOOOOAAAA!!?』

「よし通った!《リーダーブレード》(フレイム)!」

『MOGUA!?』

 

 間髪入れずレントは装甲が砕けた部位に炎を纏った木刀を突き立てて焼き尽くし大ダメージを与えて追撃、その後に金属表皮が砕けた困惑と激痛で絶叫する【ドラグディグ】が振り回す大爪を回避して距離を取る。

 最低限の距離を取ったらすぐに反転し手強化で超音速に達する速度で接近、そのまま振り回される腕を素手で掴むとその掌から発生している“振動”がまるで強度など無いかの様に腕部の金属表皮と超硬度の大爪を粉砕してしまう。

 

『MOGAAA!!?』

「《レゾナンス・シェイカー》は共振破壊の魔法、対象物体の固有振動数をぶつければ強度を無視して破壊できる」

『だからこそワシは散々貴様に振動属性魔法を撃ち込んで固有振動数を解析しておったんじゃよ。生体装甲になっとるから通常のアダマンタイトとは固有振動数が変化しておったからの』

 

 その振動の正体は憑依しているネリルが使用していた共振破砕の振動属性魔法であり、鉱物や金属を操る魔法に関しては最高位の技術を持つ彼女ならば戦闘中に金属の固有振動数を解析してその振動を発生させる程度の事は出来る。

 元より彼等が【ドラグディグ】討伐を決めたのも単に<プロデュース・ビルド>から提案されたからだけではなく、土中行動や金属表皮の<UBM>であれば最高位の地属性魔法技術を持つネリルなら十分に攻略出来るだけの手札を用意出来る公算が高かったからだ。

 

『この魔法は色々繊細じゃから《竜王気》に阻まれると効果が大きく落ちるのが難点じゃ。だから接触するしかないんじゃが』

「だから燃費が悪い《ポゼッション・アドベント》を使う訳だ。そして装甲を一部でも砕ければ魔法攻撃もある程度は通るだろ!《ヒート・ジャベリン》《魔石解放》《ゴールデン・グリッド》!」

『GUUUUU!?』

 

 そんな《詠唱》の後にレントは複数の炎の槍を金属装甲が砕けた部位に目掛けて撃ち放ち、更にその攻撃から【ドラグディグ】が損壊部位を庇う様に身を捩った隙を突いて接近しながら【ジェム】に魔力を込めて金色の雷球を解放する。

 炎の槍は《竜王気》に阻まれて雷球は咄嗟に避けた所為で地面に着弾するが、雷属性上級奥義《ゴールデン・グリッド》は物体を伝わる電撃を発せさせる魔法故に地面を伝った電撃が【ドラグディグ】を襲い、それに怯む隙を突いて【ジェムー《ハイ・サンダー・レジスト》】を使いながらレントが接近する。

 

『GUMO!!』

「む、距離を取ったか」

 

 だが、それでも歴戦の竜王である【ドラグディグ】は相手が接近戦で自身の装甲を砕けると見るや鉱物操作スキルの応用で流砂を踏み抜き飛び退いて距離を取る、先の魔法から装甲が砕けても元のENDと《竜王気》なら遠距離攻撃では大したダメージにはならないと判断したからだ。

 このまま距離を取ってから地中に潜り地中戦闘に持ち込めばアダマンタイト鉱石の捕食で壊れた金属表皮は回復出来る、例え地上からの振動攻撃も距離があれば《竜王気》で凌げると踏んでの行動だった……が、地中に潜ろうとした寸前に上方から多数の【ジェム】が降り注いだ。

 

『MOGAA!?』

「オラァ! 残った氷結と呪術の【ジェム】を全部喰らえや! それなら一瞬は動きが止められるって分かってるからな!」

『KYUUU!!!』

 

 それを行ったのは足場に残っていたダヴィーデ達であり、彼等はこれまでの戦闘から【ドラグディグ】の踏み込みによる移動は機動が読みやすい事に気付いて距離を取る移動先を先読みして【ジェム】を投げ放ったのだ。

 闘技場で対戦相手に【ジェム】を当てる為に磨いた投石技術は見事に【ドラグディグ】の肉体を捉えて、氷属性による【凍結】と呪術による【呪縛】でその動きを一時的に止める。

 

「せぇぇやぁぁぁぁ!!!《レーザーブレード》!」

『MOGAAAAAAAAAAAA!!!?』

 

 そして動きが止まった【ドラグディグ】の上に一つの影、足場から飛び降りたドラキルが大上段に構えた光の剣を落下の勢いの乗せて金属表皮が既に砕けている腕に振り下ろしてその腕を切断した。

 超強度の金属表皮が無くとも【ドラグディグ】自身のENDは一万は超えているが、その程度であれば対ドラゴンに特化した<エンブリオ>である【ゲオルギウス】によって増幅された攻撃力ならば突破できる。

 

「よっしゃぁ! ようやくぶった斬ってやったぜゲフゥ!?」

『GUUUMOAA!!!』

 

 それでも【ドラグディグ】は瞬時に《竜王気》を全開にして凍結と呪術の拘束を解くのと同時に身体を半回転させながら尻尾を使ってドラキルを薙ぎ払う。

 ドラキルが身に付けていた<プロデュース・ビルド>製の高い防御力を持った鎧のお陰で仕留めきる事は出来なかったが、重度の傷痍系状態異常を伴う大ダメージを与えて吹き飛ばしてみせた。

 だが、そんな2人の攻撃に対処した事で地中に潜って逃げる為の時間を消費してしまい、その間にレントは計6つの【ジェムー《クリムゾン・スフィア》】を取り出して【魔石術師】の奥義を使う、

 

『魔力の細かい調整はこっちでやるわい』

「このタイミングでは避けられんだろ。《魔石共鳴》《クリムゾン・ヘキサスフィア》!」

 

 魔石術師の奥義《魔石共鳴》は複数の同種【ジェム】の魔法を共鳴・増幅・合成して大幅に強化された魔法として解き放つ、すなわち【ジェム】による単独での“合体魔法”を発動させる事が出来るスキル。

 そして使用する【ジェム】の質や素材などが近しい程によく共鳴して強化倍率が増える仕様になっており、最高位の【ジェム】制作者であるネリルが手伝った事で共鳴効率が最高クラスに作られた【ジェム】から発動された《クリムゾン・スフィア》は超級職奥義に準じる程に強化されて解き放たれた。

 

『GGUUUMOAAAAGAAAAAA!!!』

 

 だが、恒星に準ずる程の熱量を持つ様にも見える炎球を避けきれないと見た【ドラグディグ】は残っていた腕を盾としつつ、防御の為に《竜王気》を魔法耐性特化させた上で全開にして受け止めたのだ。

 確かに超高温の熱量は物理的な強度をある程度無視するが《竜気変鉱》によって強化されたアダマンタイトは生半可な熱量では溶けない強度はあり、加えて損傷部分を庇った事と《竜王気》によるダメージ減衰によって竜王は炎球を受け止めた腕部が少し溶融する程度の損耗で凌いでみせた。

 

「まあこれでは仕留めきれんだろうな。だからコレは目眩しだ」

『GUAA!?』

 

 それすらも織り込み済みだったレントは炎球による光と音を目眩しにして【ジェムー《ハイ・ファイア・レジスト》】を使って熱量を遮断しながら接近、防御姿勢故に動けない【ドラグディグ】の隙を突いて金属表皮がの破損部位を木刀で斬りかかったのだ。

 しかし、攻撃を受けた後でも破損部位を狙われると警戒していた【ドラグディグ】は溶融した大爪を無理矢理振るって木刀を弾いてみせた……が、レントはそれすらも囮して逆の手に《瞬間装備》で【ブラック・オーダー】を呼び出しながらネリルと共に複数のスキルを連動使用する。

 

『魔石開放、魔法効果圧縮、魔法付与《ハードメタル》』

「《カーストブースト》《告別の黒闇》《マーセナリーズ・プライド》《ドラゴン斬り》」

 

 金属強度強化魔法《ハードメタル》──憑依されたネリルが【ジェム】に込めた多量の魔力を使いつつ効果時間を圧縮する事で【ブラックオーダー】の強度を10万以上強化。

 装備者レベル基準装備攻撃力強化の装備スキル《カーストブースト》──HPを消費して発動されて現在のレントの合計レベル3426を基準として【ブラックオーダー】の装備攻撃力が34260上昇。

 HPを消費して武器を呪う暗黒騎士系統のスキル《告別の黒闇》──【ブラックオーダー】の呪いを強化して暗黒騎士系統の武器の呪いの強さに応じて攻撃力を上げるスキルを適用。

 クエスト受注中のみ使用可能でクエスト難易度×スキルレベル分だけ物理攻撃力を引き上げる【大傭兵】の奥義《マーセナリーズ・プライド》──現在エレメンタルより難易度:八のクエストを受注中なので攻撃力80%上昇。

 騎士系統などで条件を満たすと取得出来る種族:ドラゴンに対して攻撃力を上昇させる汎用剣術系レアスキル《ドラゴン斬り》──現在スキルレベル10なので攻撃力60%上昇。

 

『GUAAAAA!!?』

 

 それらのスキルを連動させたレントによって振るわれた呪いの剣は金属表皮が残っている部分に目掛けて振るわれ、負傷部分を守る事のみに意識を向けていた【ドラグディグ】の読みを外して防がれる事なく突き刺さる。

 これまで金属武器を阻んできた《竜気変鉱》による《竜王気》と接触での金属強度低下はそれ以上に強度を上げる事で突破、同じく強化された金属表皮をそれ以上に攻撃力を上げる事で斬り裂いて【ブラックオーダー】の刀身を【ドラグディグ】の肉体深くまで斬り進めた。

 

「《爆破(リベレイション)》!」

『MOGUUUAAAA……!!?』

 

 そして刀身が【ドラグディグ】の体内に入った直後に武器の呪いを開放して爆発を起こす【暗黒騎士】のスキルを使用、体内からの攻撃には高いENDも《竜王気》も一切機能しない故に爆発は心臓を含む主要臓器をズタズタに引き裂いた。

 爆破の反動でレントの【ブラックオーダー】を持っていた腕もボロボロになり【ブラックオーダー】自体も柄を残して砕け散ったが、それだけの威力が炸裂すれば如何に伝説級の竜王であれ致命傷となる。

 

「金属表皮に覆われている所為で内部での衝撃が外に殆ど逃げられないだろうしな。HPが残っていても傷痍系状態異常は致命傷に到るものの筈だ……が『竜王』はその程度では終わらないか」

『……GUUU……!』

 

 しかし、内側からの爆破で致命傷を負っている筈の【ドラグディグ】はそれでも立ち上がって戦闘を継続する意思を見せる、それは一つの種族を背負う王としての在り方なのか目の前の敵を撃ち倒そうとする戦士としての在り方なのか。

 そこまでは今日初めて出会ったレントには分からなかったが、彼はこのまま逃げれば勝手に死ぬ相手に背を向ける事はなくアイテムボックスから予備の剣を取り出した。

 

「このまま逃げ回っていれば確実に勝てるのだが、ひたすらに合理性と効率だけを求めて戦うと言うのは“本当に面白くない”からな」

『ただ生きるだけならともかく、意味のない誇りや意地も戦いに臨む者ならば必要な時もあろうよ』

『……GU、MOOOO!!!』

 

 最後の力を振り絞って突撃する【ドラグディグ】に対してネリルによる高周波振動の魔法を纏わせた剣を振り抜くレント、交錯の一瞬その一閃は振り下ろされた大爪を掻い潜り金属表皮が砕けた部分へと吸い込まれてその肉体を斬り裂いた。

 それによるダメージが今度こそ致命傷となり【ドラグディグ】は力を失って倒れ伏し、まもなく世界の理に従って光の塵となって<UBM>に与えられた設定通りにアナウンスと共に特典武具を残すのだった。

 

【<UBM>【掘竜王 ドラグディグ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【レント・ウィステリア】がMVPに選出されました】

【【レント・ウィステリア】にMVP特典【はいぱーきぐるみしりーず どらぐでぃぐ】を贈与します】

 

「……とりあえずこのアナウンスはどうにかならんのか、せっかくいい感じに決着したのに」

『そこはどこぞの管理者にでも文句を言うのじゃな』

「後は何故着ぐるみ、俺はどっかの着ぐるみデストロイヤーと違って着ぐるみ縛りプレイとかはしてないんだが」

『だからワシに言われてもの』

 

 そんなちょっと気の抜ける会話はともかくとして、<トーラス廃鉱山>の戦いの趨勢を決める最深部での決戦はレント達が伝説級竜王【ドラグディグ】を倒して勝利する結果で終わったのであった。




あとがき・各種設定解説

レント:実はやる事が一番多かった人
・最初から最後まで味方のフォローとネリルの準備が整うまでの時間稼ぎの為、【ドラグディグ】に味方がやられない様に状況をコントロールしながら戦っていたので実はめっちゃ忙しかった。
・本人のスタンス的には<マスター>である以上はゲームでしかないが、だからこそ戦いには一定の誇りや矜持を持っておかなければ“面白くないことになる”と考えている。
・【ジェム】の大量消費にメインウェポンの【ブラックオーダー】の喪失と結構損耗があった割に得られた特典武具が何故か着ぐるみなので結構損したかと思っているが、特典武具は彼の現状にちゃんとアジャストしている模様。

ダヴィーデ&ドラキル:最後に全部いい所持っていかれたなと思った
・尚、超防御の【ドラグディグ】にダメージを与えられるドラキルがいたおかげで敵の攻撃パターンを大分絞れたし、ダヴィーデの【ジェム】投擲は戦闘の仕切り直しに便利だったので貢献度は結構高い。
・それはそれとしてレントの個人戦闘能力とかパーティーへの支援能力とか特に意味不明な能力の従魔とか見て『やっぱコイツ<マスター>の中でもやばい枠だよな』と思ったとか。

【掘竜王 ドラグディグ】:最後まで“竜王”だった
・逃げてばかりで自分に追従する事しかしない同胞に思う所はあったが、それでも王に選ばれた以上は最後まで敵を倒す為に戦うぐらいはするという在り方だった模様。
・終始レント達相手に翻弄されていた様にも見えるが圧倒的な防御力で大抵の攻撃は通らず、超強度金属による近接戦は上位純竜にもダメージを与えられるので反撃重視の持久戦で多くのボスモンスターを倒している。
・今回もレントとネリルが反撃の機先を徹底的に潰し続けてどうにか戦闘を継続出来ていただけで、防御力が高過ぎてダメージを受けないので大体は持久戦で相手が先に倒れるか諦めて逃げるかさせて群れを狙う敵を退けていた。
・ただし防御特化の弱点として何らかの手段で防御を貫通されると弱く、ドラゴンキラーなドラキルに加えて金属操作に関して最高位の技術を持つネリルが相手だと相性が悪かった模様。


読了ありがとうございました。
デンドロにおける敗北フラグで有名な《クリムゾン・スフィア》を主人公が使いましたが、ちゃんと名前を変えているので敗北フラグではなくなっているので安心です。
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