永奈「……」
商人「…おいおい、おじさんを無視しないでくれないか?」
永奈「……ぐー…ぐー…」
商人「…子の寝顔が見れないのは虚しいねぇ」
太陽は真上に登り昼頃になる
「ここらで、ちと休むかね」
「…ぐー…ぐー」
「…まだ寝とるのか」
商人は牛車を道から少し外したところで止める
「ほれ、犬っころも疲れただろう?少し休め」
「わん」
「わしも、飯にするかのぅ」
そう言って商人は荷台から漆塗りの綺麗な小箱を取り出す。
小箱を開けると中からは握りたてのように湯気をたてるおにぎりと焼いたばかりのような香ばしい匂いを放つ焼き魚が出てくる。
「やはり、この小箱はええのぅ。
いくら時間が経っても中身は入れたときと変わらんからなぁ」
香ばしい匂いが辺りに広がる。
眠っていたとしても嗅覚は起きている、お腹を空かせた狼の前でご飯を食べるとは…
「お腹空きました!」
「うおぉっ!お前さん起きてるなら静かに起きんかい!体に悪いわ!」
「あ…ごめんなさい…。
で、でも商人さんが悪いんですよ!私だってお腹空いてるんですから!」
「…お前さんは飯を持っておらんのか?」
「ありますよ?友達のお婆ちゃんに煮つけてもらった筍が」
「ならお前さんも飯にするといい。握り飯がないならわしのを分けてやる」
「…お願いがあるんですけど…」
「ん?なんだい?」
「そのぉ、筍と焼き魚を…こ、交換とかって…」
「なんだ?焼き魚が食いたいのか?だがこれはわしのだ。
筍とは交換できんな」
「あ、今商人さん筍のこと馬鹿にしましたね!
この筍は地元の人達にも凄く人気な絶品の筍なんですよ!そこら辺の筍とは比べものにならないくらいなんですよ!」
「ほぅ、なら一口食わせてくれんか?」
「いいですよ。その代わり気に入ったら交換してくださいね?」
「よかろう。では一口」
どうかな…私は好きだけど妖怪だしなぁ…
いや、でも人里の人達もみんな美味しいって言ってたから大丈夫なはず!
問題は商人さんの味覚が合うかどうか…
「こ、これは…」
「ど、どうですか?まさか、美味しくなかった…とか…」
「いや、美味い。だけど、もう一口だけくれんか?」
「よかったです!どうぞどうぞ食べてください!」
「うむ、もう一口!」
「はいどうぞ!」
気に入ってもらえたみたいでよかった~。
やっぱり迷いの森産の筍はこっちでも通用するくらい美味しいんだ。
うんうん、よかったよかった、
あれ?でも、なにかを忘れてる…?
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「いや~旨かった!こんな旨い筍は初めて食った!満足満足」
「……私のお昼ご飯」
「ん?あぁ、忘れてたな!ほれ、焼き魚はお前さんのもんだ」
「でも、冷えちゃってるんじゃ…」
「冷えとらんぞ?なんてったってこの小箱の中に入れておいたからな」
「え?」
商人さんが小箱を開けると確かに先ほど見た時と同じように焼いたばかりのように湯気をあげるおにぎりと焼き魚が入っていた。
この箱は昔でいう真空保温弁当箱みたいなものなのかな?
今の科学も昔と同じようなところがあるのかな、行ってみたいかも…。
「この小箱が不思議に見えるか?」
「へ?あぁ、いえ別に…」
「この小箱はな、わしの古い友人から貰ったものだ。
そいつはこの国の生まれではなくてな、少しばかりわしの所に世話になっていてな。
その時の礼にってことで貰ったものなんだ、なんでも“まほぉ”というものが施されているらしくてな、これ以外にも書物なんかも貰ったが全部家に仕舞いっぱなしなってしまってな……とと、話が長くなったな、ほれ焼き魚だ」
「ありがとうございます。
よくわからないけど便利な小箱ですね」
「そうだろ?かく言うわしもよくわかっとらんかな!
ガハハハッ!」
まほぉか…多分“魔法”のことだやね…。
たしか、昔に魔法瓶って保温機能持ったものがあったはずだからそれのことかな?
ううむ…時代は繰り返されるってことかぁ…。
「さて、飯も食ったしそろそろ行くかい!」
「牙丸ー、行くよー?」
「わんわん!」
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「さて、わしはここから仕事があるからな。
そこの甘味屋で先に食って待っててくれるか?」
「…はい、わかりました」
……都に先ほど到着した。
入り口の所には門番らしき人がいて商人さんが札みたいなのを見せたら入ることが出来た。牙丸は外で待機だけど……。
都の中にはいるまではよかった、何事もなく牛車に揺られるだけだった。
だが、ある程度中に入ってきてから私は気づいてしまった…そう、私は、妖怪、だった……。
妖怪は妖力を持っている、私は耳や尻尾を隠すために抑えているが、それは無くなったわけじゃない。僅かにだが、妖力は妖怪である以上漏れ出してしまう。
そして、私が霊力や神力を感知出来るってことは、他もある程度の実力を持っていれば感知出来るってことだ…。
都って、霊力が高い人、いっぱい…いっぱいいる…私、バレてるよね。
今も後ろの方で話してる声が聞こえた、霊力が高い人が3人ほどいる…
どうしよう…
「とりあえず、甘いものでも食べて落ち着こう…」
大丈夫、私は安全な妖怪。
何もしなければ大丈夫、絶対大丈夫…な、はず…。
「おばちゃん、お団子ください」
「はいよー!お嬢ちゃん、1人で食べるのかい?」
「今は1人です。あとでさっきの商人さんが来ます」
「そうかいそうかい。なら、あの端に座ってるお嬢ちゃんと一緒に食べてくれないかい?
いっつも1人で食べててさ、私が話しかけても悲しそうな顔をするだけで話してくれないんだよ…。
餡蜜をおまけしてあげるからさ、どうだい?」
「餡蜜…!やります!やらせていただきます!」
「そうかいそうかい!それならあとで持って行くから席に行っといてくれるかい!」
「はい!」
なんだかよくわからないけど、餡蜜も食べれることになった!
お話しするだけなんて、今日の私は商人さんといい餡蜜といい、運がついてるね!
「ふふん♪餡蜜にお団子、楽しみだな~♪」
ノリノリで座る場所の近くまで行くと端の方に先客が居るのが見える。
黒い綺麗な髪を腰の辺りまで伸ばしていてキリッとするもどこか幼さが残るような顔立ちをした少女が1人お団子食べながらお茶を啜っている。
この子がおばちゃんの言ってた子だよね…あ、こっちむいた。
こちらを向いた少女は一度大きく目を見開くも何も見なかったかのように前を向く。
この子…高い霊力を持ってる…。
今の、気づいたよね…まぁ、話しかけてみようかな?
「隣座ってもいいですか?」
「」ブンブン
うわぁ…凄く首を横に振ってる…。
無視してもいいかな…?
「よいしょっと!そのお団子美味しい?」
「」ガタガタガタガタ
震えてる…なんか、可哀想…。
でも、餡蜜のためだよね!私、頑張る!
「ねぇ、大丈夫?」肩に手を置く
「はひぃっ!だ、だだだ大丈夫でです!それじゃ!私は失礼します!」
「ちょ、ちょっと待って!何もしないから、私とお話ししようよ!」
「そ、そうやって、な、何人騙して来たんですか!」
「騙してなんていないよ!?
もうちょっとしたら私のお団子と餡蜜が来るからそれまでお話ししようよ!ね?ね?お願いします!」
「うぅ…逃げられない…。
これはもう、覚悟を決めるしか…」
「…そこまで、危なさそうに見えるのかな…。
私はただ…仲良くしたい…だけ…なのに…」
「……」
あ、黙っちゃった…やっぱり無理やり引き止めたのはダメだったね…。
まぁ、妖怪に捕まったりしたら怖いもんね……今から謝れば許してくれるかな…?
「ご、ごめんね、急に引き止めたりして。
もう、止めないから…本当に…ごめん…」
「…なんで、私に話しかけようと思ったんですか?」
「え?えぇと…それは…」
「…大方、ここのおばちゃんに頼まれたとかそこら辺ですよね?」
「…ごめんなさい…餡蜜おまけしてくれるって言ったから…あなたのことも考えずに無理強いしちゃって…」
「…プ、ククク、アハハハ!」
「え?な、なんで笑うの?」
「だ、だって、くく、あ、餡蜜って…アハハハ!」
「餡蜜、美味しいじゃん…」
「あー笑った笑った…いいよ、お話ししてあげる」
「ほ、本当にいいの?無理しなくてもいいんだよ?」
「いいのいいの、その代わり、あなたのこと色々教えてね?」
「うん!」
よかったー!これで、餡蜜は大丈夫だー!
この子とも仲良くなれそうだし、一石二鳥…いや、一石五鳥ぐらいの感じだよ!
…あれ?また、なんか忘れてるような気がする…ま、いっか!
ん~、今だに書いてたら変になる…
しっかりと考えてるつもりなのに、おかしいなぁ…