「妖怪って人で言う負の感情で強くなるんでしたっけ?」
青娥の楽しそうな声が部屋に響く。
部屋は両手両足を縛られ身動きの取れない永奈と青娥の2人っきりという奇妙な状態となっている。
永奈を縛っている布には呪詛が書かれているようで力を込めることが出来なくなっている。
「あなたが少し暴れて豊聡耳様に退治されればいいんてすけど、今の状態のあまたを退治したところで意味がないんですよねぇ」
「わ、私を退治したところでな、なにも意味なんてないですよ…」
青娥は永奈の言葉を聞き流しなにやら考え込む。
「せ、青娥さん!こんな事やめてください!」
青娥は見向きもせずに襖を開け出て行く。
「……どのくらい、此処にいるんだろう…。
……お腹、空いたなぁ。」
輝夜に会いに行った日から既に3日程たっている。
その間、永奈は部屋に監禁されていて食事をとってないどころか初日ぶりに人と話すのであった。
「“林檎が目の前にある”」
なにも起きない。
やっぱり、今のままじゃ妖力を解放するどころか、能力も使えなくなってる…。
このままだと、いずれ……。
「早く、ここから出ないと」
どうにかして、手を縛られた布から外そうとモゾモゾしているとガンッと襖が強く開く。
「おーい!青娥ー、太子様が呼んでおったぞー……うん?」
襖から入ってきたのは灰色の髪を後ろに束ねて鳥帽子を被った少女だった。
「おや?お主どっかで…」
「会ったことはないと思うんですが…」
「いや…ああ!思い出したぞ!あれか、あの時の妖怪娘か!」
少女はどこかスッキリした顔で笑いながら頷いている。
快活とした少女の態度に永奈は癒されていた。
「いや~、まさか本当に行うとは…」
「あの、あなたは何か知ってるんですか?」
「何のことじゃ?お主のことか?
お主のことなら我が提案したことだぞ?」
「…どうして、ですか?」
「妖怪を退治したとなれば太子様の株があがると思ってな!
まぁ、お主のような妖怪を退治したところであがるとは思えんからと、即刻屠自古に却下されたがな」
嬉々として話していた少女の顔は途端に怒りの籠もったような顔になり、愚痴をこぼしていた。
「な、ならどうして私は捕まっているんですか?」
「ん?そのようなこと我に聞かれても分かるはずがなかろう?」
「え、ええー…」
当たり前だと言わんばかりに言い放つ。
なぜ自信満々でその様なことを言うのか永奈では理解出来なかった…
「それにしてもお主、太子様とそっくりな髪をしてるな!」
「いえ、髪っていうよりは耳が生えてるんですよ」
「なんと!?やはり妖怪だったのだな!」
「妖怪かだって気づいてたんじゃなかったんですか…?」
「こんなに落ち着いた妖怪がおるか、少し触らして貰うぞ」
少女は耳をつついた後、永奈を膝元に座らせ後ろから頭を撫でたり耳を引っ張ったりと楽しんでいる。
「あぁ~太子様の頭を撫でてるみたいで楽しいな~」
「そうなのですか?私はいつでも歓迎しますよ、布都」
永奈の頭を弄る布都の後ろにはニコニコとした神子が立っていた。
「た、太子様!我は青娥探しを忘れてたりしてないですよ!」
「…もうそのことは済みましたからいいですよ。
それよりも他に仕事を頼みたくて私はあなたを探していたのですから」
「そ、そうでございましたか。
して、仕事とは?」
「仕事の内容は屠自古に伝えてあります。彼女に協力してあげてください」
「……わかりました」
布都は渋々了承し、部屋を出て行く。
「あぁ、それと今夜はこの屋敷には近づかないようにしてくださいね」
遠くから了解の声が聞こえる。
「さて、本題に入りましょうか」
「私をどうするんですか、太子様?」
「青娥にあなたに幻覚を見せるようにお願いしました。
あなたには苦しい思いをして貰いますが確実にあなたも強くなります。
私はあなたを退治するけれども殺すわけではありません。
大妖を都から退かせるだけでも十分に効果はある、ですのでどちらからしてもそう悪い話ではないでしょう?」
「……それをすれば解放してもらえるんですか?」
「あぁ、約束しよう」
神子は落ち着いた声でゆっくりと話す。
「なら…協力、します」
「協力に感謝します。
では、青娥を呼んできますね」
神子は外に出て行く。
「はやく、かえりたいな」