Mimicry 汚れた天才とニセモノサッカー   作:イリノイ州の陰キャ

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 ディフェンダーの呼称

 CB→センターバック
 SB→サイドバック
 WB→ウイングバック

 後書きに以上三つのポジションの特徴を記載しています。気になる方はご確認ください。



3、ラインの外のマリーシア

 

 朝早くから訪れた条知(ジョウチ)中のグラウンドには、すでにフィールドラインが綺麗に引かれていた。

 

「スイ、来てくれたのか!!」

「あぁ……お邪魔します」

 

 朝7時。マネージャーの彼女は折りたたみのホワイトボードを右手に、クーリングタイム用の保冷ボックスを左手にして、少し忙しそうな雰囲気で僕を迎えた。

 

「それ、給水タイムのボトル箱? 持たせてよ」

「え、いやいや、いいって! 重いし! つか、今日は私が呼んだのに、そんな……!」

 

 部員でもない者に手伝わせるのを躊躇う気持ちは分かるが、一人でこの量の荷物を運ぶのは大変だ。

 それに、保冷ボックスには人数分の満タンのボトルが入っている。これを片手で持とうとするのは非常に危険だ。彼女が怪我をする可能性はもちろん、周りにぶつかると、他人を怪我させてしまうかもしれない。

 

「ボールのカゴも運ばないとでしょ。いいから。はい。もらった」

「あ、あぅ……もー! ありがとよ!」

 

 強引に箱の取っ手を掴んで、僕は彼女と並んでグラウンドのハーフライン辺りまでそれを運んだ。

 

「この辺りでいいよね」

「おー、サンキュー……つか、給水タイムとかよく知ってたな」

「今は結構いろんなスポーツにあるから」

 

 その後も事前練習に必要な荷物運びや、布製の長椅子を両陣営のベンチ位置に設営したりして、彼女の準備を手伝った。

 本来ならマネージャーに任せきりにする仕事ではない。選手達も率先して手伝わなければならない事柄だが、条知(ジョウチ)中のサッカー部員達はどこにも見当たらなかった。

 

「他の部員達は?」

「まだミーティング中だ。実は試合前のアップは8時半からだから、こんなに急がなくてもよかったんだわ」

 

 相手選手達もまだ到着していない。試合前に使える30分練習に合わせて、大体7時半から8時の間に来るだろう。

 ということは、まだかなり時間がある。試合の時間を聞いていなかったとはいえ、早く来すぎてしまったようだ。結果的に倉前さんの準備を手伝えたので、よかったと言えばよかったけれど。

 

「さて、ラインカーもそこにあるし、準備終わっちゃったな……」

 

 彼女は思案げな表情で、何度か首を横に倒しては眉間に指を当てるのを繰り返していた。

 

「よし!」

 

 そして突然妙案得たかのように跳ねると、ゴールカゴから黄色と黒のボールを取り出し、それを軽く投げてからこちらに蹴ってきた。

 

「うわっ」

 

 浮き玉を右足のインサイドで処理して、そのまま地面に落とす。ボールはバウンドせずに砂地を転がり、僕の足下から数センチの位置で止まった。

 

「すげ! めちゃくちゃトラップうまいな! もしかして経験者?」

「た、たまたまだって」

「初心者でこれなら才能あるぞ! うわー、やっぱもっとがっつり勧誘しときゃよかった」

 

 彼女は驚いたり笑ったり、あるいは悔しがったりと、一人でコロコロと表情を変えていた。

 喋っていなくても賑やかだ。内情など一切知らないが、彼女のおかげで、部の雰囲気も和らいでいそうだ。

 

「なぁ、スイ。このまま少しボール蹴らないか?」

 

 彼女はピッチから離れて、ラインの外で待ち構えていた。

 

「…………少しだけなら」

 

 ローファーを壊さない範疇……インサイドキックに限定してのパスパス(パス練習)くらいなら、サッカーとは呼ばなくていいはずだ。

 

 

 

 倉前さんも選手としてのプレー経験があるらしく、たまにアウトサイドを混ぜながら、鋭いパスを出してくる。

 その多くは僕を試すかのようなパスだった。後ろに転がっていくボールを走って取りに行くのは億劫なので、全て足下に収めつつ、たまにわざと大きく弾いて取り損ねたような雰囲気を演出していた。

 

「よっ。スイ! これはどーだ!」

「ちょっと強いかな。軽いパスにしてよ」

「いーや、そんな必要ないね。全然問題なさそうじゃねーか」

 

 そんな風にして、ここまで続いた2タッチパスの応酬であったが、倉前さんの表情から笑みがなくなるのと同時に、ボールが彼女のほうで止まった。

 

「なぁ、やっぱサッカーやってただろ」

 

 ボールを蹴りながら、彼女は出し抜けにそんなことを聞いてきた。

 その言葉とともに突然放られたチップキックを胸で落として、軽くロールで前進してから、僕はパスを返した。

 

「…………そんなことないけど、なんで?」

「だって足下見てないじゃん」

 

 この瞬間、僕は二つの失敗をした。一つは「しまった」という表情を浮かべてしまったこと。もう一つはそれを彼女の前で取り繕おうとしたことだ。

 

「私なんかトラップもキックも下向きっぱなしだってのにさ。お前、さっきからずっと間接視野だけでボール蹴ってるだろ」

「いや、これは……」

「まぁいいけどさ。気になるけど、言いたくないなら聞かねー……よっ!」

 

 軽いバックスピンがかかったインステップの強いパスが飛んできた。

 ライナーながらも浮いた球を、太ももとふくらはぎの付け根辺りで受けて落とし、そのまま降ろした足の裏に収めた。

 

「あっ、みんな来た。そろそろ練習始めるみてーだな」

「じゃあ、僕は来賓スペースに……」

「いーよ。ここで見てけって。どーせ顧問の先生は忙しいから監督席に入んねーし、こっちのベンチスカスカだからさ」

「うわ、ちょっと……!」

 

 彼女は僕の手を引っ張ると、肩を上から押さえ付けて強引にベンチに座らせた。

 確かにこの学校のサッカー部は11人でギリギリ。ベンチなんかハーフタイムを除けばマネージャーしか使わない。

 しかし、部外者が座っていていいものか。

 

「ほら、見てみ、部員連中だーれも気にしちゃいない」

「ホントだ」

 

 彼らは僕に何か話しかけてくるでもなく、マネージャーに簡単な挨拶をしながらピッチに入っていく。

 そしてそのまま練習を始めてしまった。おおらかな人が揃っているみたいだ。

 

 その中で、一人だけ僕に声をかけてきた人がいた。

 

「おー、ウミ! もう見学者見つけてきたのか!」

「キャプテン! おはようございます!」

 

 倉前さんが立って挨拶をしたのは、髪の毛が全部真上を向いたツンツンの男だった。

 

「オレはこのチームのキャプテン。土谷(ツチヤ)(ツトム)だ。ツトム先輩って呼んでいいぞ!」

 

 彼は座ったままの僕に手を差し出して、握手を求めてきた。

 

「ど、どうも……」

「おう! 面白そうだと思ったら、気軽に部に入ってくれよ!」

 

 握った手を力強く振り、土谷(ツチヤ)は挨拶を終えてピッチに戻って行った。

 その小走りの後ろ姿から分かることと言えば……体幹はかなり安定している、ということか。

 

 

 

「お? 練習終わるみたいだぞ、スイ」

 

 キャプテンの統率で練習をピタリとやめた選手達が、小走りでハーフラインに整列した。

 

「今日はウチなんかと試合を組んでくれてありがとう。よろしく!」

 

 キャプテンの土谷は、快活にもよく通る声で礼を述べながら、相手のキャプテンに手を差し出した。

 

「…………」

 

 相手はそれを無言で掴み、掴むだけ掴んでさっさと離した。まるで不必要な慣習に不満を感じているかのように、ただ機械的に握手をして、というか手のひらで触る程度のうちに離してしまった。

 

「なんか、ピリついてるな……灰尊(バイソン)中。い、いや、普通はもっと穏やかだぞ!? 全然感じ悪いスポーツとかじゃねーからな!」

「大丈夫だって。気にしてないよ」

 

 倉前さんは僕をチームに引き入れることをまだ諦めていないようで、そんな風に今の光景を擁護した。

 ウチじゃ不人気のサッカー部だ。来年2年が受験などで抜けた時のことを考えて、部員を集めるのに必死になる気持ちは分かる。

 

「ん……? キャプテン、見てください、アレ……!」

 

 キックオフの直前、ポジションに付く前の猶予時間。条知(ジョウチ)中の選手陣は、来賓スペースのほうを見ながらどよめいていた。

 

「なんで帝国が俺等の試合なんか見にきてる……?」

 

 父兄ばかりの来賓スペースの一角に、帝国の特徴的な学ランが整然と並んでいた。10数名の生徒達は全員横並びになって、ただならぬ雰囲気を醸しながらピッチを見渡している。

 

「よく見ろ。相手コートに集まってる。灰尊(バイソン)中の敵情視察だろ。奴等は一回戦とはいえ、FFの本戦に出てるしな……」

「くそっ、こっちは眼中にも入ってねぇってかよッ…………!!」

 

 灰尊(バイソン)中の握手の態度や、帝国学園に敵と思われていないという事実に、条知(ジョウチ)中のメンバーの間にはフラストレーションが溜まっていた。

 イライラが溜まって貧乏ゆすりをし始める奴が出る始末だ。このままではプレーも精彩を欠き、パッションのままラフプレーでもしてしまいそうな雰囲気だが……

 

 

「落ち着けお前ら!!」

 

 

 センターバックの位置にいたキャプテンの土谷が、一度だけ手を叩いた。

 

「気にするな。いつも通り、オレ達のサッカーをしよう。なぁに心配すんな! こいつは練習試合だ! 負けてもどうにもならん!!」

 

 土谷の声は試合前とは思えないほどに朗らかだった。緊張感が全く欠如しているという訳ではない。しかし、肩がきちんと降りている程度にはリラックスしている。

 

「そ、そうっすよね……!」

「はっ、はい!」

 

 キャプテンの落ち着きぶりは部員達にも伝播し、やがていきり立っていた選手達も落ち着きを取り戻した。

 

「あの人がキャプテン、なんだっけ」

「おぉ。土谷(ツチヤ)(ツトム)先輩。みんなツトム先輩って呼んでるぞ」

「へぇー……」

 

 プレーの程は定かではないが、一声で全員の耳を傾けさせる発言力には、確かなキャプテンシーを感じる。

 キャプテンに人望がなければ、選手は一つにまとまらない。それだけが全てという訳でもないが、こうした要素の積み重ねが優劣を分ける。

 

「いいキャプテンかもね……」

「お? スイにも分かるか!? いい人なんだよ、あの先輩」

 

 主将に求められる第一の能力は、ピッチ上のラインコントロールではない。崩し連携の指示やその中核でも、ビルドアップの司令塔でもない。

 

 ムードの管理だ。

 

 勝っている時は浮き足立つ前衛を諌め、負けている時はポジショニングが投げやりになるディフェンダーを鼓舞する。

 チーム全体に対する伝達役であるキャプテンは、その役割に対する多大なプレッシャーと10人分の緊張を背負って戦わなければならない。

 

「それより、そろそろ始まるみたいだよ」

 

 

 ピィィィ!!

 

 

 試合は条知(ジョウチ)中のキックオフから始まった。

 フォワードから、一度大きく中央CBまでボールが落とされる。深い位置から根を張るようにして始まったビルドアップは、左右のCBに振りつつ、相手のプレスを待っていた。

 

「横回転かけるなよ! まっすぐ出せ!」

 

 ボールは内側から切るようにして右のウイングバックに上がる。思いきり横に体を開いた右WBは、そのボールを中心方面に落とすようにしてトラップし、即座にアウトサイドで大外に切り出した。

 

「いいとこつながったね」

「おう。今ボール持ってる人、ウチで一番うまい先輩なんだぜ」

 

 確かに安定したボールタッチだ。細かく右足の外で何度も触りつつ、相手が足を出してくるのを待って、ダブルタッチで一人目を突破した。

 

「ほら! ほら見たかスイ!? 条知中だって結構やれる――――」

 

 

「〝キラースライド〟!!」

 

 

 突然、全員が無言を貫いていたはずの灰尊(バイソン)中選手から、大きな声があがった。

 ほとんど足狙いの危険なスライディングが条知の選手のふくらはぎを蹴り付け、転んだ拍子にボールが足下を抜ける。

 

「あぁっ!! おい! 今のはファウルだろ!」

 

 倉前さんに同感だ。引っかせるどころの騒ぎではない。今のスライディングはそもそもボールに当たっていなかった。危険プレーだ。

 主審は旗を上げない。条知中の選手全員が手を上げ、ファウルを訴えているが、審判は首を横に振った。

 

「審判!! バカ!! どこ見てんだ!!」

「く、倉前さん、カード出されるよ」

 

 選手でなくとも、審判への抗議などで試合の妨害をしたと見做されると、ペナルティカードが出されるか、退場処分になる可能性はある。

 

「く、くそッ……」

 

 危険なタックルをされた本人はと言えば、痛む足を押さえながら、心の底から納得いかない表情のまま、ネガトラのセオリーであるボール奪取に走っていた。

 

「なんだ……?」

 

 僕の脳裏には一瞬、嫌なイメージがよぎった。危険プレーでボールを奪った相手選手の動きが緩慢だ。

 プレーエリアが右に寄っているこの場面、さっさとボールを味方に移すべきなのに、まるで何かを待っているかのように――――

 

「なっ……!?」

 

 突然振り返ったその選手は、危険なプレーをしてまでダッシュしたボールを、浮き球で条知の右WBにあっさりと返してしまった。

 それを難なく胸トラップで受け取った瞬間、相手選手は眉毛を思いきり上げて、口角の片側だけをつり上げた。

 

「ぐっ……!!」

 

 突如回し蹴りが繰り出され、条知の選手がボールごと胸を蹴り飛ばされる。

 思いきり蹴飛ばされたその選手は、胸と頭を強く打ったようで、横になってうずくまった。

 僕はそれを見たことがある。あれは帝国が得意とする〝ジャッジスルー〟とかいう技だ。一発でカードが出るような、最悪の技。

 

 ピイィィィ!!

 

 当然笛が鳴り、危険なプレーをした相手にカードが出される。イエローカードが。

 

「はぁぁ!? イエロー!? レッドだろ!!」

「く、倉前さん!」

 

 彼女の憤りはよく分かる。この判定には僕も大きな違和感があった。

 強度の高いリーグの試合とは違う。青少年の試合で、あのような危険なプレーがあった場合、普通なら一発レッドだ。

 その後、本人には協会や連盟からの厳重注意、またその指導者にも何らかのペナルティが及ぶ。

 

 しかし、イエロー? イエローならば主審にその場で注意されて終わる程度だが、今のプレーが本当にその程度だったか?

 

「くっ……ぁ……」

 

 ピッチには未だ、先ほどのプレーで蹴り付けられた先輩が転がっていた。右WBの、倉前さんが褒めていた先輩。

 彼が立てないと見るや、主審は一度笛を吹き、試合を中断させた。

 

「くそッ……いっ……」

「ちょっと待て! 今、担架を……!」

 

 肩を貸しても歩けないほどに痛むのか、胸を押さえてのたうち回る先輩は、担架に担がれてピッチから出された。

 背後で慌てた父兄の一部が、救急車を呼んでいるのが見えた。妥当な措置だ。続行が不可能なのは当然のこと、肋骨と頭を打ちつけたのだ。然るべき検査を怠り、酷い後遺症が残った事例は多い。

 

「どうすんだよ!! オレ達交代選手なんていねーぞ! 10人でやるのかよ!」

「あいつら……!! ふざけた真似しやがって!!」

 

 一度中断された隙を縫って、ベンチに集まってきた条知の選手達は、酷く荒れていた。

 そのはずだ。味方のエースをあんな潰され方したのでは、怒って当然だ。しかも、あの危険プレーに出たカードはイエロー。

 

「こうなったら……なぁ、スイ」

 

 倉前さんはベンチ横の鞄から、一着の青いユニフォームを取り出した。

 

「代わりに出てくれないか? サッカー部に入れって言うんじゃない。せめて、この試合だけでも……!」

「え……」

 

 そのユニフォームの背番号には、2の数字が印字されていた。

 僕の顔に動揺は顕れていなかっただろうか。僕にとっては象徴的な自然数だ。ここにいる誰もそれを知らないだろう。

 だからこそ、僕はそれをうけとるのを躊躇った。これを着てしまったら、僕は我慢できなくなる。サッカーを諦めきれなくなる。

 

「お、おい! さっきからいるけど、誰なんだよこいつ!」

「素人を助っ人にするのか!? つーか、こいつもしかして、灰尊のスパイなんじゃ……」

 

 条知の選手達は、僕を疑いの眼差しで睨みつけてきた。仲間に危険な行為をされた上、納得いかない采配だったことに気が立っている。

 これ以上ここにいても、話がこじれるだけだ。それに、見学者が秘密の多い部内ミーティングを聞く訳にはいかない。

 そう思って立ちあがろうとした僕の腕を、倉前さんが掴んで掲げた。

 

「く、倉前さん? 何を――――」

「こいつ私の友達なの! サッカーも激ウマだぞ! ホントに! だから絶対入れたほうがいいって!!」

「ちょ、倉前さ……」

 

 あの簡単なパス練習で、本当の実力なんて分かる訳がない。彼女の誇張した言い方に反論しようと立ち上がった僕だが、その瞬間にキャプテンである土谷に、両手を掴まれた。

 

「オレからも、頼む。これで負け越したんじゃ、負傷させられた仲間に合わせる顔がない」

 

 土谷の声は冷静ながら、その目には落ち着き以外のものが見えた。

 やはり、仲間があんな目に遭わされ、その上負けるなんてことは、プライドに懸けても許せないのだろう。僕が彼らの立場でもそう思うはずだ。あんなひどいプレーをするチームに負けたくない、と。

 

 しかし、それで僕が助っ人として出場するか否かは別の話だ。僕には、試合に出る資格はない。僕はサッカープレーヤーとして、やってはいけないことをした。

 

「あ、頭を上げてください……そんな……」

「多くは求めない。ただ、相手のプレスを引きつけるだけでいいんだ。そうしたらオレ達がなんとか、中央で点を取る」

 

 そうは言われても……そもそも、キャプテン以外のチームメイトが何と言うか。

 

「…………キャプテンがそこまで言うなら、そいつ、入れてもいいです」

「お、おい! いいのかよ! こんな素人を急に……!」

「やるしかないだろ! このまま10人で出たんじゃ、相手は絶対マンツーマンを敷いてくる!! そうなったら勝てなくなるぞ!」

 

 チーム内でも意見が割れ、ほとんど掴み合いみたいな議論が熱を帯び始めた。このままではチーム自体が分裂してしまうかもしれない。というか、もう時間はない。これはハーフタイムではないのだ。

 

 審判が時計を気にし出したのが見えたので、僕は焦って倉前さんに声をかけるも、彼女も説得に夢中でこちらに気付かない。

 困り果てて周囲を見回した一瞬、隣のベンチが目に入った。

 

 一発退場でもおかしくないことをしたのに、ベンチ集まってホワイトボードを囲みながら、笑っている。監督やコーチ思わしき壮年の男達も、選手も。

 

 …………笑っている?

 

 まさか、灰尊の連中は、彼が一番うまい選手だと知っていて、わざとそこを狙ったのか? 彼を潰すために……。

 今後、フットボールフロンティアで、同じ地区で予選を争うことになるライバルを、今のうちに弱体化させようなんて魂胆か?

 

「あの連中……」

 

 僕の頭のどこかに、サッカーを愚弄するフーリガン達への怒りが刺激され、息を巻いてくすぶり始めた。

 

 思えば、サッカーを台無しにするのはいつもあんな連中だ。勝てればいいというプレーヤー、それを肯定する素人共……。

 

 

「分かったよ…………」

 

 

 ピッチの外で謀略を巡らせ、汚いやり方をしてきたのは相手のほうだ。だったら、もうこのピッチは〝関係ない〟。清潔なフェアプレーヤー達の聖域ではなく、悍ましい毒魚の潜む泥沼に等しい。

 

 相手がその気なら、同じく汚れた僕がサッカーをするまでだ。このピッチになら、僕が出ていい理由がある。

 

「さっき空いた右WB。あそこに出ます」

「で、出てくれんのか!? スイ!」

 

 僕自身がそう言ったことで、未だ懐疑的ながらも、サッカー部の面々はその方針に傾き始めていた。

 

「すまない……チームメイトが君にあらぬ疑いをかけた上に、助っ人まで」

「いいんです、それより……」

 

 土谷は喜色を浮かべながらも、申し訳なさそうに俯いた。そんな彼の手を取って握手をしてから、僕は倉前さんが出したユニフォームを受け取った。

 

「トレシューでいいから、貸してください」

 

 

 

 ゴワついたファーストユニフォームの感触を確かめながら、僕は少しサイズの大きいシューズのつま先で地面を蹴った。

 

「2番…………」

 

 チームの取り決めにもよるが、サッカーの背番号は大抵、その役割に対応する。1番はキーパーが、10番はエースが、という風に。

 2番はディフェンダーの数字だ。それも右サイドバックに多い。3バックのこのチームにSBは存在しないが、その数字はここ、右ウイングバックに流れついた。

 奇しくも、僕が以前背負っていた数字。任されていたポジションのそれだった。

 

 2番。

 

 その色やそこに印字されるチームの名前が何であれ、この数字を背負う時間だけ、僕は甦る。

 婉曲と直線系を包括するこの数字より美しい番号はない。

 タッチラインの側に位置して、これほど役割に自分の色を混ぜられるポジションはない。

 

「おい、見ろよ。あいつスパイクじゃない。トレシューだぞ」

「どっかの部の緊急助っ人くんかぁ? 素人かよ。狙い目だな」

 

 灰尊(バイソン)の連中は、作戦が上手くいったことで気が緩んだか、先ほどまでの鬼気迫るような無言の圧力は消え、のんきに僕を見ておしゃべりに興じていた。

 

「…………」

 

 気付けば、帝国の視察と思われる10数名は、全員が灰尊(バイソン)中のコートから条知(ジョウチ)中側に集まってきていた。

 傍目に確認した時、その中の1人と目が合う。イチカだ。彼はつまらなさそうに試合を見ていた。

 

「よーやくかよ。出てくると思ってたぜ、スイ」

 

 グラウンドの外でイチカの唇が動いたが、彼の声は遠くて聞こえてこない。しかし、その目は確実に僕を見ていた。

 

「そこで見てろ……」

 

 今から面白いものを見せてやる。少なくともあくびなんてしている暇はない。

 

 

 

 試合再開は条知(ジョウチ)中の直接フリーキックから。右CBがキッカーとなり、前で待つフォワード陣への長い縦パスか、一度横に回してビルドアップから始めるかを思案していた。

 縦は当然警戒されており、しかも位置的に長いボールを蹴らなくてはならないので、競り合いは免れない。前を狙えば、折角のボール保持のチャンスを、リスクの大きいコンタクトプレーに委ねることになるが……。

 

「慌てるな! 時間はある。大事に行こう!」

 

 ボールの前で少し考え込む仲間に、キャプテンである土谷はそう声をかけた。

 同感だ。セットプレーを狙いに行くような場所でも、それが選択肢に入るほど切迫したスコアでもない。0対0の前半、パスを繋げてポジショニングを安定させるべきだろう。

 

「きゃ、キャプテン!」

 

 キックの先は土谷の足下だった。彼の言うことに従い、まずは3枚目から固めることを選んだようだ。

 

「見え見えなんだよ!!」

 

 そこに、相手のフォワードが全速力でプレスを仕かけてくる。僕がそのフォワードでも同じことをしただろう。3枚目の位置でボールを奪取できれば、もうその先にいるのはキーパーのみだ。

 

「侮るなよ……!」

 

 プレッシャーをかけてくる猛烈な走り込みに、急いでボールを捌きたくなるところ、このキャプテンは冷静だった。

 際どい突っ込みを簡単なロールの方向転換でいなし、キックフェイントで思いきり足を出させる。そうしてスピードに乗っていたはずの相手の重心を難なく埋め、落ち着いて出せる場面を作り出してから、左のCBにボールを振った。

 

「これ以上のプレスは、なしか……」

 

 ボールを失った途端、フォワードの一人がプレスに走るのを横目に、相手選手の9人は全員後ろに下がって、中央を固め出した。

 

「こっちだ!!」

 

 パスは右に流れていき、そちらに緩く走っていく敵CF。そしてそれが追いつく前に中央CBのキャプテンにリターンが返される。

 

 というのを、計5回は続けていた。

 

 パスは繋がっている。繋がっているが……完全な無駄パスだ。

 

 横に細かく振って何度もサイドチェンジをするようなパスを続けているが、相手の守備はミドルに偏っており、CBのパスワークにつられる様子がない。

 

「ダメだ……中が硬い……」

 

 このままパスを労して後ろのポジションを固めたところで、前が活性化しない。

 無駄パスは無意味なパスではない。使われる以上、それなりの役割はあるが……今は他のアプローチが必要だ。

 

「相手はミドルプレス。中央に揃えてゾーンを固め、外に逃がそうとしている……」

 

 ラインは味方の左WBに合わせ、幅取りはできている。しかし、この高さでは中央からのプレスで充分対応できてしまう。

 僕は若干フォーメーションが崩れるのを許容して、敵陣を向いたまま後ろ歩きでラインを下げた。

 

「こっちだ!!」

 

 僕は右CBを介さず、中央のCB、つまりキャプテンの土谷にボールが戻ってきた時点で、自身の位置を主張した。

 かなりライン側に深度を取り、2.5列ほどの位置に落ちてくることで、新たなパスコースとして顔を出す。

 そして、相手はこのハーフラインより下のパスには、プレスをかけてこない。深い位置からならば、フォワードのプレスバックだけを警戒すればいい状態だ。

 

「マネの連れてきた助っ人!!」

「まね……ぼ、僕か」

 

 長い呼称に一瞬もたつくが、自分が呼ばれているのだと気付き、僕はライン際に広げるようにしてボールを受け取った。

 よかった。土谷は僕にパスを出してくれた。まずはこれが重要だ。というのは簡単な話で、キャプテンがボールを出してくれない相手に、他の味方がパスをくれる訳がない。

 

「おい! どうすんだよ! 早くパス出せって!」

 

 慌てる味方の声を無視して、緩慢なランニングでプレスバックに向かってくるフォワードを横目にしながら、僕は敵陣のポジショニングを確認した。

 

「縦は2枚、ウインガーはハーフラインで待ち構えた半マンマーク……なら」

 

 僕はカットイン気味に走って、インナーハーフの選手と立ち位置が被るほどに中に入った。

 そして、そのスピードのまま味方の目の前でボールを〝置き去り〟にして、プレスにきた相手だけを引っ張り出した。

 

「中だ! 中にくるぞ!! 絞れ!」

「ま、待て! そいつボール持ってないぞ!」

 

 ディフェンスにきた相手選手は、僕がボールを持っていないことに気が付くと、その驚愕で一瞬足が止まる。

 この時相手選手が考えていることは、おそらくディフェンスの切り替えについて。このまま僕にマークを付けるか、ボールに向かうか。そして、その迷いが命取りとなる。

 

「出せッ!!」

 

 後ろで構えていた味方選手は、誰にも所有権の渡っていないボールを前に困惑しながら、僕の声に従って縦にパスを繋げてきた。

 

「クソッ……! そんなゴロ球通させんなよ!!」

 

 縦に入ったボールを、ヒールパスでダイレクトで後ろに返し、再度同じ選手がボールを持つ。

 この瞬間、ボールの位置がようやく確定したことにより、相手のミドル2枚は一気にそこへと狙いを定めて思いきりラインを上げてきた。

 

 するとどうなるか?

 

「パス!!」

 

 ミドルの背後に大きなスペースが生まれ、既にそこを走っていた僕に、先ほどよりもずっと簡単な縦パスが通る。

 

「おい!! 全員で詰めるな!! フォローに残れよ!!」

 

 先ほどまでのどん詰まりが嘘のように解消されると、全体のオフ・ザ・ボール(ボールに関与していない状態)の動きも活性化していく。

 攻撃の機と見て裏を確認する味方フォワードは、既に走り出していた。それにつられてミドルの選手が一人追走し、ハーフの位置にドリブルの隙が生まれる。

 

「行かせるかッ!!」

 

 そして僕がそのスペースに詰め、敵のディフェンスを引きつける。後ろからフォローにきたCBにヒールパスを送り、僕はそのままディフェンス二人の間を走って抜けた。

 

「パス出せ!!」

 

 パスを受けたCBの選手は、僕の声に反応して、慌て気味ながらもダイレクトでそのままリターンを返してきた。

 

「ナイスリターン!!」

 

 ここまでの動き、僕が楔のように中心に入り、そこでリターンパスを続けただけだ。

 だというのに、相手は完全にマークを崩してしまい、ミドルの裏、バイタルエリアまで到達できてしまった。

 

「おい! 足出すなよ!! 待って守れ!!」

「うるせぇよ!! テメーのプレスバックが遅ぇんだよ!!」

 

 早くて鋭いプレスを躱わす方法はつまり、相手より早い段階でボールを離すという、ただそれだけのことだ。

 強い必殺技を使ってくる相手にも同じ。付いてくる前にマークを剥がし、使われる前にボールを離す。

 それができる位置に、選手が移動すればいい。プレッシャーに負けてボールを取られてしまうのは、要はパスコースがないからだ。僕が多めに走って通る場所にいれば、そこに出してもらって崩せばいい。

 

「こいつら、途端に球離れが……!」

 

 試合が中断されるまでの間、ベンチで見ていて分かったことがある。

 

 条知中はポゼッションがうまい。個々のプレースキルはともかくとして、全員が「幅を取る」「人ではなくスペースで考える」ということの重要さを理解している。

 だから、攻撃時にポジションを流動した時も、残った後ろのメンバーが即座にスライドして中を絞っている。

 

 これは僕にとっては思わぬ吉報だった。なぜなら、ある程度僕がポジションを外しても、中盤を一気に繋がれるようなカウンターは警戒しなくていい。

 

「寄せろ!! ミドル戻れ!! プレスバックに戻れよ!」

「素人がッ。テメーだけは行かせねぇぞッ!!」

 

 まだ崩しが甘かった。バイタルにいるのは僕一人で、ディフェンダーは4枚がしっかりとペナルティに絞っている。

 僕はここであえて反転し、プレスバックに走ってくるミドルの敵と向き合った。

 

「ナメやがって……!!」

 

 ミドルの一人が飛び出してきたのに合わせて、僕は右足で思いきりボールを引きながら、入れ替えるようにして軸足を前にジャンプさせた。

 そして、裏向きの右足の甲に引っかけて残したボールを引いて、今度はプレスにきた相手の足と入れ替わるようにして前に出る。

 

「片足ルーレット……!」

 

 後ろにカバーが置いて外に追い込もうとする敵を抜くのは難しいが、直線的に突っ込んでくる相手をかわすのは容易だ。相手が足を出すタイミングでボールを逃がせば、極論フェイントでなくても抜くことはできる。

 

「左使え!!」

 

 そのまま左サイドのWBにボールを落とす。あそこにボールが入れば、かなり中に寄せられた敵はすぐさまプレスにいけない。

 そうなれば今度は、右側にスペースが空く。ボールを出すスペースという意味ではなく、外から走り込んできてもすぐにはマークが付かない。

 

「中に入れ!!」

 

 ここからだ。僕はフォワードに中央へと走り込むように声を張りながら、自身もほぼ一直線に中央を目指して走った。

 現在ボールを持っている左WBは、そのままタッチラインを真横にして走り出した。本来ウイングバックの動きとしてはあちらが正しい。そして、外を走れば当然そこにディフェンダーが付いていき、真後ろにパスコースができる。

 

「振れ!! 戻せ!!」

 

 僕の意図を瞬時に理解した左CBが前に出たことで、左WB、左CBの彼、そして中央に体を残していた僕とで、大きな三角形のパスコースが生まれた。

 

「助っ人!!」

 

 一度CBに落とされたボールは、プレスの警戒も必要なかった。ここまで走らされた敵チームは、若干の疲労が溜まってレスポンスが遅い。そして現在はクロス警戒で左に枚数を溜めている。

 一度右に固まったプレーヤー達が、今度は左に固まる。こういう動きを繰り返すと、中心のポジショニングが曖昧になって、隙が生まれやすい。

 

「フォワード戻るな!! 僕が出す!!」

 

 ボールを持ったサイドの選手が、つまり僕が中に入るなら、当然誰かがプレスをしかけなければならない。

 では、その中に入るウイングバックのマークに付くべきなのは、ウインガーとインサイドハーフのどちらになる?

 相手にはその共有がないはずだ。突然ポジション外の位置まで移動されると、誰がマークに付くべきかの意思共有がうまくいかなくなる。

 

「ライン維持しろ!! 繋げるぞ!」

 

 その歪みはスペースとなる。相手のウイングが領分を離れてタッチラインギリギリのコースを空にした瞬間を、僕の後塵から機を窺っていた味方は見逃さなかった。

 

「バカ!! ディフェンス戻れ! ゾーン崩すな!!」

 

 慌てる敵を横目に、僕は右足のアウトサイドで、極々簡単なパスを前方右のハーフレーンに放った。誰もいない場所に蹴り出されたボールだったが、突如として消えるように加速する。

 攻撃が活性化したことによって、位置取りに迷いがなくなったハーフの選手が、僕の横気味に入れたスルーパスに合わせ、後ろからかなりの大回りでオーバーラップしてきた。

 

「ナイスラン!!」

 

 後ろから走ってきた味方に、僕は思わず賞賛の声をあげていた。

 彼も今の連携に手応えを感じていたのだろう。斜め後ろからでも、その選手の口元に薄く笑みがこぼれているのが見えた。

 

「くそっ……そんなとこでスルーパス通させるなよ!!」

 

 瞬く間に大外を抜かれ、突然の攻撃方針の変化に戸惑った相手のサイドハーフがつられて出てくる。

 しかし、被攻撃時に守備が安易なボール奪取に走ってはいけない理由が、この次のプレーで端的に示されるだろう。

 

「クロス!!」

 

 僕からパスを受け取ってコーナーまで走ったハーフの選手が、相手のディフェンダーのプレスに合わせてクロスを上げた。

 この時、横を上げていたのは僕らハーフの人間。つまり、フォワードはペナルティエリアに充分人数を揃えられる。

 

「喰らえッ!! 〝ローリングキック〟!!」

 

 ディフェンスの背後に飛んだクロスに、フォワードの人が的確に反応して、ダイレクトで必殺技を放った。

 

「〝キラーブレード〟!!」

 

 シュートは惜しくも真正面。ここ一番で冷静だった相手キーパーは、必殺技に必殺技で返し、何とかそのボールを収めた。

 

「ドンマイ! ナイッシューだぜ!! クロスもよかったぞ!!」

 

 すぐにキャプテンから嬉しそうな声があがり、今のプレーに関与していた二人が、肩で息をしながらも笑顔を浮かべていた。

 確実にチームの雰囲気が攻撃に対してポジティブになってきている。スコアレスのこの状況、無難なプレーに意味はない。攻めの気を出してこそだ。だからこそプレッシャーが生まれ、相手を萎縮させられる。

 

「はぁっ……はぁっ……」

「必殺技さえ当てりゃ、あんな奴ら……!」

 

 確かに、相手チームの持つような強力なドリブル技も、堅牢なブロック技も、どうやらこのチームにはないらしい。

 しかし、ドリブル技の後隙にプレスをしかけるフォロワーがいればどうなる? ブロック技を出す好機を与えないパスワークを続ければどうなる?

 

「どうなってんだよ……!! あのエースさえ潰せば、あとは楽な試合だって……!」

「うるせぇよ!! お前がカバーに走んねぇからだろ!!」

 

 相手チームはマークが安定しない緊張感や、攻め続けられるストレスから、仲間内で揉め始めた。こうなってはプレーも十全なものにはならない。

 本来はこうしたチームの不安定はキャプテンが収めるべきものだが、灰尊側のマークを巻いている選手は、こちらの土谷ほどキャプテンシーがある訳ではない様子だった。

 

「意味分かんねぇ……あの2番の周りだけぐちゃぐちゃだ……!」

「おい! 誰だよあいつのマーク!!」

「お前だろ!! 右WBじゃねーかよ!!」

 

 必殺技に必殺技で対抗する必要はない。僕らがやっているのは〝サッカー〟だ。

 

 パスサッカーを成立させるために必要な第一の要素として、中心から左右、縦、どちらにも展開できるパサー。

 中盤のド真ん中、敵の視線が最も集まり、また見るべき方向が最も多いこの位置で、ドリブルとパスの両方をこなせるプレーヤーがいて、ようやくポゼッションはその意義を発揮できるようになる。

 

「あの2番……! 突然中に入ってきて……〝偽〟ウイングバックだ……」

「偽WB……!? 何だよそれ……!! なんでミドルの位置の選手が、〝偽〟ポジションなんか使ってくるんだよ……!!」

 

 誰もできないというなら僕がやろう。鋭いプレスに阻まれてパスが通せないというなら、僕は常にパスをもらえる場所に立つ。僕のパスで味方を走らせる。

 

 司令塔はどこにいてもいい。何人いてもいい。右サイドの僕が司令塔でも、何も問題はない。

 

「僕はミミック……」

 

 僕の形に、チームは変わる。

 

 





センターバック(CB)
 実は中心の一人のみを指す言葉ではない。中心の2〜3人を指すポジションであり、3バックシステムの際は、サイドバックと呼ばれる選手は存在しない。
 守備時にはディフェンスラインの管理(ラインコントロール)や、ディフェンダーへのコーチング(仲間への指示)を主におこなう。実はコーチングは誰か一人の役割ではなく、全ポジションがやる。ディフェンダーに対しては主にCBからが多いというだけ。

サイドバック(SB)
 4バック以上のフォーメーション時の左右端のディフェンダー。相手のウインガーを縦突破に追い込むようにして守備をする。視野とボールが来る方向は限定されるので、動きは単純だが、ピッチを何度も往復させられるため、体力の消耗が激しい。
 また、右がプレーエリアの時は、右SBは前の位置からウイングを縦に追い込み、左SB含め全体が右側にスライドして中を守る。逆も同様。
 攻撃時はビルドアップが主な役割だが、オーバーラップ(ボールを保持する味方の外側を走って追い越す動き)でパスを受け、クロスを上げたりもする。

ウイングバック(WB)
 区分がややこしい位置。チームや指導者次第でディフェンスともミドルとも解釈が変わる。3バックシステムの際にのみ採用される場合があるポジション。SBと似通った動きをするので、システムに応じてどちらのポジションも務まる選手が多い。
 守備時には(ほとんどの場合)サイドバックの位置まで下がり、攻撃時は逆にミドルとして振るまう。SB以上の攻撃参加が求められるので、守備もSB並みにこなした時の体力消耗は凄まじい。
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