黄金一族のワールドトリガー   作:逆戲愛薙

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休み、おやふみない…

遅くなりすみません。

中々に悩みに悩んで作ってます。
駄文ですがよろしくお願いします。
オリジナル近界民が少し出ます。



第7話

 

 

「さて、、そろそろ私も出ようかな」

 

 

少し気だるげな瞳で、伸びをする一人の少女。

先程から耳が痛いくらいに鳴り響く警報音が彼女の頭をガンガンと刺激する。

こういう時に耳がいいことが鬱陶しいと思いながらベットから立ち上がり着崩れた服を直す。

 

一切の光のない部屋、電気は付けなくても夜目が効く彼女はその中でも正確に障害物を避けながら壁にかけられたコートを取る。

そこかしこに広がる未調整のトリガーや試作品や失敗作のガラクタが転がる部屋はボーダー本部で鬼怒田さんしか知らない。彼女の秘密の研究室。

 

 

いつもの勝負服に手を通しす。どこに行く時も肌身離さず私と共に歩んできた服はその旅路の想いそのものだ。

 

少しボロボロになったコートは所々に弾痕や切り傷があり、首にかけるゴーグルは片目がひび割れている。

まるで、数多の戦場を駆け抜けたかのように触れる指は優しく、いつも周りに見せない柔らかな表情を浮かべ思い出に浸るように少しゴーグルの縁をなぞる。

 

 

「行くよ、みんな」

 

 

懐かしむ、彼女の身を構成するのはその旅路で得た全て。長い長い旅の果てに立てどまた先を、旅を今も続けている。

 

そんな想い出に浸りながら、身支度を整えると通信が入る。

 

 

『すみません、姉御。足止めが精一杯でした』

 

 

開口一番そう謝って来たのはジャーニーだった。

彼女が負けたことは戦闘データを既に見ていた。確かに強い、純粋な戦闘能力だけで見たらボーダーでもまともに勝負になるのは虎ちゃんくらいだろう。

 

 

「何を謝るのさ、ジャーニーはよくやったよ」

 

 

『、、、ありがとうございます。ですが、ボーダーにも侵入を許してしまいました。市街地のトリオン兵も多く戦況は芳しくありません』

 

 

「うん、知ってる。部隊の状況は?」

 

 

警報がまだ鳴り止まない部屋の扉に手を触れる。触れた手を中心にトリオンを感知して開く扉が主のトリオンを確認し淡く光ると細かいブロック状に分解されそれぞれが左右の壁に収まっていく。

通路に出ると音もなく分解されていた細かいブロックが扉の形を取り外側の外壁と同じように同化していく。

これで、外から見てもただの通路の壁だ。

 

 

カツカツと踵と床が奏でるコントラストを響かせながら警報音と赤く光るライトがステイゴールドにスポットライトを当てるようだ。

 

 

『市街地の迎撃には嵐山隊、村上隊員、太刀川隊員、B級合同部隊が当たっています』

 

 

「ふん、なるほど。損害は?」

 

 

『諏訪さんが新型トリオン兵によりキューブ化、木虎さんも同様に、ボーダーに侵入した黒トリガーによって通信施設が壊滅的打撃を受けています。現在キューブ化から解除された諏訪隊と黒トリガーが本部内で交戦中』

 

 

「死者がでたのか?」

 

 

通信施設には、ボーダーの非戦闘員が居たはずだ。

 

 

『詳しくは分かりませんが、、、希望は少ないかと』

 

 

「なるほど、それでウチの隊の戦力は?」

 

 

『、、、 メノさんには非戦闘員の避難誘導に尽力していただいています。ゴルシさんも、戦闘に参加できるだけの余裕はないかと、、ナカヤマさんとオルが現在もトリオン兵、人型近界民と交戦中』

 

 

ジャーニーなら、今ボーダーの中で起こっていることは手に取るように分かるはずだ。

それは通信室で何が起こっていたことも。

 

 

「よし、黒トリガーまでの最短ルートを教えてくれ、私も戦うよ。久々にオペ頼むよ」

 

 

『了解しました』

 

 

「さぁ、暴れよう」

 

 

 

 

「安い、容易い、脆い。これがアフトクラトルの精鋭か?とんだ期待はずれだ」

 

 

「化け物が!」

 

 

閃光が瞬く。

 

そこに音はない、王を守る為に浮かび上がる守護者。

 

 

星の杖にも勝るとも劣らない光の剣。

 

 

神々しく神性すら感じさせる六の奇跡。

 

 

 

装具

『王剣』

 

 

 

剣が踊る時、ラービットでさえ完全防御を要求される。

 

 

その攻撃性は自らの師を連想させる。

 

 

それほどまでに目の前の敵と自分とでは明らかな差が存在していた。

 

 

そこには、人ではない化け物がいる。

あれを人と言うには存在が違う。いや、何か言葉に形容し難いがあれは確実に人の身に収まっていい者ではない。

 

まるで、、世界のバクを相手にしているような自分とはまるで造りの違う人の形をした何かだ。

 

ヒュースは蝶の盾を常に広く展開しながら剣の軌道を逸らし続ける。

 

 

「逃げるばかりか、、つまらぬ。芸の1つでも見せてみよ」

 

 

「くッ!だまれ!」

 

 

ヴィザ翁がイレギュラーを仕留めるまでの足止め。長い時間この化け物の足を停めれればそれでいい。

 

ただ、他の連中も邪魔をしてくる。

 

 

「オルフェ、敵の装甲に穴を開けろ」

 

「先輩援護は任せてください」

 

「ちょっと!このチームのエースはあたしでしょ!?」

 

 

まるで、歴戦の戦士達のように巧みに連携をしてくる。

蝶の盾を使えば多対一でも遅れは取らない。

 

この全ての状況をヒュース不利に仕立てているのは紛れもなくあの化け物だ。

 

斧を振り回す女の隙を埋めるように光の剣がヒュースの首元を掠める。

 

かえす刀でレールガンを放つがそれをオルフェーヴルの頭上で待機している3つの剣が対応する。

 

あの化け物の防御を担当すると同時に後方にいる金の雛鳥に向けたトリオン兵もその3本の剣によって切り刻まれる。

 

 

まるで、この状況を想定していたかのような陣形。

 

残りの剣は各3人の近くで浮遊し待機している。何かあれば各々が迎撃するのだろう。

攻防一体のトリガー。これが黒トリガー出ないことがヒュースは信じられないほどの性能。

 

 

いや、性能というより所持者の性能がよりこのトリガーの強さを引き立たせているのだろう。

 

 

まだ、あの化け物は本気を出していない。

防御に回している剣を攻めに使われれば削り負けするのはこちら。

 

 

「手段は選んでいられない」

 

 

 

 

「凄い、新型と近界民相手に」

 

 

『凄まじいな、あれがゴールドステイツのエース。オルフェーヴルの力か』

 

 

A級番外部隊

ゴールドステイツ所属

 

『金色の暴君』

オルフェーヴル

 

異例の速度でB級チームをなぎ払い。

A級1位まで上り詰めた部隊。

 

エース・オブ・エース。

 

 

 

『それにあのトリガーは見たことがある』

 

 

剣が舞いオルフェーヴルや後方の修達を守るために目まぐるしく入れ替わり立ち代りトリオン兵や近界民からの攻撃の全てをたたき落とす。

 

まるで、後ろにも目があるかのようにこの混戦とした戦場を的確に維持している。

 

他の三人も隙間を埋めるように連携をしているが、今の一つとしてかすり傷一つ無いのは本人達の高い技術力とオルフェーヴルの的確な援護によるものだ。

 

まさしく戦場を統べる王。

少しの綻びも許さぬ正確すぎる一手。

 

「あのお姉さん凄いっすね」

 

 

『林藤支部長いわく、玉狛同様、ゴールドステイツは本部未認証の近界民技術を使ったものだそうだ。オルフェーヴルのトリガーもその一つだろう。有吾の記録に同じトリガーが存在する。だが、それとは規格と規模が違いすぎる』

 

 

「あれと、同じトリガー?」

 

 

『少し古い記録だが、名を『宇宙を統べる剣(スターニア)』遊星国家ミクトランの機密トリガーだ。浮遊する剣を思考することで動かすトリガーだったはずだ。国一番の使い手で三本が限界だったと記録されている』

 

 

そう、そして同時に欠陥の多いトリガーだったという記録もある。思考して動かす剣は使用者の脳に多大な負荷を与えるといったものだったのだ。

 

通常のトリガー兵器と併用できる面から使い手と剣での手数の多さがメリットとして上げられていたが展開中常時浮遊させるだけでも多大なトリオンを消費することも相まってミクトランでも使い手はそう多くなかった。

 

 

「近界民の!?」

 

 

『間違いない。それに、、』

 

 

黄金に揺れる剣に、栗毛の頭から伸び今もピコピコと動くウマ耳とユラユラと揺れる尻尾。

 

 

『ゴールドステイツの面々は有吾の最も古い記録にある『ウマ娘』とも酷似する点が多々ある。それに小南同様、近界民の戦い方に近い』

 

 

 

 

 

 

 

ヒュースはその場にいたラービットを含めまだ待機させていたトリオン兵全てを市街地に向け進行させる。

 

 

「な!」

 

 

「王命である、桐絵。余の所有物を踏みにじる不埒の輩を疾く排斥せよ」

 

 

「でも、それじゃあ」

 

 

「桐絵、、、余は無駄な言い争いは好まぬ。行け」

 

 

「、、、分かった」

 

 

「これで、一人邪魔が減ったな」

 

 

小南の頭上に待機されていた剣がオルフェーヴルの元に戻る。

 

 

「鳥丸、、貴様は後ろの凡才と共にボーダーに走れ」

 

 

「了解」

 

 

これで、5本。

 

 

「させるか!」

 

 

「誰が動いて良いと言った」

 

 

「ーー!」

 

光の剣が舞い踊る。

 

磁力で強引に捻じ曲げなければ一太刀で切り伏せられるそれを前に防御に回らざる負えない。

先程よりも比べ物にならない密度の攻撃。

蝶の盾の防御を誘発させて隙間を捻りこんでくるような、盾の上から噛み砕かれる。

 

 

圧力が増す。

あの化け物の纏うオーラが色濃くヒュースの目にも空間が歪むと錯覚させる程の威圧。

 

 

「貴様らは余の所有物に手を出した。生きて帰れると思うな」

 

 

「おやおや、それは恐ろしいですな」

 

 

カッ!!

 

キィイイイン!!

 

 

ヒュース達の側面の建物ごと切り刻み光の軌跡と光の剣が激突する。

 

 

「ほほ、まさか二度も防がれるとは、、やはり玄界の戦士は面白い」

 

 

「貴様が、、姉上の、、いいだろう。まずは貴様からだ」

 

 

「ほほ、、私の躾の仕方は厳しいですぞ」

 

 

ここに、最強と最強のカードがぶつかる。

 

 

「ギアを上げるぞ。レイジ」

 

 

「了解」

 

 

「さて、手早く終わらせましょう」

 

 

「援護します」

 

 

カッ!

 

キィイイイイ!

 

 

光の軌跡と光の剣がぶつかり合い。その正体を露わにする。

 

(やはり姉上の推測通り、展開した円の上をブレードが走る仕掛けか)

 

 

ガチガチとブレードと剣が拮抗するがそう長くは持たない。

黒トリガーとノーマルトリガーの出力の違いがここで出る。

どんなに足掻いても拳銃が、戦車に叶わないように一瞬の拮抗の後、王剣が弾かれる。

 

 

「おや、懐かしいトリガーだ。昔その使い手と手合わせしたことがあります。心躍る戦いだった」

 

 

ヴィザの脳裏に浮かぶ古き戦士。

 

中に浮かぶ剣が3つ。

 

まだ、国宝を授かるはるか昔。

 

アフトクラトルの精鋭をものともせずその身一つでヴィザ率いる部隊を撤退させた戦士の姿が目の前の少女と重なる。

 

その練度も速度もヴィザが記憶する過去の戦士よりも遥かに高次元で使いこなしている。

 

しかも倍の6本。今も尚、星の杖の不可視の斬撃を顔色ひとつ変えずに防ぎ切り。あまつさえ片割れの防御までこなしている。

 

このような巡り合わせでなければもっと長く。彼女と手合わせしたいところだ。

 

 

「ですが、こちらも任務がありますので」

 

 

街が一区画崩れ去る。崩れ落ちる瓦礫の隙間を縫うようにヴィザを狙う弾トリガーをヒュースの蝶の盾が防御する。

 

 

「余が落とす。撃ち続けよ」

 

 

 

 

 

『オルフェさん。ちょっと頼みがあるんだけど。席ご一緒しても?』

 

 

食堂に設置された玉座とも呼べる長方形のテーブルで食事を取っていたオルフェーヴルに声をかける下手人。

 

食堂にいる誰もが暗黙の了解で声すらかけぬ彼女達に恐れることなく声をかける人間はボーダーでも多くない。

 

そんな彼女達に話しかけるのは未来を見る男、迅悠一だ。

 

 

『見て分からぬか、、食事中である。失せよ』

 

 

『そっか、、せっかく用意したのに無駄骨だったかな?』

 

そう言ってオルフェーヴルの前差し出されたそれは、姉上でも手に入れにくい高級お茶漬けだ。

 

 

『じゃあ、仕方ないかな』

 

 

『まて、、、申してみよ』

 

 

そう言って迅の手元からお茶漬けを奪い取り、自分の食事を再開する。

 

 

『今度の大規模侵攻相当やばいレベルの奴がくる。多分オルフェさんでも勝てないかも』

 

 

『、、、、』

 

 

不敬罪、そう言って切り刻まれてもおかしくない。

迅の見た未来でも斬られる確率は7割程だった。

 

 

『余は、、今機嫌が良い、此度の不敬は見逃そう。疾く失せよ』

 

 

『頼んだよオルフェさん。みんなを守ってやってくれ』

 

 

そう言って立ち去った迅の背中をオルフェーヴルは見えなくなるまで追い続けた。

 

 

『道化が、、貴様一人で抱え込むものがあるか、、、』

 

 

 

 

 

ふと奴の言葉が思い浮かぶ。

 

今、目の前にいるこやつが私でも勝てない相手なのだろう。

 

王である自分自身にも劣らない胆力、対応力、応用力。

 

数多の非凡の者たちが打ち立てた偉業や壁をその身を持って『乗り越えて』きた。そんな者の目だ。

 

 

「余が、、王である。この私こそがこの星に君臨すべき、真の覇者。故に、、告げる。余は貴様を超える」

 

 

また、一段とギアが上がる。

 

トリオンの温存など二の次だ。今勝たねばならぬこの先など今こやつを越えねば訪れぬ。

 

「そして刻め、我が威光こそが貴様が超えた全ての英傑を過去にし余こそが天上天下遍くを統べる王であると」

 

 

「では、、参りましょう」

 

 

カッ!

 

キィイイイイン!

 

 

お互いに引かぬ真正面からの殴り合い。

 

 

不可視の軌跡が、光の剣が空中に火花を散らしながら市街地を瓦礫の山に変えながら撃ち落とし、逸らし、どちらかの牙がその首を捉えるまで振るわれる凶器。

 

一撃、一撃が互いに必殺。

 

その中で合いの手のように差し込まれるレイジとヒュースの援護。

 

ヴィザが星の杖の射程を広げると対照的にオルフェーヴルは王剣を手元に戻し突撃する。

 

空から振り下ろされる不可視の剣を計算し尽くされた角度で王剣を当てることでその軌道を逸らしながら突き進む。

 

ヴィザの前に入るようにヒュースのレールガンがオルフェーヴルを捉えるが、それを抑えるように同じくオルフェーヴルと突撃しているレイジがハウンドでヒュースを牽制する。

 

 

「邪魔だ!!」

 

 

「それが仕事だ」

 

 

(星の杖の射程を理解した上で敢えて離れることで私から守りを遠ざけた)

 

(今奴の懐は緩い。雨ならば防げる)

 

 

「よく考えられている。ですが、些か直線すぎる」

 

 

オルフェーヴルの目に映る小さな欠片。

 

黒いひし形のそれが淡く磁力を帯びる。

 

何度かオルフェーヴルが弾いたレールガンの弾丸が空中のひし形に引っ張られる形で周囲の瓦礫ごとオルフェーヴルを推し潰そうと迫る。

 

 

「くっ!」

 

 

「おや、余所見とは頂けませんな」

 

王剣で振り払おうと思考した直後、不可視の剣がオルフェーヴルを襲う。

不可視の剣の迎撃に六本全ての剣を使う。

 

迫る瓦礫、避けきれずにオルフェーヴルの体勢を崩す。

 

 

「ちッ!!」

 

 

無防備、この一瞬刹那の瞬間。化け物に与えた致命的な隙。

 

どんな、歴戦の戦士であれ小さな歪で落ちる。

 

 

「ここだ」

 

ヒュースのレールガンがオルフェーヴルの眉間を捉える。

必中の距離。飛び散る電磁波がオルフェーヴルの引き伸ばされた感覚の中で青く弾ける。

 

 

「スラスターオン」

 

 

「グッ!!」

 

 

放たれたレールガンがオルフェーヴルの眉間を捉えるよりも早くレイジの投げたレイガストが強引にオルフェーヴルをヴィザの前に押し出す。

衝撃と少しの浮遊感と共に着地の一歩に繋げる。

 

後ろは見ない、緊急脱出の音が聞こえるが今この一時のチャンスを掴み取る。

星の杖を今更戻したとて間に合わない。それは王剣も同じ。

 

ヴィザの仕込み刀が煌めく。片足を姉上に取られてもなおその剣の冴え留まることを知らず。

 

反応すら許さない神速の剣はオルフェーヴルの脳天に振り下ろされ。

 

 

鎖印(チェイン)

 

 

後方から飛んできた第三者の鎖によって直前で停止する。

 

 

「これは、」

 

 

刀がオルフェーヴルの頭上で止まるのと振りぬかれるオルフェーヴルの手刀がヴィザを捉える。

 

 

「ヴィザ翁!」

 

 

「おっとおたくの相手はこっちだ」

 

 

「くっ!邪魔だ!」

 

 

 

間に合わない。いや、間に合わせない。

 

決める最速で、油断はしない。

 

ヴィザの少しの驚愕と笑み、それが見えた。

 

 

「もう、少し。あと数年あれば負けていたのは私だったかもしれませんね」

 

 

 

カッ!

 

 

 

振り抜く瞬間のオルフェーヴルの右腕と後方でヴィザを止めていた空閑の体が断ち切られる。

 

経験の差か、どれ程策をこうじようとそれを技術でもって覆す。

備えていた、ブレードを一本だけ自身の下、地面に隠し両者を両断した。

 

この状況になることも自分の力を過信せず信じず。

こうなることを予測していなければ対応など出来ない。

 

オルフェーヴルは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

彼女の中で今どんな気持ちが渦巻いたのか推し量ることは出来ない。

彼女の人生で負けることの方が少なかった、勝ち続けてきた。自分自身が王であり世界を総べる存在であると信じて疑わなかった。

少ない手数で全身全霊で挑んだ。

 

 

それでも、かの傑物は1枚上をいっていた。

 

 

「あぁ、そうだな。私の負けだ。だが私達の勝ちだ」

 

 

「『(ブースト)』4重」

 

 

「ーーー!」

 

 

断ち切ったはずだった。星の杖は確実に後方にいた少年を切断した。その手応えもあった。

 

だが、まだ間に合う。間に合ってしまう。振り返ったヴィザは刀を切り返し上空から来る少年を迎え撃つ。

 

 

「ーー!!トリオン体ではない?」

 

 

一時の驚愕、だがそれだけで歴戦の戦士は止まらない。

 

 

振り上げようと刀に力を入れる。

 

 

「ぬ、これは!」

 

 

動かない。

 

全身が何か地面に縫い付けられたように動かすことが出来ない。

 

 

『運悪く、、絡まってしまうかもしれないのに』

 

 

まさか、あの少女はこうなることも予測していたのだろうか。だとすれば、それは、ほぼ未来視に他ならない。

 

自分と仲間も犠牲にして今を掴み取る。

 

策略という領域を逸脱した狂気に近い。

振りほどけない、それほどまでに強固に絡まりあった糸。

 

 

「ほっほ、お見事」

 

 

 

遊真の拳がヴィザを貫いた。

 

最強対最強の戦いは、こうして幕を閉じる。

 




また、次のお休みの日まで……
楽しみながら書きますので暖かい目で見てください。

では、失礼します。

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