東方不敗の孫は守りたい   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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プロローグ

流派!東方不敗は!

 

王者の風よ!

 

全新系列!

 

天破侠乱!!

 

見よ、東方は、赤く燃えている!!

 

地球の命運を賭け、弟子との殺試合を演じ、成長した弟子に敗れた一人の男は、夕焼けを眺め、弟子の腕の中で静かに息を引き取った。

 

 

(ワシは今、どうなっておる)

 

 暗闇の中を一人の男が漂っていた。意識を取り戻した男は、自身の体を見つめ、自分が死んだことを思い出す。地球の運命を賭けた愛弟子との最終決戦と自身の敗北により、弟子に未来を託した事を。

 

(そうか、ワシはドモンに負けたか。くくく、馬鹿弟子が立派になったのぉ)

 

その男、マスター・アジアは、弟子との真剣勝負の末を思い出し笑う。その眼は後悔を微塵も感じておらず、唯々弟子の成長に感動していた。

 感傷に浸っていると、彼の目の前に光が見える。光は、彼を導くように強く輝き始める。

 

「何やら光が見えるな。ワシの体が行けと疼いておる。これも何かの縁だ。歩いてみるか」

 

マスター・アジアは、黒須秀次として転生した。秀次の出生と同時期、中国で光る赤ん坊を皮切りに世界各地で個性と呼ばれる異能力が発現する。冷気を出す個性、腕を伸ばす個性、目からビームを出す個性など様々な異能力が発現した。

 

 黒須秀次には、個性が発現しなかった。秀次が若かりし頃は、個性を持つ者が五人に一人の割合しか満たなかったのだ。

 

 秀次が十六歳の時、前世で創始した拳法流派東方不敗を今世でも編み出す。そして、流派東方不敗を駆使し、世界闘技大会で連続優勝を果たした功績により、極東の覇者マスター・アジアとして名を轟かせる。

 

 秀次は、激動の第一期超常社会を生き抜いた。個性という異能力を授かった人間たちが、個性のない人間たちを襲い始めたことで、社会秩序が乱れるほどに治安が悪化した。

 それを目の当たりにした彼は、個性に溺れ、悪事を働く者たちへの制裁を鍛錬と称して、夜な夜な自警行為を行っていた。

 

 十数年後、どうにか安定を取り戻した社会は、新たな法律を制定し、自警団活動を職業に定めた。そして、ヒーロー法に則り、英雄とは違う意味を持つヒーローなる者たちが巡回・警備・治安維持活動を行うようになった。世界が超人社会へと変わる。

 

 秀次は、武術の鍛錬を欠かさず続けていく中、伴侶と子宝に恵まれ、前世とはまた違う幸せな生活を送っていた。しかし、世界闘技大会の賞金や支援者からの金では、生活ができないと感じた彼は、賞金を資金源に身辺警備業務を中心とする警備会社を設立する。

 彼の活動支援者経由で開業情報が共有されると、有力者からの護衛依頼が舞い込んできた。彼は、裏との関係性を持つ者や悪どい商売をしている者からの依頼を断り、返り討ちにして警察へ突き出している。 

 

 そんな彼にも孫が生まれた。孫の名はシュウマ。前世において生涯の殆どを武に注ぎ、武と共に運命を果たした秀次にとって、初孫であるシュウマは目に入れても痛くない存在として、この世に生を受けた。

 

 シュウマが四歳になった頃、シュウマの両親はシュウマを病院へ連れて行き、シュウマの個性検査を受けた。個性社会において、基本的に四歳を迎えた日を目安に個性が発現する習わしだ。しかし、ショウマには個性が宿らなかった。俗に言う無個性である。

 

  個性検査から帰宅してきたシュウマの顔は暗かった。その顔を見て、とある可能性を抱いた秀次は、密かにシュウマの両親に話を聞いた。案の定、無個性と診断を受けた。

 

 「そうか⋯無個性であったか。個性社会の世の中だ。自衛の術を持たせねばならぬ」

 

 秀次は、孫の気持ちを考慮して、個性云々の話題は話さなかった。嫌悪することなく、大事に愛を持って育てた。

 件の人物であるシュウマは、周囲の人間と環境に恵まれた。無個性である自分を毛嫌いせず、無口ながらも傍にいてくれる幼馴染の少女。

 

 「ん、遊ぼ」

 

 「ありがとう、唯ちゃん」

 

 幼馴染以外の友達がいないシュウマを想い、シュウマの父は丸い人工知能ロボット『ハロ』を作った。 

 

 『シュウマ!オカエリ!オカエリ!カエッタラ、テヲアラウ!』

 

 「分かったよハロ!手を洗ったら、一緒にテレビを見よう!」

 

 「爺ちゃん⋯爺ちゃんの武術を教えて」

 

 シュウマの父親は、個性があり、少し相性が悪かった。しかし、無個性のシュウマには、無限の可能性があった。

 

 「ぼく、爺ちゃんみたいに強くなりたい。個性は無いけど、この手で誰かを守れる人になりたい!」

 

シュウマの目は、絶望に染まっていなかった。それどころか、幼いながらも逆境の人生を這い上がろうとする強い意志が宿っていた。シュウマの覚悟を感じ取った秀次は、自身も覚悟を決めて、シュウマに問いかけた。

 

 「シュウマよ。ワシの流派・東方不敗を修得するのは辛く厳しい道となる。それでも、ワシの元で強くなるか?ワシは、お前の意思を尊重する。逃げることは恥ずかしい事ではない。お前はまだ幼い。誰かを守りたいと思うお前の優しさがワシは好きだ」

 

 「この世の中、正義無き力が無力であるのと同時に力無き正義もまた無力なのだ」

 

 「力とは使い方次第で悪にも正義にも変わる。シュウマよ。優しさを忘れるでないぞ」

 

 

「よかろう。先ずは基礎から身に付けるぞ!沢山食べて、沢山運動して、沢山寝る!それが今日からシュウマが行う鍛錬だ!」

 

シュウマが九歳の頃、秀次は流派・東方不敗の本格的な修行に移りだした。

 

「シュウマよ!今から見稽古を行う!ワシの技を見て学び、模倣するのだ!」

 

 紫色の道着を身に纏った秀次は、巨岩の前に立ち、右手を握り締め、気力を込める。

紫色の気力を纏った右手を岩に向けて、掌打を放つ。

 

 「光輝唸掌!」

 

 掌打が岩肌に当たり、掌底の威力に亀裂が生じ、岩面が罅割れていく。巨大な音を立てて崩れていく岩を目にしたシュウマは、祖父が創始した個性以上の荒唐無稽な武術に興奮を覚える。

 

 

 シュウマが十一歳を迎えた年、秀次は知り合い達にシュウマの鍛錬を頼む。

 その知り合いとは、総合商社としての表向きの顔を持ち、個性黎明期以前から名を轟かせるBF団に所属し、十傑集と呼ばれる最高幹部の二人。衝撃のアルベルトと素晴らしきヒィッツカラルドだ。

 衝撃のアルベルトは、『衝撃波』と呼ばれる強個性を所持しており、紳士的な外見と葉巻を吸う男らしさが特徴的な男だ。彼には、シュウマと同年代の娘がいる。

 素晴らしきヒィッツカラルドも『真空波』と呼ばれる個性を所持しており、最高幹部に相応しい能力を持っている。指鳴らしで真空波と呼ばれる鎌鼬風を生み出す。

 

 シュウマは、衝撃のアルベルトから気功による衝撃波の放出を教わり、衝撃波を修得しようとしていた。また、素晴らしきヒィッツカラルドから指鳴らしによる真空波を教わり、修行に励んでいた。そして、流派・東方不敗の鍛錬のみならず衝撃波や真空波を修得する中、ゲームなどにある気功を用いた技を見様見真似で学び、自分の技に取り込むなど自己研鑽を欠かさなかった。

 

 時は流れ、十四歳になったシュウマは、山籠りの修行から下山途中だった。彼の目の前には、巨大な羆がシュウマに向けて、殺意の籠った眼で唸っていた。

 

 シュウマが対峙している大熊は、何人もの人間を襲い、駆除要請が出された羆だ。

 大熊は、唸り声を上げ、巨大な掌爪をシュウマに向けて振りかざす。絶体絶命の危機的状況にもかかわらず、シュウマは飄々とした態度で片手を構えている。

 

「遅い」

 

 咆哮を上げる大熊に向けて、指を鳴らす。その瞬間、指先から真空波が生じ、羆の体が紙を切ったような音を立てて真っ二つに切り裂かれる。真っ二つに裂かれた熊は、豪音を立てて崩れ落ちる。

 

「さて、行くか」

 

 三日間の短期山籠りを終え、下山するシュウマ。来年には、中学三年生となり、高校受験が迫っている。

 

 流派・東方不敗の後継者、黒須シュウマの物語が始まる。

 

 

 

 

サブヒロイン

  • ミルコ
  • 拳藤一佳
  • 柳レイ子
  • 取蔭切奈
  • 塩崎茨
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