興味本位で親友達のラブコメを全力で演出する   作:二尻尾兎

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イナゴのシャインを進めてて投稿が遅れました。剣城が鬼強いです

私事ではありますが、拙作の評価バーに色をいただけました
本当にありがとうございます
感想・評価は励みになりますので是非よろしくお願いします


僕の、最高の友達 若葉side②

 晴から指摘された途端、僕の目の前から光が消えていく。

 まずい、不味い、不味い、マズイ!?

 思うように声を出せない。何か言わないと、焦燥感に身を灼かれるんじゃないか、って身体が勝手に恐怖して動かせない。

 

「初めてソレを感じたのは……あーほら。アレだよ、アレ……あれ? ド忘れした」

「そこはせめてビシッと決めようよ!?」

 

 ツッコミは条件反射で出来た。長年染み付いた僕自身の性分を褒めるべきか自省するべきなのかは置いておこう。

 自己完結している内に「だってよ」と晴は頭を掻きながら続けた。

 

「しょうがねぇだろ言葉に言い表すのが難しいんだから。でもまぁパッとまとめるなら、オマエが偶にオレを通してオレじゃない誰かさんを見てるってことはオマエの目をよく観察すれば気付くってことだ。年々それが多くなってんだし、嫌でも実感させられる身にもなれよな」

「……だとしても。それは思い違いだったって可能性は考慮しないのかい?」

 

 ふつふつと、何かが溜まる音が僕には聞こえた。それはきっと、良くないものだと本能で感じ取れた。

 抑えよう。努めて冷静に。いつも通りに……、

 

「しないね。もうそこまで短くもない付き合いになったとオレは勝手に思ってるからな。それくらいは友達として……()()の観察眼を保証しろってこった」

 

 ──シンユウ?

 

 自身の目を指で指しながら、自信に満ちた表情で僕を問い質す晴。

 僕はこの時、冷静では無かったんだと思う。隠したかった秘密を、当人に暴かれそうになって気が気じゃなかった。晴の口から到底許容できない単語をその顔、声、口調で僕の耳朶に届いたんだ。

 当然の帰結と言うべきで、抑えることは決してできなかっただったんだ。

 

 だから僕は考えるよりも先に言葉が口走っていた。

 

「親、友……しんゆう、なら……どうして僕から離れたの!? 僕には君しかッ! ██君しかいなかったのに!?」

 

 熱が、痛みが、叫びが、腹の奥底から沸き上がり、目の前の██君()に飛ばす。

 これはきっと██君への子供っぽい文句でもあり、懺悔でもあったかもしれない。

 

「二人一緒ならどんな事でも乗り越えられた! そうやって僕は君に期待して、これからの君との生活でゆっくり返そうとしたのに! 君に恩を返せないまま死んでしまって、僕はどうしろって言うの! 注がれた優しさは!? 目一杯の献身は!? あげれないんだよ、僕は、君にしか!」

 

 こんな事を言われる晴は何も悪くない。悪いのは全部、僕だ。

 溢れ出した剥き出しの赫怒の火は留まること知らずにより大きくなっている。やめてほしい。やめなくていい。二つの相反する感情の薪を燃料に、僕のドス黒い炎は灯され続けた。

 

「僕だって、君が死んでから君以外にも優しく在ろうとしたさ! でも、無理だった! 当たり前な日常(イジメ)という砦は想像以上に攻略不可なんだよ!?」

 

 僕が登校拒否する直前の思い出が甦る。

 ██君が死んだ後、諦めずに頑張ろうと下駄箱を開けたら██君が死んだことを煽るような内容の手紙が投函されていた。『アイツが死んだのはお前が仲良くしたから』『ばつとして死んじゃったんだよ』『関わるやつみんな殺される』『殺人鬼じ────これ以上は思い出したくない。

 

 子供は無邪気に人を傷つける。理由なんて無い。人の痛みを理解するなんて夢のまた夢。そんな闇に触れてしまった憐れな被害者()、ただそれだけの思い出。

 

「折れたよ、呆気なく! 退廃的な生活に安らぎを得られたことに激しく納得したさ! そんな生活を送って、ココ(愛恋)の推薦が来て! 本当の本当に最後だと決めて、入学した矢先に! 君が……いたんだ」

 

 神様が僕に見せた幻かと、話せば話すほど晴は██君なんじゃないかと勘繰ってしまってた。

 でも、どんなに同一人物だと納得しようにも心が違うと声を荒げていた。名前も違う要素の一つだけど、何よりも心が違うと絶叫していた。

 

「若葉」

 

 名前を呼ばれる。僕の暴力的な声のボリュームとは裏腹に、至って凪いだ、そして平坦な声だった。

 失望、したんだろうな。こんな僕を、むしろ中等部卒業前に発覚して良かったんじゃないか。この学園は自主退学・自主停学可能なのだから。

 

「オマエさ──」

 

 この学園とはさようならだけど、後悔はしてない。元々短かかった学園生活だったのに、晴のおかげですごく快適だった。

 

「泣いてるくらいなら……つらいって、しっかり言えよ」

「──ぁえ? なん、で?」

 

 おかしい。どうしてだろう。拭っても拭っても涙が止まらない。

 

「オマエが言いたいのはアレだろ? 学園で沢山友達欲しいんだろ」

「──」

「若葉の過去とか、死んじまったソイツとオレがソックリで、常に情緒不安定でしたとか、不幸自慢大会始まったの? 興味ねぇよ。今、オレの前でクソ大泣きしてる若葉以外の昔の若葉に詳しくなっても誰も幸せにならねえだろ。誰得? って言いたいね」

「──」

「オレはしんどい過去を語るのは嫌いだけどよ。笑い合ってハッピーだった過去を駄弁るのは好きだぜ」

「──」

「あーつまりだな。要はこうだ。オレは笑って話せる話が出来る。相手はその話を聞いて話のオチを想像して両者ハッピー……って感じ?」

「──ぁ」

 

『あーそうかもな。要はそれだ。オレが助けたいから助ける。相手は助かってオレも優しさに磨きがかかって両者ハッピー』

 

 同じだ。でも、決定的に違うことがある。

 

「そ、れは」

「ん?」

「それは……誰の為にするの?」

 

 ██君は自分の為に、と言っていた。

 だけど、この方法だと────、

 

「そんなもんに誰の為とか、君が為とか、君が代もあるか。()()()()()()()()()()()()()()。そこに世のため人のためなんか条件当てはまんねぇだろ」

 

 僕の前にいた██君が崩れていく。そこに戸惑いも、虚しさもない。最後に██君が笑った気がした。いや、笑ったのは██君じゃない。晴だった。

 晴は、いつもそこに居たんだ。いつも通りの自信満々な、けれどどこか抜けてるのがデフォルトな、そんな顔。僕は、初めてその顔をしっかり見たような気がした。

 

「理解したか?」

「でも、僕はこれから何を目標にして生きていけば……」

「一個解決したかと思えば今度は何だよ……? 生きるための目標ねぇ……あ、ならよ、オマエ。最初の目標として、学園のトップ目指せば?」

「え? む、無理だよ、急にそんな!? 僕なんかじゃ……」

「うるせぇ! 行けぇ!」

「命令形!?」

 

 この時に晴から言われた目標。これも何かの縁だったのかな。今では生徒会臨時役員として香澄先輩の手伝いをしている状態だからね。

 昔はこう言っていたけど……本気で目指してみるの、今の僕なら出来ちゃうかも。

 僕はこの目標も視野に入れておくとするけど、今でも変わらずに一番なのはこの目標だ。

 

「んー……お、ならこうすれば良いんじゃね? オマエさっき優しさがどうのだの言ってたろ? その優しさオレにくれよ。でもって、オレ一人だと優しさの交通事故が起きっから、周りの人にも渡してやれよ」

「周りの人……?」

「まずはクラスメイトだろ? その次に学年全体、そんで学園全体って段階を踏んでこの学園で一番頼られる存在になって、胸張ってオレに似たやつの前で告げてやれ、『オマエより優しくなってやったぞ』ってな!」

「──そっか」

 

 できない、とは言えなかった。晴の目は本気で僕がやってのけると信じきっていた。

 不思議なことにマイナスな感情は浮かんでこなかった。その逆で、勇気が奥底から漲ってくる感じがした。

 

 学園で最優を目指す。言うは易し、行うは難し。そんな言葉さえ、晴にとっては鼻で笑えるくらい小さなことなんだろう。

 

「にしても驚いたわ。若葉があんな大声出して、こう……心からの本音みたいで。それを励ますような、柄にも無いことしちゃったわ」

「様になってたさ。君の言葉には妙な説得力がある。いっそ、学園でお悩み相談でもやってみれば成功するんじゃないかな」

「どしたん? 話聞こか?」

「それはやめて!?」

 

 この出来事を機に、僕も少し前向きになれたと思ってる。

 おちゃらけたことがかなり多い彼だけど、僕の後ろ向きな性格を改善してくれただけに留まらず、僕の生きる活路を見出してくれた。

 本当に、頭が上がらない。

 僕を救ってくれた晴に必要とされたい。その一心で今日までやってこれていた。

 

 ────なのに。

 

「オレの助けは要らないし頼りもしないんだから。時間は有限なんだから若葉はそれをオレじゃなくてパイセンに使ってやれよ」

 

 なんで?

 

 どうして僕を遠ざけようとするの? もう僕は必要じゃないの? そんなはずない。晴は何か大きな誤解をしているよ。香澄先輩の手伝いをするのは嫌な訳じゃない。けど、君を置いて他の仕事を優先なんか絶対にしないよ? だからそんな冗談なんて言わないでさ。冗談……冗談だよね? どうしてそんな目をするんだい? 君の真剣な眼差しを向けられるのは二月九日の午後三時二十四分のショッピングモールのフードコートエリアでアイスクリームをチョコかストロベリーどちらにしようか悩んでいた時に質問を僕にしたあの日以来だけど今の君の目にはチョコとストロベリーじゃなくて僕と香澄先輩しか映ってないよね? もしかして僕か香澄先輩の二択を悩んでて、香澄先輩の方を選んだってこと? 僕より香澄先輩の方を優先したってこと?

 

 どうして?

 

「秋津晴はあのように言っていたが……」

「──大丈夫ですよ、香澄先輩。あのカッコつけたがり屋の晴のことですから。晴はとっても優しいんです。きっと香澄先輩の手伝いを、自分では出来ない代わりに僕に行かせたんだと思います。」

 

 だから僕が教室を出ようとした時に安心したような表情を見せていたんだ!

 

 点と点が繋がった感覚だ。誤解をしていたのは僕の方だったのか。間違えていたとはいえ、晴に良くない感情を抱いてしまった。後で謝罪をしないとね。

 

「そうか……いやはや、若葉は強いな。それでこそ、私が目に掛けた臨時役員だ。やはり今からでも正式に生徒会へどうだろうか」

「お気持ちはありがたいのですが……僕にはまだまだ荷が重いです。春と約束したんです。学園で最優を目指す約束を。ですので、僕は香澄先輩を超えて歴代最優の生徒会長に就任するまでは正式な役員になる訳にはいかないんです」

 

 これは僕自身が決めたことだった。生徒会長は半端な覚悟じゃなれっこない。だから僕は直接生徒会長の香澄先輩へ宣言した。

 

「私を超えるときたか……であるならばいいだろう。超えてみせろ、私を! 一つ言っておくが、そう易々と乗り越えられる程、壁は小さくないぞ」

「分かっています。たとえその壁がどんなに天を衝く高さに位置していても、僕は踏破してみせます!」

「ふっ……それでこそ私の惚れた男だ」

「え? 香澄先輩、今、何か言いました?」

「……何でもない、ただの独り言さ。忘れてくれ」

「忘れてくれって言われましても……どうしてそんなに顔が真っ赤なんですか?」

 

 結局生徒会室に着くまで、香澄先輩は黙ったままだった。一体全体、なんて呟いたんだろう。




鷺沼若葉のパートはひとまず終了になりました!

いやー青春してますね()
若葉の他にあと二人ほど控えているってホント?
書き上げ次第、随時投稿しますので不定期になりますが今後ともよろしくお願いします


♦︎簡単な人物紹介のコーナー♦︎

鷺沼若葉
臨時の生徒会役員として生徒のお悩みを解決したり手助けをしている。晴に心を救われたらしいので、今度は自分が助けたいと考えている

秋津晴
結構お悩み相談に向いているとのこと。楽しく笑い合える時間を大切にしたいエンジョイ勢

久遠香澄
実は若葉の事が好きだった生徒会長(ナ、ナンダッテー!?)で、自分と対等で在ろうと努力をする姿に胸を打たれて以降、密かに想っている

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