新しい創造へ   作:なつきさん

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カグヤに脳を焼かれた白竜スバル×ヤンデレ黒竜カグヤ。黒竜の乗り手死亡ルートをベースにした、歪んだ愛の物語です。需要はここにあります。白馬に乗った王子様ならぬ黒竜に乗った王女様に知らないうちに助けられていただなんて。しかもそれを目の前で喪ってしまったら。
※本作には『Fate/EXTRA CCC』(©TYPE-MOON/Marvelous AQL)に登場するキャスター(CCCキャスター)の台詞を引用・改変した部分があります。


黒竜は祈られず

恋は現実の前に折れ、

 

世界が終わる音を、確かに聞いた。

ターゲスアンブルフ――神をも殺すと名乗る連中の一撃が、まずカグヤを穿った。

血に沈む彼女を見た刹那、胸が凍りついた。

 

やがて六柱の神々も同じ刃に斃れた。

人も神も、等しく血を流し、声を失い、ただ崩れ落ちていく。

オレはカグヤを抱きながら白竜にしがみつき、ただ逃げることしかできなかった。

だが手の中にはまだ残っていた。

黒竜とカグヤを繋ぐ、供犠の宣誓札。

運命をねじ曲げ、彼女を救えるかもしれない最後の証だった。

 

供犠の宣誓札が光った時、思った。札を使えば今際にいる彼女を救えるのではないかと。

白竜はオレを制止した。二重の契約は規約違反であり理を乱しかねないと。それでも構わなかった。だけど――他ならぬカグヤが止めた。

「私の命より、アズマの国を救ってください。どうか、お願いします……。」

「!!」

息も絶え絶えながら紡がれた言葉。その言葉を聞いたオレは動揺してしまった。

その瞬間、供犠の宣誓札は手から滑り落ち、彼女の命の灯は消えた。

「ああ……。」

どうして、カグヤは死ななければならなかったのか。

どうして、オレは供犠の宣誓札を手放してしまったのか。

「まだ、果たしていない約束があったのに、」

「流鏑馬で勝負しようって、」

「フジミ山の頂上にふたりで登ろうって、」

「正月にはオババの家に行って、餅つきの手伝いをするって、」

「次の祭りではふたりで、一緒に、舞を舞おうって……。」

どうして、果たせない約束ばかり思い出してしまうのか。

どうして、オレが先に黒竜と先に契約しなかったのか。

 

    ◇

 

現実は愛の前に歪み、

 

「お待たせしました。行きましょうか、黒竜。」

天の神と鬼の神の天鬼開闢法により別たれたとはいえ、私はアズマ最高神であるアズマトノミホシハバキの眷属である黒竜――アマカケルヌバタマノミコトと一度は魂を分かち合ったのです。ならば還る先はただひとつ。

 

黒竜に跨がったとき、私は悟っていました。

この身に許されるのは、贖罪と沈黙だけだと。

 

それでも黒竜は、条件付きの命を与えました。

やがて来る死を知りながら、なお舞台に戻れというように。

ああ、どれほどの障りであったことか。

――けれど、そのおかげで、私は言葉を遺せるのです。

 

愛は求める心だというなら、

スバル、貴方はきっと私を求め続けるでしょう。

恋は夢見る心だというなら、

貴方は今も昔も、私に夢を見てくれる。

 

ねぇ、スバル。

貴方が誰に恋をしても、私の死という現実の前に折れ、

貴方の現実は、私への証明しようのない愛の前に歪み、

貴方が誰を愛しても、私への恋の前には無力になるでしょう?

 

――だから、これでよいのです。

「……私が誰よりも貴方の一番になりましたね。」

そう思えることが、せめてもの救い。

この時ばかりは、白竜にも、ゼークスのお姫さまにも、感謝しなければなりませんね。

 

    ◇

 

愛は、恋の前では無力になる。

 

髪飾りをカグヤの骸から外した瞬間、胸の奥に言葉にならない痛みが走った。

故郷を旅立つ前日、村中を、山までも探して、一番きれいな白梅を見つけて拵えたもの。

……当日君に勇気を振り絞って渡せたもの。

拙い出来だったのに、彼女は微笑んで受け取り、そして最期まで身につけていた。

 

……オレは守れなかった。

使命を優先しろという彼女の言葉に従ったのか、

それとも心が追いつけなかったのか。

答えはもう、わからない。

 

ただ一つだけ、確かなことがある。

オレはこの髪飾りを外さずに、生きていくということだ。

それが後悔か、誓いかすらわからないままに。

 

そしてオレは今、故郷で墓前に祈っている。

 

(カグヤ)と、

子供(君のような犠牲を繰り返させない未来)と、

アズマのみんな(君が守ってほしいと願ったもの)が、

これからも安心して暮らせるように。

 

周囲から見れば、それは幼馴染を弔う祈りにしか映らないだろう。

だがオレの言葉の端々には、どうしても彼女の影が滲んでしまう。

「国を守る」と言えば彼女の声がよみがえり、

「未来を守る」と言えば彼女が望んだ景色がちらつく。

……何を口にしても、オレは彼女を夢見てしまう。

 

彼女はきっと、自分を犠牲にしてでもオレに生きてほしかったのだろう。

でもオレは、きっと昔から彼女に恋してしまっていた。

自覚する前に、もう愛に変わっていた。

だけど君はもういない。どうしようもない現実だった。

 

    ◇

 

██████。

……願いはすれ違った。

それでも、恋は愛となり、愛は現実となり、確かに成立してしまったのだ。

 

そして、果てなき旅路の終着点にある、終わりの森の奥に待つ問いに対するスバルの答えは――

恋も、愛も、現実すらも超えて。

ただ、すべてを映す眼差しへと還るのだろう。

 




※ゲームでは黒竜の乗り手イベント後に故郷に行けるようになります。帰郷イベント前に行ける仕様です。フジミの山らしきものがよく見えます。みんなも観に行こう!
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