【東方×BLEACH】幻想郷死神戦記   作:Tekunos02

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前回は虚に追われた主人公が、八雲紫に“救いと囚われ”を同時に与えられる導入でした。
今回は舞台を移し、博麗神社で博麗霊夢と出会います。
彼女もまた隊長格としての顔を持ち、主人公に新たな現実を突き付けます。
少しずつ「幻想郷×BLEACH」の世界観が見えてきますので、お楽しみください。


第2話「博麗神社にて ― 十三の羽織 ―」

 

 まぶたを開けた瞬間、眩しい光が視界を焼いた。

 思わず顔を背けると、木の天井が目に映る。見慣れない天井だった。

 

 鼻腔をくすぐるのは畳の乾いた香り。

 耳を澄ませば、鳥の鳴き声や木々のざわめきが微かに届く。外の風が障子を揺らし、柔らかな光が部屋の中に溶け込んでいた。

 

 ――ここは、どこだ。

 

 昨夜の記憶が断片的に蘇る。虚の咆哮。爪が迫る瞬間。裂ける空間。そして、紫の瞳を持つ女。

 

 八雲紫。

 漆黒の死覇装に身を包み、背には「一」の文字を刻んだ羽織。

 その妖艶な微笑と、耳に残る囁きが、まだ消えない。

 

「……あなたは、最初から私のもの」

 

 その言葉を思い出しただけで、背筋が粟立った。

 

「……起きた?」

 

 不意に声がした。

 跳ねるように上体を起こすと、障子の向こうから差し込む光の中に、人影が立っていた。

 

 漆黒の死覇装。その上から羽織られた白い羽織。

 背に刻まれているのは「十三」の文字。

 

 博麗霊夢。

 その名も地位も、この時の少年はまだ知らない。だが、ただの少女には似つかわしくない威圧感が、その装いだけで伝わってきた。

 

「……誰?」

 

 掠れた声で問うと、霊夢はわずかに眉を動かし、面倒そうに溜め息をついた。

 

「また紫が変なの連れてきたのね。……厄介ごとを押し付けられたわ」

 

 霊夢は縁側に歩み寄り、畳に腰を下ろすと、鋭い視線で少年を観察した。

 その眼差しは冷静で、ただの人間かどうかを測っているようだった。

 

「名前は?」

 

 突然の問いに、喉が詰まる。乾いた唇を震わせ、なんとか名を告げる。

 霊夢は軽く頷き、次の質問を投げた。

 

「紫にどうされたの?」

 

 少年は息を詰め、昨夜の光景を思い出す。

 

「……追われて……死にかけた時に、あの女が」

「助けてくれたの?」

「……わからない。ただ、俺を……どこかへ連れて行くって」

 

 霊夢は目を細め、羽織の袖を軽く揺らしながら呟いた。

 

「やっぱり。紫の“お遊び”にしては、あんた、妙に霊力が濃い」

 

 その言葉に胸がざわつく。

 

「……虚に追われてたんでしょ?」

 

 少年は目を見開いた。

 その言葉を、この少女が知っている?

 

「な、なんで……」

「知ってるからよ。あれは人間の魂を喰らう化け物。普通の人間は気づかれた時点で終わり。まず逃げ延びられない」

 

 霊夢の声は淡々としていたが、ひどく現実的で重かった。

 

「でも、あんたは違った。恐怖で押し潰されても、まだ生きている。それは――体の奥にとんでもない霊力を抱えてる証拠よ」

 

 霊夢は立ち上がった。障子越しの光に「十三」の文字が浮かび上がる。

 博麗霊夢――幻想郷護廷十三隊、十三番隊隊長。

 もちろん、少年がその事実を理解するのは、まだ先のことだ。

 

「……放っておくわけにもいかないか」

 

 やがてぽつりと呟き、再び少年に視線を戻す。

 

「いい? 勘違いしないで。私はあんたを助けたいわけじゃない。ただ、紫が本気で動いてるなら、幻想郷全体に影響が出る可能性がある。それを見過ごすわけにはいかないのよ」

 

 その声には、僅かな警戒が滲んでいた。

 

「今は理解しなくていいけど……その霊力はいずれ“斬魄刀”の形を取る。紫があんたを放っておかなかった理由は、そこにあるはず」

 

「ざん……ぱくとう……?」

 

 聞き慣れない言葉を繰り返す少年に、霊夢は小さく首を振った。

 

「説明しても混乱するだけ。覚えておきなさい。それはあんた自身の力と深く繋がってる」

 

 そう言って霊夢は踵を返した。

 

「しばらくはここで様子を見るわ。食事と寝床くらいは用意してあげる。でもそれ以上は期待しないで。私は保護者じゃないから」

 

 少年は唇を震わせ、ようやく声を絞り出した。

 

「……ありがとうございます」

 

 霊夢は鼻を鳴らし、部屋を後にした。

 

 

 夕暮れ、博麗神社の一室に布団が敷かれた。

 畳の香り、障子越しの橙色の光、軒先の風鈴の音。安らぎのはずの空気が、なぜか落ち着かない。

 

 布団に横たわり、まぶたを閉じる。

 だが、紫の声が耳から離れない。

 

「……俺は、これからどうなるんだ」

 

 小さな呟きは誰に届くこともなく、夜の静寂に溶けた。

 境内では虫の音が広がり、遠くで梟の声が響く。

 少年は不安を抱いたまま、眠りへと沈んでいった。




第2話を読んでいただき、ありがとうございます!
博麗霊夢の「十三の羽織」という形で、護廷十三隊の存在を少し匂わせてみました。
主人公はまだ何も分かっていませんが、読者の皆さんには「ああ、そういう世界なんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。
次回は、霊夢が主人公の霊力を試す場面に入る予定です。
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