使い捨て上等強化人間兵士は生き延びれるのか? 作:⚫︎物干竿⚫︎
なんでこんな事になったんだろうか。
そんな何度繰り返したかわからない自問を繰り返しながら海上を滑るように移動する。
『小隊各位傾注。作戦領域突入と同時に投薬、同時に霊脈炉の制限を解除し敵侵攻勢力を撃滅する。いつも通りの殺し殺されだ。笑って逝くぞ』
強化装甲のヘルメット内にそんなイカれた通信が入って来るが、実際イカれてるんだから始末におえない。
そして、その通信が終わると同時に首の動脈に刺さったバイパス路からある種の麻薬がぶち込まれる。ああ、毎度ながら嫌な感覚だ。自分が自分で無くなって行くのが自分でわかるの最悪すぎるだろ。
「突撃ィィィイイイッ!!!!」
狂ったような笑い声でそう叫びながら、黒い甲殻を纏った3メートルくらいはある新手の海洋生物に火砲が引っ付いたサイボーグみたいなバケモノに向かって突進して行く。
気付いたバケモノが火砲を向けて撃って来る。背中と両脇の2連装のものから吐き出された砲弾が向かって来る。それを当たらないギリギリの紙一重で避けながらそのまま接近して、右腕の砲としか言いようの無いライフル銃を向けてぶっ放す。強化装甲のアシストとぶっ込まれた薬に含まれた体のリミッターを解除する効果で得た怪力でもって反動を押さえ付けるようにしながら連射。ちなみに狂ったように笑ってる体とはこれまた薬の効果で乖離した思考で回避やら攻撃やらやってます。
まぁ、体操縦出来るって言っても、攻撃のための防御とか回避は出来ても後退とか撤退は薬切れるまで出来ないんですけどね!ハハハ!体と一緒に笑いでもしないとやってられないわこんなん。
「キヒィ!獲ッタァ!」
海中から飛び出してきた極太の先が鋭く尖った槍の様なバケモノの尾が装甲を掠めてギャリギャリと音を立てるが無視してバケモノに肉薄して左手に握ったグリップをしっかりと握り込んで殴りつける様に繰り出してグリップの激発ボタンを押し込む。左腕の強化装甲に一体化する様に取り付けられたユニットから特殊合金製の槍が射出され、バケモノの甲殻ごとその下にある心臓部をぶち抜く。
ビクン!と痙攣を起こしたバケモノの動きが止まり、水飛沫をあげながら海上に倒れて動かなくなる。
「枢木1撃破ァ!」
枢木ソウマ。この世界の俺の名前だ。そして、俺に残ってる唯一の個人を示すものでもある。
『アハ、アハハは!ヒハハ!テメェも道連れダァ!』
『一緒に地獄巡りしようゼェ⁉︎嬉しいだろ⁉︎嬉しいって言えよォ!』
そんな断末魔が通信に響いて離れたところで凄まじい爆発が起きて馬鹿でかい水柱が上がる。ありふれたいつもの光景だ。俺や俺の仲間達の体に外科的に埋め込まれた強化装甲を動かすための動力機関の霊脈炉を暴走させる最終装備が起動しただけだ。
「アハハは!死ぬのは皆嫌だよナァ⁉︎死にたくねぇヨナァ⁈ジャあブッ殺すシカねぇよなぁ⁈なぁ、お前らもそうだよナァ!」
笑いながら海中から飛び出して来たバケモノの下に身を屈めて潜り込んで左腕の槍をぶち込み崩れ落ちる前にそこから離れる。
ワダツミ。この世界の日本みたいな感じのシナトセ連邦皇国と言う国でのあのバケモノ達の呼び名だ。今からざっと30年前くらいの絶賛世界中の国々が前世で言うところの世界大戦をバリバリやってたとこに現れて人類に襲いかかって来た。
宗教家達は愚かな行いを繰り返す人類への世界の怒りだなんだと言っているが、そこら辺はどうでも良い。重要なのは当時の人類が持つ兵器類での撃破が困難だったと言う事だ。確かに倒せはするが、人間よりやや大きいくらいの的を軍艦の艦砲で狙い撃てと言ったところで的が小さすぎて命中は期待出来ない上に歩兵でも扱える小火器類では火力不足。
おかげで1匹を仕留めるのにすら回避出来ない面制圧する以外に取れる手段が無いどころか見ての通り海産物なので水中に潜って回避されるなんてのもザラだった。それで最終的に上陸されたとこを吹っ飛ばしたりしながらどうにかこうにか凌いで来た。
その間に作り出されたのが俺も身に付けている零式水上機動甲冑と霊脈炉だ。科学力だけではどうにもならないと行き詰まったマッドサイエンティスト達がオカルト方面にも突っ走ってなんかたまたま大当たりして発見した生体エネルギーの霊力を用いて作り出した装備で、それを使う俺達は水上機動歩兵と呼ばれている。
零式水上機動甲冑はワダツミの攻撃から身を守るための装甲と兵装類を使用するための補助や水上での活動を可能にするためのユニットで、これがなきゃ俺達もただのヤク中でしかない。で、これとセットのぶっ込まれる薬には言った通り体のリミッターを解除しつつヒャッハー状態にして体の痛覚やらをぶっ飛ばして、思考を分離させる効果がある。
人権人道ガン無視で中指おったてた上に小便ぶっかけるような行いだが、この世界じゃメジャーってかどこの国にも俺達みたいなのは居る。だってそうしなきゃあのバケモノども殺せないんだから。
『敵勢力殲滅を確認。何人残った?』
「枢木生きてます。撃破数は5」
『こちら金田。左腕イカれたけどなんとか生きてます。ちくしょう技術部の連中半端な左腕寄越しやがって。3回目だぞ3回目!あ、撃破数は3っすわ』
『こちら森野。武装全損はしましたが生きてます。撃破数は2』
『確認した。毎度毎度、俺もお前達も悪運が強いらしいな』
「そこは幸運じゃないんです?」
『生きてる限りヤク漬けで奴らと戦わされ続けるのが幸運か?』
「そっすね」
ああ、本当になんでこんな事になったんだろうか。何度繰り返しても答えは同じだ。ただ運が悪かった。それだけの話なんだろう。
この世界で目が覚めた俺が最初に見たのは物を見る様にこっちを見る白衣姿の科学者達だった。「意識覚醒を確認」「8割か。上々の数字だな」とかなんとか言っていたかと思えば、そのままライン製造される車か何かのように運ばれた先では更なる改造だ。某ソロモンの悪魔の名前を関する国民的知名度ロボのパイロットのように水上機動甲冑を動かすための神経接続加工やらなんやらされて、最低限の武装の扱いを仕込まれたら戦場行きだった。
母艦に戻って水上機動甲冑を外されると途端に体が動かなくなる。薬の副作用による虚脱感と神経接続の弊害だ。薬の副作用に関してはこれでもかなり改善されている。前は薬が切れた後にラリったままだったりだそのまま死んだりだととにかく酷い有り様だったそうな。ちなみにこれは別に人道人権を多少は考えてのとかじゃなくて、少しでも長く再利用する為だ。
俺達が施される強化手術は絶対成功すると言う訳でも無いのにヒャッハー状態になるせいでとにかく前へ前へってなるから死傷率も高いからだ。それで毎度の様に補充補充とやってたらストックが足りなくなるだとか科学者が言っていた。つまりはそう言う訳だな。
1時間もすれば体の感覚が戻って来てもそもそとゾンビか何かの様に動き出してまずはシャワーで汗やら笑いながら垂れ流したよだれやらを洗い流してさっぱりする。
「改めて良く生き残った。これからも一緒に地獄巡りだな」
乾いた声で笑いながらそう言うのは第48特殊打撃兵団隊長の東ヒデノリ少佐だ。俺達が受けた手術より更に成功度の低い第6世代強化施術を施された人で5年間戦い続けていて撃破スコアも68と軍全体でもトップクラスの人だ。
ちなみに俺達は第8世代強化施術と言うものを施されていて、霊脈炉もより安定性の高い新型のものが埋め込まれている。
「はぁ、一体全体いつになったら終わるんだか。クッソやっぱ取り替えるしかねぇなコレ」
ガチャガチャと機械の腕を弄りながら金田が悪態を吐く。見れば弄っている左腕は完全に脱力し切っていて動く素振りがない。で、これを見ればわかると思うが金田は水上機動甲冑の左腕に付いている槍、対ワダツミ撃発槍を好んで使用している。左腕が最初の出撃の時点で機械式のにお取り替えになるくらいだから依存症とすら言える。
逆に森野は水上機動甲冑用のライフルを遠距離に特化させた単装式狙撃重砲2型と言うブツを愛用している。見た目は銃身のぶっといバカデカいスナイパーライフルだ。当然だが生身の人間では固定銃座としてすら使用出来ないくらい反動がヤバい。
俺は2人の中間くらいで射撃も格闘もほどほどにやる。使う武装も金田と森野ほど偏ってもいない水上機動歩兵としてはオーソドックスな物だ。
「とりあえず、飯行こうぜ飯。せっかく生きてんだしちゃんと食わねーとな!」
「アレだけミンチ作ってすぐに良くまぁ言えるよね。まぁ、お腹空いたのは同意するけどさ。てか、その腕でどうやって食べる気なのさ」
「握り飯くらいなら食える。なんなら食わせてくれても良いんだぜ」
「絶対に断る。なんで好き好んで野郎に甲斐甲斐しく飯食わせてやらなきゃならねぇんだよ」
「同意だね。まぁ、机まで運ぶくらいはしてあげるけどさ」
「冷てー戦友達だぜ」
バカ話しながら艦内にある食堂に移動する。まだちゃんと生きてて自分は人間なんだと実感出来る場所だから俺はここが好きだ。
「出撃お疲れさん。また大損害出たらしいな?んで、しぶとくまたお前らは生きてるのな」
「必死に戦って帰って来た奴にかける言葉がそれってどうよ?あ、見ての通り金田は左腕がイカれてるから片手で食える握り飯あたりで頼む」
「へい、かしこまりー。っても実際、大体の奴ら2、3回の出撃で死ぬしお前らしぶといって」
そう言って給養員が厨房の奥に引っ込んで行く。それを見ながら俺達はさして広くもない食堂の椅子に座って飯が出て来るのを待つ。
『よって、戦況は我々人類の優勢であり………』
壁にかけられたラジオからそんな国営放送局の勇ましい戦果報告が聞こえて来る。
「優勢だってさ?その割には僕ら死に過ぎだよね」
「いつもの大本営発表じゃねーか。内地の連中だってバカ真面目にアレ信じてる奴居やしねーよ」
「だと良いけどなぁ。少佐も言ってただろ?最近、水上機動歩兵として送られてる奴を選んでる節があるって」
「ああ、軍の偉いさんの身内とかは除外ってやつな」
「露骨だよね。同期の改造組で本部配属になったって言う連中の顔ぶれ笑っちゃうよ。僕より狙撃下手なヤツが優秀な射撃能力あるからって向こうってさ。調べてみたら本部中佐の息子らしいじゃん。動かない的を百発百中出来なかったんだよアイツってば」
「戦後見据えての人事ってね。ほい、3人とも粥さんね。どうせまともな飯今は食えんだろ」
話に割り込みながら給養員が俺達の前にひき肉やらぶっ込んだ粥をドンと並べていく。
「良くおわかりで。んじゃまさっさと食うもん食って寝ますかね」
「チックショー!炊き立ての銀シャリが恋しいぜ!」
「まあ、栄養補給のためだけのカロリーバーだとかゼリーよりはマシだよね。出撃が昼夜関係無さ過ぎて最近時間感覚おかしくなって来たよ。てか、次もしかしたら僕と枢木と少佐の3人だけ?そろそろ真面目に死に番回って来たかな」
嫌な現実を森野に突きつけられながら粥を腹に入れて行く。味付けも刺激の少なくて腹がびっくりしてリバースとかは無かった。やったぜ。いや、冗談抜きにカロリーやら馬鹿みたいに消費するから飯食わなきゃやってられないのに下手に食うと吐くなんてのもありうる。
これがなんか海のバケモノと戦ってる世界に転生した俺の日常です。誰か助けて。
「義手の予備はあるからそいつ取り付けて金田も一緒に地獄巡りだぞ。良かったなお前達」
「全然良くねーッ!」
「地獄から離れられると思ってた金田の顔は笑い物だったよ。うん、良いもの見れた」
「おう、お前も一緒に三途の川渡るんだよ」
飯食い終わった後、少佐から金田にそんな死刑宣告があったが、人手が足りないからね仕方ないね。
詰んでるやつあるのに性懲りも無くなんか書いてる人ですまない。でも、なんか指が滑ったんだ!許せ!(逃亡者は銃殺される!今すぐ原隊復帰せよ!)
冒頭に至るまで?割とテンプレなトラック転生みたいな流れで死んだアホが神様に好きな世界に転生させちゃる言われて、うっかりアズール⚫︎ーンとか艦隊⚫︎れくしょんみたいな世界でキャッキャ出来るぜ!って乗っかって、アホが愉悦神にそこら辺ポジのが出る前の地獄に放り込まれただけ。上手い話には穴があるって訳だな(他人事)